さて、突然だがここで質問だ。
お前さんは夏休みの課題ってもんをどうやって片付けるタイプだ?
休みの期間中、毎日少しずつ切り崩すタイプか?
ラスト数日にすべてを賭けて一気に片付けるタイプか?
おいおい、まさかハルヒみたいに7月中には全部終わらせちまうなんて化け物じみたことをしてんじゃないだろうな?
俺はといえば、知ってのとおり課題になんぞ8月中頃まで一切、手をつけない人間だ。
そこ、だらしないやつだ、なんて言うんじゃねぇ。
以前体験した終わらない夏休みが終わりを迎えることができたのは、俺がそれまで課題に手をつけていなかったからと言っても過言ではないんだ。
言ってみれば俺の計画性の無さが世界を救ったようなもんであり、もしあそこで俺が8月17日前に課題を片付けでもしていれば、どうなっていたことやら……
しかし、こんな特殊な事例を除けば、やはり課題ってもんは計画だてて着実にこなしていくことが推奨されているもんだろう。
ましてや課題をこなすことを忘れるなんてのはもってのほかであり、そんなマヌケな連中はいつか手痛いしっぺ返しをうけるもんである。
でだ、これから話す内容は、課題をこなすのをすっかり忘れちまってた馬鹿どもが、そのおかげでせんでもいい苦労をすることになる話だ。
その喜劇は、唐突にSOS団団長があげた叫び声を開演ベルとして、幕を開けたんだ。
「あぁぁぁぁっ!!」
突然ハルヒのやつが早朝の雄鶏すらまだ可愛げがあるだろう大声をあげ、長門を除く俺たち全員の顔をしかめさせた。
その大声ぶりたるや、アメリカ横断ウルトラクイズの絶叫早押しに出場すればぶっちぎりの一抜け確実と思わせるもので、
思わず『ペースメーカー使用の方は半径50m以内の立ち入りをご遠慮ください』という注意書きを部室のドアに貼っておきたくなるほどだった。
「いったいどうしたんだ。ハルヒ」
「ちょっと、キョン!これ見なさいよ!これ!とんでもないことになってんだから!」
ハルヒはやたらと興奮してPCの画面を指差しているが、正直今の俺たちの耳の健康以上にとんでもないことが2次元平面上に展開することが可能だとは思えん。
「ああ!もう!こんなことならあのとき、徹底的に原因を究明しておくべきだったわ!」
「落ち着け。ちょっと見せてみろ」
憤慨やるかたないハルヒを脇に追いやり、俺は団長席に腰をおろした。
目の前のパソコンのディスプレイにはおなじみのSOS団サイトのトップページが表示されている。
このメールの受付しかできないおそまつなホームページはいたっていつもどおりで、カウンターが異常にまわっているわけでもなけりゃ、けったいな宇宙文字的な文字化けをおこしているわけでもない。
実にもってつまらんもので、なにがハルヒに空を飛ぶ光の国の巨人すら撃墜できそうな雄たけびをあげさせたのか、さっぱりわからん。
「おい、ハルヒ。別にどうってことないぞ」
「ちょっと!あんたの目は節穴!?ここんとこ、見てみなさいよ!」
こら、液晶画面を直接触るんじゃねぇよ。
ハルヒの人差し指の攻撃を受けて波打つ箇所は、ちょうどSOS団のシンボルマークが表示されているところだった。
「これ!『ZOZ団』って書いてあるじゃない!」
ハルヒの指摘を耳にした俺は思わずハルヒのほうに振り返ろうとする体に急制動をかけたために硬直し、古泉はといえばマグニチュード8クラスの『ハルヒ大地震』の直撃をくらって口元が余震をおこしている。
朝比奈さんは「うぴ」とかいう可愛らしい悲鳴をあげて、手元のおぼんで素人くさいジャグリングを披露し、長門のほうを見るとページをめくるはずの手が紙を掴みそこねて空のまま空中遊泳している。
俺たち全員の慌てた様子を「わぁ、団長ってばそんなすごいことに気付いちゃったの。俺たち、言われるまで全然わかんなかったよ」という気持ちの表れとでも思ったのか、満足げな笑みを浮かべるハルヒだが、
言うまでもなくこのことに今の今まで気付いていなかったのはコイツひとりである。
まったく、ハルヒのやつもなんだってこんなことに今になって気付いちまうんだ。
ご存知の通り、ハルヒ製作のSOS団エンブレムはネットに潜む邪神様の目覚まし時計になっちまうんで、ひそかに長門が無害なものに置き換えており、それがZOZ団エンブレムというわけだ。
このときの俺の心境を説明しようか。
例えば期末テスト初日の1時間目、現代文のテストになかなかの手ごたえを感じたとしよう。
そして翌日、数学のテストをうけている真っ最中に、現代文の答案用紙に名前を書き忘れていたことに気付いたとしたらどうだろう。
