俺がこの高校に入学してから1年が経った。  
俺は相変わらずハルヒが立ち上げた訳のわからない部活、  
・・・とは言えない、いわば団体、SOS団の団員を続けていた。  
 
もっとも1年も団員やっているともはや俺の生活の一部と化し  
今では何という事か自分自身この部活・・・いや団活が俺の一番の楽しみとなってしまっていた。  
勿論メイド姿の朝比奈さんがいるからとかそんな理由ではない。・・・まあそれもあるのだが。  
そして週末には町の内外問わず色々な『不思議』や『超常』を求めて探検に出かけるのがSOS団の日課となっていた。  
そして今週末も。  
 
 「みんなぁー!あたしちょっと小耳に挟んじゃったんだけどね!!」  
 「何をだハルヒ」  
 「何でも空港の近くに幽霊が出るらしいんだって!!」  
 「はあ? そんなの聞いた事無いぞ」  
 「それは初耳ですね団長」  
 「ゆ、幽霊ですかー・・・ もしかして涼宮さん」  
 「そうよそのまさかよ」  
 「まだ『まさか』も言っとらん」  
 「キョンは黙ってなさい、そういう事だから今週末早速調査に行くわよ!」  
 「はいはい、で今週の何曜日だ  
  とりあえず次の月曜日は他の学年の遠足引率で教師がいなくなるとかで休みだが」  
 「そうよキョン、冴えてるわね、その折角の休みを利用するのよ、あーもう、こういう所だけは学校に感謝ね!  
  あ、ちなみにあたし土曜は別の用で行けないから  
  行くのは日曜の夜から月曜の朝に掛けて、そう、野宿するのよ」  
 
ハルヒに俺達SOS団以外の別の用事があるのか?というのはあえて突っ込まないでおく。  
 
 「の、野宿ですかー!? ちょっと怖いですぅ」  
 「・・・・・・野宿・・・・・・」  
 「野宿ってどこでだ」  
 「滑走路の横ー  
  あ、安心して、敷地内には入らないわ、あたし刑務所には入りたくないから」  
 
俺達もだ。  
 
 「まあ解った行くとしよう、で、だ  
  とりあえず詳細を教えてくれ」  
 「解ったわ  
  みんな、あの空港がつい最近まで騒音問題で揉めてたのは知ってるわよね」  
 「・・・・・・知ってる」  
 「はい、ニュースでもよくやってましたから」  
 「そう、でね、昔その空港の近くに住んでた老夫婦がね、騒音に耐えかねて首吊って自殺したんだって」  
 「あれまあ」  
 「あらららららら」  
 「その後その家は古かったので取り壊されたんだけど、そこに別の人が家建てようとしたら  
  必ず『出てけー 出てけー』ってうめき声がするんだって  
  で、そこの土地にはずっと家が建てられないで10年以上経った今もそこは空き地のまま」  
 「なるほど、でその幽霊のおじいさんおばあさんに会いに行こうというわけだ」  
 「そう言う訳、だから解ったわね!!集合時間は日曜夕方5時、北口の駅の改札で!  
  あ、交通費と食事代はキョンの奢りだから」  
 「いつも申し訳ありません、キョンくん」  
 「お世話になります」  
 「・・・・・・・・・よろしく」  
 「またかよ・・・ トホホ」  
 
かくしてまたも俺の出資で週末の街角探検が行われることとなった。  
ちなみに野宿すると聞いて驚いてはいたが、実は最近そんなに珍しい事でもない。  
 
しかしこの探検が俺達の運命を大きく変える事になるとはその時まだ思ってもいなかった。  
いや、正確に言えば本来の目的である探検そのものは特に問題は起こらなかったのだ。  
俺達SOS団はその探検の帰り道の朝に『事故』に巻き込まれる事になる。  
今日は金曜日、4月22日だ。  
 
  ――――――――――――  
 
【月曜・朝】  
 「あーもう結局今日も収穫ゼロだったじゃないのー、あーもうキョンのせいよー」  
 「ダダこねるな、何でもかんでも俺のせいにするな」  
 「まあまあ、団長はいつもこうじゃないですかw」  
 「おい、あきらめるな」  
 「ふぁ〜あ〜〜 眠いですー お家に帰って寝たいですー」  
 「・・・・・・眠い、私も」  
 「んーーそうね、明るくなったら幽霊は出ないわ」  
 
その根拠を教えてくれハルヒさんよ。  
 
 「だから今週の校外活動はおしまい!!さあ帰るわよ」  
 「さあ俺たちどうやって帰る」  
 「んーとね、ここからだったらどこが近いのかしら」  
 「・・・・・・検索中・・・・・・  
 
