梅雨も明け、テストも終わり、夏も真っ盛りとなったその金曜日、  
…このクソ暑い日の午前中に、なぜ修了式などという行事をやるのか…  
まあそんな事は良い。その午後、部室には俺とハルヒ、その二人しか居なかった。  
 
珍しい事もあるもんだ。いつもは最低でも長門は居るものなのにな。  
「図書室…」と言って、席を外してからまだ帰ってきていない。  
まあ、途中で熱中症にかかるなんてことは無いだろうから、  
単に新たに借りる本を本棚の前で探しているだけなのだろう。  
 
マイスウィートエンジェールこと、朝比奈さんが居ないのには正直落胆さえした。  
そちらはそちらで、三年生の学校関係の行事らしい。何なのかはしらん。  
重要なのは、ここにはお茶を汲んでくださる本家イギリスのエマさんもびっくりなメイド様が居ない。  
ただそれだけだ。  
 
古泉はどうでもいい。アイツに何があるかなんて、まったくもってどうでもいい。  
 
とにかくだ、ハルヒは窓から外を眺めていた。…俺の存在は無視か。  
まあそんなこともどうでもいい。そこでハルヒが岡部を見つけちまった事…  
そこから事件が始まったんだからな。  
 
「ねえ、キョン、岡部が団体引き連れて何かやってるわ」  
「何だ」  
「分からないから『何か』って言ってるんじゃない。あんた、やっぱり足りないわね」  
ああ、どーせ俺は今回の試験でも赤点スレスレを駆け抜けましたよ。  
「どれ、ちょっと見せてみろ」  
そう俺が言うと、ハルヒは少し立つ場所を横にずらして、俺に場所を譲った。  
俺は遠慮なくそこに立ち、ハルヒの目線と同じほうを向いてみた。  
 
「…ああ、ありゃあれだ。中学生の学校案内だな」  
「何で分かるの?」  
「そりゃあの制服には見覚えがあるからな」  
そう、岡部が連れてる集団は、俺の母校であるところの制服を纏っていた。  
と、すれば、この時期恒例の行事、高校選びのための参考会とやらに決まっている。  
 
つくづくと思う。あの時もう少し北高以外の高校をしっかり見ておけばよかったと。  
そうすれば、このようなトンデモな女と出くわすようなルートを回避できたのではないか。  
俺もそんなイフを考えてみたりとかはするのだよ。  
 
…まあどうせ、そんなイフも指向性核弾頭付きミサイルことハルヒに対しては、  
日本のミサイル防衛システムのごとく無力だろうけどな。  
「ふーん…」  
そういうとハルヒは表情を変えた。  
俺の勘が告げるところによれば、この顔は何かを企んでいる顔だ。  
…正直何かまで分かれば、もう少し都合が良いんだがな、  
残念な事に、そこまで俺はハイスペックに出来ていない。  
 
 
そして次の週。  
もう夏休みに入った週だってのに、奴は俺たちを呼び出しやがった。  
って言うか朝比奈さんは三年なのにこんなとこに居てて良いんですか?  
いくらハルヒ優先とはいえ、受験勉強とかは…しなくても良いのかもなあ…  
某タイムパトロールは圧縮学習できたし。  
正直俺はクーラーの効いた部屋で麦茶を飲みつつ高校野球でも観戦していたいのだが。  
「そんなステロタイプなことをしてるからいつまでもキョンはキョンなのよ!」  
ああ、ステロタイプ結構。改革を求めてむやみやたらに最新型に飛びつくと、  
思わぬ欠陥品を売りつけられないとも限らないしな。  
特に某大型電気メーカーとかはな。  
「ふーん…ひょっとしてあんた、アレ買って懲りた口?  
ま、仕方ないわよねえ、でもね、新型を買うときには、その『リスク』を背負うのも面白いのよ!」  
…俺は欠陥品を押しつけられてまで面白がりたくは無い。  
「で、今日の集まりは一体何だ。また合宿か?」  
「合宿はまた後!今はこれよ!」  
そう言ってハルヒが取り出したもの。それはプリンターから出力された、  
大学が高校生向けに、新規受験生を大々的に募集するための宣伝的行事であるところの  
「オープンキャンパス」の文字がでかでかと書かれた印刷物数枚であった。  
 