まあ大体そんな感じの心理状態である。
我ながらわかりにくいたとえだな、すまん。
さて、この『SOS団エンブレムがいつの間にかZOZ団エンブレムになっていた事件』(むろんハルヒにとってだけなのだが)
俺としちゃ、SだろうがZだろうが、どうせサナダムシがのたくったような文字だ、サナダムシが右を向いてようが左を向いてようが一向に構わない。
それぐらい、サナダムシの好きにさせてやれ、といった程度のどうでもいいもんだ。
だが、ハルヒにとっちゃ大問題らしい。
こりゃ、うまいことごまかさんとな……
なんせ、ここで俺がうまく立ち回らんと、俺たちはまたしても便所コオロギ駆除のバイトに駆り出されにゃならんくなる。しかもバイト代は出ないときてる。
「元からこんなだったんじゃないか。俺には違いがわからんぞ」
作戦その1、元からZOZ団だったと思い込ませる。
そうさ、ハルヒ。これは単にお前の描き間違いなんだよ。
「なに言ってんのよ!SとZじゃ大違いじゃない!あんた、SOS団の団員として、こんな事態を見過ごしていて恥ずかしくないの!」
ZOZ団であることを容認していたのは確かだが、半年以上気付きもしなかったお前には言われたくない。
そもそも恥ずかしいというのなら、こんなしょぼくれたサイトを全世界に向けて配信しているという時点で充分恥ずかしいわい。
ええい、この手は駄目か。なら、作戦その2だ。
「別にこれぐらい、いいじゃねぇか。今更作り直すのも面倒だ」
作戦その2、これぐらい我慢しろと言ってやる。
我慢、か……正直、これほどハルヒと縁遠い言葉もあるまい。
視界の隅っこで古泉の野郎が「もっと上手い説得方法はないんですか?」とでも言いたげな感じに肩をすくめてやがる。
うるせぇ、なんならお前に任せてやってもいいんだぞ。
どうせお前のことだ。
「いやぁ、流石は涼宮さん。我々とは目のつけどころが違いますねぇ」とか、太鼓もち的なおべんちゃらしか言うつもりはねぇんだろうが。
前線を援護する気のない司令部はおとなしく黙ってろってんだ。
「あんたねぇ。これが、面倒、のひとことで片付けられるほど小さな問題だと思ってんの!?あんたには洞察力ってもんがないわけ?」
洞察っつうか、少なくともお前よりは真実が見えているはずだぞ。
だが、ハルヒは決起半年前の大石蔵之助のようにやる気のない俺を置いてきぼりにして、暴走を続けていた。
その結果が、次の発言だ。
「これはZOZ団を名乗る謎の敵対組織からの先制攻撃なのよ!」
……えーっとだな、ハルヒのやつは事務所にやってきた依頼人の細かい挙手動作からプロフィールを的中させるシャーロック・ホームズみたいな得意顔をしているんだが、さて、俺は当の依頼人のように驚きゃいいのか?
それとも名探偵の相棒ジョン・ワトソンのごとく「これが私の自慢の友人だよ」とでも言わんばかりに誇らしげな顔をしてりゃいいのか?
選択権はくれてやるが、いちいち実行に移すつもりはないからな。
っていうかなんだよZOZ団って?
いや、今までさんざっぱら頭の中でZOZ団、ZOZ団って単語を連呼していた俺が言うのもなんなんだが、一体そのZOZ団ってのはどんな組織なんだよ……
『謎の』敵対組織って言ってる時点で本人に詳細を考えるつもりがないのは明白だがな。
「おい、ハルヒ。そりゃ洞察じゃなくて妄「いやぁ、流石は涼宮さん。驚くべき慧眼ですね」
くそ、古泉が俺のつっこみに割り込んできやがった。しかも例によって想像どおりのおべんちゃらだ。
「さすがは古泉くん。キョンと違ってわかってるじゃない」
この件に関して古泉と俺の情報量と洞察レベルはまったく同じだぞ。
あえて一点だけ違いがあるとすれば『ハルヒに逆らっても無駄だ』ということがわかっているかどうかだけだ。
そしてそれはわかっているからといってけっして自慢できるもんじゃない。
そんな俺の冷めた思いを知ってか知らずか、古泉は墨俣城をおっ建てて信長に褒められた羽柴秀吉のごとく、うやうやしく頭を下げていた。
「恐れ入ります。そこで涼宮さん、提案があるのですが、そのような正体不明の存在が我々を狙っている以上、部室でZOZ団の話題を出すのは危険かと思います」
「それは……そうかもね」
「どうでしょう。今日のところは一旦自宅に戻り、そこで各人今後の対策を考えるというのは」
「古泉くん、冴えてるじゃない!キョン、あんたもちょっとは見習いなさい」
確かにこの口からでまかせでお前を丸め込むテクニックは俺も習得したいもんだと常々思っていたよ。
