部室の空気がそわそわと浮ついています。
メイド服に着替えたものの、いつものようにすぐにお茶を淹れるでもないわたしも
机の前で退屈そうにあくびをしている彼女も
窓際の席で静かに本を読む長門さんも
さっきからドアのほうをチラチラと眺めている9組の彼も
この部室にいる全員が心ここにあらず、といった面持ちで『彼』の到来を待ちわびています。
今日はひさしぶりに『彼』がこの部室にやってくる日。
SOS団の団員は一人残らず『あの人』が大好きなんです。
かといってお互いがライバルといったこともなく、『仲間』として結束しているんですから不思議なものですね。
あ、足音が聞こえます。来たみたいですね。
早速お茶の準備をしないと……
ドアが開きました。
「よ、元気でやってるか」
4人全員の視線を一身に受けて、涼宮さんいわく『しまりのない顔』をしながらわたしの大好きなあの人が立ってます。
「長門、団長にはもう慣れたか?」
「大丈夫」
この団、唯一の3年生、団長の長門さん。
「今日は先生は一緒じゃないんですか?」
「おい、ハカセくん。俺はいつもハルヒとワンセットで行動してるわけじゃないぞ」
特進クラスの眼鏡の似合う彼。
「キョンくん、おそーい。待ちくたびれたー」
「こら、抱きつくな。恥ずかしいやつめ」
わたしの親友で、彼の妹。
「はい、坂道お疲れ様でした。お茶でもどうぞ」
「サンキュ、ミヨキチ」
そしてメイド服で給仕するわたし、吉村美代子。
今日は、そんなわたしたち4人の様子を見に、SOS団OBの彼が陣中見舞いに来てくれる日です。