わたし、喜緑江美里は今まで真面目に生きてきました。  
いえ、わたしの自律行動を『生きている』と表現するのは語弊があるんですが、ともかく他人にあからさまな迷惑をかけずに存在してきたはずです。  
なのになぜわたしは今こんな困りはてた状況にその身を置いているんでしょうか。  
顔面の表情筋が異常動作を起こして、デフォルトの微笑みが崩されてしまいます。  
 
事のおこりは4日前、いえ、発端はむしろ一週間前の出来事だったんでしょうか。  
一週間前の放課後、わたしは生徒会室において前年度の生徒会活動記録をひとりで読んでいました。  
特に意味がある行動ではありません。  
生徒会長が言ったとおり、前年度までの生徒会は学校行事の際に学校サイドから言われたことを淡々とこなすだけの単なる雑用係だったようで、  
今年度の生徒会運営に有益なことなど活動記録のどこにも記載されておらず、またわたしもそんなことは承知のうえでページをめくっていました。  
生徒会室に残っていても不自然でないよう、仕事をしているかのように擬装していたにすぎません。  
わたしはその存在目的が長門さんの監督であるという性質上、長門さんが学内に留まっているかぎりは生徒会室に待機しているよう心がけているんです。  
さて、そんなわけで目線は資料にくべつつ、意識そのものは校内全体に張り巡らせていたわけです。  
 
 
 
ふいに、1年5組の教室の壁面構成物質に異常な情報操作の痕跡を発見しました。  
わたしは表情ひとつ変えずにその情報操作の遂行時間を割り出しにかかります。  
呆れた。今から28分も前のことじゃないですか。  
こんなに時間が経過するまで気付かなかっただなんて、わたしもたるんでいますね。  
わたしは速やかに手にしたファイルを壁際の棚に戻しますと、急ぎ1年5組へと向かったのでした。  
 
1年5組の教室は外部からではなんの変哲もなく、一般的な人間が見ても、いえ、それどころかおそらくわたし以外のインターフェイスであってもそれが異常であると気付くことはなかったでしょう。  
空間閉鎖に3層にわたる情報封鎖プログラム。  
精度もすごく高い。  
わたしが対長門さん用に特化されていなければきっとお手上げだったでしょうね。  
ドアに右手を添えてプログラムに介入。  
…………………  
ようやく情報封鎖の解除が完了。  
早速中の様子を確認しつつ、空間封鎖プログラムを平行して解除、と。  
ここまで厳重な密室を作り上げて、一体長門さんはなにをやっているのかしら。  
 