「んじゃ、本日はこれで解散!みんな、ZOZ団なんてふざけた名前を名乗るボンクラ共を引きずり出して、ケチョンケチョンにしてやる方法をちゃんと考えてくんのよ!」
すごいよ、ハルヒ。SOS団がふざけた名前じゃないと思ってるその神経の図太さがな……
「さて、どうしたもんかね」
俺は古泉とふたりして、部室の外の廊下で朝比奈さんの着替え終了を待ちつつ、またしてもハルヒの妄言によって直面させられた己の不幸な運命を愚痴っていた。
「まったく、困ったことになりましたね」
自分で煽っておいてよく言うぜ。このままじゃ俺たちはありもしないZOZ団探しをさせられるハメになっちまうんだぞ……
「その程度で済むのであれば御の字なんですが……下手をすると、涼宮さんは本当にZOZ団を『生み出して』しまうかもしれません」
馬鹿言うなよ。たかがホームページの画像が気に入らないなんて理由で不可思議パワーを使われてたまるか。
「『ただなんとなく』、そんな理由で涼宮さんが能力を発揮した前例はいくらでもありますよ。
秋に桜を満開にしたこともありますし、シャミセン氏に人語を解する能力を付与したこともありました。
自分に敵対する組織を無意識のうちに作り上げるぐらいのことは軽くやってのけるでしょうね」
勘弁してくれよ。たとえどんなZOZ団が出来ちまっても、被害を被るのはハルヒじゃなく、俺と朝比奈さんなんだろうからな。
「ZOZ団が生まれてしまった場合、我々に長門さんがいる以上、ZOZ団にも対抗上TFEIが所属される可能性が高いでしょうね。
そうなれば我々は一国家を敵にまわすよりも厄介な団体を相手にしなければなりません」
長門によれば、長門のお仲間は『けっこう』地球にいるらしいからな。
そのうちのひとりの頭の中をいじくってZOZ団付きのアンドロイドにするのは簡単なことだろう。
そうなったときに俺たちがどれほどの苦労をしょいこまされるのか、想像するだけでも背筋が凍る想いだぜ……
「と、なれば我々にとることのできる対処法はただひとつですね」
古泉は人差し指をピンと立てると、女が相手であればそこそこ魅力的なんじゃないだろうかと思える得意げなニヤケ面でこう言った。
「我々で用意するしかないでしょう。『ZOZ団』を」
翌日である。
俺は古泉が自分のバックボーン全開で作り上げるZOZ団がいかなるものに成り果てるのかが気になって、昨夜はなにひとつできなかったが、
どうもハルヒは喜々としてZOZ団対策とやらを考えていたらしく、授業の合間の休み時間ごとに、やれ合言葉を決めようだの、やれ部室に罠を張ろうだのと、俺の頭痛の種をせっせせっせと大量生産するかのごとく、くだらないアイデアを垂れ流していた。
それはこうして揃って部室に向かう今も継続中で、部室棟につながる渡り廊下でもひっきりなしに話しかけてくる。
「あたしたちのサイトを乗っ取った以上、次にヤツらが狙ってくるものはなんだと思う?」
さあな。案外次のターゲットはお隣のコンピ研じゃねぇか。SOS団なんて狙うよりよっぽど実入りが期待できそうだ。
「そんなわけないでしょう!部室よ部室!次にヤツらが乗っ取りを企てるとしたらあたしたちの部室に他ならないわ!」
コイツには自分自身が文芸部の部室を乗っ取ったという自覚はないんだろうか。
「部室を狙ってくるなら、必ず姿をあらわすはずよね。そのときこそ、ZOZ団をとっ捕まえる絶好のチャンスなのよ」
好きにしてくれ。ただ罠を用意するときに餌として朝比奈さんを使うのはよしてくれよ。
あのひとのノミの心臓は、そろそろ全力でいたわってやらないと異常痙攣の起こし過ぎでマジに潰れかねん。
そんな馬鹿話をしながら部室の前にやって来た俺たちは、ドアごしに朝比奈さんの「あの……その……」という困り果てた声を聞くことになった。
「みくるちゃん!?」
と、俺が習慣としているノックをすることもなく、ハルヒは慌てた様子でドアを開け放った。
「あ、涼宮さんにキョンくん」
開いたドアから俺たちの姿を認めたメイド姿の朝比奈さんは、わりあいと無事な様子でガスコンロの脇に立っていた。
部室には俺たち以外の団員が既に揃っている。
窓際に座る長門。
長机の前に腰掛ける古泉。
そして古泉の正面、いつもの俺の席には俺たちと同年代の見知らぬ女生徒が、ハルヒによく似た不敵な笑みを顔に貼り付けて座っていた。
そいつはどうも北高生ではないらしい。
この辺では見かけない制服を身にまとっている。
「あんた、誰よ」
