「ん?ハルヒ、お前泣いてるのか?」  
 
しばらく突然のことに呆然としていると、チラリとこちらを見て言ってきた。  
 
「な!?どうしてあたしがアンタのために泣かなきゃなんないのよ!!」  
「別に俺のためにとは言ってないだろ・・・」  
「!!!」  
 
あたしの顔、たぶん今までにないくらいに真っ赤になってるかもしれない。  
対してキョンの方はいつもの、少し呆れたような笑顔をしていた。  
そう、いつもあたしに向けてくれる、あの笑顔だった。  
 
「!!!お、おい、何でまた泣くんだよ。どっか痛むか?」  
「違うわよ、アホキョン・・・」  
 
今日で一生の内の半分近くの涙を出しちゃったかもしれない。  
 
「そ、そうか。それなら今はそのまま大人しくしててくれ。今は・・・」  
 
キョンはあたしから目を離して正面を向く。  
 
「こいつを何とかしなきゃならん」  
 
朝倉涼子。  
キョンの登場で頭から吹っ飛んで忘れてたわ。  
 
「全く今回も大掛かりな仕掛けだったな」  
「くっ・・!」  
「この前は世界全体の改変」  
「・・・別にあれはあたしがやったことじゃないわ」  
「結果お前に有利に働いたんだから同じことだ」  
 
「ねぇ、キョン。何のこと?」  
 
話がよく見えないわ。  
今も相当非日常的な事が連続的に起こってるけど、「世界を改変」とかいきなり話がぶっ飛びすぎな気がするんだけど・・・。  
 
「ん?あ、ああ、それはだな」  
 
急にキョンがしどろもどろし始める。  
 
「そうだ。俺が階段から転げ落ちて、病院のベッドで寝てた時に、そんな夢を見てたんだ」  
 
疑わしいわね  
 
「疑ってくれても構わん。だが、今は少し黙っててくれ」  
 
微妙にキョンが焦ってる気がして怪しいんだけど、状況が状況だから、言われた通りにする。  
 
「話を戻すぞ」  
 
朝倉は依然キョンのことを睨みつけたままだ。  
 
「そして今回。今回は本当に危なかった。俺が1人だったら確実に気づいてなかった」  
「・・・」  
「まさかお前に世界をコピーできるほどの力があったとはな」  
 
世界をコピー?  
そんな事をこの朝倉がやってのけたの?  
いや、さっきまでの朝倉の話や行動を見れば、何となく頷ける気もする。  
でもそうなると、今の問題はそこじゃない。  
 
あたしの目の前にいるのは本物のキョンなのか、それともコピーの方なのか。  
 
コピーだったらどうした?って言われると、反論できないけれど、とても大事なことだわ。  
もし目の前にいるキョンがコピーなら、本物のキョンはやはりさっき朝倉に消されたってことになる。  
姿形はまるっきり同じ。見分けがつかない。  
ありもしないSOS団の三原則でも聞いてみようかしら?  
マンガとかの展開ならそれでわかるんだけど。  
 
「安心しろ。俺はコピーじゃない」  
 
考えていると、あたしの考えを予想していたのか、自称本物のキョンが答える。  
 
「この世界、つまり俺が死んだことになってるこの世界がコピーされた方なんだ」  
「どうやって信じろっていうのよ」  
「信じてくれと言うしか、俺にはできん」  
 
思えば、キョンはあたしを怒ることはあっても、嘘をついたことはない。  
 
「いいわ、キョンの言う事だし。信じて・・・」  
 
 
 
あれ?  
ちょっと待ってよ。  
つまり、それって・・・  
 
 
「じゃあ、あたしって・・・コピーなの?」  
 
あたしの声は震えていた。  
 
 
あたしは、コピー?  
今までのあたしの思い出は全て作り物?  
 
「ま、待て。落ち着け、ハルヒ!」  
 
あたしは、偽物?  
あたしの感じた事や物も結局は偽物なの?  
 
「誰もそんなことは言ってねえ!」  
 
あたしは・・・  
 
「ハルヒ!」  
 
視界が急に暗くなり、身体全体が何か暖かいものに包まれた。  
キョンに抱き締められていた。  
 
「落ち着け、ハルヒ!お前はコピーでも偽物でもない、本物の涼宮ハルヒだ!」  
 
あたしを落ち着かせるように優しく、怒ったように強く、キョンはあたしの耳元で叫ぶ。  
 
「で、でも」  
「でももクソもあるか!俺が本物と言ったら、お前が本物なんだ!」  
「・・・」  
 
信じて、いいの?  
あたしが本物って、信じていいのかしら?  
 
