パー○ンのコピーロボットというものをご存知だろうか?
簡単に言えばもう一人の自分。
もう一人自分がいれば何をするのも楽になったり、
嫌なことをもう一人に押し付ければ自分は苦労をしなくてすむ。
どこ○もドアに引けをとらない凡庸姓を持った良いアイテムである。
仮に現実に存在するとすれば是非とも手に入れたい代物だ。
だからと言って、イキナリ渡されても困るんだよ。
朝、目を覚ますと俺が居た。
いや、俺とそっくりなもう一人の人間が居た。
「「何が起きた?」」
山彦の様に声が反響する。目の前の俺は目を丸くしてこっちを見る。
俺も同じ顔してるんだろなー畜生。
とりあえず妹が飛び込んできて騒ぎになる前にどうにかした方が良い。
全く同じ思考パターンなんだろう。一瞬のうちにアイコンタクトが成立。
ドアに鍵をかけようと二人してドアの鍵に手をさし伸ばす。
ふと動きが止まる。しかも二人して。微妙にやりにくいな。
こちらが動こうとすればあちらも同じ動きをする。
こちらが止まれば向こうも止まる。
思考パターン、感性、全て丸ごと同じらしい。
やりにくいぞこのやろう。
そんなこんなで鍵を一つかけるのですら5分弱かかった。
最終的にどう決めたかと?二人で閉めたんだよ。
生暖かい男の手。自分のとわかっても気持ち悪い。
ちなみに二人とも左手だ。理由は深く聞くな。
ともあれ分担は難しいと考えた。同じ思考パターンだぜ?
おそらくじゃんけんですら決まらない。
原因を調べる必要があるな。
ふと頭に浮かぶのは長門だ。また頼るのか。
驚くことに、制服は2セット壁にかかっている。
どうやら悩むことなく着る服は確定したようだ。
『同じ』にしなくてはならない世の中の双子の両親の苦労を垣間見た。
急いで着替えて急いで家を出る。自転車は一台しかないから徒歩。
一目散に長門の住むマンションに向かう。
全く話さなくとも何でも進んでいくのはとても楽だなと感じつつ・・・
動じなくなってしまった俺は何が原因か考える。
ハルヒに俺は何か言ったっけ?昨日の放課後を繰り返すが思いつかない。
そうこうしている内に長門のマンションに着く。
長門の部屋番号を押し、長門が出るのを待つ。
『・・・』
「「長門か?俺だ。ちょっと問題が起きた」」
『・・・入って』
ドアが開く。後は長門の部屋まで行くだけだ。
長門の部屋の前に着く。ここまでくればもう慣れたものだ。
インターフォンを押し、長門が出るのを待つ。
「「よう、イキナリで驚かせたと思うが・・・」」
「入って」
俺たちの言葉をさえぎり、長門は部屋の中に招き入れる。
そうだな、中で詳しく話したほうが良い。
長門が驚かないことを見るとこの事象の原因についても解りそうだ。
一安心して部屋に入る。これで解決だな。
ん??何処かで見たことのあるような顔が・・・
「そろそろ来ると思ってた」
そうか、流石長門。俺のやることは全てお見通しですか。
ところで長門さん?この人は・・・
「よう」
頭が痛くなる。3人目の俺が居た。
「特定の人間が複数の人間の望む相手をすることは不可能」
3人の俺は同時に茶を啜りながら長門の話に耳を傾ける。
「同時に複数存在することで全てを満たすことが可能。ならば存在するべき」
解りやすく言って欲しい。
「涼宮ハルヒは貴方の存在が多くの人間に影響を与えていることを把握している」
やっぱり原因はあいつか。で、それがこの俺の増加に関してどういう意味を持つ?
「涼宮ハルヒは貴方を必要としている人間の分だけ、貴方を複製した」
長門の無機質な顔が喜びに満ちているような感じを受ける。
で、現在3名。俺はそんなに必要とされているのか?びっくりだ。
と言うか長門よ。お前も俺を必要としているのか?
完璧超人を完全に上回るお前が。
「違う」
ん?何が違うんだ?
「人数の把握に誤差が生じている」
ああ、なるほど・・・まだ居るわけね。
「貴方たちを含めて、全部で6名」
多すぎだろ。一体誰が・・・
「必要とした人間の傍にそれぞれ配置されている。現在確認できているのは・・・」
えーっと、俺ら3人のほかにそれぞれ朝比奈さん、鶴屋さん、古泉のところに一人ずつ。
って事は俺らもそれぞれの配置があったわけだ。
こいつは長門。是非ともこき使ってやってくれ。まぁ、突き詰めれば俺なんだが。
って事は・・・後の俺らは?
「貴方はオリジナル。全てに制約されない。コピーはそれぞれの配置先の人間の好みに僅かながら変化している」
そういうと俺とは違うもう一人の方の俺に目を向けた。
どうやら俺はコピーだったらしい。それならそれで大人しくしてればいいだけか。
って、待て。俺は誰に配置された偽者だ?
「配置された人間、及びその周辺の人間の意識、記憶も僅かに変化している。貴方が居てもおかしく感じないように記憶の改ざんも」
俺に目を向ける。
「貴方が配置されたのは貴方の妹」