朝倉涼子。谷口曰くランクAAの超美少女。  
 俺やハルヒのクラスメートにして学級委員。成績優秀、運動抜群、特技は料理とナイフ使い。  
 宇宙人に作られたインターフェースであり、最近操り主が俺になった。  
 そんなでたらめが並ぶプロフィールに、さらに一つ追加される事になった。それは、  
 
「そんな訳で、不思議探索失敗という不穏な風を吹き払う為のニューフェイスよっ!」  
「朝倉涼子です、よろしく」  
 栄えある『SOS団団員その5』という肩書きであった。  
 
 
- * -  
 さて、朝倉が電撃入団した翌日。俺の下駄箱には可愛らしい手紙が入っていた。  
 差出人は朝比奈さんである。  
 俺は手紙に書かれるまま、昼休みにスキップする足すら地に着かない状態で部室を訪れた。  
 
 そして扉を開けると、  
「よう。ご機嫌だな、俺。こうして第三者的に観察すると頭悪く見えるぞ」  
 そこには俺の湯飲みを使いお茶をすする、ちょっと大人びた俺が待っていた。  
 
 
「えっと。こちらは二年後のキョンさんです」  
 朝比奈さんに紹介され、未来の俺が手を振ってくる。  
 ……えっと、良く似た人ですね。俺の生き別れのお兄さんでしょうか。  
 
「まあ普通は信じないよな。俺だって信じれなかった。でも信じてもらわなきゃ話が進まん。  
 仕方ないから、お前の部屋のお宝保管場所からパソコンに残しているゲームのセーブポイント箇所、  
あのSOS団パソコンに眠る某フォルダの事、それに一昨日長門の家で行われた朝倉涼子の勧誘劇まで  
お前が信じてくれるまで全部赤裸々に語っていく事にしよう」  
 一瞬だけ朝比奈さんに視線を飛ばして未来の俺が言ってくる。  
 ごめんなさい、お前は俺です。凄く効果的な言葉です。  
 だからそういう事で俺だと理解させるのはやめろ。同じ俺ならわかるだろ。それは男の永遠の秘密だ。  
 
 
 朝比奈さんにお茶を淹れてもらい、俺は朝比奈さんと共に席につく。  
 未来の俺は懐から一冊のマンガを取り出すと、俺に渡してきた。  
 青い猫型ロボットがダメなメガネ少年を一人前にするあの有名なマンガだ。  
 
「その猫型ロボットの話の一つに、こんなのがあるのを知ってるか?  
 ある日ダメ少年に宿題をまかされたロボット。だがその宿題の量と残り時間に一人じゃ無理だと考えた。  
 最低でも五人は必要となる計算だ。そこでロボットは未来から自分を援軍として呼ぶ事にした。  
 これで自分が五人になる、そう考えたんだ。  
 
 ……しかし、それが間違いの始まりだった。  
 確かに名案だった。宿題はあっさり完成した。だがそのロボットはそれが何を意味するか思い至らなかったんだ。  
 そのロボットはそれ以降二時間おきに四回も過去から呼び出しをくらい、寝る間も惜しんで宿題をしなければならなくなったんだ。  
 そうしないと時間的矛盾が起こり、最初の宿題が完成しなくなるからだ。  
 つまりロボットが五回宿題をするのは『規定事項』となった、そういう訳だ」  
 
 言いたい事は何となくわかる。話的には問題ない。  
 だが何で未来の俺がわざわざそんな事を話しに来たのかがわからない。  
 
「何、いずれわかる。俺も二年前に同じ事を言われ、そしていずれ思い知った」  
 未来の俺はとことん疲れきったような表情を浮かべながら、俺に返してきた。  
 
 
 
「それとこれも規定事項なんでな。お前が抱えているある疑問について、俺の知る限りの事を教えてやるよ。  
 お前の持つ、『未来から来た超能力を持つインターフェース』って謎の属性についてだ。  
 お前が何故そんな属性を持っているのか。その記憶が何故ないのか。それについてなんだが……」  
 
 未来の俺は目頭を押さえ涙をこらえるポーズをとる。何だ何だ、そんなに悲しいエピソードがあったのか?  
 俺は朝比奈さんと目を合わせ、二人して覚悟を決めて言葉を待つと  
 
「それな……正直俺にもわからん。少なくとも二年後までには一ミリ程度も解決しない。だから気にするな」  
 そう真顔で慰められてしまった。ある意味何よりも悲しいエピソードである。  
 横を見れば、朝比奈さんも何だかコーヒーの入ってないマリームを飲まされているような表情を浮かべていた。  
 せめてクリープぐらいにはしてほしいと思う。  
 
 
「さて、もう帰るか。あんまりここにいてもアレなんでな」  
 アレってどれなんだ。そして何一つ解決してねぇ。結局マンガ持ってきただけじゃねぇかお前。  
 突込みには答えず、未来の俺が扉を開けて立ち去ろうとする。  
 
 だが一瞬だけ足を止めると、  
「最後に一つだけ言っておく。……その時が来たら『躊躇うな』。お前の『全力』で対応するんだ。それと朝比奈さん」  
 未来の俺はその視線を俺から朝比奈さんへと移す。  
 そして一度だけゆっくりと瞬きをすると  
 
「お茶、ご馳走様でした。とても美味しかったですよ」  
 いいからもう帰れ。俺はさっさと扉を閉じた。  
 

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