本日の、私、長門有希による涼宮ハルヒ、並びにSOS団の目視対象観測は完了した。
今の観測対象は、情報統合思念体のオートトレーサーによって、場所のみ把握されている状態である。
休日である本日の活動は、もはや恒例と成っているSOS団による地域探索であった。
町の喧騒から離れ、一人に戻ると、私の頭にノイズが走る。
3年間より以前、スタンドアローンで待機していた私には無かったノイズ。
SOS団で彼女らとともに過ごすようになってから走るようになったノイズ。
そのノイズの正体は判っている。
いわゆる『別離』に伴う感情の揺れ動き。
例えば、周囲の情報を操作、今日の昼の情景を再現、
自分も含めて『それ』をエミュレートするのは容易だが、
数秒たたずに自分は『それ』を『作り物』だと理解してしまうだろう。
どれほどプログラムを精密に組んでいても。
そんな時、私は決まって、有機生命体に可能な能力を利用する。
ただ、彼らの名前を列挙するのだ。
涼宮ハルヒ。
朝比奈みくる。
古泉一樹。
そして…あなた。
そうしてから目を瞑ると、記憶から今日の昼の情景、
さらにもっと前の情景、共に過ごした時間の記憶が蘇って来る。
万物が流転しても、その一瞬は永遠。
そうしてから再び目を開くと、そのノイズは消滅する。
例えまたノイズが発生しても、再び先ほどの手順を踏めば良い。
明日、また会えること。
その事そのものが、とても貴重な奇跡。
近頃はその様に、『思える』のだ。