「みくるちゃんも今年三年でしょ?そろそろ受験する大学を決める頃なわけ。  
そのためには実地調査は欠かせないわ。特にオープンキャンパスはね。  
だから、我々も是非この機会に、行く大学を考えるため、これに参加しましょう!」  
「大変良い考えかと。部員思いのその行動、僕は喜ばしく思います」  
太鼓持ちは黙れ。そもそもオープンキャンパスってのは目星を付けた大学に行く物だろう。普通は。  
とはいえ朝比奈さんのため…ってとこは良いことだ。  
おそらくハルヒ史上、あの北高祭のバンドに匹敵するぐらい良い事だ。  
だがハルヒ、お前絶対楽しんでやってるだろ。  
「いいじゃない、楽しくて人のためにもなる、一石二鳥とはこのことよ!」  
「わ…わたしもいきたいと思っていましたし、良いと思います」  
「そう」  
そうか。ならば何もいうまい。  
いえ、例えこの酷暑が大焦熱地獄であろうとも、朝比奈さんの御下命と有らば、俺はどこまでもお供しましょう!  
 
と、いうわけでその日、色々な検討の末に選ばれたのは、S大学というまあ少し遠目の大学だった。  
ハルヒのさまざまな助言に基づく朝比奈さんの意思…って、また何か未来的なことは有りませんよね?  
「うふ、本来なら、その質問自体が禁則事項ですけれど…今回は違いますよ。  
ただ、見学してみたい学科があるだけです」  
「へえ…でも正直、朝比奈さんが『今』の学科に興味を示すということからして意外ですね」  
「ふふ、逆に『今だから』分かる事って言うものも、あるんですよ」  
はあ…確かに、19世紀のケンブリッジ大学にしろ、オックスフォードにしろ、  
今とはまた違ったことを教えていて、それが参考になる事もあるかも知れませんね。  
 
んでそのオープンキャンパスは次の日からとなっている。  
…ってか何か知らんが、どう言う訳だか色々と急に決まるな、おい。  
「きっとこれも涼宮さんの意思なんでしょう」  
したり顔で話すな古泉。  
「我々SOS団と一日たりとて離れず、何かをやっていたい…そう思う彼女の意思、  
それが反映された…そう考えたほうが楽しいでしょう?」  
俺はもう少し休みが欲しいがな。  
「まあ、実際に一緒に行動したい人は…」  
それ以上の事を口にしたら、俺はお前の下あごをガゼルパンチでぶち抜く。  
「まあ良いですけどね。実はこの大学は、私の興味のある教授が在籍している大学でもあります。  
いずれ見学を兼ねた会見に行こうと考えていたところだったのですよ。  
いやいや、まさにタイムリーですね」  
ほう、それは都合がいいことだ。  
…怪しげなドクター・モローとかじゃないだろうな。  
 
「んで長門はここで良いのか?」  
一応全員の意見が一致していないと、気にな  
「いい」  
長門はミリ単位で頭を下げ、俺の考えが形になる前に即答した。  
その反応速度は俺の経験上では最も早かった気がする。  
「この大学には膨大な蔵書がある」  
「それは他大学に貯蔵されていないものが大半」  
「特に東洋哲学系の蔵書は世界でも髄一を誇る」  
「その他の蔵書を誇る他大学との連携も確か」  
「それが私がこの大学を好む理由」  
…そうですか。  
としか言いようがないくらいの速度で長門はこれだけの事をまくし立てた。  
長門さん、やっぱり基準は本なんですか…?  
 
「じゃあまた明日で、駅改札に、9時集合!」  
とのハルヒの一言により、その場は解散となった。  
 
 
そしてまた次の日。  
例によって30分は早くついた俺が何故だか最下位となり、  
電車代を支払わされたのは言うまでもない。  
…やるじゃねえか、流石に今回は効いたぜ、ハルヒよ…  
でもな、俺だって今日に備えて、バイト代を引き落とすぐらいの備えはしてきたんだぜ、  
それぐらい痛くも痒くも無いわっ!  
 
