「東中学出身、涼宮ハルヒ」  
 この時は別に振り向く必要は無いと、俺は前を向いたままその涼やかな声を聞いていた。  
「ただの人間には興味はありません。この中に宇宙人で未来人で超能力者がいたらわたしの所に来なさい。以上」  
 さすがに振り向いたね。こうして俺は涼宮ハルヒと出会っちまった。  
 しみじみと思う。偶然だと信じたい、と。  
 
 
「しょっぱなの自己紹介のアレ、どのへんまで本気だったんだ?」  
 思えばこの時、運命のドミノ倒しの一枚目を押したんだと思う。よりにもよって自分で、だ。  
「自己紹介のアレって何?」  
「いや、だから宇宙人がどうとか」  
「あんた、宇宙人で未来人で超能力者なの?」  
「……違うけどさ」  
「だったら話しかけないで」  
 
 
 そして魔が差したとはまさにこの事だろう。ゴールデンウィークが明けたその日の事。  
「曜日で髪形変えるのは宇宙人対策か?」  
 その言葉にハルヒはいつもの笑わない顔で反応した。  
「宇宙人で未来人で超能力者への対策よ。っていつ気づいたの」  
「んー……ちょっと前」  
「あっそう。……あたし、あんたとどこかで会ったことある? ずっと前に」  
「いいや」  
 
 
「付き合う男全部振ったって本当か?」  
「本当よ。全くくだらない男しかこの世には存在しないわ」  
「じゃあどんなヤツならいいんだ。やっぱり宇宙人か?」  
「もちろんよ。それと宇宙人で未来人で超能力者よ」  
「……前から気になってたんだが、いくらなんでも欲張りすぎじゃないか? その属性は。  
 宇宙人で未来人で超能力者。どれか一つでもレアな存在なのにオモシロ属性三倍だぞ?」  
「だってそのほうが面白いじゃないの!」  
 
 
 そしてハルヒは謎の部活を立ち上げ、俺は一風変わった連中と出会う事になる。  
 
「長門有希」  
「いい」  
 
「おそらく、これがこの時間平面状の必然なのでしょうね……」  
「それからあたしのことでしたら、どうぞ、みくるちゃんとお呼び下さい」  
 
「古泉一樹です。……よろしく」  
「入るのは別にいいんですが、何をするクラブなんですか?」  
「良くぞ聞いてくれたわ! このSOS団の活動内容。それは」  
 
「宇宙人で未来人で超能力者なヤツと一緒に遊ぶ事よ!」  
 全世界の時が静止したかに思われた。なんてな。  
 
 
 とまぁ色々あり、いつの間にやらハルヒは俺を巻き込んでSOS団なる非認可組織を生み出していた。  
 そして今、俺は長門に連れられ、彼女の自室でお茶を飲んでいた……。  
 
 
- * -  
「涼宮ハルヒとわたしは普通の人間じゃない」  
 いや、それは何となくわかっている。  
「この銀河を統括する情報思念統合体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース」  
 俺の突っ込みを軽やかにスルーし、何だか妙な事を言い出した。  
 
「……それが、あなた」  
「俺かよ!?」  
 思わず突っ込んでしまった。そのオチにはさすがにビックリしたぞ。  
 普通は、それがわたし。とかさらっと言い出す場面だろ。  
 さっき普通の人間じゃないとか言ってたのは何だったんだ。  
 
「わたしは人間。ただ他者とのコミュニケーションが苦手。だから普通じゃないと言った。  
 ……わたしの本当の仕事はヒューマノイド・インターフェース、つまりあなたのサポート」  
 おいおい、何だか妙な流れになってきてないか?  
 仕事? サポート? インターフェース?  
 長門の電波話を話半分以下で聞き流しながら、俺はこの状況をどうすべきなのか考えていた。  
 俺が宇宙人だって? んなアホな。  
 
 
 
 そして第一回不思議探索決行日。俺は朝比奈さんと二人デート気分で町を闊歩していた。  
 
「キョンくん、お話したいことがあります」  
 あなたの語るお話でしたら税制改革案だって一大感動巨編になることでしょう。それで一体?  
「あなたはこの時代の人間ではありません。もっと、未来から来ました」  
「また俺!?」  
 
 真剣な顔で朝比奈さんに告げられる、その瞬間まで。  
「わたしはこの時代の人間です。キョンくんのお手伝いをして欲しいと頼まれました。  
 キョンくんの妹さんは、本当はわたしの妹で、この時代の隠れ蓑に……」  
 
 三年前にハルヒがどうこうという話をやはり左から右へと流しながら、俺は頭を抱えていた。  
 ええい、全部保留だ保留。  
 
 
 