 
室内にいるのは当然のごとく長門さん、あとひとりは、これは第2監視対象の彼のようですね。  
教室最尾部の比較的開けた空間において抱き合っています。  
彼の泌尿器を長門さんの膣口に挿入していることを確認。  
ああ、性交渉ですか。  
いえ、別にいいんですよ。仕事に支障が生じなければなにをしていただいても。  
ただ、意味のある行為とも思えませんけど。  
長門さんは性交渉に及んでいても通常時との外見の差異が見受けられず、そんな彼女の様子に彼も戸惑いを隠せないようですね。  
「…長門……その、気持ちよく…ないか?」  
ほら、やっぱり。  
わたしたちインターフェイスの生理的反応はあくまでも周囲に溶け込むための擬装ですからね。  
行動に制限の掛かるようなレベルの痛みや快感は存在しません。  
とはいえ長門さん、こういう場合は演技でもそれらしい対応をすることが仕事を円滑に進行させるコツですよ。  
「……たしかにわたしはこの行為によって性的興奮を覚えることはない」  
……正直に言いすぎです。  
「でも構わない。続けて」  
「いや、しかし……」  
「続けて」  
長門さんがムチャなことを言ってます。  
有機生命体は相手が無反応な状態で性交渉を続行できるほどタフな精神性を持ち合わせていませんよ。性的興奮は重要なファクターです。  
いえ、馬鹿にしているわけではないんですよ。  
性交渉時における異常興奮は、子孫存続をより確実なものとする為には有効な、極めて優れたプログラムといえます。  
「あのな、長門。俺は俺だけが気持ちよくなりたいわけじゃなくてだな……えっと」  
「あなたの言いたいことはわかる。だから大丈夫」  
どうにも文脈が繋がっていませんね。  
「あなたがわたしを占有しているという現状、そしてわたしがあなたを占有しているという現状はわたしの思考を安定させる」  
わかりませんねぇ?  
安定させるもなにも、インターフェイスの思考はそもそも不安定になることはありませんよ。  
これは異常動作の前兆なんでしょうか?  
「わたしはあなたが言う『気持ちいい』という状態になく、またこれ以降もなることはない。……でも……」  
……………  
とまっちゃいました。  
どうしたんです。フリーズですか?  
「わかったよ。長門」  
彼がなにやら目尻をさげて長門さんの頭を撫でています。  
長門さんの監視用に特別に調整されたわたしにわからないのに、彼にはなにがわかったんでしょう?  
「動くぞ。痛……くはないんだよな。やっぱり」  
「おそらく痛みを感じるのはあなたのほう」  
長門さんは小柄ですから当然膣内も狭いわけで、まあ、男性のほうが痛みを伴うでしょうね。  
彼が腰部の往復運動を開始、ぎこちない動きです。  
ああ、やはり痛いんでしょうね。  
しかめっ面をしたいんでしょうが、それを無理に隠し通そうとしてなのか奇妙な表情になっています。  
「んっ…んっ…」  
断続的に声を漏らす長門さん。  
相変わらずの無表情で彼にしがみついています。  
本当に無意味な行為に思えるんですけど……  
「ぐ…長門…」  
彼が長門さんの名前を呟き、我慢の限界だったのか膣内に精液を放出しました。  
 
 
「長門……その、本当にこんなんでよかったのか?」  
いまだ二人で抱き合いながら、彼がそんなことを言っています。  
「今回の行動は想定される全工程の中でもベストに近い過程を経て、ベストに近い結果を得た。問題ない」  
色気の無いピロートークをかわしながら、ようやく身体を離す二人。  
身支度を整えて、あ、周囲に飛散する臭覚刺激物質を分解していますね。  
どうやら彼との性交渉の痕跡を完全に消し去っているようです。  
こちらもたった今、空間閉鎖の解除が完了しました。  
さて、そろそろいいでしょうか。  
私は中の様子が落ち着いたのを確認してから、ドアのノックをしました。  
彼がその音にビクついているようですが、かまわずドアを開けます。  
「き、喜緑さん!?」  
現れたのがわたしであるのがよほど意外だったのでしょう。彼は二の句がつげずおろおろとするばかりです。  
未想定の事態への対応能力はいたって平凡。  
やはりあらためて見ても長門さんや統合思念体の一部意識が注目するほど、彼が平均的人類のカテゴリーから突出しているようには思えないんですけど。  
一方の長門さんはまったくの無表情。  
スタンダードなステータスからまったく逸脱していません。  
「驚かなくても大丈夫ですよ。長門さんの空間閉鎖は完璧でしたから、この内部で起きたことは私以外には察知されていません」  
「長門、そんなことやってたのか?っていうか、喜緑さんは見てたのか!?」  
彼は困惑の度合いを深め、長門さんは変わらず無表情。  
「そのことについても安心してください。私の思考はあのような行為を見てなんらかの感慨を感じるようには出来ていませんから。  
もちろん、とりたてて他人に密告する気もありません」  
まあ、わたしの立場上、統合思念体への報告義務はありますが、それ以上のことをするつもりはまったくありません。  
要するに統合思念体にとって害なす行動さえとらなければ、なにをやってくださってもこちらの関知するところではないんですから。  
長門さんはまったくの無表情。  
と、わたしの顔を呆然と眺めるのみだった彼が突然長門さんの肩を掴みました。  
「落ち着け、長門。この人を敵にまわしたら、お前が危ないんだぞ」  
?  
彼はなにを言っているんでしょう?  
まるで長門さんがなんらかのアクションをとっているかのような態度ですが、長門さんはまったく表情を崩す様子もなく、ただ静かにに立っているだけなのに。  
わたしのあらゆる探知能力をもってしても長門さんにはどのようなたぐいの異常も見受けられません。  
きっと有機生命体特有の気のせいでしょう。  
人間はそれがたとえ人形や陶器のような無機物であってもそこになんらかの感情を汲み取ってしまう特殊な精神性を持つ生物ですから。  
「とにかく心配しないでください。  
わたしとしてはお仕事に支障がでないかぎり、おふたりのお付き合いに口を挟むつもりはありませんから。  
それでは失礼します」  
わたしは終始無表情を崩さない長門さんに一応釘をうってから、教室内に足を踏み入れることなくドアを閉じました。  
 