  ―――川西池田駅がここから西に3分」  
 
俺達って空港から大分離れた所まで来てたんだなおい。  
 
 「川西池田駅ね、じゃあ一旦JRに乗るわよ  
  この辺りってあまり来ないからよく分からないけどとりあえず伊丹で阪急に乗り換えるのかしら  
  まあ良いわ、さあ行きましょう」  
 「おー・・・ ふぁ〜あ〜」  
 「朝比奈さん、眠いんだったら俺がおんぶを」  
 「・・・・・・キョ〜〜〜んーー?」  
 「・・・・・・は、はい・・・」  
 
そして俺達5人は眠い目を擦り川西池田駅へと向かった。  
 
 
その後俺達はすぐに入ってきた東西線直通の快速列車に乗り込んだ。  
座席に腰掛けると俺達は昨晩の疲れがどっと出たのかすぐに眠り込んでしまう。  
そして俺達は本来乗り換える予定であるはずの伊丹を過ぎてしまう事になる。  
 
 「ふぁーあぁ〜〜・・・ 今どこだ・・・  ――って・・・  
 
  おい!!お前ら起きろ、起ーきーろ!!」  
 「!!!え、私達寝ちゃったの?今どこ、え、い、伊丹!?」  
 「大変だ、早く降りないt・・・ あー閉まっちゃった」  
 「・・・・・・次の停車駅は尼崎・・・  
  ――そこで東海道線に乗り換えて・・・」  
 「あーもうこの私としたことが不覚だったわ、  
  仕方ないわ、もうこうなったら有希の言ってるように尼崎で乗り換えましょう」  
 「はい、解りました、では私はもう一眠り」  
 「何言ってるのみくるちゃん!?次寝過ごしたら加島御幣島海老江新福島北新地!!  
  間違って京都まで行っちゃったらどうするの!?」  
 「ごめんなさーい(泣」  
 
ハルヒ、お前よくそんな細かい駅名覚えてるな。俺は阪急線くらいしか知らないよ全く。  
 
 「それにしてもこの列車スピード出てるわね」  
 「どうも少し遅れているようですね」  
 「まあ別にどうって事は無いんじゃないか?このくらい普通だろ」  
 「んーん・・・むにゃむにゃ」  
 「寝るなみくるーー!!(ポカッ)」  
 「ごめんなさい涼宮さーん(泣」  
 「・・・・・・・・・このままだと大変な事になる」  
 「え、どうしたの有希?」  
 
 
その時だった。  
 
  ―――フワッ。  
 
 ギギギギーーーーーッ!!!!!!!  
 
俺達の体重が無くなった。  
座席から落ちる乗客、つり革を持っていなかったために倒れる乗客、宙に浮かぶ乗客。  
 
 「ちょ、何よ!?何、何なの!??」  
 「どうなってるんでしょう、うゎっ」  
 「古泉さん!?大丈夫ですか?」  
 「大丈夫」  
 
すると今度は物凄い重力が俺の体に掛かる。  
 
 「うゎあああああああああああっ!!?????」  
 「キョーーーン!!」  
 「ハルヒーーーーーーーーーー!!」  
 
俺は軽々と車両の端に飛ばされる。  
ハルヒと長門と朝比奈さんと古泉の声が遠くなる。  
 
 「キョン!!キョーン!!」  
 「キョンくん!!」  
 「キョン!!」  
 「キョンくん!!」  
   
俺はそのまま車両の連結部に叩きつけられる。  
・・・痛い、物凄く痛い。  
朝倉さんの時の比じゃない痛さだ。  
体の節々が痛む。  
やがて視界が真っ赤に染まる。出血しているのだ。  
 
 
ハルヒが必死に俺に呼びかけている。  
しかし声を返す気力が無い。  
かくして俺は気を失った。  
 
 「キョン!! しっかりしなさいよキョン、キョン!!キョン!!キョーーーーーーーーーーン!!!!」  
 
 
 