「凄く聞きたくないのだが、古泉。  
 お前ももしかして万が一ひょっとしたらなぁーんか俺に話したい事があったり無かったりするのか?  
 いややっぱ無いよな? 無いなら無いでいいぞ?」  
 俺は勤めて優しく古泉に語りかける。せめてお前は一般人であってくれ。  
「おや、お前もと言うからには既にお二方からアプローチを受けているようですね」  
 聞きたくなかった。というかもう帰っていいか、俺。  
 
「……まずお前の正体から聞こうか。実は超能力者の応援部隊でして、などと言うんじゃないだろうな」  
「先に言わないで欲しいな」  
 三度頭を抱える。で、その超能力者ってのはやっぱり。  
「ちょっと違うような気もするんですが、そうですね、超能力者と呼ぶのが一番近いかな。  
 そうです、実はあなたは超能力者なんです」  
 
 何で俺の正体を俺以外の連中が語るんだ。しかも三連発で。  
 つまりアレか。俺はどこぞの誰かが望んだ「宇宙人で未来人で超能力者」だったというのか。  
「そこまでわかっていれば話は早いです。実際その通りなのでね」  
 良かったなハルヒ。お前の求める三倍頑張る珍獣は意外にあっさり見つかったぞ。  
 さてロズウェルの電話番号は何番だったか。それより色のついた救急車を三台呼ぶか?  
 神がどうのと語る古泉を完璧に無視し、俺はただひたすら丸机に突っ伏して呟いていた。  
 
 
 
 他称、宇宙人に造られた人造人間。他称、時をかける少年。他称、少年エスパー部隊。  
 俺自身に自覚も記憶も全く無いというのに何なんだこの属性の山は。  
 誰かが俺の枕を睡眠学習装置にでもしていたのだろうか。  
 
 ……などと俺は別に驚いたりはしない。そりゃそうだ。  
 誰がどう考えたって、こんなのあいつら全員がぐるになって俺をはめているとしか思えないだろ。  
 なるほど読めてきた。首謀者はハルヒあたりで、これはきっと壮大なドッキリなんだな。  
 しかし、こんなあまりに壮大かつ電波かつ現実離れしすぎたドッキリに、一体誰が引っかかるというのかね。  
 それこそハルヒじゃあるまいし。アイツなら楽しむ為にわざと引っかかりそうだが。  
 
 放課後、SOS団の活動を終えた俺はそんな事を考えながら教室へと向かっていた。  
 これが下駄箱にラブレターでも入っていて、放課後に呼び出されたとか言うのなら嬉しい状況なのだが、現実はそうそう甘くは無い。  
 SOS団の活動終了を終え、後片付けをしながらカバンを見てみると、明日提出の課題のノートが入っていない事に気がついただけだ。  
 教室にでも忘れたかと考え──実際忘れそうな場所はそこしかないのだが──俺はハルヒたちと別れて教室へと足を運び今に至ると。  
 
 
 
 さて、一般常識がある諸兄諸姉に質問したい。  
 俺の知る教室とは、扉を開けたら壁があって中に入れない部屋の事では断じて無いはずなんだが、その認識は間違っているのだろうか。  
 
<……返…を…>  
 壁に手をついて何事かと考えていた俺の脳裏に言葉がよぎる。  
 何だ今のは。ついに俺まで電波な影響が出始めたのか。いやきっと疲れてるんだな。うん。  
 これはもう今日はノートの事は諦め、明日の休み時間にでも国木田先生に頼み込むとしよう。  
 
<……たの返…を求……。…なた…返答を…む…>  
 ダメだ。どこかで聞いたような単調にして澄み渡る声が脳裏をかけ始めた。これは本格的にヤバイかもしれない。  
<……あなたの、返答を求む…>  
「……長門?」  
 声の主にようやく思い当たり、俺は呟き返していた。  
 
<そう。ようやく接続できた>  
 妄想が返事を返してきた。なんだかわからないがとりあえず返答してみる。  
 人の脳内に何電波飛ばしてるんだ。  
<わたしは今、あなたの教室にいる>  
「人の話を聞けよ。……って教室? 俺の教室は今壁で覆われているぞ」  
<わかっている。わたしはその中にいる>  
 どうやってだ。いやそもそも何でお前はそんなところにいるんだ。  
<別のインターフェースと接触した……あっ>  
 と、長門から長門らしからぬ声が漏れた。  
 どうした長門。何だ今の声は。  
 
