大ピンチだ。恐らく俺の人生最大のピンチだ。  
前回ハルヒ、長門、朝倉、朝比奈さんからの魔の手から一部犠牲を出しつつも何とか切り抜けたと思ったら今度は機関の干渉があるとは。  
しかも男だらけの乱交パーティーって何だそれは!?ふざけるんじゃねえ。  
俺はここから逃げたいんだ。もうめがっさ逃げたいんだ。もっさ逃げたいんでだ。  
察して下さい森さん、あなたが言うんです。頼みます、三百円あげますから!  
しかしこの年齢不詳のメイドさんは、首を左右に振り俺を絶望のどん底に落とししれた。  
いけ好かない超能力者が俺に近づいてくる。寄るな、来るな。お前はストライクノワールに乗ってハニワ幻人に抱き着いてりゃいいんだよ。  
やばい、非常にやばい。俺はそういった趣味は全くないし、ここの住人だってそんな物見たくないだろう。  
仮にまかり間違って書いてしまったら某みずの見たくこのSSは黒歴史、保管庫からも抹消、スレも炎上確実。それだけはやってはいけない。  
って何訳分からん事言ってるんだ俺は。  
誰か……俺をこの場から脱出させてくれ……!  
 
とその時、何かがこの場所に突っ込んで来た。ガラスの割れる音がする。  
空の彼方に影は躍らなかった。黒い車だったからな。  
その黒いバンは俺が目的らしい。ドアが開く。一瞬の隙もなく引きこまれた。ほぼ同時にアクセルが踏まれて急発進。  
流石の機関も完璧に油断していたらしい。二十分過ぎても追っ手は来なかった。  
「意外とあっさり上手くいったな」  
「機関と言っても所詮は人間の集まり。少しの空間操作と油断を突けばたやすい事です」  
「油断はともかく空間操作は多少とは言えないんじゃない?」  
朝比奈みちる騒動の時に出くわした嫌な未来人に、同じく出くわしたハイティーンの女、それに喜緑さん。  
……どんな組み合わせだこれは。「朝倉さんから連絡が入ったんです。あなたが危険な目に合ってるから助けて欲しいと」  
「あまりに不憫な事になりそうだから僕達も手を貸したという訳だ」  
「お礼くらい言っても罰は当たらないと思うわよ」  
 
助けてもらった事には本当に感謝してる。どうもありがとう。  
が、正直に腹を割って話そうか。ただの善意で俺を助けたと思うほど俺は思考が回らん馬鹿ではない。何が目的だ?  
「それは朝倉さんに聞いたらどうですか?」  
いや喜緑さん、携帯は長門のマンションにありますから連絡は取れないんです。  
「貴方は朝倉さんのナイフを持っていますね?それは通信機器代わりにもなっているんです。  
今も繋がってますよ」  
何だって!?  
「あーあ、ばれちゃった」  
懐から朝倉の声がする。とりあえずナイフを出してみる。  
「別にばらす必要性はなかったのになあ。もう気付かれずにじっくり観察出来なくなったじゃない」  
おお、確かにナイフから声が出てる。ってちょっと待て。朝倉、お前今なんて言った。  
もしかして、俺の人には言えないあんな事やそんな恥ずかしい行為を覗き見してたのか?  
「あっ……だ、大丈夫よ、そういった時は接続はしてないわ」  
「そのナイフは、私の見た所創られてから一度も接続は切られてません。繋がりっぱなしです」  
 
ナイフから声が消えた。おい朝倉、聞いてるならちゃんと返事をしろ。  
「………この電話番号は、現在使われておりません。  
ピーとなったらご用件をお知らせ下さい。ピー」  
……朝倉がジョークを言ったのを褒めるべきか、怒るべきか、それとも間違いをつっこむべきか。どうすればいいんだろう。  
なんか腹立たしいので自然と手に力が入る。すると、  
「あっ…だめぇ……いきなりそんな強くいじっちゃ……最初はもっと優しく…」  
と、文だけ見ると誤解させられる事間違いない言葉を喋りだした。  
やめんか。情熱を持て余す高校生がそんな艶のある声でそんな台詞を聞かされたら変な気分になるだろうが。  
もしここが自分の部屋だったら、俺のシシオウブレードが昏睡状態から復活してしまっただろう。  
まあ、覗きは後でじっくり話すとしよう。朝倉、この三人と何を取引したのか教えてくれないか?  
「私が知ってる限りの貴方の情報全てよ。いつ何処で何をしたか映像化してね」  
何だ、それだけか。てっきりもっとやばい条件だとばかり……  
ん、全て?  
 