ちなみに後から彼に尋ねてみたところ、このときの長門さんは「楽しみにとっておいたショートケーキの苺を他人に食べられてしまった甘党の女の子」のような表情をしていたんだとか。  
どういうことなんでしょう?わかりません。  
 
さて、この出来事から3日後、現在から換算して4日前のことになります。  
その日もわたしは生徒会室でひとり、黙々と資料に目を運んでいました。  
下校時間も間近。  
ひとり部室で本を読む長門さんもそろそろ帰宅することでしょう。  
わたしは手許のファイルを緩やかに閉じ、そして立ち上がりました。  
あら、『彼』が全速力でこの生徒会室に接近してきます。  
今から一時間半も前に校外に出たというのに、どうして戻ってきたんでしょう?  
バンと大きな音をたてて涼宮ハルヒもかくやといった勢いで生徒会室のドアを開けたのはやはり『彼』でした。  
「…ハァ…ハァ…」  
呼吸の乱れが激しく、体表に付着する汗も発汗能力の限界まで噴出されていますね。  
おそらくはどこからか全力疾走してきたであろうことが伺えます。  
「大丈夫ですか」  
「…ハァ…長門がどうなってるか…知ってるか?」  
わたしの言葉を気にもとめず、彼は長門さんの様子を尋ねます。  
普段の彼なら普通に上級生相手に使っている丁寧語も影をひそめています。  
どういうことでしょうか?  
「長門さんなら今も部室で本を読んでいますが」  
「そんなわけがない!」  
わたしの言葉を彼は即座に否定、どうも激昂しているようです。  
「長門はここんとこ3日間、学校に出てきてないんだ!今、マンションに様子を見にいったが、なんの反応もなかった。喜緑さん、あんたなにか知ってるんじゃないのか!?」  
おかしな話だと思いました。  
わたしの認識においては、長門さんはこの3日間もちゃんと出席していますし、部室にも顔を出しているはずです。  
しかし、彼の言葉も無視できません。  
わたしは探知レベルを限界近くまで引き上げ、再度の情報収集にはいりました。  
すると、どうでしょう。  
わたしの情報領域にデコイの情報が紛れ込んでいるじゃありませんか。  
十中八九、長門さんの仕業です。  
そして、確かに彼の言質のとおり、長門さんはこの3日間マンションの自室から一歩も出ていないようです。  
わたしも長門さんもなにをやっているんでしょう。これではお互いに職務怠慢ですね。  
「すみません。今、確認がとれました。どうも長門さん、自主的に引きこもっているみたいです」  
「長門が、引きこもり!?」  
すっとんきょうな声をあげる彼の脇でファイルを所定の位置に戻すと、わたしは彼に一緒に来てもらうよう要請しました。  
「ちょっと説得に行きたいので、一緒に来ていただけますか?」  
 
思えば、このとき長門さんの部屋に踏み込んでしまったのが、わたしが犯してしまった最大のミスだったんでしょう。  
ただ、このときのわたしとしては、自分の役割に準じて行動するしかなかったんです。  
 
