ハルヒは俺の腕の中で、身もだえしながらすすり泣いている。  
 毎回そうだが、たぶん相当痛いんだろう。  
「……キョン、あんた、あたしのこと好きよね……?」  
 その顔でそのセリフは反則だぜ、ハルヒ。  
「……ああ」  
 俺はもう正気じゃないからな。  
「俺はお前が好きだ……」  
「……もっと言いなさい……」  
 締めつけるな。痛いんだろ?  
「ハルヒ……好きだ!」  
「あたしも!あたしも好きよキョン!!大好き!!」  
 そんな死ぬほど恥ずかしいセリフをお互い連呼したような気がする。  
 くわしくはおぼえていない。  
 いいさ、どうせまた夢になっちまうんだ。  
 
 
 ならなかった。  
 
 
「ああ、ゆうべはお疲れ様でした。それとも、おめでとうございますと言うべきでしょうか?」  
 そのニヤケ顔をしまって、とっとと説明しろ古泉。  
「閉鎖空間は、もうひとつの現実と言うべきものです。いつ元の世界と入れ替わっても不思議ではありません」  
「俺はハルヒにはめられたってのか」  
「いえ、涼宮さんにとってもこれは思わぬ収穫といったところではないでしょうか。長門さんからお聞きでしょうが……」  
「いーや、なにも聞いちゃいないね」  
 長門は最近冷たくて、今日は口もきいてくれない。  
「ははあ……それでは、最初からお話ししましょう」  
 
「先々週、SOS団みんなであなたの部屋にお邪魔した時のことをおぼえていますか」  
「ああ」  
 ハルヒのやつ、エロ本を探して部屋中かき回しやがったんだ。  
 結局水着グラビアぐらいしか発見できなくて、アヒル口のまま帰っていったわけだが。  
 だいたい、小学生の妹を持つ兄である俺が、そのような不埒な物体を所持しているはずがないだろ?ハルヒ。  
「口止めされていたのですが、実はあの後涼宮さんは、谷口・国木田両氏の家に行き、あなたが退避させていた品々をすべて没収したのです」  
 な、なんだってーーーー!!!!  
「お気を確かに。不可抗力ですよ。長門さんには誰も隠しごとはできません」  
 長門……お前か……!!  
「あなたの蔵書は現在、長門さんのマンションに保管されています。まあ、あなたは最近それどころではなかったでしょうが……」  
「おい、まさか……」  
「ええ、おそらく涼宮さんは、あなたが雑誌などで欲求を満たしていることが我慢できなかったのです。そのために毎晩閉鎖空間の中であなたに体を差し  
出していたのでしょう」  
「お前、よくそんなセリフを真顔で言えるな」  
 しかし事実は古泉の言うとおりで、このところ毎晩ハルヒは閉鎖空間を生み出し、そこで毎回俺と一線を越えていたのだった。  
 それも毎回毎回手を変え品を変え、実に様々なパターンでだ。  
 おびえてかじりついてくるハルヒを落ち着かせようとして仕方なく。  
 眠り姫状態のハルヒ相手に万策尽きて。  
 ハルヒの言う「好奇心」に付き合わされて。  
 課せられた罰ゲームだったり。  
 夜のプールで水着のハルヒに迫られてなしくずしに。   
 保健室に忍び込んでふざけあっているうちになりゆきで。  
 屋上でパンツはいてないハルヒに誘惑されて抵抗できずに。  
 宿直室のシャワーを使っていたらハルヒが入ってきてうやむやのうちに。  
 ハルヒに押し倒されて無理やりというパターンもあった。  
 教室で課外授業と称するものを受けさせられた時もあったな。  
 どんな妄想の世界だ。  
 長門や古泉がハルヒの仕業だと保障してくれなければ、とっくに自分の正気を疑っていたところだ。  
 そして毎回常にハルヒは処女で、俺はいつも「やっちまった」という気分になるのだった。  
 というか、処女が男を押し倒すってのはどうなんだ。  
 そして毎回朝になると全部なかったことになるんだが……ゆうべに限って、それが現実の出来事となってしまったというわけだ。  
 
「今回涼宮さんは、夢で終わらせたくないと考えたのでしょう。あなたが一体何をしたのか僕にはわかりませんが、よほど涼宮さんはお気に召したのでし  
ょうね」  
 ひとつふたつ心当たりはあるが、お前に話してやるつもりはない。  
「もしそうなら、世界はゆうべ作り直されたということになります。もっとも、世界に含まれる我々にはこの仮説を検証することはできませんが」  
「古泉、お前はやっぱり役立たずだな」  
「それとも、こういうのはいかがでしょう?ゆうべに限ってあれは閉鎖空間などではなく、あなた方二人は単に夜の校舎に空間移動しただけだった……」  
「おい!!」  
「いずれにしても検証は不可能ですがね。少なくとも確かなことがひとつだけあります。あなたは、今夜からはゆっくり眠れますよ」  
「ああ、それが唯一の救いだ……」  
 ハルヒのおかげで、ここんとこずっと寝不足だったからな。  
「それはそうとしてですね」  
「なんだ」  
「あなたの蔵書は、いささか偏っていませんか?」  
 大きなお世話だ。  
 
 帰り道、ハルヒは俺に指を突きつけた。  
「今日はもうダメよキョン、まだ痛いんだから」  
 すまん。  
 しかしハルヒは小声で続ける。  
「……つづきはまた明日。じゃ!」  
 ハルヒは駆け出し、呆然と立ちつくす俺を振り返って。  
「でも!縛ったりするのはもう禁止だからねっ!!」  
 待て!何を叫んでるんだ!!  
「……キョンくん、やっぱり、縛るのが好きなんですか……?」  
「うわっ!?聞いてたんですか朝比奈さん?あんなハルヒのでたらめを真に受けちゃダメですよ!」  
 ていうか、やっぱりってなんですか?  
 ……まさか朝比奈さんもマイコレクションを!?  
 朝比奈さんっ!!  
 
 
 そしてその夜。  
「気がついた?」  
 ……長門?  
 ここは一体なに空間なんだ?  
 なんで地下牢みたいになってるんだ!?  
 そこに並んでるロープとか首輪とか通常使わないような医療器具とかはなんなんだ!!  
「あなたの所有している書籍・DVD等を総合的に分析した結果、涼宮ハルヒがあなたの嗜好のすべてを満足させることは不可能と判断した」  
 長門はおごそかに宣言した。  
「こんどはわたしのばん」  
 
 
 終了(いろいろな意味で)  
 
 

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