――――そう、俺達SOS団は国内はおろか世界をも震撼させた『あの』事故に巻き込まれたのだ。  
 
 
――――――――――――  
 
 
 「・・・・・・ぅ・・・ うーん・・・  
  ――――!! 皆は大丈夫!?」  
 「私・・・は・・・ 大丈夫ですよ、涼宮さん・・・ 痛っ・・・」  
 「みくるちゃんは無事なのね! あーもう折角のメイド服がー! まあみくるが無事ならそれで良いわ」  
 「・・・・・・・・・何とか生きてる」  
 「有希も無事なのね!!良かった・・・ホントに良かった」  
 「私も・・・大丈夫ですよ・・・・・・ ちょっと体痛みますけどね」  
 「古泉君も無事なのね――― って、ちょっと!!腕がとんでもない方向に曲がってるわよ!!!  
  痛くないの?!」  
 「まあ痛いですけど・・・ それよりキョン君のほうが」  
 「そうよキョンよ!!!  
  キョン!!キョン!!起きなさい、起きなさいって!団長の命令を聞きなさい! キョン、起きろって言ってるのが」  
 「駄目ですよ団長、キョン君の息はかなり弱まっています」  
 「・・・・・・・・・気持ちは解る・・・・・・ でも無理に動かすのはキョンの為ではない」  
 「そんなぁ・・・ キョン・・・ キョン・・・・・・  
 
  もう!!キョンがこんなに大変だってのに救助はまだなの!?何やってるの!?」  
 「救助か何かは知らないですが外には既に人が来ているようです」  
 「かなり騒がしいです・・・」  
 「・・・・・・ヘリコプターの音がする」  
 「でも私たちの車両は90度傾いちゃってますよ、救助が来るのは時間が掛かりますねこれは」  
 「90度傾いてる!? え? じゃ私たちの座ってるのは」  
 「割れた窓ガラスの上です、あ、団長は扉横のポスターの上みたいですね、安心して」  
 「安心ですって!? 安心なんか出来ると思ってる!?」  
 「・・・・・・落ち着いたほうがいい、涼宮」  
 「落ち着けですって!? キョンや皆がこんなだってのに! 落ち着けですって!?  
  あんたねえ、キョンや古泉君みたいに怪我してないからそんな事」  
 「涼宮さん・・・ 背中、有希さんの背中」  
 「背中!?   
 
  ―――――有希・・・」  
 「凄い数の破片ですね、ごめんなさい、ちょっと僕でも気持ち悪く・・・うぷっ」  
 「有希さん!大丈夫ですか、痛そうです、かなり痛そうですよ、破片を抜いたほうが」  
 「今ここで破片を抜くのは私の体の為にも朝比奈の体の為にもならない  
  私は大丈夫」  
 「・・・・・・ゴメン、有希、こんな時にひどい事言って」  
 「問題ない」  
 「・・・・・・・・・・・あ、ああ、あぁああ」  
 「どうしたのみくるちゃん」  
 「私達の・・・ 周り・・・・・・」  
 「周り・・・・・・?  
 
            ――――――――・・・・・・・・・・・これって・・・」  
 「――死体がいっぱい・・・・・・・・・ っ・・・うっ・・・ ううう・・・」  
 「あまり見ないほうが良い、目の毒になる」  
 「ちょっとこれは・・・・・・ 団長も見ないほうが」  
 
 「・・・何なのよ、・・・・・・何なのよこれ・・・  
 
 
   ―――――何なのよこれはぁーーー!!!!」  
 
 
   プルルルルー!! プルルルルー!!  
 
 「―――はい、・・・はい、―――はい、解りました」  
 
  『古泉さん、今のは機関からですか!? まさか閉鎖空間の出現』  
  『もっと大変な事になっているようです  
   外の様子も変です、外にいる人達の声調も先ほどと変わっています  
   恐らく神人が出現して暴れだしているのかも知れません  
   このまま放っておくとさらに深刻な事態になります』  
  『こんな時にそんな事って・・・・・・』  
  『・・・・・・乗っていた列車が転覆するという通常ありえない事態、  
   周りを死体に囲まれた車内、  
   そして何よりもキョンが生命の危機に直面しているという状態、  
   それでいて救助が来ない脱出も出来ない、神人出現はこれら様々なフラストレーションが合わさった結果によるもの』  
 「そんなぁ・・・ 涼宮さん、落ち着いてください涼宮さん!!」  
  『無駄、今の涼宮ハルヒは他人の言葉を聞き入れる余裕が無い』   
  『こうなったら仕方ないですね、乱暴なやり方ですが涼宮ハルヒを失神させます』  
  『・・・止む終えない』  
  『有希さん、古泉さん・・・』  
  『心配しなくていい、殺す訳ではない』  
  『有希さん・・・・・・  
 
   ・・・・・・ホントごめんなさい、涼宮さん・・・』  
 
 
 