長門さんのマンションの自室は例によって空間閉鎖と情報封鎖がなされていました。  
ただ、妙なことにその精度は3日前のそれとは比べ物にならないほど低レベルなものでした。  
処理能力を他のことにまわしてでもいるんでしょうか。  
「今から開けます。よろしいですね」  
「…やってください」  
必要はないんですが、一応彼に了解をとってからドアを開けました。  
あ、彼ったら時間が経って落ち着いたからなのか、わたしへの言葉遣いが丁寧語に戻ってます。律儀ですね。  
玄関から見える様子はなんの異常もなし。  
長門さんの情報制御下にあるこの場所ではわたしの能力にもある程度の制限がかかりますが、それでもリビングに長門さんがいることは認知できました。  
ん?それと、もうひとり?  
これって、そんな!?  
「長門さん。お邪魔します」  
「ちょ、ちょっと喜緑さん!?」  
急いでリビングへと移動するわたしと、後をついてくる彼。  
彼女には特別な動きは認められない。  
わたしたちの侵入には当然気付いているでしょうに、対処する余裕がないということなんでしょうか。  
わたしはそのままリビングのドアを開け放ちました。  
 
そこには  
「あ」  
いつもどおりの無表情な顔の長門さんと  
「どういうことなのか、説明してくださいね。長門さん」  
身長92センチ、体重13.5キロ  
「長門…その子どもは…?」  
長門さんの等身を縮めて大きさを縮小したかのような子どもが  
「………」  
長門さんの膝の上に座ってカレーを食べていました。  
 
「この子はあなたとわたしの子ども」  
「え…いや、え?……俺の…子ども!?」  
この日2度目の彼のすっとんきょうな声。  
まあ、性交渉3日後に3歳児の父親にされてしまったんでは、そんな声のひとつもあげたくなるでしょうね。  
わたしたちはなぜかコタツを囲んで4人でカレーを食べています。  
「どうやってつくったんですか?」  
「近隣のスーパーで購入したレトルトのカレーを鍋に投入し、過熱」  
「いえ、カレーじゃなくて子どものほうです」  
わたしは長門さんにからかわれているんでしょうか?  
いえ、実際はわたしにはこの子の製作手段に関しては想像がつきますから、それをわたしが知っていることを承知のうえではぐらかしているといったところでしょうが……  
「それともわたしから彼に説明しましょうか?わたしの推測の範囲で」  
「わたしから説明する」  
打てば響く答え。  
どうも彼に関する事象においてのみ、わたしと彼女の会話はスムーズに進むみたいですね。  
「聞いて」  
「お、おう」  
長門さんは膝の上の子どもとふたりそろって彼の目を見つめ、切り出しました。  
「この子は1年5組の教室に凍結保存していた朝倉涼子の情報素子の一部に、わたしの因子とあなたがわたしに注入した体組織から抽出した因子を組み込んで構成したインターフェイス」  
やはり、そうですか。予想どおりの答えです。  
手段としてはそれが妥当ですからね。  
でも、じゃあ、目的は?  
こっちに関してはわたしにも想像がつきません。  
「じゃあ、この子は朝倉の生まれ変わりなのか?」  
「構成素材として転用しただけ。朝倉涼子のパーソナリティーはこの子には存在しない。あくまで、わたしとあなたの子ども」  
「あー、うー、そうか。俺の子どもなのか……」  
ちょっとした驚きですね。  
彼は戸惑いながらも、この現実を拒絶する気はないようです。  
普通、自分の意思とは無関係に子どもなんてつくられたら、その存在を許容することなんてできないでしょうに。  
未想定の事態への対応能力はいたって平凡、という彼への評価を若干修正する必要があるかもしれません。  
彼は子どもの頭に手を置きながら、なにやら思索中のようです。  
「俺のことを殺そうとしたりとかはないんだよな」  
「大丈夫。わたしがさせないし、この子も絶対にしない」  
長門さんが彼から目線を外さずに言葉を紡いでいます。  
わたしには普段となにひとつ変わらないように見えるんですが、彼の目にはどう見えるんでしょうね。  
「この3日間、わたしはわたしが知りうる限りのあなたをこの子に伝えた。  
この子はその情報を元にあなたにどう対応するかを自分で考慮し、導きだされた解答はあなたへの依存。  
この子は自分があなたの子どもであることを許諾し、わたしと同種の好意をあなたにいだいている」  
すみません。わたしにはどう見てもその子もまったくの無表情に見えるんですが。  
「……………」  
「そ、そうか。……照れるな……」  
なぜ3人だけでわかりあってるんですか?  
それと、そろそろ話を続けてもいいでしょうか?  
 