ハルヒが敵愾心をまったく隠さないいらだった表情でそいつに詰問の声を投げかけた。
俺はといえば、大体予想がついているから落ち着いたもんだったがな。
そしてやはり、そいつの答えは俺の予想どおりのものだった。
「あたしの名前は、善生(ぜんしょう)こずえ。ZOZ団、団長よ」
「あなたが涼宮ハルヒね。はじめまして」
そいつ、ZOZ団団長善生こずえは余裕しゃくしゃくといった顔で挨拶をしてきたが、対するSOS団団長涼宮ハルヒは他人のそういう態度が心底嫌いな人種である。
「なによ、あんた。あたしは知り合いでもないヤツに呼び捨てにされるほど落ちぶれちゃいないのよ!」
「つまんないこと気にしちゃって。人間の器がしれるってもんよ」
「挑発のつもり?おあいにく様、あたしはむかつく相手にはむかついてるってちゃんと伝えることにしてんの。つまんないことをいちいち我慢するなんて馬鹿げてるからね」
「あなたがそれでよくても、周りがそれに付いてこられるのかしら?リーダー向きの性格じゃないわね」
「ふん!おべっかを使わなきゃ人を動かせない、カリスマのないヤツのセリフね」
この二人はよくもまあ初対面でここまでの舌戦が繰り広げられるもんだ。見ろ、朝比奈さんなんて脇で見てるだけだっていうのに、すっかり怯えちまってるぞ。
古泉の方を見れば、この野郎、一応真面目な顔こそしちゃいるが楽しげな雰囲気を隠しきれていないぞ。
それにしてもこいつは、生徒会長のときといい、よくも毎度毎度ここまでハルヒに対抗できるキャラクターを用意してくるもんだ。
「たまたまこっちに来る用事があったんでね。言いたいこともあったんで、挨拶がてら寄らせてもらったのよ」
「ひとりでノコノコやって来るなんていい度胸ね。それとも一緒に来てくれる団員がいなかったのかしら」
「ああ、来させなかったのよ。ゾロゾロと大勢で押しかけるのもマヌケな話でしょ」
こいつらはもうちょっと穏便に話せないもんなのかねぇ。そろそろ止めるか……
「あー、善生さんとやら。そろそろここに来た理由を聞かせてもらいたいんだが」
「話が早くて助かるわ。ズバリ、この部室、あたしたちに明け渡してもらいたいの」
ハルヒの中身をそのまま他人に移し換えたかのようなそいつは、やはりハルヒのような傍若無人なことを言いやがった。
まあ、なんつうかハルヒの予想どおりというか、ハルヒの希望どおりというか……
もちろんハルヒが黙っているわけがない。
「あんた馬鹿!ZOZ団なんてわけのわからない名前のいかがわしい団にこの部室を使わせるわけないでしょ!」
あんまりZOZ団をこきおろすな、ハルヒ。同レベルのSOS団すら同時に辱めている気になってくる。
「『前人未到の王道を往く善生こずえの団』よ。いかがわしいかどうかなんて問題じゃないわ。要はZOZ団とSOS団、どちらがより世界を面白くでき、どちらがより部室を持つのにふさわしいか、ってことよ」
部室を持つにふさわしいのが誰なのかといえば、それは唯一の文芸部員である長門だと思うんだが……
「じゃあ、勝負でもする?言っとくけどねぇ、あたしたちはスポーツだろうが、文芸活動だろうが、ゲームだろうが、なんでも完全無敗の完璧集団なんだからね!」
その活動のほとんどの勝因は長門ひとりのおかげだがな。
「あら?世界をおおいに盛り上げる、なんて言ってるわりには随分と普通な勝負方法ね」
「いちいち腹の立つ物言いね!じゃあ、あんたならどんな勝負方法にするっていうのよ!」
おい、ハルヒ。すっかり向こうのペースに乗せられてるぞ。
この部室は一応文芸部のもので、これまた一応責任者は長門なんだから、あまり軽はずみなことはすんなよ。
俺は暴走しかけたハルヒを心配していたが、さて、善生こずえの方はというと、部室をひととおり見回すと、こんなことをのたまった。
「そうね。間違い探しなんてどうかしら?」
間違い探し。
似たような2枚の絵を見比べて、違うポイントを探し出す子どもの遊びである。
なんだってそんなもんがここで出てくるんだ?
俺の心中の疑問を察したわけでもないだろうが、善生こずえは続けてルール説明をしだした。
「あなたとあたしで、それぞれ特定の人物ひとりづつに『間違い』をひとつだけ仕込むの。それを見破れたほうが勝ち、っていうのはどう?」
「面白そうじゃない。で、その特定の人物ってのはどうすんのよ?」
「そうねぇ。あなたは……古泉っていったかしら?そっちのハンサムな彼。
わたしはそこの冴えない顔の彼に間違いを仕込む、ってことでどうかしら?」
冴えない顔の彼、というのは俺のことなのか?