 「団長、ごめんなさい、ちょっと眠っててもらいます」  
 「何y――  
 
    ドゴッ!! ウッ!! ・・・・・・バタン」  
 
 
 
 「・・・気絶したようだ、閉鎖空間の拡大も収まった」  
 「神人も消滅したようですね」  
 「古泉さん、腹に膝蹴りなんて酷過ぎます!!」  
 「ゴメンなさい、腕が使えたらもっと良い方法があるんですけど」  
 「あ、そうでしたね、腕が・・・ ごめんなさい古泉さん」  
 「いえ良いですよ、それよりこれからどうするか」  
 「ホントにどうしましょう・・・・・・  
  このままだとキョン君が・・・・・・ キョン君・・・」  
 
 
   ギュイーーン!! ガガガガガガガガ・・・・・・ ギュギュギュギュィーーン!!!!  
 
 
 「乗客の皆さんお待たせしました、救助隊です!今助け出しますからね!!」  
 「救助隊が!! 救助隊です皆さん!!!」  
 「すみません、僕達は大丈夫ですからキョン君を」  
 「その方は重症ですか!?」  
 「息はありますが意識不明です、一刻を争います」  
 「解りました、――すみません担架をこっちに! 患者は男性!意識不明の重体!一刻を争う!!  
  出来るだけ近くの病院にお願いします!!」  
 「「「了解!!」」」  
 「そちらもひどい怪我ですね・・・ あなた達も一緒の救急車に乗ってください、連れですよね」  
 「「「はい」」」  
 「あの、そちらに倒れている女の子は」  
 「ああ・・・  
 
  団長、団長、起きてください」  
 「――ん・・・うん・・・ぅぅう・・・・・・  
 
        ―――!!!!  
  キョンは!? キョンはどうなったのよ!!キョン!!」   
 「涼宮さん、大丈夫ですよ!安心してください」  
 「・・・・・・今救助隊が来ている、キョンは今先ほど救急車に乗せられた  
  私たちも付き添いを兼ねて今から救急車に乗る、涼宮も早く準備をして欲しい」  
 「キョンは救急車の中なのね!? わかった、行くわ」  
 「では早くお願いします、皆さん救急車はこっt・・・うぁっ!?」  
 「すみません!!○△通信のものですがインタビューお願いします!」  
 「□※新聞社です!!事故が発生した時の状況について詳しくお聞かせください!!」  
 「☆◇放送です、8時間ぶりに救出された感想を!!」  
 「あ、すみません僕達も病院に行かなければ行けないんで・・・」  
 「通してください!!お願いです、通してください!!」  
 「・・・・・・通して・・・」  
 「少しだけでも良いんでお願いします!!」  
 「夕方のニュースで流したいんですよ!!」  
 
 
 「あんた達ね!! 死にかけのキョンが救急車の中で私達を待ってるのよ!!  
  インタビューとか取材とかヘリ飛ばす暇があったらあんた達も救助手伝いなさいよ!! どけ!バカ!」  
 「そういう事なので、では失礼します」  
 「失礼します、ごめんなさい」  
 「・・・・・・・・・」  
 
――――――――――――  
 
【20:00 尼崎市内の病院】  
 
 「・・・・・・っ・・・ うっ・・・ うう・・・涼宮さん」  
 「大丈夫よみくるちゃん、それにしてもさっきのマスコミは最低ね  
  こっちは命の瀬戸際なのよ」  
 「・・・・・・しく・・・ へっく・・・ うう」  
 「思う存分泣きなさい、でも私とみくるちゃんは奇跡だったって医者が、  
  私は腰と腕の打撲で済んで、みくるちゃんは切り傷12箇所でしょ」  
 「・・・・・・でも・・・キョン君と古泉君と有希さんが・・・」  
 「―――そうよね・・・  
  有希と古泉君は意識がはっきりしているからまだ良しとして・・・・・・   キョン・・・・・・」  
 「涼宮さん・・・・・・ ハンカチ」  
 「ありがと・・・ ゴメンねみくるちゃん・・・」  
 
 「大丈夫でしたか、お二人とも」  
 「・・・・・・」  
 「有希さんに古泉さん!!」  
 「有希!!古泉君!!結局どうだって!?」  
 「長門さんは背中に80針のけが、でも破片は完全に取り除きましたから大丈夫です」  
 「80針!?」  
 「有希!!大丈夫!?ホントに大丈夫なの?」  
 「大丈夫、問題ない」  
 「それで古泉さんは・・・」  
 「僕は左腕を複雑骨折で全治4ヶ月、あと右足の大腿骨骨折で全治2ヶ月です」  
 「全治4ヶ月!?ちょっと、古泉くん!」  
 「まあ幸い利き腕じゃないほうだったんで良かったですw」  
 「・・・・・・にこやかにいう事ではない」  
 「アハハ・・・ ってか一番心配なのはキョン君なのでは」  
 「解ってる、解ってるわよ、そんな事・・・」  
 「結局キョン君は・・・」  
 