「長門さん。なぜ子どもなんてつくったんです?」  
「欲しかったから」  
…………  
すみません。一瞬思考がフリーズしてしまいました。  
あの、欲しかったから、って……  
「性交渉のすえ子どもを成し、その存在を互いに認知することは異性間における交友関係において最上級の関係構築を意味する。  
わたしは彼とそういう関係になりたかった」  
「あの、仕事はどうするんです?現に3日も学校を欠席してるじゃありませんか」  
「……これは育児休暇」  
…………  
わたしたちの仕事に育児休暇は認められていませんよ……  
「健やかな人格形成のためには幼児期における家族とのふれあいが不可欠」  
…………  
そもそも幼児として構成しなければいいじゃないですか……  
「長門。言いたいことはわかる。でもな、喜緑さんを敵にまわすのはよくない。  
その子が俺の子だっていうんなら、子育ての苦労も俺に少しは割り振ってくれ。  
このままじゃお前、最悪なら処分されちまうかもしれないぞ」  
「失念していた」  
そうですね。このまま彼女が涼宮ハルヒの観察をないがしろにするようでは、さすがに処分が検討されるでしょう。  
「この子の家族はわたしだけではない。失念していた」  
反省する点はそこじゃあないでしょう……  
「前にも言ったがな、悩みをひとりで抱え込むのはやめろ。  
俺は頼りにならんかもしれんが、それでも一緒にあたふたするぐらいならやってやれるんだから。  
とにかく、明日からは学校に出て来い。  
この子の世話は俺も一緒にどうにかしていこう、な」  
「……ありがとう」  
「……………」  
彼と長門さんとふたりのお子さんがひっしと抱き合ってます。  
えっと、ご家族で意見がまとまりましたか?  
「とりあえず現状維持。  
もし今後も涼宮ハルヒの観察が滞るようであれば統合思念体に異常動作として報告、ということでよろしいでしょうか」  
「いい」  
じゃあ、とりあえずはこれで解決ということで  
「3人で世話をすれば、きっとこの子も大丈夫」  
…………  
「ちょっと長門さん!?どうしてわたしが人数に含まれているんですか!?」  
このわたしの疑問は当然のものでしょう。  
でも、そんなわたしに長門さんはあっさり、こう言い放ったんです。  
「あなたはこの子の『叔母さん』」  
…………  
「わたしはあなたの姉妹じゃありませんよ!?」  
「似たようなもの」  
「嫌です。なんでわたしが子守なんて!?」  
「手遅れ。あなたも共犯者」  
「わたしのどこに共犯の要素が!?」  
「教室でのわたしたちの行為を覗き見していた。最大限の努力をすれば、あなたの能力をもってすれば阻止が可能だったはず」  
…………  
「だからあなたにも責任が発生する」  
いや、あの、確かに緊急性を感じなかったものですから、なかば黙認していましたけど……  
でも、だからって共犯者だなんて、言いがかりです……  
 
 
で、今の状況があるわけです。  
ここ、生徒会室で、生徒会長と執行部の面々に訝しげな視線を送られながら、子守をしているという、ありえない状況が。  
「喜緑くん」  
生徒会長が全員を代表するようにわたしに声をかけてきました。  
「なんでしょう」  
「その子どもはなんだね?部外者には出て行ってもらい」  
「禁則事項です」  
この「禁則事項です」という言葉は彼に教えてもらいました。  
なんでもこの言葉をとにかく連呼していれば、どんな状況でも煙に巻くことができるんだそうです。  
わたしとしてもこれ以上の気苦労は増やしたくありません。  
言葉ひとつですむのなら、とことん利用させてもらいますよ。  
「きん……なんだって?」  
「禁則事項です」  
「いや、しかし」  
「禁則事項です」  
 
おわかりになっていただけましたか、わたしのどうしようもない現状が……  
おまけにこの子、わたしのことを『叔母さん』って呼ぶんですよ……  
本当に、なんでわたしがこんな目にあってるんでしょう?  
 

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