サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもな  
らないくらいのどうでもいいような話だが、それでも俺があの年に一回しか仕事  
をしない赤服の不法侵入者をいつまで信じていたかと言うとしゃくだが親の言う  
事を鵜呑みにしていたガキの頃は信じていたと言わざるおえない。  
幼稚園に乱入してきた赤服の園長先生を偽物と見抜くのは簡単だったがそれとは  
別に本物がどこかにきっといると思っていた。…いると信じたかった自分がいた  
。  
何にせよ人は成長して行き『子供の夢』をほいほいと捨てながらあるいは知らず  
知らずのうちに落としてあるいは泣く泣く捨てて大人として必要な『常識』とか  
を『子供の夢』の入っていたスペースに押し込んでまた歩いて行くのだ。  
変に大人びていた俺はもう『子供の夢』を全部捨てたんだ、と勘違いしていた。  
親の都合で引っ越してきた新居への感動もなくいわゆる新しい仲間への期待もへ  
ったくれもなく俺は中学生になり、  
森園生に出会った。  
 
−『森園生の憂鬱?』−  
 
「全く最近の子は嫌ねぇ。」  
だから謝ってんだろうがうっせーな。つーかてめぇにも否があんだろ?一方的に  
被害者面してんじゃねっつの。  
と思いながらも顔には出さず誠意溢れる顔で謝る。  
「すいませんでした。こちらの不注意で…お怪我はありませんか?」  
「もう良いわ。待ち合わせに遅れちゃう。」  
そう言うと名前も知らないオバサンは去って行った。  
おっ死ねばーか。  
背中ごしに小声で言った。勿論の事だが気がついていないだろう。  
あーぁ気分最悪だ。やる気しねぇ。帰りてぇ。  
しかし人間つかみが大事なんだよ。よって中学校の初日にサボるわけにもいかん  
。  
親の都合で引っ越してきたばっかりで学校内において頼れる人もいない状況で印  
象を悪くすると何があるかわからん。  
簡単に言うと世の中はお綺麗なものばかりじゃないって事さ。そう言う意味では  
実際大人も子供もそんなに変わらんのだろう。  
ひとくくりでまとめたらみんな馬鹿でアホってなこった。  
はぁ。溜息もでるってもんさ。なんて、転校転校また転校で友達と散々に引き離  
されここまですれたガキになった俺を誰が責められようか。  
 
さて中学校に向かいつまらん入学式をだらだら過ごして各々が各々の教室に向か  
い何となく一年間面を突き合わせる奴らを眺める。大抵の奴がここらへんの二つ  
の小学校からごちゃ混ぜに来たやつららしい。  
適当に「またお前と同じクラスかよ。」などと笑いあっている奴らを眺めている  
と担任であろう人物が入ってきた。  
そして自己紹介を始めた。ぶっちゃけどうでも良い。そんな事より俺の事だ。自  
己紹介でバッチリ決められるか決められないかで今後の俺のポジションが決まる  
。  
担任の自己紹介が終わり生徒の自己紹介に入る。仲間内でしか笑えないギャグを  
やって勝手に騒いだりぼそぼそと聞き取れないあるいは全く面白みのない自己紹  
介を軽くスルーしたりしていると次第に俺の番が近づいてくる…んで俺の番だ。  
緊張するところだ。わかるだろ?  
名前に出身校まで話してキョトンとしているクラスの面々に親の仕事の都合で引  
っ越してきた事、ここらへんにまだ慣れてない事、早くとけ込みたい事などを話  
して席につく。うっすら浮かべた笑みは最後まで絶やさない。まぁ自己紹介には  
慣れている。…嫌な話だがな。  
そして俺の自己紹介が終わり後ろの女の番が回ってくる。  
まぁかなり普通の紹介だったよ。すっげー昔の幼なじみ(何故かすっげー美人)  
との運命的な再会をする事もないし後ろの女が突然電波な事を口走って場の空気  
を変えたりもしない。ついでに変な属性があるわけでもないだろうさ。  
そんな展開は所詮空想の中でしか起こり得ないのである。  
突然に宇宙人の戦いに巻き込まれる事もないし未来人と仲良くタイムトラベルし  
たりなんかないし超能力者にトンデモ空間に連れていかれる事もない。  
現実ってのはそんなもんだ。現実が理想を叩きのめし空飛ぶヒーローを様々な科  
学的な法則で封殺する。1+1=2こそが正しく3や4なんかはお呼びじゃない  
って事さ。  
なんにせよつまらん日常にうんざりしながら過ごす時間は意外と早かった。  
クラスにとけ込むのは簡単だ。ヘラヘラ笑いながら会話に適当に参加すればそれ  
で良いんだからな。男女共にどちらとも仲良くしてもらってますよ。  
朝起きて準備して学校に行って役にたたないであろう授業を受けて休み時間に談  
笑なんかを含んだりする。それが終わったら部活に出てスポーツに青春を捧げて  
帰って色々あって寝る。そんな日々の繰り返しである。  
リプレイみたいな日々を過ごすだけの俺の人生に確変が起こった。  
学校帰りの事だった。その日は頭がやけに痛かったので早退することにした。  
太陽さんさんの真っ昼間に一人でぽつんと帰るのは結構キツいもんだ。頭痛もこ  
たえる。  
ふと頭が真っ白になる。頭痛はもうしない。それどころか妙にすっきりする。  
しかしそれも長くは続かない。凄まじい痛みが頭を襲う。  
 