「あんたはなんの能力もないただの人間だが、涼宮ハルヒの行動や思考に多大な影響を与える重要人物だ。しかも僕達を牽制出来る強力な切り札まである。  
そんな奴の情報だ。どの勢力も喉から手が出る程欲しがるのも当然だろう」  
「あなたが外に出ている時の情報は得るのは簡単。けどね、家の中の情報は全く知る事が出来ないの」  
何故だ?家は特別な防犯対策はしてないし、大体お前達なら簡単に知る事が出来るだろうに。  
「あの文芸部と同じです。色々混じりあって飽和状態になっていてアクセスが出来ないんですよ」  
俺の家はそんな風になっていたのか。こればかりは感謝だな。  
知らない奴に自分のプライベートを覗かれて喜ぶ趣味はないからな。  
……まさか、朝倉が渡した情報ってその部分なのか!?  
「ええ、その通りよ。あなたの中に朝倉涼子さんがいた時から今までのプライベート映像集。それもノーカット、無修正。  
それを私達だけにくれたんだからこの程度の事ならいくらでも助けてあげるわ」  
「誤解はしないで下さい。貴方の行動と思考を知る極めて貴重な資料なのです。  
もちろん人には見せられないあんな事やそんなシーンも満載ですが。  
……ふふっ、結構立派な物をお持ちですね」  
「くそっ……でかさでは負けたが、平均持続時間では僕の方が勝ってるからな。悔しくなんかないぞ」  
 
恥ずかしい、ああ恥ずかしい、恥ずかしい。穴があったら侵入したい。  
「もしかして……怒ってる?」  
………。いや、お前の判断は間違っちゃいない。  
この場合、機関の連中に蹂躙される方が遥かに被害が甚大だからな。礼を言う。  
「ごめんね。いつか私の穴に侵入させてあげるから」  
それは遠慮しておこう。  
「……やっぱり、そっちのケがあるの?」  
ねーよ。それにやっぱりってなんだ。全く、礼を言って損した気分だよ。  
『……目標の居場所を突き止めた。追跡開始』  
うん?今長門の声がそっちから聞こえたぞ。起きたらしいな。  
「まずいわ。今長門さんが朝比奈さんを連れてそっちに向かっているみたい」  
迎えに来てくれるんだろきっと。  
「ううん、暴走状態に入ってる可能性が高いわ。私の制止を振り切ってまで行ったもの」  
と、なると、捕まったらまた俺の貞操がピンチなわけなのか。勘弁してくれ。  
大体俺の何処にそんな魅力があるんだよ。  
 
「あなた、自分の事をよくわかってないみたいね。わたしが彼女達の立場ならイチコロね」  
そういうもんかねえ。よくわからん。  
「それより、まずい事になりました。長門さんがまさか朝比奈さんと連携をとるとは」  
どういう事ですか喜緑さん。長門はともかく、朝比奈さんがこのメンバーの脅威になるとは思えないんですが。  
「私達が空間を限定してなら時を止める能力があるのはご存知ですね?」  
ええ、一度経験してます。最も、俺には一瞬の出来事でしたが。  
「いくら私達でもその行為を行う事は簡単には出来ません。止めてる時は私達は一般人レベルにまで能力が低下するからです。  
しかし、タイムプレーンデストロイドデバイス、略してTPDDが近くにあれば話は別です。  
空間を限定する必要なく時を止める事が可能になります。もちろん使える回数に制限はありますし、数秒だけですが」  
長門ならその数秒で俺を奪還するのはたやすい事だろう。そしてその後は……  
 
まずいって。いやまずいって。また貞操の危機に晒されなきゃならんのか。  
「ふん、問題無い。こちらも同じ事を実行すればいいだけだ」  
そ、そうだ。こっちにも宇宙人と未来人がいるじゃないか。しかし、助けてもらうのは非常にありがたいんだが、一つ聞いていいか?  
「なんだ?」  
もしかして、また見返りを要求するのか?  
「いや、今回は個人的に恨みを晴らす目的もあるからそれはいらん」  
「勝手に思念体の意向を無視して世界改変しておいて、お咎め無しというのは私としては少し腹立たしいと思っていたのです。  
お陰で私が長門さん監視の任務を受けるはめになりましたし、いい機会ですから憂さ晴らしをこの際する事にします」  
「だから、今回はサービスサービス」  
「私は涼宮さんがいるからそっちには行けないけど頑張ってね」  
ああ、しっかりハルヒを監視しててくれ。ここにあいつが出て来たらそれこそ収拾がつかなくなる。  
もうついてない気がするがそれは置いておく。  
「長門さん達が後ろから来ました」  
うわ、朝比奈さんを背負って走ってるよ。  
「朝比奈みくるのTPDDの起動を確認した。こちらも起動させる」  
「さあ、長門さん。勝負です」  
「……朝比奈みくるのTPDDにアクセス完了。プログラムを実行開始」  
今、恐ろしい戦いが始まろうとしている。  
 
 
続け  

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