別に俺は自分の面が格好いいとは思っちゃいないが、初対面の人間にそんなふうに言われる筋合いは無いぞ。
「勝手にうちの団員を馬鹿にしないでよね!あんただってヒトの顔をどうこう言えるほど、冴えた顔でもないじゃない!」
「まあね。ただそんなことたいして気にもしてないから。だから他人にも平気でこんなこと言っちゃうのよ。ご免なさいね、キミ」
善生こずえはそれほど悪いとも思っていない軽い調子で俺に向かって片手をあげた。
そんな俺とZOZ団団長の様子を獲物を見据えるイリオモテヤマネコみたいな顔で睨みつけていたハルヒだったが、やがて自分のすべきことを思い出したのか
「まあ、いいわ!この勝負、受けてやろうじゃないの!二度とあたしの顔が見られないぐらいに完膚なきまでに叩き潰してあげるわ!古泉くん!早速準備よ!」
と、古泉の返事も聞かずに部室を飛び出していった。
「はい。承知しました。それでは皆さん、また明日」
さて、どうやら俺はこれからこの善生こずえとやらに、よくわからん『間違い』とやらを仕込まれにゃならんらしいが……
突然、目の前の善生こずえが試合後の高校球児のような勢いで俺に頭を下げた!
「話の流れとはいえ、失礼なことを言ってしまい誠に申し訳ありません!」
いきなり豹変した態度に、朝比奈さんが目をまるくしている。
そりゃそうだろう。この人の正体を知っている俺でさえ、かなりの驚きなんだからな。
とにかく、朝比奈さんにも真相をうちあけておかないとな。
長門はいいのかって?
長門ならきっと先刻承知だろう。というか長門なら地球人類全員の詳細なプロフィールを把握している気さえする。
「えーっと、朝比奈さん。実はこの人、古泉の仲間なんですよ」
「……あ。そういうことなんですね。あたし、部室に来たら、もうこの人がいて、びっくりしちゃって……涼宮さんとあんなことになっちゃうし」
事情を知らない朝比奈さんとしちゃ、生きた心地がしなかったことだろう。ハルヒの不機嫌のとばっちりを受けるのは大概自分なんだし。
「あらためてはじめまして。善生こずえです」
そう言って、不敵な顔の仮面を外した善生さんは、こう言ってしまっては失礼だがあまり印象に残らない平凡な顔つきだった。
俺は女性を容姿でランク付けするなどというデリカシーのないマネをする気はないが、果たして谷口あたりなら彼女にどういった評価をくだすんだろうな。
「皆さんのおうわさはかねがね聞いています。本名で自己紹介が出来ないのは本当に残念なんですが……」
善生とは、また随分と変わった苗字だと思っていたが、そうか、本名じゃなかったのか。
「今回の任務、イニシャルがZであることが条件でしたから、やむなく偽名を使わせてもらっています。申し訳ありません」
『前人未到の王道を往くZ―――――の団』でZOZ団なわけだからな。
それにしてもこの人、ZOZ団団長という演技をやめると、途端に礼儀正しい少女になっちまうんだな。
とはいえ、これすらも演技であるという可能性もなきにしもあらず、なんだが、そう何重にも疑いをかけていたんでは性善説の信奉者である俺の主義にそぐわないし、第一疲れる。
いい人そうだと思える人は、いい人なんだと素直に思っておくことが心の健康にもよろしいことだろう。
「今回のわたしの仕事はZOZ団団長として涼宮さんの前に現れて、そして勝負に負けることによって穏便にZOZ団を解散させることです。解散といっても実際にはわたしひとりしかいないんですが」
一緒に来る団員がいない、というハルヒの指摘は実は的中していたわけか。
ただ、肝心なのはハルヒにZOZ団の存在を信じさせることであって、実際にZOZ団が存在している必要はないわけだからな。
「ではすみませんが、わたしに協力をお願いします」
そう言って彼女は再び深い深いおじぎをしたのだった。
そうやって彼女が俺に施した『間違い』とは、ごく単純なものだった。
さて、さらに翌日である。
登校してきた俺を待ち受けていたのはハルヒの執拗な追求と
「キョン、とにかく服を全部脱ぎなさい!団長命令よ!」
この言葉だった。
ふざけんな。
「大人しくあたしにすべてをさらけ出しなさい!SOS団が負けちゃってもいいっていうの!」
「だーっ!こんなところに間違いはねぇよ!」
俺は休み時間にはクラスメイト達の生暖かい視線を受けながら教室中を逃げ回り、放課後になったらなったでハルヒの足払いをすんでのところでかわしながら慌てて部室に逃げ込んだ。
こんなに疲れるはめになるとは思わんかった……
「いやぁ、お互い大変ですねぇ」
「まったくだ」
俺と古泉は、俺が机に用意したチェス盤をはさんで愚痴をこぼし合った。
こいつの場合、善生さんの追及を受けることはないんだが、昨日はずっとハルヒに付き合わされていたわけだから、疲労の度合は五分五分ってとこだろう。