「ああ、おまえは」  
 
 
 
「でも、最初にこの世界がコピーだって言ったのはキョンくんよねぇ?それっておかしいんじゃない?っていうかハッキリ言うと、あなた、コピーよ」  
 
 
 
「朝倉、お前!」  
「だってそうでしょ?あたしは別におかしな事は言ってないわ。それにこの世界、あたしが作ったのよ?産みの親が自分の子供を忘れるわけないじゃない。あなたは本物の涼宮ハルヒじゃない、あたしが作ったただのコピーよ」  
 
朝倉はあたしの方を見て高らかに笑った。  
冷静になればなるほど、どちらの言うことの方が筋が通っているのか、嫌になるほどわかってくる。  
悲しいくらい、わかってくる。  
 
「ハ、ハルヒ・・・」  
「・・・離して」  
 
さっきまで心地よかった暖かさは、もう全然感じない。  
むしろ、不快。  
 
「あはは、ウソつきは嫌われて当然よね。あたしも女だから、よくわかるわ。フフフ」  
「・・・ウソつき」  
「お、俺は」  
「ウソつき!」  
 
この世界のあたしがコピーだとしても、偽物だとしても。  
この世界で死んだキョンがコピーだとしても、偽物だとしても。  
あたしはキョンが死んで悲しかった。  
あたしはキョンの事が好きだった。  
ケンカしても、何をしても、それでもキョンが好きだった。  
なのに・・・  
 
「大嫌い」  
「ハルヒ・・・」  
「キョンくん、言っておくと彼女にも相当チカラがあることを教えておいてあげるわ」  
 
いなければよかった、最初から。  
朝倉も、キョンも、あたしも、そしてこの世界も!  
どうせコピーなら、こんな世界は消えればいい!  
そうだ・・・  
 
「ハルヒ」  
「その名前で呼ばないで!ハルヒじゃないって、わかってるくせに!」  
 
本物のキョンは困惑の表情で、本物なのか偽物なのかよくわからない朝倉は期待の表情で、あたしのことを見つめている。  
 
「もういいわよ、こんな世界。偽物は消えるべきなのよね」  
「そんなことは・・・」  
「朝倉」  
「ん?何かしら?」  
「あたしにはチカラがあるの?」  
「ええ、あるわよ。このコピーされた世界を消し去ることができるくらいのね」  
「消した時にあんたやコイツはどうなるの?」  
「そりゃあ、消えるわね」  
「いいの?それで」  
「あたしも元々はもう存在しちゃいけない存在だからね。あなたのおかげでいいデータも取れて、そのデータも既に上に送ったし。いい機会だわ、一緒に消えてあげる」  
「あんた、なかなかいい奴ね」  
「あら、ありがと」  
 
朝倉との会話を終えてから、大きく息を吸う。  
 
「こんな世界・・・」  
「よせ!」  
「消えてしま「ちょっと待ちなさああぁぁい!!!」  
 
あたしの声が誰かの声にかき消される。  
これは・・・あたしの声?  
 
「ちょっとキョン!何やってんのよ、この役立たず!」  
 
さっき本物のキョンが現れた穴から、再び誰か入ってくる。  
 
「あんたも勝手なことしてんじゃないわよ!あたしの許可なくキョンを消そうとすんじゃないわよ!」  
 
あれは・・・あたし?  
本物の・・・あたし!  
 
「涼宮ハルヒ!?どうしてあなたが・・・」  
「お前、何で!?」  
「あんたと有希が2人で一緒に女子トイレに入ってったから、あんたのこと張り飛ばそうとあたしも後をつけたのよ」  
「女子トイレ?」  
「見てたのかよ・・・」  
「で、ちょっと影から様子を見てたら、あんたが突然消えるんだもん。あれはさすがにビックリしたわ」  
「長門さんにしては珍しいミスね・・・」  
 
本物の3人は偽物のあたしにはわからない会話をしている。  
偽物のあたしにわかるのは「長門有希」の名だけ。  
あたしが作ったSOS団のメンバーということになってる。  
あたしの知る有希もやっぱりコピーで、あちらの世界の有希が本物なんだろう。  
 
「で、慌てて有希を問いつめること約十分。やっとさっき有希が事情を説明してくれたのよ」  
「何だと!?」  
「何ですって!?」  
 
本物にこの状況を伝えるのがそんなにマズいことなのかしら?  
 