<……緊急事態。救援を求む>  
 
 いつも通り起伏の無い淡々とした口調でさらっと告げてくる。  
「な、ちょっと待てっ! 本当にお前は長門で、今この中にいるのか!?」  
 妄想だと思っていた声に叫び返す。普通はそう思うだろ。  
<わたしはここにいる。壁に手を。思念して──>  
 
 長門に言われたとおり壁に手を置き、そして思念する。  
 壁が<壁>という情報で結合されたモノである事を。  
 そして結合できるモノは、当然結合解除もできるという事を。  
 
 何故かそんなムチャクチャな思念が理解できた瞬間、恐ろしいほど心が静寂になる。  
 遠く離れた場所で舞い落ちる葉の音すら感じ取れそうだ。  
 俺は指先を少しだけ強く壁につけ、モジュールの使用を申請した。  
 
「──情報の結合を解除するっ!」  
 
 次の瞬間壁は勢いよく吹き飛ぶ。これもCG処理ってやつでいいのかね。  
 緊張を張り巡らせて内部を警戒しながら、俺は今ぶち開けた穴から教室へと入っていく。  
 とにかくこれが俺の普通の人生の終焉への、本格的な第一歩となったのは間違いなかった。  
 
 
- * -  
「………」  
「あ……ああっ! くひゃうんっ!」  
 
 教室の中は異空間で、何故か突然の濡れ場だった。  
 あまりの事に俺が長門譲りの三点リーダで黙ってしまう。  
 こりゃまた一体何と言う欲望渦巻くエロゲーへの第一歩を踏み出したんだ、俺は。  
 
「待っていた。緊急事態」  
 そういう長門はいつもと変わらぬ制服姿で、ただ眼鏡だけがなく、そして同じ制服姿を纏った誰かの上に  
マウントポジション状態でまたがりながら、自分の左手を組み伏せてる相手のセーラーの中へ、右手をスカートの中へと  
それぞれ差し込みつつ、何やらもぞもぞと動かせていた。  
 誰がどう見ても下のヤツの方が緊急事態だ。  
 
「……長門、とりあえず説明してくれ。一体何がどうなってる」  
「あなたに教えておく。でも待って」  
 そのまま長門は組み伏す女生徒に呟く。  
「うまく実演できない。情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない」  
 数ミリ単位で瞳と眉を動かし、おそらく困惑していると思われる表情を現してくる。  
 その間も両手は動かすのを止めず、下の人はじたばたと大きくもがきながら声を荒げていた。  
「も、もう……いいかっ、げ、うあ……っ!」  
「でも、逝って」  
「あ、あ、ああああああああああああああーーー……っ!!」  
 女生徒が少しだけ背筋をそらせて小刻みに震えた。そのまま数秒経過してようやく床に倒れる。  
 だが長門の手が止まる事は無かった。  
「ちょ……今、は、だめ……く、くううっ、な、なめないでよねおおおおっ!」  
 
 突然組み伏せられてた女生徒の右手が光ったかと思うと、軟体生物の触手の様な形に変化させて長門を貫こうと勢いよく攻撃してきた。  
 だが長門は数センチの動きで器用にそれをかわすと、セーラーから即座に抜き出した左手を流し絡めて  
脇の下でその光の触手をがっしり固定してしまう。  
「え、ウソッ!?」  
「一つ一つの攻撃が甘い」  
 叫びたい気持ちはわかる。俺だって自分の目を疑いたい。特殊CGのSFX相手にどうしてそこまで優勢なんだよ長門。  
 お前は本当にただの地球人なのかと、今度牛丼でも食いながら小一時間じっくり話し合おうじゃないか。  
 
「わたしの能力についても、自分の身体の感度に対する認識も甘い。だからわたしに弄られる」  
 そしてスカートに差し込んでた右手を激しく動かしだした。  
 
「え、ま、くふぅああああああああっ!」  
「だからわたしに侵入を許す」  
 どこに侵入を許したのかは優しさとして聞かない方がいいんだろうな。  
 
 
 さてこの状況、俺は一体どこから突っ込むべきなんだろうか。  
「ここ」  
 頭が痛くなりこめかみを押さえながら自問していた俺の呟きに長門が答える。  
 何の事かと視線を送ると、長門が女生徒のスカートを内側から器用に捲り上げ、露になった白い下着の中央  
太ももの付け根あたり、つまり女の子の絶対秘密領域を指差していた。  
「挿入するものが無い。緊急事態」  
 そうか、緊急事態か。確かに俺の短い人生で初めて見た緊急事態だ。  
 
「……もう一度言う、長門。なぜ朝倉涼子を襲っているのか説明しろ。朝倉の変化した腕の事も含めてだ」  
 
 
 

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