いつもならゲームで古泉を負かすことによって僅かながらにストレスの解消をするところなんだが、今日ばっかりはそういうわけにはいかんしな……
さて、その善生さんはといえば、俺が部室に来る前から既にそこにおり、数瞬遅れてハルヒが踏み込んで来たときにはすっかりZOZ団団長の顔になっていた。
それだけのことでガラリと印象が変わっちまうことに、思わず見事なもんだと頭の中で拍手喝采をあげたもんだ。
「もうアタリぐらいはつけたわけ?」
「うっさい。敵に手の内さらけだすようなマネするわけないでしょ!」
「あっそう」
余裕を見せている善生さんだが、別に古泉と内通しているわけではないらしい。
生徒会長を相手どって機関誌をつくったときもそうだったが、機関の連中は実際の行動の際にインチキをしないことがハルヒの退屈を解消させるのにベストだと考えているようだ。
だから俺も、古泉のどこに『間違い』があるのか教えられてはいないんだが……
まあ、このチェスを2局もやりゃ、ハルヒのやつもすぐに気付くだろう。
3局目が終わった。
俺の負けで。
「いやぁ、今日は調子が悪いんですか?また、勝たせていただいてしまってすみませんね」
また、と古泉は言った。
そう、俺は本日、古泉相手に3連敗中だ。
わかってもらえると思うが、当然これはわざとだ。
これこそが善生さんと俺が仕込んだ『間違い』、『古泉相手にチェスで勝てない俺』というわけだ。
外見とかじゃない、なかなかにとんちがきいていて凝った『間違い』だし、これならハルヒも大満足だろう、と思っていた。
こんなもん、いつものハルヒならすぐに間違いと気付くはずだ。
だが、第3局が終わってもハルヒは動かない。
チラッとハルヒの顔を覗くと、ディスプレイの脇からチラリチラリと俺たちの様子を窺っているハルヒはすっげぇ満足っぽい表情をしてやがった。
まるで、自分の思惑がばっちりきまったかのような顔だ。
まずいぞ、こいつは……
今俺たちが陥っている、いかんともしがたい状況に気付いているのは恐らく俺だけだろう。
チェスが得意ではない古泉が、俺の微妙な打ち筋の違いに気付くとも思えんしな。
だが、俺なら古泉のいつもとの違いがわかる。
実は、俺だけでなく古泉の打ち筋もいつもと違うのだ。
恐らくハルヒの仕込みなんだろう。
ハルヒのやつはいつも脇から眺めていた俺の打ち筋から、俺に勝つための定石を割り出し、それを古泉に伝授したに違いない。
俺がチェス盤を用意するのを黙って見ていたのも、それが自分にとって都合がよかったからだ。
俺が動かなかった場合は自分でチェス盤を引っ張りだしゃいいだけだしな、たいした違いでもない。
つまり、ハルヒが古泉に仕込んだ『間違い』は『俺相手にチェスで勝てる古泉』というわけだ。
なんてこった。双方の仕込んだ間違いが重複しちまってるんだ。
これじゃあいくら俺が古泉相手に負けようが、ハルヒは『自分の作戦がうまくいっている』と考えるだけ。
泥沼だ。どうにかならんもんか……
「ねぇ、涼宮ハルヒ」
突然、今までなんの動きもみせなかった善生さんがハルヒに声をかけ、俺たちは何事かと彼女に視線を集中させた。
「なによ」
「あたしだけやることなくて暇だし、ちょっと彼のチェスに口出しさせてもらってもいい?」
「「「え?」」」
偶然かどうか、俺、古泉、そしてハルヒの声が見事に重なった。
俺はあらかじめそんな指示は受けていないし、古泉とハルヒにしたって俺相手の研究はしていても善生さんが相手ならまったく攻略法が通用しない。
「ん?なにかまずいことでもあるの?」
「なにもないわよ!好きにすればいいでしょ!」
というわけで4局目、俺は善生さんの指示どおりに駒を指すこととなった。
一体この人はなにを考えてるんだ?ちっともわからん。
そう思いつつも、俺はひたすら善生さんの言うがままに駒を動かすのだった。
さて、局面が中盤に差し掛かったころだ。
古泉がポーンのひとつを2マス前進させた。
チェスに馴染みがない人にとってはルール違反のように感じられるこの一手。実はルール違反でもなんでもない。
実はポーンはスタート地点から動くときに限り、2マス前進することが許されているのである。
古泉が動かしたポーンは俺の白ポーンの右隣に位置することになった。
「ポーンをそのポーンの後ろに移動。キャプチャリングして」
俺はその指示に従い、ポーンを右斜め前に移動して、古泉が移動させたばかりの黒ポーンを奪った。
「え?ちょっと……」
古泉が戸惑い
「ちょっとなによ、今の!ルール違反じゃないの!」
ハルヒが立ち上がって抗議の声をあげた。
だが、待てハルヒ。お前の言いたいことはわかるが、これはルール違反じゃないんだ。
「なにって『アンパッサン』よ」
「アンパッサン……?」
善生さんの発した耳慣れない単語に、ハルヒが始めて火を見た原始人みたいな不思議そうな声を出す。