 「すみません、お連れの方ですか」  
 「「「「あ、はい」」」」  
 「こちらへどうぞ」  
 「「「「・・・はい」」」」  
 
――――――――――――   
 
 「・・・・・・えーとですね、こちらの方先ほどICUからこちら一般病棟に移しました  
  本当は是非ICUに入れて置きたいんですが」  
 「じゃあ何でICUに入れないのよ!! キョンが死んだらどうしてくれるの!!」  
 「いえ、こちら側も職員総動員でさらに近隣の県内外問わず各病院からも職員医師看護婦を集めて  
  出来る限りの体制で治療を続けてまいります  
  ICUに入れておけないのは先ほどの事故現場から更に症状の重い患者が次々運ばれてきているからなんです  
  ・・・いわゆる『トリアージ』です、大変申し訳ないです」  
 「「「「・・・・・・・・・」」」」  
 「それで・・・ キョン君の病状はどうなんですか」  
 「極めて深刻です、恐らく今夜がヤマでしょう」  
 「うううっ・・・!!」  
 「・・・・・・落ち着いて、涼宮」   
 「そんなにひどいんですか、キョンくん」  
 「頭蓋骨骨折に肋骨や背骨を複雑骨折ですね、  
  ただ幸いにも脳内に損傷はありませんでした、それだけが唯一の救いです  
  ただ、山を越えたとしても、このまま意識が戻るかどうかは解りません」  
 「あの、僕たちにできる事は」  
 「声を掛けてあげてください  
  キョンくん・・・ ですか、キョンくんの意識が回復する事を祈って声を掛けてあげてください  
  それだけでも結構効果があります」  
 
 
 「キョンくん!!キョンくんはここなの!?」  
 「「「「!!」」」」  
 「ねえハルにゃん!キョンくんは大丈夫なの!?生きてるの!?」  
 「・・・・・・生きてるわよ、大丈夫、ほら、キョンは生きてる」  
 「まさか一人で来たのかい」  
 「そうだよ、でもお母さんもお父さんもすぐ来るって  
 
  ・・・・・・あのね、12チャンでやってたの、  
  忍○まつけたら画面の上にね、事故で病院に搬送された方って出ててね、  
  そこにね、そこにね・・・ そこに・・・ キョンくんの・・・・・・   だから・・・ 貯金箱壊して、電車に乗ってね・・・」  
 「・・・・・・言わなくていい・・・ 大丈夫、キョンはきっと良くなるから」  
 「うぇーーん!!」  
 「・・・・・・いい子だよ、キョンは大丈夫だから」  
 「バカキョン・・・!! あんたね、わざわざ可愛い妹さんが貯金箱壊してまで一人で病院来たのよ・・・・・・  
  だから起きなさいよ、妹に声掛けなさいよ・・・ 何でも良いから声掛けてやりなさいよ・・・・・・  
  声掛けてよ・・・ キョン・・・」  
 「団長、そろそろ病室に戻りましxy」  
 「いい、私、キョンの妹と一緒にキョンのそばについてる  
  古泉君も有希もみくるちゃんも今夜は病室に戻りなさい  
 
  ・・・・・・ホントにゴメンねみんな、私が幽霊探しに行こうなんて言ったばっかりに」  
 「そんなの関係ないです涼宮さん!! 私たちは行きたくて行ったんです!!」  
 「僕もですよ団長」  
 「・・・私も」  
 「・・・・・・ありがと、ホントにゴメンね・・・ ゴメンね」   
 「では僕達は一旦病室に戻ります、でもまた夜中にでも来るかもしれません」  
 「涼宮さんも体に気をつけてください」  
 「では私もこれで失礼します、もし何かあった時はナースコールで呼んでください」  
 「どうも有難うございます、  
 
  じゃあ有希、みくるちゃん、古泉くん、またね」  
 「「「おやすみなさい、団長」」」  
 
 
 
