珍しく、俺は部室で一人きりだった。長門に貸してもらった小説を読みながら他の団員が来るのをのんびりと待つ。しかし、なぜ長門が貸してくれる小説は、最近は恋愛小説ばかりなんだろう?めっきりSFが減った気がするな。
俺がそんなことを考えていると、どこからか、聞きなれた歌が聞こえてきた。
『みっみっみらくる みっくるんるん……』
……なんだ?どこからだ?
どうもそれは、掃除用具入れから聞こえてくるようなのだ。
おれは、何の気なしに扉を開いてみた。
「ふぁ〜い。」
ってあれ!なんで掃除用具入れから出てくるんですか、朝比奈さん!
「私は、この時代の朝比奈みくるではありません。あなととの間に、既成事実が出来てから一日後の朝比奈みくるです。」
はぁ!?なんですか、それ。
また歌が聞こえてきた。
呆然とする俺の前に、掃除用具入れから、再び朝比奈さんが現れた。
「私は、この時代の朝比奈みくるではありません。あなととの間に、既成事実が出来てから二日後の朝比奈みくるです。」
そこで、また歌が……繰り返しになるからやめよう。
とにかく、そんなやり取りが続いた挙句、俺の前に5人の朝比奈さんが並んでいた。
「「「「「キョンくん、これは既定事項なんです。私とキョンくんが結ばれるのは。」」」」」
五人同時に言わないでください、怖いです。
朝比奈さんは、一様に傷ついたような表情をして、いっせいに歌いだした。
『『『『『みっみっみらくる みっくるんるん………』』』』』
「やめてください!誰か来たらどうすんですか!」
俺は絶望的な気持ちで言った。
「それは」
「大丈夫」
「この時間には」
「だれも来ません」
「これは」
朝比奈さんは、いっせいに唱和して、
「「「「「既定事項です」」」」」
いや、中学校の卒業式じゃないんですから、順番に言うのもやめてください。
「私たちは」
「キョンくんのことが」
「大好きです」
「「「「「大好きです」」」」」
と、全員の唱和。
「ね、アレしましょう」
「ね、セックスしましょう」
「ね、Hしましょう」
「ね、SEXしましょう」
「ね、や ら な い か」
朝比奈さんは、俺の周りをぐるぐると回りながら、服を脱いでいく。……歌いながら。
『『『『『みっみっみらくる みっくるんるん………』』』』』
俺の思考力はそこで停止した。頭が変にならないほうがどうかしている。
五人とかわるがわる行為をすると、朝比奈さんたちは帰っていった。
なんだったんだ……。
俺が精力を使い果たしてぐったりと座っていると、部室に長門が入ってきた。
よお、長門―――
うわっ!
長門のあとから長門が来てその後から長門が…………
まさか……おまえ……俺と……
「そう」「そう」「そう」「そう」「そう」「そう」
おしまい。