「頼むぜ」
部室棟、通称旧館にある文芸部部室。
俺はノックを省略し、勢いよく扉を開いた。
「…………!」
そして見た。驚いた表情で口をあけ俺を凝視する彼女を。
「いてくれたか……」
というが俺は手放しには喜べない。お前にそんな表情は似合わない。
「実は俺もお前の事は多少なりとも知っているんだ。話していいか……」
「……違ったか?」
「ごめんなさい。わたしは知らない。時折見かけてたから。わたしはここでは、あなたと初めて会話する」
「邪魔したな」
「待って。よかったら……持っていって」
ソレは白紙の入部届けだった。
おでんも食べ終え一息ついて、俺はそろそろとおいとまする。
「それじゃあな。……明日も部室に行っていいか?」
その言葉にじっと見つめ、そして薄く優しく、ハッキリと微笑んだ。
目眩がした。
「誰が犯人です。またハルヒの仕業ですか」
「違います。でも、キョンくんの良く知っている人です」
時空改変者が、あいつが校門前まで歩いてくる。そして時空震が発生した。
「大丈夫です。『彼女』はたった今生まれ変わったんです」
「よう。俺だ、また会ったな」
考えて見ろ。十八日以降SOS団は全員変なプロフィールを失っていた。
しかし性別までは変化していなかった。
その中でただ一人、今までにない行動や表情や仕草を見せる奴がいた。
「お前の仕業だったんだな」
「古泉」
男子ブレザーを着た美人に属するその女性は、俺に対して不思議そうな表情を見せていた。
(おわれ)