 「ねえハルにゃん・・・」  
 「なーに」  
 「ハルにゃんはキョンくんのことがすきなの・・・?」  
 「!!! ちょ、な、何言ってるのよいきなり!  
  年上にそういう事訊いて良いと思ってるのアンタ!!」  
 「でもね、寝ているキョンくんに一生懸命に声かけてるハルにゃん、とても悲しそうだったもん」  
 「そ、そりゃ当然よ!!だって折角のたった5人しかいないSOS団の部員だもん、  
  しかも元々は私が企画練ったせいでこんな目に遭わせたんだもん、責任感ってのがあるでしょ」  
 
 「本当にそれだけなの?」  
 「そ、それだけよ・・・」  
 「さっきね、古泉くんが言ってたんだよ  
  ハルにゃんが気を失ってるときにうわ言でずっとキョンくんの名前叫んでたって」  
 「え!?私がキョンの名前を!?  
  ってかそういや何で私気失ったんだろ・・・ あ、そうよ、いきなり古泉くんに足蹴にされて」  
 「その事も謝ってたよ、団長にとんでもない事をした、ああ後が怖い、って」  
 「そ、そう、  
  まあ今度の探検のときに全部古泉君に奢って貰うって事で・・・・・・  
 
 
  ―――そうよね・・・ 探検どころか活動できないのよね・・・・・・  
  みくるちゃんも・・・有希も・・・私も・・・古泉くんも・・・・・・   ―――キョンもあんなボロボロ・・・  
  もし・・・ もしキョンが・・・・・・死んだら・・・ 死んじゃったら・・・ SOS団は解s」  
 
 「ハルにゃん、今度の探検の時はあたしとシャミも連れてってね」  
 「あ、アンタ・・・」  
 「SOS団は解散しないよ、だって死なないもん、死んじゃったりなんかしないもん、  
  キョンくんは・・・ あんなのだけどあたしのお兄ちゃんは強いんだもん・・・ そんな事くらいじゃ死なないもん!!  
  それにいつも楽しみにしてたんだもん・・・!SOS団の活動」  
 「!!!」  
 「キョンくんはいつもあたしに話してくれてるんだ、今日はみくるのメイド服が可愛かった、  
  古泉くんと将棋して負けた、今度は勝ってやる! 有希が今日は珍しく恋愛小説読んでた  
 
    
 
  ―――ハルヒにはブレーキがついてないから俺がこれからもブレーキになってやらないといけない、って」  
 
 
 「キョン・・・・・・!  
 
 
  ―――そうよ、私にはブレーキが無いのよ、私欠陥品だからブレーキが無いのよ!!  
  だから! だから私にはキョンっていうブレーキが必要なの!!  
  これは有希でもみくるちゃんでも古泉君でも駄目なの!! キョンじゃないと駄目なの!!  
  だから、ねえキョン、キョン戻ってきて、戻ってきてよ!!  
 
 
     ――――戻ってきなさいよ早くーー!!!」  
 「・・・ハルにゃん、あたしちょっと古泉君のところ行ってるね」  
 「あ、ちょっと!!  
 
                    ねえ、 ・・・・・・キョン・・・」  
 
――――――――――――    
 
 【22:00 古泉・長門病室】  
 
  《今日は時間を延長してお伝えしてまいります  
  《福知山線で起こった脱線事故はこれまでに350人以上が救出され、うち少なくとも40人が死亡、  
   その他に怪我などでこれまでにおよそ250人以上が兵庫県内、一部大阪府内の病院に入院しました  
  《車内にはまだ多数の乗客が閉じ込められており救出活動が続いています、現場から神戸放送局の・・・  
 
 「・・・これはまだ増えますね」  
 「そういや私たちは何両目に乗ってたんでしたっけ」  
 「・・・・・・多分先頭」  
 「あぁ・・・・・・ 見事に曲がっちゃってますね・・・これ」  
 「でも、あれ?  
  私の記憶が正しかったら確か2両目に乗ったと思うんですけど」  
 「あの映像見る限り僕達の乗ってた車両は先頭だと」  
 「・・・・・・1両足りない・・・」  
 「「え?」」  
 「あの型の車両は7両固定のはず」  
 「そういえば僕達の乗った列車は7両でしたね」  
 「えーと、あのビルに巻きついてるのが1両目、その後ろに斜めに脱線しているのが2両目と3両目、  
  それで線路の上に4両目5両目6両目・・・・・・  
 
   あれ? 」  
 
 「あと1両どこいったんでしょうね・・・・・・」  
 
 「・・・・・・」  
 「・・・・・・解析不能」  
 
 
   コンコン  コンコン  
 
 
 「はいどうぞー」  
 「みんな、来たよー、入ってもいい?」  
 「・・・・・・おいで」  
 「あ、妹さん! おいでこっちおいで」  
 「キョンくんの所にいなくて良いんですか?」  
 「大丈夫だよ、ハルにゃんがいるもん  
 