「バ、バカな!!」  
「長門さん、あたしより重罪よ!?」  
「よくもまぁ、こんな大事なことを黙ってたわねぇ。キョン?」  
「当たり前だ!!」  
「ん〜、まぁ、そうよね。有希の命に関わるんだもんね」  
「???」  
 
なぜかキョンと朝倉はどうも本物のあたしの言うことが理解できてないらしい。  
 
「朝倉」  
「・・・何?涼宮さん」  
「あんたって・・・」  
「・・・」  
 
朝倉が息をのむ。  
 
「悪の組織の人間だったのね」  
「・・・確かにそういう言い方もできるわね」  
「それにキョン」  
「な、何だ?」  
「まさか、あんたが・・・」  
 
次は本物キョンが息をのんだ。  
 
「改造された強化人間だったなんてね」  
「・・・ギリギリでアリか?」  
「あたしに聞かないでよ」  
「さらに有希が・・・」  
「「・・・」」  
 
本物キョンと朝倉が同時に息をのむ。  
 
「ある日突然、キョンを改造できるほどのチカラを手にしちゃったなんて!」  
「「・・・」」  
 
事情はわからないけど、本物のあたしが何か勘違いしてることくらいはわかる。  
 
「そして最後。まさかあたしに・・・」  
 
そう言いながら、なぜかゆっくりとあたしを指さす本物のあたし。  
 
「双子の妹がいたなんて!!」  
 
・・・。  
コピーの次は・・・双子?  
 
 
「ホ・ン・ト・に!どうしてこんなおもしろそうで重大なことを隠してたのよ!」  
「いや、隠すも何もだな・・・」  
「涼宮さん、その話も長門さんから?」  
「ええ、もちろん。あんたの悪巧みも全部知ってんだからね」  
本物のあたしの話についていけないのは、あたしだけじゃないみたい。  
キョンも朝倉も変な顔してる。  
2人の反応を見る限り、あたしはやっぱり双子なんかじゃなくてコピーなのね。  
でも、有希は何で本物のあたしにそんな回りくどい説明したのかしら?  
「で、ハルヒ。お前はいったいここに何をしに来たんだ?まさかお前が、悪の組織の朝倉を倒すとか言うんじゃないだろうな?」  
キョンがウンザリしながら本物のあたしに聞く。  
「あら、キョン。よくわかってるじゃない」  
・・・。  
「長門よ、勘弁してくれ・・・」  
「あははは、おもしろいわ、それ」  
朝倉がおなかを抱えて笑いだした。別にあいつが笑ってるのは本物のあたしの方なんだろうけど、自分が笑われてるようでまたイライラしてきた。コピーのあたしがここまでいらついているんだから、本物のあたしはさぞかしご立腹でしょうね。  
「何がおかしいのよ」  
案の定、本物のあたしは心底気に食わないといった顔で朝倉を睨みつける。  
それにしても見れば見るほどそっくりね。家で見ていた鏡の中のあたしが飛び出したみたいだわ。実際、鏡の中の存在はあたしの方なんだけど。  
「あなたがあたしを倒すって?一体どうやって?一応あたし、悪の組織の人間なんだけど?ふふ」  
「ふん、強がるのも今のうちね。あたしはちゃんと有希から聞いてきたんだから」  
「何を?魔法の呪文かしら?」  
自分で言ったセリフがおもしろかったのか、朝倉はまだ笑っている。  
 