って負けてるじゃん俺。  
 
「ふーん、ここがS大学ね!良い所じゃない!」  
ああ、確かに。坂がないだけでもウチの高校よりマシだな。  
「あ、あそこでパンフレット配っていますよ」  
「なるほど、そしてあの首からかける札、それが入場章みたいですね」  
「…」  
明らかに学生のバイトと思われる方々が、パンフレットと首かけを配っていた。  
まったくこの炎天下、ご苦労様です。  
「じゃあキョン、貰って来なさい!5人分ね!」  
んで何で俺なんだ。  
 
全員分の名前および学年および学校名を記入した俺は、  
五人分のパンフと首かけを持ってきた。  
色鮮やかなグラビア印刷で分厚く印刷されたそれは、流石に重い。手にずっしりとした重みが感じられる。  
バイトの先輩方だって三冊位しか手には持って居なかったぞ。  
ったくハルヒめ。  
「わあ、綺麗…ご苦労様ですキョン君」  
いえいえ、あなたのためならばそれが百科事典全集であろうとお持ちしますよ。  
「ありがとうございます」  
お前は自分で取りに行け。  
「…」  
長門はヒョイとそれを取ると、まるでいつもの厚物の様に読み出した。  
「…面白いか?」  
「ユニーク」  
そうか。  
「ふーん…この本を見る限り、学部学科は申し分なさそうね」  
お前はそこだけしか見とらんのか。  
「だってもう色々下調べはしてきたもの」  
「だったら俺たちはここに何をしに来たんだ」  
「こなけりゃ分からない事を調べによ。決まってるじゃない」  
確かに偏差値や学科内容、カリキュラムは調べれば分かるが、  
立地条件、交通の便などは実際に来て体験して見ないと分からん。  
受験生諸君、もしこれから大学を受験するならば、必ず一度は大学に来ておく事だ。  
必ずや、得るところがあるだろう。  
「先ずは…お腹すいたから、学食行きましょう!これも来ないと分からないしね」  
…あー、何だ。これじゃあれやこれや考えた俺の方が馬鹿みたいじゃないか。  
 
んでだ。俺たちは今、学食に居る。  
当然、俺の奢りだ。  
…何故だろう。今回については俺は何も悪い事をしていないのだが。  
「アンタが選んだのが最後だからよ。だからこれは待たせた皆に対する罰金!」  
…そうか。つーか古泉。お前位は遠慮をしろ。  
俺が選んだのはおろしハンバーグサラダつき。肉は体の資本だからな。  
古泉はなんたらのムニエル。カッコつけやがって。  
朝比奈さんはサラダと小さいご飯だけ。  
…朝比奈さん、それで大丈夫なんですか?俺に遠慮とかしてませんよね?  
「あ、わたし、いつもお昼はこのくらいがちょうどなんです」  
そうですか。でしたらよろしいのですが。  
んで長門は学食の定番、具の無いカレー。  
皆は知っていただろうか。学食でカレーが浅い皿に盛られるのは、具のないことを隠すためだという事を。  
俺もついこの間、とある漫画で知ったばかりだ。  
ハルヒは明らかに行き当たりばったりで、いろんなおかずをトレーに並べている。  
…朝比奈さんを少しは見習え。女の子は一般的に小食の方が可愛らしく見えるものだぞ。  
俺はどうでもいいが。  
 
ドレッシングを選んだ所で、どこに座るかをあれやこれやしていると、  
向かいからおとなしめの色彩のアロハを着た、大学院生らしき人が俺たちに声を掛けてきた。  
「お、キミたち、見学に来たのかい」  
首からかけてるを札を見たらしい。やや大柄で、妙な落ち着きの有る人だ。  
襟元にアクセサリーか、金色のタイピンが付いている。  
「ええ、ここ、面白そうな大学ですね」  
ハルヒが、おしとやかモードでそれに受け答えする。  
「ああ、そうか、面白そうか。いいね、確かにここは面白いところだよ」  
ハルヒの目が一瞬光を放ったのを俺は見逃さなかった。が。  
「学食も充実しているしね。そのクオリティは相当いい方なんじゃないかな」  
「カレーは?」  
その後のセリフに対する長門の食いつきの方が早かった。  
「カ…カレーかい?」  
「そう」  
「えーと…あー、食べ比べとかは、した事ないけど、それもかなりレベル高いと思うよ、うん」  
気持ち引きながら彼は答えていた。  
そりゃそうだろう。ふつうカレーの味の良し悪しを、見学生が聞いてくるなどとは思わん。  
「そう」  
しかし長門の大学の基準には、「カレーの味」もあったのか…  
 