 
   ・・・・・・ねえみくるちゃん、あのテレビのニュースってまさか」  
 「・・・古泉、チャンネル変えt」  
 「・・・・・・いい、お願い、つけててよ」  
 「良いんですか、ちょっとショックが強すぎるかも知れませんよ」   
 
 「良いもん、だってみんなはついさっきまで実際にあの中にいたんでしょ」  
 
 「「妹さん・・・」」  
 「・・・・・・」  
 
 「見たい、あたし、みんながどんな目にあったかみたいんだもん」  
 「「「・・・・・・」」」  
 
           ―――――  
       ―――――  
   ―――――  
 
 「・・・・・・ひっく・・・ ぅぇーん・・・」  
 「泣いちゃいましたね・・・やっぱり」  
 「朝比奈さん、ティッシュを」  
 「あ、はい、ほら、涙拭いてね」  
 「ん・・・ありがとう」  
 「・・・・・・落ち着いた?」  
 「うん、ありがとう有希ちゃん、  
 
 
  ―――ねえみんな、みんなはSOS団の事好き?」  
 
 「「!!」」  
 「ど、どうしたの妹さん」  
 「そのまんまの意味、みんなはSOS団大好き?」  
 
 
 
 「解っちゃいましたよ、僕、妹さんが何言いたいか」  
 「え? 古泉くん・・・?」  
 
 「今回の事故で涼宮ハルヒが団長としての自信を失っている  
 
  もしこのままだったらSOS団を解散しなければいけないとハルヒが発言した、そんな所ですか」  
 「そ、そんな!!SOS団解散ですか!?」  
 「・・・・・・」  
 
 「すごい、わかっちゃったね、古泉くん、その通りなんだ、  
  ハルにゃんがね・・・ 今のハルにゃんがハルにゃんじゃ無いんだ」  
 「「「・・・・・・」」」  
 「あたしね、あんなハルにゃん見たくないの、  
  ハルにゃんにはいつもの元気なハルにゃんでいて欲しいの、だからこの部屋に来たんだ  
 
  ねえ、解散しないよね、SOS団は解散しないよね? ねー・・・!」  
 
 
 「しませんよ、安心してください」  
 「私卒業まで、いえ卒業してもずっとSOS団の団員でいますから」  
 「・・・・・・解散、それは不可能」  
 「もし団長が解散だ解散だってわめきだしても私はイヤでもしがみ付きますよ」  
 「これでも・・・・・・ 最近わたしメイド服着るのが楽しみになってきちゃったんです」  
 「・・・皆のいるSOS団の部室が一番落ち着いて本が読める」  
 
 「でもね・・・ もし・・・ キョンくんが」  
 「・・・・・・キョンが何」  
 「キョンくんが・・・キョンくんが」  
 
 「死なない・・・ キョンは」  
 「何で・・・ 何でそんな事が言えるの?」  
 「死なないで欲しいと皆が願うから」  
 「キョンくんがSOS団を愛しているからです」  
 「死なないとわたしが信じているから」  
 
 「・・・・・・みんな・・・ みんな・・・・・・    うわああああん!!!」  
 「・・・大丈夫、みんなここにいるから」  
 「さあみんなで団長とキョンくんの巣へ行きましょうか」  
 「おー!!」  
 
 
 「静かにしてください!!今11時ですよ!!」  
 
 「「「「・・・ごめんなさい」」」」  
 
 
――――――――――――  
 
 
  ・・・ねえキョン、私が始めてアンタと出会った時の事覚えてるわよね  
  あの時アンタ目をぱちくりさせて私のほう見て  
  ・・・まさかそれから私とキョンがこんな事になるなんて思っても無かったわよ  
    
  ――そう、私はアンタの言葉をヒントにSOS団結成を思いついて  
  それでアンタを無理やり引っ張り込んで部員にして・・・  
  あんたは嫌がってた、SOS団に入ることを・・・  
   まあ当然よ、私のワガママに付き合わされるなんて皆ゴメンでしょ  
  でもアンタは何故か毎日毎日部室に着てくれた、まあ私が圧力掛けたのは大いにあるんだけどw  
 
  それでも結局何だかんだいってキョンは私についてきてくれた  
  こんな我侭で自己中な私にもついて来てくれた  
  そう、野球の大会の時だってアンタは私の為にメンバーを集めてきてくれた  
  ああ、毎週末の校外活動、その資金もほとんどアンタ持ちだった、そして今回もそうだった・・・  
 