ナンダコレハ  
 
情報が脳に直接刻まれる感覚。意識が遠のく…  
 
 
 
気がつくと真っ暗な闇の中で俺と同い年くらいの女の子がじっと立っている。  
なぜか一目見た瞬間にわかった。彼女は暗闇のなかに絶望しながら『何か』を待  
っている、と。  
やがて彼女は走り出した。彼女は『何か』を探しているのだと俺はなぜかわかっ  
た。  
ひたすら暗闇をたったひとりで彼女は駆ける。  
そして急に立ち止まった  
「なぜ?なんでどこにもいないの。なんでよ。なんでどこにもいないのよ!」  
その瞬間暗闇だった世界にモノが生まれた。  
民間、ビル、学校、信号、道路…生き物と時間を失った世界が暗闇の中に生み出  
された。  
そして青くうっすらと光りを放つ生き物らしきモノが現れた。ジュルリと音はし  
ないがそんな感じで形を変えてゆく。  
ソレは人の形をとるとその世界を破壊してゆく。ただ純粋に怒りを形にしたソレ  
に俺は恐怖を覚えた。  
しばらく世界が壊されるところを眺めていた。俺の足はガクガクと震えている。  
「もう良いわ。」  
『何か』を諦めたような声がする。その刹那世界が完全に消滅した。  
もうそこには暗闇さえない。ただひとりの少女が悲しそうな顔で立っている。  
頭に直接『何か』を書き込まれる感覚。頭が割れそうだ。痛みに声すら出ない。  
脳に刻まれる真実。世界はひとりの少女を中心に回っている。  
この世界は彼女の自由に作りまた壊す事が出来るものである。  
そして彼女は世界に絶望している。  
知った。知ってしまった。世界の真実を…。  
 
俺は気を失っていたのだろう。何が何だかわからない。全てが恐ろしく思える。  
今この瞬間に世界は消えるのかもしれないのだ。もうこの瞬間に消えて生まれた  
のかもしれない。  
わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわ  
からない。  
うあああああぁぁぁぁぁぁ  
「落ち着いて。大丈夫です。」  
−−−っ!?  
俺と同い年ぐらいの女の子が抱きついてきた。  
なんか…暖かい…  
悲しくもないのに頬を涙がつたう。  
何だか落ち着く。  
何が何だかわからなかったが何だかこうしていたかった。  
そしてしばらくして女の子は急に顔を真っ赤にして俺から離れた。  
「あっえっとごっごめんなさいっ!なんか混乱してたみたいだからえっと…  
よく見るとかなりの美少女である。やべぇめっちやくちゃ可愛い。  
ってかそんな事よりさ、なんって言うか  
「ふふっふっあははははは。」  
俺は笑い出した。久しぶりに本気で心から笑っていた。彼女もまた的外れみたい  
な顔をした後で笑い出した。  
今度はしばらく笑っていた。  
そうしてしばらくして落ち着いてくると  
「私は森園生。あなたを護衛する者です。」  
はい?  
俺は固まるしかなかった。だんだん頭が冷えてきた。  
「あなたは超能力者になったんです。」  
にこにこと森園生なる美少女は語り出す。  
あまりにも唐突な『常識』の切り替え。これってジョークですか?  
「大マジです。」  
なんと笑顔の可憐なことだろう。ああもうどうにでもなっちまえ。  
俺のつまらない日々は確実に面白い方向に進んでいた。…としか言いようがない。  
しみじみと思う偶然だと信じたい。  
 
 

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