それを聞いた長門はもう一度カレーコーナーに行くと、もう一杯カレーを持ってきた。  
俺はそれを追いかけ、あわてて支払ってきた。一応『全部』奢りらしいからな。  
長門は支払う俺を無表情でじっと見たが、感謝の気持ちは伝わってくる。  
 
いつもお世話になってるからな。これ位の事はさせてくれ。  
 
さて。飯を食い終わった後は別行動となった。  
…いや、正確にはこうだ。  
「あの…わたし、学科を見学に行くので、先に失礼しますね」  
朝比奈さんは、量に若干比例した速度で一番に食べ終わると、席を立った。  
「では僕も。教授のオフィス・アワーが近いので、早めに向かっておくとします」  
と古泉は言うと、空にした皿を流しに持っていった。  
「…じゃあ」  
長門はあっけなく空にしたカレー皿二枚を、トレーに乗せると、図書館の方角に消えた。  
ハルヒは目の前の皿と格闘中で、あんまり周りを見ていなかった様だ。  
「おいハルヒ、皆行っちまったぞ」  
「へ?」  
顔を上げたハルヒは、きょろきょろした後、返却台のところに居る三人を見つけると、  
「みんなー、終わったら、校門の前に3時ね!」  
と声を張り上げた。  
…って自由行動可なのかよ。  
「キョンはあたしと一緒に来なさい」  
そう思った俺に対して、また顔を皿に戻したハルヒは宣告した。  
「どこへだ」  
「部室よ!」  
…まさか、入学もしていない大学の文芸部を乗っ取ろうというのではあるまいな。  
「違うわよ、いい、サークル活動も大学を見学に来たときじゃないと分からないの。  
だから、それを見学に行くのよ!高校のときはそれを忘れてたから、一から作ることになったし。  
そもそもこの大学の『面白さ』は、さっきの人も保証してくれたわ!」  
そうか。だがさっきの人の言う「面白い」は間違いなくお前の「面白い」とは絶対別物だろう。  
おそらく学問的な何かだ。そんな雰囲気だったしな。  
しかもこんな夏休みの時期にサークルなんてやってるのか?  
 
…と思ったんだがな。  
 
やってるし。目の前で、ダンスだかリフティングだか良く分からないものが展開されている。  
すげー器用だ。まるでボールが足に張り付いているみたいだな。  
こっちの足かと思えばまた次の足、胸でトラップした後は足もとに落として、  
また上げる。上げたボールを背中でトラップ、頭の後ろから手に回して…  
俺とハルヒは、思わず見入ってしまった。  
「…」  
目が合った。何だかお互い気恥ずかしくなり、  
俺はハルヒの手を引くと、そそくさとその場を後にした。  
 
そのほかにも、向こうからはアカペラの練習が聞こえてくるし。こっちではバスケだ。  
ラクロスと言う大学ならではのスポーツの練習もされている。高校でこの部があるところは珍しいだろう。  
「うーん、何か違うのよね…」  
こいつは何を求めているのか。その他運動関係のバリエーションは十分だと思うぞ。  
「やっぱり文科系のサークルかしら」  
 
こんどこそ誰も居ないと思っていたのだが、こっちにもそれなりに人が居る。  
大学の講義棟に比べて、明らかに安普請のぼろいコンクリート、そこが文科系サークル棟だった。  
ボロさに関しては、ウチも人のことは言えないがな。  
「キョン、こんなもの見つけたわよ」  
どうやら新入生用のパンフレットらしい。ボロく成ってはいるが、一応読める。  
今年の年度が入っている事から、今年版だということは分かる。  
「キョン、どこから見て回る?」  
やっぱりミステリ研とかオカルト研とかか?  
…ねえな。UFO研究会とかがあるが。  
「へえ…そこならもう異星人とファーストコンタクトを実現してるかもしれないわね、行ってみましょう!」  
…もう既にファーストコンタクトを果たした人間が約4名程居る所に所属して、一体全体何が不満なんだろうか。  
 