ふとキョンの方に目を向けると、キョンがこちらに近づいてきた。  
「ハル・・・」  
本物の名前で呼ばれそうになったので、あたしもさっきの本物のあたしの表情を鏡に映すようにキョンを睨みつけた。  
「す、涼宮?」  
「・・・何よ」  
一応、これくらいでよしとしようかしら。  
「ハルヒがやるのかどうかはともかく、朝倉が消えるのは時間の問題だ」  
「何でよ」  
「長門が・・・ああ、俺達の世界の特殊なチカラを持った方だ。とにかく長門が準備を進めておいてくれてな。あいつが一言言えばそれでもうおしまいだ」  
「ふぅん、そっちの有希は随分スゴいみたいね。で、それが?」  
「いや、朝倉が消えたらお前も・・・」  
キョンが言葉を濁らせる。何を言いたいのかはだいたい察することができる。  
「別にいいわよ、あんたが気にすることでもないでしょ。もともと無かった世界が消えるだけなんだし」  
「いや、そう言われるとそうなんだが・・・」  
「ま、本物のあたしをよろしく頼むわね。コピーのあたしが言うのも変かもしれないけど、やっぱり本物には幸せになって欲しいのよ」  
「ああ、それは任せろ。それだけは必ず」  
「そ、そう」  
これほど真剣に物を言うキョンは見たことがなかった(コピーの世界でだけど)。  
あたしの肩を掴んで宣言するその顔には冗談の類のものを全く含んでいなかった。  
正直、キョンにここまで思ってもらえる本物がうらやましい。大切に思われてるのは本物のあたしの方なのに、あたしまで照れてきた。  
ヤバい、顔赤いかも。  
「そ、それより!!」  
「ん?何だ?」  
「その一言って何なの?まさか本当に魔法の呪文?」  
照れ隠しに(別にあたしのことじゃないのに)話題を変える。  
「あ、ああ、それか。それはだな・・・」  
 
「情報連結解除、開始!」  
 
「そうそう、これ・・・何だと!?」  
突然、部屋に響き渡った声の主はもちろん本物のあたし。手を腰に当てて胸を張って誇らしげな顔をして。  
叫ばれた台詞の重大さを知らないあたしは特に何も反応できなかったが、キョンと朝倉が異常なまでの驚きっぷりをみせている。朝倉なんか震えだした。  
「ハルヒよ、何でお前がそれを・・・」  
「ここに入る前にね、有希が教えてくれたのよ。これを唱えれば万事解決だって」  
 
「う、うそ!?」  
悲鳴に近い声を上げたのは朝倉。  
見れば朝倉の腕が光る砂となっていく。さっきのキョン(コピー世界の方)と同じだ。  
「うわ、すご・・・」  
言った張本人も驚愕してる。  
「何なのよ。いくらなんでもこんなのって・・・」  
朝倉が戸惑っている間にも、彼女の身体はどんどん砂になっていく。  
サラサラと風もないのにその光る砂は流れていく。  
朝倉の身体も残すは顔だけになった。  
「はあ、仕方ないわ。キョン君、長門さんに伝えて。またいつか会いましょう、って」  
「覚えてたらな」  
「じゃ、納得のいかないこともあるけど。とりあえず、さよなら」  
そう言って朝倉涼子は完全に砂となって消え去った。  
「ふん、あたしを過小評価するからよ。何、もうおしまい?」  
「いや、まだみたいだ」  
突然部屋全体が朝倉と同じように光る砂になり始めた。  
当然、あたしも。  
「ちょ、あんた!!」  
砂になり始めたあたしを見て、本物のあたしが動揺する。  
朝倉と違ってあたしは足から砂になっていた。  
何で足がないのに立ってられんのかしら?というか、「立つ」っていうより浮いてんのね、あたし。  
「こっちへ」  
不意に新しい声が割れた壁の向こうから聞こえる。  
「時間がない、早く」  
有希だ。あちらの世界の特殊能力所持の長門有希。  
「おお、長門か!ハルヒ、出るぞ!」  
「で、でも!」  
「早く行きなさいよ」  
「あ、あんたね・・・」  
あたしは当然の事を言ったつもりなんだけど、本物のあたしは大人しく帰ってくれない。  
ま、当然か。あたしなんだから。  
「双子の妹を置いてけるわけないでしょ!」  
マジで言ってるの、それ・・・  
「マジよ、大マジ!っていうか、あんまりそれは関係ないけど。とにかくこっちに来なさい!」  
「いいわよ。あたしがそっちに行ったら、そっちの世界がおかしくなっちゃうし」  
あたしの下半身はもうほとんど砂になっている。  
「うるさいわね!!そんなのどうにでも何のよ!とにかくあたしが来いっつったら来るの!」  
本物のあたしが手を差し伸べる。  
その手を取るあたしの腕が砂になるのも時間の問題。  
「あんたはそれでいいわけ?ううん、そんなはずないわ。だってあんたはあたしの妹なんだから!さぁ、早くここで消えたくなんかないでしょ!!」  
もう時間がない・・・  
「さあ、早く!」  
あたしは・・・  
 
