普段通りの放課後。
俺が部室の前まで行くと。
「きゃっ、っつぁ〜〜!!」
ハルヒの奴が部室の前で盛大に転倒していた。
まぁ、いつもの如くマタドールが逃げ出す様な猛牛の如き突進をしてれば何時かはこけるというものだろうな。
だが、我等が団長がその程度で活動停止する訳も無く、即座に立ち上がった……ん?
此方に転がって来た何かを俺は拾う。ハルヒが落とした物だろう。
「おい、これ落としたぞ」
「あ、こ、こら早く返しなさい!」
そそくさと『世界を大いに混沌させる為の1000の方法』の本を俺からもぎ取るハルヒ。
全く、物を拾って貰ってお礼の言葉も言えないのかねこの団長は。
「団長が困ったら即座に助けるのが団員の務めでしょ! ……まぁ、兎も角早く部室に入るわよ!」
アヒル口で捲し立てるハルヒだが、顔が赤いとどうにも迫力に欠けるね。
何故か、輪ゴムをポケットから取り出すハルヒに続き、俺も部室に入ろうとする。
視線を感じ、思わず横を見てみた。
大概、こういう時は振り向かない方が良いのが定義なんだけどな。
俺の人生はつくづく、波乱を含有したいらしい。
「…………」
有希がこっちを見ていた。
何時も部室に一番乗りなコイツが、何故か俺の横でこちらをじっと見ている。
いや、そう何か怒っているのか、不機嫌なのか微妙な視線を送られてもな。
ところで、何で俺の後から来たんだ?
「パソコン研究部に行ってた」
「そ、そうか」
「そう」
俺が気の抜けた返事を返すと、北高のクィーン・オブ・無表情はやや早足で部室に入ってしまった。
やっぱ、怒ってるのかな有希。最近、朝比奈さんも俺にお茶を提供する時はびくびくしているし。
土曜日辺り、買い物にでも連れて行ってケアしなきゃならんかも。
そんな風に考えていた俺は、正直甘かった。
次の日の放課後、俺は何時も通りに部室へと足を運んだ。
そして俺は遭遇した。
「…………こけた」
俺が部室前の廊下に入った途端、現れた有希が俺と逆の方の廊下の端からド派手な転倒をしてきたのだ。
と言うか、転倒は十数メートルも転がってするもんじゃないと思うぞ有希よ。
唖然としている俺の前に転がって来たもの、それは
先々週、俺が買ってやったパールバイブだった。
しかもテラテラと濡れている。ひょっとして、嵌めて来たのか?
「拾って」
何事も無かったかのように、有希が立ち上がり俺の前まで来る。
拾い上げ、どうしようかと思う。いや、何を考えてるんだ俺は?
これを「落としましたよ」とか言いながら渡せばいいのか?
「そう。落とし物は落とし主に戻さなくてはいけない」
有希がスカートを捲り上げる。
下は、ノーパンだった。濡れ濡れだった。パ○パンだった。
僅かに頬を染め、視線をミクロン単位で泳がせながら有希は俺に囁いた。
「戻して」
完