土曜日の不思議探索に集まったのは、いつものように俺が最後だった。やれやれ、また財布から金が飛んでいくのか、とため息をついたが、そんな俺を見てハルヒは満面の笑みを浮かべた。  
「いいわよ、キョン、今日は払わなくて。喫茶店には行かないから。お弁当は作ってあるわっ!」  
へっ、弁当?おまえが作ったのか?  
「そうよ、感動にうちふるえなさい!さ、今日は、不思議探しは中止。ピクニックに行くわよ!!」  
 
というわけで、SOS団の皆で川沿いの道を歩く。なぜか荷物を抱えた古泉。無口のままで歩く長門。ニコニコと、はしゃぐハルヒの相手をする朝比奈さん。いつものメンバー、いつもの光景だ。  
そういえば、朝比奈さんが未来人であることを知ったのはここでだったな。  
「ところで、どこかに行くとか予定があるのか?」  
「ないわよ。こんなに良いお天気なのに、ピクニックの一つもしないなんて許しがたいことよ。」  
誰を許さないつもりだよ、やれやれ、予定なしか。  
「いいのよ、百万年も行くんだからっ!」  
百万年、か。  
俺は、ふうっ、と息を吐いた。  
なに、いつかSOS団の皆と別れなきゃいけないってことを考えただけさ。  
例えば、ハルヒの不思議な力がなくなったらどうだろう?  
朝比奈さんは未来に帰るだろうし、古泉の機関とやらもお役御免だ。長門もいなくなっちまうのか?  
俺は、ぶるっ、と身震いした。失いたくない、長門も、朝比奈さんも、一応、古泉も。  
それに、俺はどうなるのだろう?  
俺もハルヒの不思議な力で集められたうちの一人なら、ハルヒの力が消えたら、ハルヒの側からいなくなるのか?  
いや。  
俺は――  
「ちょっとキョン、シート広げるの手伝いなさいっ。」  
いつの間にか、ハルヒはピクニックシートを広げだしていた。なるほど、古泉の大荷物はこれだったか。  
「さ、お弁当にするわよ。みくるちゃんっ!」  
「ふぁい、お茶、水筒に詰めてきましたぁ。」  
やれやれ、はなから計画してたんじゃないか。まあ、確かにいい天気だからな。奇妙な事件なんぞ起りそうもないし。  
シートの隅で置き石と化している長門が、微かに頭をコクンとさせた。  
 
だが、俺たちがハルヒ特製弁当を平らげているとき、古泉が緊張した面持ちでやってきた。おまえ、どこに行ってたんだ?早く食べないと、長門とハルヒが食べ尽しちまうぜ。  
「みなさん……こちらに来て頂けませんか?不思議な集団を見つけたんです。」  
「ホントッ!?」  
ハルヒの目が燦然と輝いた。  
「早速捕まえるわよ。どこっ、古泉くん!」  
「こちらに。」  
長門が立ち上がり、朝比奈さんもおろおろついていく。俺もハルヒと古泉を追って駆け出した。  
くそ、のんびりピクニックを楽しんでたってのに、古泉め。何を考えている?  
 
「ここです。」  
古泉が川を指さす。  
ふいに、俺は笑い出してしまった。古泉もニコニコと肩をすくめ、朝比奈さんは少し困ったように笑う。長門は頭をニミリほど傾けた。  
「なに、どこどこ?水中人間!?」  
ハルヒだけが、夢中で水の中をにらんでいる。  
 
ちがうさ。  
宇宙人、未来人、超能力者に、不思議な力を持った少女。  
そして――俺。  
ことが飲み込めないで騒ぐハルヒをよそに、世界一不思議なメンバーが、輝く水面で笑っていた。  
 
 
おしまい  
 

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