 
2週間後・・・  
 
「ナツヒさん、放課後部室でミーティングだそうですよ」  
「ん、わかった。ありがと、古泉君」  
 
あの時、結局あたしは差し出されたハルヒの手を取った。  
こっちの世界に出た瞬間、身体のほとんどが消えているあたしを見てパニクるハルヒとキョンを尻目に、有希があたしに近づいたかと思うと残っていた首筋に噛みついた。  
すると次の瞬間、消えたはずの身体が全て元に戻っていた。  
「情報の再構築。特に難しい事でもない」  
難しいっていうか、意味が分かんない。  
それを見て不思議がるハルヒにキョンが必死の事情説明をして、もうキョンや有希、そしてハルヒからもチカラが消えたことを説明した。実際、有希のチカラは消えてなんかないんだけど。  
その後、変える場所のないことに気づいたあたしは、とりあえず有希の家に泊まらせてもらうことになった。  
そして、有希からハルヒやこちらの世界の古泉君やみくるちゃんのことを説明された。驚く部分もあったけど、やっぱりなと思う部分も結構あった。  
ちなみにあたしやコピー世界ができたのは、やっぱりあのケンカの時だそうだ。あたしはあの後、誰もいなくなった部室で目を覚ましたけど、ハルヒの方はすぐに目を覚ましてその場でキョンと仲直りしたんだって。・・・何それ。  
朝倉については出現は感知できたけど、どこにいるのか特定に時間がかかったんだって。出現原因は目下捜査中らしい。  
 
翌日は朝早くから部室に全員集合。  
初対面だったこちらの古泉君とみくるちゃんは、2人とも予想通りの反応だった。あちら側と全然変わらない。  
その日は団全員が学校をサボってあたしの今後について話し合ってくれた。  
まず、古泉君の計らいであたしはハルヒ達と同じこの高校に通えるようになった。クラスは古泉君と同じ9組。  
次にあたしの住む場所だけど、引き続き有希の家に居候することになった。  
「あたしの妹があたしの家に住まなくてどうすんのよ!!」  
と、力強く主張したんだけど、キョンの力強い反対がそれを退けた。  
あたしは妹じゃないっていつ言えばいいんだろ?  
そして、一番大事なあたしの新しい名前。  
 
涼宮ナツヒ  
 
単純かもしれないけど、ハルヒが考えてくれたこの名前が一番気に入ったのよ。  
 
「ただ僕はちょっと用事がありますので、涼宮さんに遅れると伝えてもらえますか?」  
「オッケー、任せといて」  
「ありがとうございます。助かります」  
 
放課後、部室に入ると中にはまだキョンしかいなかった。  
「おう、ハルヒか。掃除はもう終わったのか?」  
「・・・」  
あたしとハルヒを外見だけで見分けるのは不可能なこと。だって双子・・・じゃなくてコピーなんだもの。まあ、有希は「構築している情報が・・・」とか何とか言って一発で見分けちゃうんだけど。  
古泉君やみくるちゃん達は、その場の運っていうのかしら?当たるも八卦、当たらぬも八卦?とにかくそんな感じで、当たってたり間違えたり。  
そんな中でこのキョン。コイツの場合はたとえどんな場合であろうとハルヒの名前が先に出てくる。初めのうちはしょうがないかなって思ってたけど、だんだん腹が立ってきた。  
ここ最近の激動の日々のせいで、頭から抜けていたキョンへの想い。  
どうやらこっちの世界じゃキョンとハルヒがいい仲みたいだけど、それじゃあおもしろくない。  
キョンを好きなのはハルヒだけじゃないのよ。  
「・・・ええ。まったく使えない連中だったから、先に1人で済ませてきちゃったわよ」  
「サボリと変わらんぞ、それじゃ」  
そうかしら?と答えながら後ろ手に扉の鍵をかける。  
「他のみんなはいないのね」  
「長門はコンピ研に行ってる。朝比奈さんは鶴屋さんと日直だから遅れるそうだ。古泉は知らん」  
古泉君も遅れるわと心の中で呟きつつ、座っているキョンに背後から近づく。  
「今はナツヒが来るのを・・・」  
後ろからキョンに抱きつく。  
「おわ、何すんだ、ハルヒ!!」  
何なのよ、顔真っ赤にして。ハルヒだったら嬉しいわけ?ムカつくわね。  
やっぱりこのまま2人がくっつくより、いろいろ割り込んで三角四角五角関係ぐらいにでもしないとおもしろくない。  
いけるとこまで・・・いくんだから。  
「ん?もしかして、お前、ナツ・・・んむぅ!?」  
ごちゃごちゃ考えるよりも行動に出た方が早いわ。  
 
さてと、これからどうしようかしら?  
 
終わり  
 

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