「アンパイア?」
朝比奈さん。それは審判です……
「愛と勇気だけが友達の、幼児向けキャラクター」
長門、それアンパンマンだから……
アンパッサンってのはポーンにだけ適用される特殊ルールだ。
相手がポーンを2マス動かした直後に限り、その隣のポーンは斜め前に移動すると同時にそのポーンを掠め取ることができるのだ。
ちなみに『アンパッサン』っていうのは『通りすがり』という意味があるらしい。
まあそうはいっても、実のところこんなルール、俺も昨日善生さんに教わるまで知らんかった。
チェスで手を抜くように指示された後、「念のため」といって、このルールを教えられたんだ。
「ちょっと待って……キョン、あんた今までこんなことしなかったわよね」
「それは関係ないでしょ。今彼はあたしの指示どおりに駒を動かしただけなんだから」
確かに、俺が今までアンパッサンをしなかったからといって今回のことに特に関係はないはずだ。
俺は駒を動かしているだけで、実際に打っているのは善生さんなんだからな。
「そんなことは問題じゃないわ。問題なのはさっきのキョンの一手に迷いがなかったってところ。つまりその『アンパッサン』ってルールをキョンは知ってたってことよね」
ん?これはもしや……
「今までのキョンのプレイから見て、昨日までキョンがそのルールを知っていたとは思えないわ。じゃあ、キョンがそれを知ったのはいつ?ってことになるわ」
こいつ、気付いたぞ!
「それはズバリ、あたしと古泉くんが部室を出た後!つまりこれがキョンに仕込まれた間違い!あんた、キョンにいつもと違う打ち方をするように指示を出したんでしょう!」
ハルヒが人差し指を突きつける先、善生さんはすっかり観念した表情で肩をすくめながら言った。
「お見事……その通りよ」
「ふふん!ほら、見なさい。あたしに勝てるわけがないのよ!」
得意満面って感じだがな、ハルヒ。それはちょっと違うぞ。
善生さんはお前が気付くもっと前からお前の仕込んだ間違いに気付いていたんだ。
そして、それがいかに厄介な問題を引き起こしちまったのかもな。
そして、全部をわかったうえで、お前が正解を導き出せるように誘導したんだ。
なんていうかな、ハルヒ。俺は生まれて初めて『試合に負けて勝負に勝つ』というもんをナマで見せてもらった気分だよ。
「さーて、負けたからにはあたしの言うことには絶対服従してもらうわよ。こっちは部室を賭けてたんだから、そっちは団員全員差し出すぐらいはしてもらわないとねぇ」
「あ、それ無理。他の団員に迷惑かけたくないから本日をもってZOZ団は解散させてもらうわ」
俺たちの思惑通り、只今をもってZOZ団はこの世から消滅した。
「なに勝手なこと言ってんのよ!リスクとリターンは表裏一体!あたしの許可なくそんなことしていいと思ってんの!?」
「じゃあ自力で探し出せたら好きにしていいわよ。どうぞご自由に」
他の団員なんていないわけだから探して見つかる可能性はゼロだが、もし実際にいたとしても一度も見たことのない人間を探すなんてのは、ハルヒですら不可能だってことは理解してもらえるだろう。
「じゃあ、あんた!あんただけでも」
「あ、それも無理。あたし、住所九州だし。ほら、この制服、ちっとも見覚えないでしょ」
善生さんはわざわざ九州から出てきたのか?いや、これは嘘っぱちの可能性もあるか。
「じゃあなんで今ここにいんのよ!?」
「ネットに公開されてるホームページの改ざんなんてどこででも出来るし、今ここにいるのは観光のついでかな」
多分コンピ研との勝負の顛末を古泉から聞いていて、ハルヒが言いそうなことには前もって対策をたてていたんだろう。
実にもって、見事なもんだ。
結局のところ、自分の思い通りにならなかったハルヒはアヒルみたいに口をとんがらして帰ってしまった。
それでも決して機嫌が悪そうでもなかったのは、しっかり勝負には勝てたからだろう。
なんだかんだ言ったって、利益がなくとも勝負事に勝てれば気分が良くなれるのはアイツの美点のひとつだ。
古泉によれば閉鎖空間も出てないらしく、これで万事解決ってわけだ。
「それではわたしはそろそろおいとまさせてもらいます」
すっかり平凡少女顔を取り戻した善生さんは、ゆっくりと席を立ちつつ頭をさげた。
「ハルヒの面倒ごとにつき合わせちまって、どうもすみませんでした」
俺は今回の騒動の発端となった暴走特急ハルヒに代わって彼女に謝辞を述べる。
毎回毎回ハルヒがなにか思いつくたびに、俺はほうぼうへのフォローにまわらにゃならんらしい。
それでも、今回に関しては目の前の善生さんが一番ハルヒに振り回されたカタチだ。
関係者として、心から感謝しておかんとな。
「気にしないでください。ここには長年の疑問の答えがありましたし。来ることができてよかったです」
疑問、ですか?初耳だな、なんです一体?
