3分間レスが無かったら長門は俺の嫁  
 
 自室でPCに向かってそれだけを打ち込むと、送信ボタンを押した。了承。  
 
 書き込みがポストされる。  
 
 俺は溜息をついた。  
 どいつもこいつも勝手に長門のことをああだこうだ言っている。  
 俺はすこし酔っていたせいか、無性に腹が立ってきた。  
 クールビューティーだの萌えだの一言で片付けやがって。  
 長門が美人だとかカワイイだとか、そういうのはどうでもいいんだよ。  
 いや。たしかにAマイナーだのAだのそう言ってる香具師には  
部分的には同感できるが、俺にとって長門が、宇宙人のつくったあのアンドロイドが  
大切で好きでしょうがない理由はあの目の中にあるかすかな感情。よく見ないと  
読み取れないような感情の萌芽みたいなのがどうしようもなく好きなのだ。  
 俺を無条件で信頼してくれてる、俺も無条件で信頼できる、そういう関係。  
 俺以外には築けないであろうそういう関係だからこそわかる、アイツの素の感情。  
 それが好きな理由なわけで。  
 
 と、そんなことを考えていると携帯が点滅している。  
 ハルヒからメールが来ているらしい。  
『キョンへ  
 明日の不思議捜索、遅刻したら承知しないからね!遅れたら死刑100回!  
あとケーキバイキング全員に奢る事!』  
 死刑100回ってなんだそりゃ。  
 こんなのは返信するまでも無いと思って、もう寝ようとベッドに向かった瞬間。  
 
 そこに長門がいた。  
 
「ありがとう」  
「うわああああっ!?」  
 
 おれは突然のことに驚いた。  
 当たり前だ。夜中に自分の部屋で寛いでる時になんで長門が?なんでここに?  
 ベッドの上に正座しているのはいつもの格好、つまり制服を着ている長門有希。  
 
「な、な、な……長門?」  
「あなたが嫁と言った」  
「なんだって?」  
「三分間、他人の書き込みが無ければ私はあなたの妻」  
 さっきのスレのことか!?  
「そう」  
「いや、あれはお約束というか、なんて言うかその」  
「……」  
 目を大きく見開いている長門。そのブラックホールのような真っ黒い瞳が  
俺をじっと見つめている。4mmほど首をかしげているのは疑問を表現しているのか?  
「……」  
「……」  
 
 俺としてもまさか「冗談だった」とは言えない。言おうとはしたが、あの長門の  
真摯で純真な目を見てそういうことが言えるヤツがいたらそいつは鬼畜だ。畜生だ。  
人でなしだ。  
 そう苦悩している俺の元に、長門は近づいてくる。あ、なんかヤバい。  
なんかいい匂いがする。長門の目が俺を真っ直ぐ、十数センチの距離から見つめてくる。  
「ま、まだ、結婚は早いっていうか――」  
「私はすでに法律上結婚できる年齢」  
 
「お、俺はまだそういう年齢じゃないし」  
「問題ない。法律婚は無理でも事実婚という方法がある」  
「なんだそりゃ」  
「事実婚。内縁の妻。  
 私はあのスレッドに三分間の書き込み制限を掛けた。結果として三分の間誰の  
レスポンスも書き込まれなかった。それゆえに私はあなたの妻」  
 長門の瞳が数センチの距離から俺を覗き込む。  
「私はあなたの妻だから、あなたは私を好きなようにすることができる」  
「……」思わず唾を飲み込んだ。  
「私はなにも拒まない。あなたの思うままにして欲しい」  
 漆黒の瞳の中に俺の目が写っている。  
 
 俺の心臓が身体の中で暴れだす。  
 
 無表情で俺を見つめている長門の瞳が微妙に潤んでいる、ような気がする。  
 真っ白い頬だって、なんか赤らんでいるように見えなくもない。  
「気のせい」  
 ……珍しく、長門は照れているみたいだ。  
 
「あなたの好きに――」  
 長門はそこまでしか言う事が出来ない。  
 俺の唇が長門のそれを塞いでいるからだ。  
 
 舌先で長門の唇の柔らかさを味わい、粘膜の味を確かめる。  
 キスなんてしたことないのに、舌が勝手に動く。舐め、味わい、押し付け、こそぐ。  
 
 数分か数十分か、判らないくらい長い長いキスのあとで、  
俺は長門をベッドに押し倒した。額や耳にキスすると、長門は  
その小さな身体をぴくっ、と震わせるのが可愛い。  
「長門」  
「……」  
 小さく首を振る長門。  
「もう長門ではない」  
 なんだって?  
「有希、と呼んで欲しい」  
 
 俺の脳が理性を失ったのはそのときだったろうよ。  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 まあそういうわけで、俺は翌日の不思議探索には見事に遅刻した。  
 俺が一晩中なが……有希と何をしていたのかは書く気にはなれんし  
誰にも教える気はないさ。  
 
 妹が「キョンくん、ゆうべ夜中になにか騒いでたの?」  
 みたいなことを訊いてきたり、母親が意味ありげな視線で見つめてたのも  
気のせいだ!そうだと思いたい。  
 

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