  ・・・・・・私って本当にみんなに迷惑ばかり掛けてたんだね  
  その中でも一番迷惑掛けてたのは他の誰でもない、キョン、そう、あんたよ  
 
  そうそう、可愛い妹さんから聞いたわよ、  
  「ハルヒにはブレーキがついてないから俺がこれからもブレーキになってやらないといけない」って言ってたんだって?  
  アンタも結構キザったい所あるのね  
 
  ・・・・・・キョン、さっき言った言葉は訂正  
  ・・・私、これから頑張って自前でブレーキ作るから、それを自分の体に着けるから  
  だからこれからはキョンが私のブレーキになってくれなくても良いの、そばに居てくれればそれで良いの  
  ずっとそばにいて欲しいの・・・  
 
 
 
  私ね・・・ 大好きになっちゃった、キョンの事が・・・  
 
 
  ねえ、だからお願い神様、大好きなキョンを私から奪わないで  
  お願いだから・・・ ねえ、お願いだから・・・・・・  
    
    
 「神様はそんな非情な方ではありませんよ」  
 「・・・キョンがこの世から奪われたら私たちが奪い返す」  
 「あ、あんた達!! いつからそこにいたのよ!!」  
 「そうですね、ほとんど最初からいました」  
 
 
 「団長、容易くSOS団を解散しようとか言わないで下さい」  
 「ちょ!!あんた達・・・ ・・・妹さんから聞いたのね」  
 「涼宮さん!!私、涼宮さんたちと離れたくないです」  
 「キョンくんが死んだらSOS団解散、  
  じゃあ死ななければ解散しないって事です、キョンくんは死なない、だからそれはありえない事なんです」  
 「・・・・・・私はSOS団に入ったお陰で少しずつ感情が芽生え始めてきた  
  だからSOS団が無くなってしまえば私のプログラムがどうなるかが解らない」  
 「ねえハルにゃん、みんな大好きなんだよSOS団もハルにゃんも!!  
  キョンくんだってそうだよ!  
 
 
   キョンくんだってハルにゃんやSOS団のこと大好きなんだよ!!」  
 
 「―――キョンが!! キョンが私のことを!?」  
 「『俺がこれからもブレーキになってやらないといけない』なんてよっぽど好きでも無い限り言えませんからね」  
 「だから、ね、ハルにゃん、SOS団を解散するなんて言わないで、お願いだから・・・ うぇええん」  
 「みんな・・・・・・  
 
  ごめんなさい、心配かけるような事言って・・・・・・  
 
 
  ・・・そうよ!!私は『世界を大いに盛り上げる涼宮ハルヒの団』の団長、涼宮ハルヒ様なのよ!!  
  大いに盛り下げてどうするの!盛り上げないと!!盛り上げないと!!!!」  
 「わーいいつものハルにゃんだー!!」  
 「これでこそ団長ですよ」  
 「涼宮さん!!これからもどんどん色んな服着せてくださいね!!」  
 「まっかせなさーい!! どんどん私が着せてあげる!!」  
 「・・・・・・これで安心して本が読める」  
 
 
 「あんた達ーーー!! 今1時よ!! なに騒いでんの!!」  
 「「「「「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」」」」」  
 
 
 
 「・・・・・・ん・・・ ぅる・・・ さい・・・ ぞ お前・・・・・・ ら」  
 
 
 「「「「「!!!」」」」」  
 
 「キョン!!キョン!!解る!? 私よ涼宮ハルヒよ!!解る!?」  
 「・・・・・・ハルヒ・・・ 何・・・・・・ やってるんだ・・・ おまえ・・・・・・」  
 「キョンくん!キョンくん!!あたしだよ、わかるー!?」  
 「お前・・・ 何でこんな所に・・・・・・」  
 「キョンくんが!! キョンくんが目を覚ましました!!」  
 「すみません、今すぐお医者さんをお願いします」  
 「・・・・・・早くして」  
 「は、はいわかりました!!!今すぐ!!」  
 
 「は・・・ はぁ・・・・・・?」  
 
俺が目を覚ますとびっくり仰天、なんとハルヒの顔がすぐ目の前にあるではないか!  
しかも何故妹までいる!?  
俺はどこだ、どこにいるんだ?! 何、病院だ!?何故病院にいる!?  
ってかやっべーな、ハルヒの顔を間近で見たせいで心臓がバクバク言ってやがる。  
 
 

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