「機関に所属するようになってから、ずっと考えていた疑問です。
涼宮さんの能力の発現によって、一体誰が一番不幸になってしまったのか?というものです。
涼宮さんの生み出す閉鎖空間の処理に追われる我々『機関』の面々なのか?
それとも機関とSOS団に同時に所属する古泉くんなのか?
あるいは涼宮さんともっとも接する機会の多いあなたなのか?
ずっと考えていたことなんですが、今回ここに来て、ここでの活動の一翼を担うに至って確信をもつことができました」
どうせならそのノミネートに朝比奈さんも加えてください。
朝比奈さんならきっとジャンル別に5部門ぐらいに分割されても、3部門ぐらいで首位を独占できること間違いなしです。
「では朝比奈さんも含めて。
わたしが思うに、そのうちの誰でもありません。
他ならない、涼宮さん自身が一番不幸なんです」
あいつが不幸だって?いつから辞書の『不幸』の項目は唯我独尊と入れ替わっちまったんだ?
「不幸ですよ。
世界平和のため、なんてお題目のせいで信頼している仲間にずっと騙され続けなくちゃいけないんですから」
…………
ま、その点は俺もたまには思わんでもない。だが、だからといってあいつが不幸なのか、っていうとそれも違う気がするな。
このひとは『信頼している仲間』と言ったが、まさしくその通りハルヒは俺たちのことを信頼しているし、俺たちのほうでも団長についていきゃ、ちょっとした苦労と引き換えにとびっきり充実した学生生活が送れると信頼しているんだ。
お互いが信頼しあってりゃ、そこに多少の嘘や隠し事が含まれていようが、そんなもん塗りつぶされちまうもんだ。
それが『信頼している仲間』ってもんじゃないかね。
まあ、こんな恥ずかしいことを口にする気はないんでね、もうちょっと別のことを言わせてもらうさ。
「ハルヒはそんなヤワなやつじゃありませんよ。ちょっとぐらい大人しくなってほしいぐらい、いつもはしゃぎまわってるんですから」
善生さんは俺の言葉をキョトンとした顔をしながら聞き、そこに隠された真意を汲み取ろうとしているようだが、徒労に終わると思うね。
古泉じゃあるまいし、俺は別に自分の言葉に隠された意味だの本当の意図だのといったもんを挿入しているつもりはないんでね。
「いつも一緒にいるあなたがそう言うのであれば、そっちが正しいんでしょうね」
そう言いながら柔らかな笑顔をみせる彼女は、平凡顔などと評価してしまったことを後悔したくなるような魅力をその顔に宿していた。
やばい。俺、顔赤くなってんじゃねぇか?
そんな俺を、自分の尻尾にじゃれつくポメラニアンを見るような顔で眺めていた善生さんだったが、ふいに佇まいを正した。
「では本当においとまさせていただきます。
どうか我々『機関』の思惑なんて気にせず、涼宮さんと仲良くSOS団ライフを楽しんでください」
そう言って、自称ZOZ団団長は俺たちの部室を後にした。
そうだな、あなたのおかげで懸案事項がひとつ消えたわけだし、お言葉に甘えてしばらくは難しいことは考えずに楽しませてもらうよ、善生さん。
さて、冒頭で俺が言ったことは覚えているだろうか?
そう、課題ってのは計画だてて全部片付けなけりゃ、手痛いしっぺ返しをくらっちまう、ってやつだ。
そう、『全部』片付けなけりゃならない。
俺たちはなんとかZOZ団というひとつの課題を片付けた。
しかし、それで全部じゃあなかったんだ、これが……
いや、もう、こっちの課題に関しちゃ存在そのものをすっかり忘れちまってたんだ。
なんせあまりにもくだらないもんだったからな……
「キョン!よく考えたら、サイトのエンブレム、直ってないじゃない!」
そうだった。
まさに一番最初の問題を解決しておくことを忘れちまってたんだ……
「もう、うざったいったらないから、あたし、もういっぺん描いたのよ、エンブレム!
ほらキョン!さっさとサイトに貼り付けなさい!」
やれやれ、長門よ……どうする?
今度は505団とでも描いとくか?
今のうちから苗字の頭が『五』の人間を古泉にピックアップさせとくか……