しかしその試みは一枚の張り紙であっけなく終わった。  
『インフルエンザのため、活動休止』  
「あー!もう、何よ!仮にもUFOを研究しようとか言う所がそんな体たらくでどうするつもり?  
インフルエンザウイルス位、撃退できるようになっておきなさいよ!」  
俺に怒られても知らん。張り紙に怒るのも違うだろ。ましてインフルエンザウイルスを撃退できるのは  
全人類でも精々お前位なものだ。…もう一人くらいは居そうな気はするが。  
「次!次行くわよ!」  
 
次に俺が行った先は、現代…なんたら研究会だ。ハルヒが適当にページを捲って  
指差しただけの所だったため、よく分からん。名前も無駄に長いし。  
だが、今回は無駄足しないで済みそうだ。中から人の気配がする。  
しかしノックをしてドアを開けた俺を迎えたのは…  
やたらたくさん有るアニメ絵のポスターと、  
弁当を食べているメガネをかけた、細身のスーツ姿の男の人、  
それと何だか普通そうな人…こっちは普段着…だった。  
 
…何故スーツ?就活とやらだろうか?  
「お、見学か?」  
「い、いえ…何ていうか…」  
明らかにアニメポスターの雰囲気に押されたハルヒは言葉を失ってしまい、俺が応対する事になった。  
「ここって何をしてるところなんですか?」  
尋ねてきて無礼だと思うが、よく考えてみればパンフレットにも活動内容は載っていない。  
「えーと…何ていうのかな…オタク?の集まるところだよ」  
もう一人の普通そうな人が答えた。  
「そ、そうですか…で、では失礼します」  
呆然としているハルヒを引っ張ると、同じようにアニメポスターが張ってあるドアを閉めた。  
 
そのほかにもデスメタル部とか光画部とかがあるが…  
…正直俺は帰った方がいい気がしてきた。これ以上居ると色々場違いな気がする。  
特にこのサークル棟の周辺は。  
 
「…やっぱり無いわね」  
サークル棟から離れて、正気に戻ったハルヒは、結局唯一の収穫であったところの、  
新入生用のパンフレットを一から捲るとそう言い放った。  
「何がだ」  
「アンタにも分かりやすくいえば、今の『SOS団』みたいな部よ」  
「そうか」  
そりゃそうだろう。宇宙人未来人超能力者が揃っている部など普通あるものか。  
でもコイツも一応現状に満足してるんだな。  
俺はそれを聞いて、少し安心した。  
「そうね、やっぱり作るしかないわね」  
が、しかし、その余韻に浸る暇も無く、俺は再び猛烈にイヤな予感がした。  
「作るって…SOS団をか?」  
この大学に?俺にもう一度あの高校の一年目をやれと?  
流石に今度こそは異世界人まで登場しそうな気がするぞ。  
 
…もう登場した気がするのは気のせいだよな?  
 
「そうよ、まずみくるちゃんをこの大学に潜入させて、地場を固める。  
そこで私たちが入学して本格的に立ち上げるのよ!」  
「お前、ちょっと待て。それだけのために団員全員の進路を決め」  
俺が必至で説得を開始しようとしたその時。  
 
「キョン君〜」  
「おや、もう来てらしたのですか」  
「…ただいま」  
奴らが戻って来た。それも満面の笑みで。  
いや、長門だけは普通なんだが、何だか楽しそうな雰囲気は感じられる。  
「やっぱり、あの学科は私たちの時代で言うタ…いえいえ、なんでもないんですっ!  
わたし、この大学を第一志望にします!」  
なんと。  
「いや、いい時間を過ごせました。あの獣医学の教授、アフリカの扮装で来られた時には  
流石に度肝を抜かれましたが、話の内容自体は実に面白かったです。是非ここに進学したいですね」  
ここってどこだっけ…本州?それとも…  
「…図書館の蔵書は必要にして十分。カレーも及第点。私がここに来る理由としては完璧」  
…冗談だよな。  
 
あ、そうだ、俺の偏差値ではここは無理だ。  
そう言った俺に、ハルヒは200ワットの笑顔でこう言い放った。  
「大丈夫!私がこれからは毎日、家庭教師してあげるから!  
感謝しなさいよ、受験までにはアンタの偏差値を、東大に入学できる位までは上げてあげるから!」  
 
…えーと、ひょっとして、『ドラ○ン桜』にでも続くのか?  
 
 
終わり  

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