あれは、俺の選択だったんだ。
俺はそうなれば皆が…
いや
俺が救われると思ったんだ。
俺は、誰も彼も責められない。なら自分を責めるしかない。
それが、俺の選択なのだから…
「ねぇねぇキョン君シャミ知らない?」
ある夜遅く、妹が相も変わらず騒がしくしている。
「どうしたんだ?シャミセンならここには居ないぞ」
先程からシャミセンは部屋に現れてはいないな、と彼は考える。
「下にも上にも居ないの…」
「そうか…わかった、ちょっと外を見て来る。だから待ってろ」
妹の焦り具合を見て、彼は妹の頭を撫でながらそう言った。
彼はコートを羽織り、妹の心配を消す為、外の闇に向かう。
「おーい、シャミセーン」
まだ冬も明け切らない夜に吹く風は冷気を孕み、一切合切容赦無く彼に絡み付く。
「全く、こうゆう時こそ喋れよな。」
「しかし寒い、なんでこんな時に家出するんだ」
一人言を言いながら外を探していると携帯が鳴った。
ディスプレイに目を落とし、
「長門か…めずらしいな」
彼は通話ボタンを押した。
「よう、どうした?」
「涼宮ハルヒから伝言がある」
「なんだい?」
「彼女が体調を崩した為明日の集まりは休みになった」
彼は少しぶっきらぼうに答える。
「そうか、わかった」
「…どうしたの?」
「いや、なんでもないさ、ちょっと…な」
「貴方が困っているのなら、私は協力したい」
「いや、気にしないでくれ」
「…協力したい」
「わかったよ…じつはなシャミセンが家出したんだ」
「了解した、すぐに向かう」
「いや…すぐに見つかると思うぞ」
電話は切れて無機質な電子音を鳴らしている。
彼は捜索の半径を拡げた。
そうこうしていると再び携帯が音を発し、彼は通話ボタンを押していた。
「何かあったのか?」
「…すぐに駅前に来て欲しい」
彼女が普段の声と違う事に彼はすぐに気付いた。
「駅前だな?わかった、すぐに行く」
彼は走った。
駅前に着くとすぐに彼女を見つけた、彼女の腕にはシャミセンがいた。
彼女は呟く。
「…ごめんなさい、私は間に合わなかった」「…何をいってるんだ?」
「…ごめんなさい」
彼は見る、彼女の腕にはシャミセンがいた。
彼の目には怪我をしていたり傷を負っているようには見えなかった。
ただ猫は動かなかった。
「き、傷や怪我なんて無いじゃないか」
「…怪我は私が治した」
「じゃあ大丈夫なんだよな?」
「…ごめんなさい、私は間に合わなかった…私には生命は修復出来ない」
「そんな事があるか」彼は動揺し怒鳴る。
「さっきまで…さっきまで動いていたんだ、生きていたんだ」
彼は知っていた、彼女の言葉は全てが正しい事を。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
彼女の瞳には涙が浮かんでいた。
「なんとも…できないのか?」
「…ごめんなさい、貴方が認識していたシャミセンは不可能」
「待て“俺が認識していた”と言う事は、違うシャミセンは何とか成るんだな?」
「さっきも言った通り、私には魂は創造できない…だが」
「だが、なんだ?」
「…彼にはもう一つ魂が有る」
「あのシリコン生命体か?」
「…そう、彼等を彼の魂として固着すれば」
「シャミセンは蘇るのか?」
「…彼で在った存在は蘇る、だがそれは彼では無い」
「それでも、貴方は望むの?」