『涼宮ハルヒの平和維持活動』小ネタ
「うう、キョン……」
「持て余すよう、うう」
日課の開始ね。写真立ての裏からキョンの写真を取り出す。
「キョンの味がするうぅぅ」
ほんとは染み込んだ自分の唾の味だ。知ってる。でも問題ない。
実物のキョンにあたしの唾を飲ませればあたしの味がキョンの味だ。
もしくはキョンをキョンの味がしなくなるまで舐ればいい。
物事の順序がちょっと前後しているだけだ。問題ない。
抱き枕を股座に挟み込む。ここで、うん、今日も有希の視線を感じる。
でもやはり問題ない。感じることが重要なの。イマジンするの。事の実際はどうでもいい。
有希に見せつけてると思うと興奮する。いい、興奮いい。ちがう、おもしろいの大好き。
「ううー。キョンーンンーンーンンー」
ベッドをごろごろ転がる。
「ンーンー、ングッ」
ベッドから落ちた。運動いい。楽しい。おもしろい。
でも、そろそろ一人運動にも飽きてきた。カロリーも無駄だ。地球にやさしくない。
地球か。どうすればいいのかな? イマジンイマジン。
そうだ、誰か言ってた、イマジンすると世界平和にも役立つらしい。
地球のためにみんなでイマジン。地球いい。地球のおかげでがんばれる。
「おいハルヒ、これはどういうことだ」
「あのね、キョン。大事な話があるの」
「それはさっき聞いた。地球がなんとか言ってたな」
「……… 黙れっ!!」
黙った。キョン黙った。黙るキョン好き。
目隠しして手を縛られたキョンも好き。しかも黙ってる。どうしよう。
「スンスン、スン」
まずはキョンの髪の匂いを嗅いでみる。
ううー、キョンの匂いがする。欲しい、キョンの枕欲しい。
「なあ、地球の何だかと今のおれの状態に何の関係があるんだ」
「いいから。いいわよね? うん、いい」
キョンの髪の毛を口に含んでみる。
「………ぐふぅ」
「どうしたっ!?」
うう、これは危険ね。デンジャーデンジャー。いきなりハードルが高かったわ。
「あたしね、地球の平和について本気出して考えてみたの」
「それでね、秘訣はカロリーだと思ったのよ」
次は首筋に挑戦。スンスン
「おい、ハルヒ。なんか話が繋がってないぞ。とりあえずおれのことは置いておいて、いや、
放置されても困るんだが。カロリーと平和がなんだって?」
「ううー」
「……なぜそこで唸るんだ。だいじょうぶか。体調が悪いのか」
そして脇。だいじょうぶかな。気絶するかもしれない。
スンスンスン
「ハルヒ、何かしゃべってくれ。こっちは目隠しされてるんだ」
うう、だめ! 運動! 運動したい! する、運動する。
ゴロゴロした。制服汚れちゃった。制服キョンに汚された。
「キョン、口を開けて。そうしないと地球が危ないの」
キョンが嫌々口を開ける。何か言いたそう。キョン、嫌々なキョン。
恥ずかしい。顔を近づける。緊張する。
「はふー ふうー」
キョンの口にあたしの髪の毛を入れてみた。すぐ吐き出された。
つまんない。がんばったのに。キョンは地球がどうなってもいいのかな。
「なんだなにがどうなってるんだ! ……おれはそろそろ怒るぞ」
「待ってキョン。あとちょっとだけ待って。これで最後よ」
手がワキワキする。社会の窓をこんにちわ。
「!?」
キョンは身じろぎするだけで何も言わない。どうして? あたしこんなことやってるのに。
さて、トランクスから身を引っ張り出さないと。あれ? なにこれ?
まだダメ。匂い禁止。鼻禁止。ちょー禁止。気絶するかも。
何か出てくる。ふくらんでる。おっきおっき。なに? 出てくる。ビンと出てきた。
しまった。
ここから出てくるものは一つだけだった。この至近距離はまずい。
びっくりして息を吸い込んでしまった。大失敗。
「ぎゃあああっあああああああっああああああああああああああああっあああああああああ」
「どうしたっ!?」
気絶した。キョンにゆすられてすぐ目を覚ます。
でもキョンの股枕で寝てたせいで、目を覚ました直後にまた失神した。
ふくろ枕危ない。ゼロ距離危険。この枕ほしいほしい。
「ぎゃああああああっああああああああああああっあああああああああああああああああっ」
ひょいっと掴んじゃった。今度はキョンが気絶した。顔が真っ青だ。
掴んだ手の匂いを嗅いでみる。何も匂わない。物足りない。
でも慎重にならないと。二人揃って気絶しちゃう。どうしようかな……
……うん、気絶しよう。すきすきっ! おもしろいのすきっ!
キョンのトランクスに、真正面から顔をダイブ。きんたまクッションに着地。
「あっ、あうっ、うううー」
脊髄がピクピクする。頭が真っ白。キョンの顔も真っ白。泡吹いてる。
地球救出作戦は失敗したけど、また無駄にカロリーしちゃった。
でも、キョン枕でしあわせ。
<おしまい>