そして光が生まれた。  
全く雲のない。  
太陽しか見えない空。  
緩やかな風が木々を揺らす音だけが聞こえている。  
「そうだなぁ…。なんとなく、だけれどね……」  
ふいに人間の話す声が聞こえた。  
少年のような、そして少し高い声だ。  
「なんとなく、だけど?」  
別の声が発言を促すように聞いた。  
軽薄そうな感じのする、男の声だった。  
最初の声が静かに語り出した。  
まるで自分に語りかけるような口調で。  
「ボクはね、たまに自分がどうしようもない、愚かで矮小なショタではないか?  
ものすごく汚いショタではないか?  
なぜかはよくわからないけどそう感じる時があるんだ。  
そうとしか思えない時があるんだ……  
でもね…そんな時は必ず、それ以外のもの、  
たとえば学校とか、  
みんなの生き方が、全てが美しく、素敵な物のように感じるんだ。  
とても愛しく思えるんだよ……。  
ボクは、それをもっともっと知りたくて、  
そのためにショタキャラになっているような気がするんだ」  
「なぁ」  
少しだけ間をおいて、こう続けた。  
「辛い事や悲しい事は、ボクがショタを続ける以上必ず、行く先々にたくs  
もう一人が言葉を遮った。  
「なぁ国木田?」  
国木田と呼ばれた少年は、少しむっとしたように答えた。  
「なんだよ、谷口」  
「セリフがなげぇよ」  
そして学校が始まる。  
 
 
 
三人の団員  
 
 
 
そこは部室錬だった。  
築三十年は余裕でたっているであろう古い部屋が、  
露店のように等間隔で建ち並んでいた。  
「ボクには用事はないのになぜ来たのか、わかるかい?谷口」  
壁のそばに立つ、十五、六歳ほどの髪の短い少年がいった。  
すぐそばには、一人の谷口  
(注・2足歩行。成功しないナンパを繰り返す物だけを指す)  
が立っていた。  
「分かってるって、飯だろ、国木田」  
谷口と呼ばれた少年が返事をした。  
部室錬の二階に上った途端、谷口が。  
「誰かいるな」  
短くそう言った。  
国木田も直線の先に大荷物を抱えた人影を見つけた。  
ゆっくり近付いて行くと、少女が一人荷物を運んでいた。  
彼女は一瞬だけ顔を上げ、そして伏せた。  
彼女の後ろには、一人で運ぶには多いように見えた。  
国木田は少女の手前で足を止め、声を掛けた。  
「こんにちは、長門さん」  
国木田が挨拶をして、少女は目線だけをあげた。  
「…………」  
彼女は何も言わなかった。  
沈黙に絶え切れずに谷口が開いた。  
「荷物大変そうだな、どうかしたのか?」  
国木田もそれに続けた。  
「もしよかったら手伝うよ」  
彼女は短くこう言った。  
「…助かる」  
「へーそうなんだ、それは大変だね」  
道中聞いた話を推理すると。  
涼宮さんが勝手に取って来た軽音楽部の楽器を返すらしい。  
沢山の荷物をみんなで分担して運んだ。  
「やっとついたぜ」  
谷口は息を切らしながら、恨みごとを呟いた。  
「いいだろ、僕たちの用事なんて、昼休みにでも出来るだろ…それに、一人でこんなに運べないよ」  
国木田は谷口をいさめた。  
「まぁいいけどよ」  
谷口もどうやら同情してるらしい。  
すると少女は呟いた。…ありがとう、それと、  
“あなた達はこれから何処に行くの?”  
 
「国木田、また部室錬にいくぞ」  
昼休みに入り、谷口は国木田に言った。  
「わかったよ、谷口」国木田はやれやれと心の中で呟いた。  
部室錬に行く最中、朝に長門さんがいた所で、また人影がいた。  
「ありゃ」  
谷口は素頓狂な声をだしその様を見つめた。国木田は荷物の中心にいる少女に声を掛けた。  
「こんにちは涼宮さん」  
僕たちを見つけた途端、涼宮さんは溢れそうな笑顔でこういった。「あなた達荷物運び手伝いなさい」  
 
道中聞いた話によると、昨日持って来た機材が部室から消えていたそうだ。  
沢山の荷物を二人で分担して運んだ。  
谷口は、はっきりと恨み言を呟いた。  
「………」  
国木田は無言、肩で息をしていた。  
涼宮さんは嬉しそうにこう言った。  
「あんた達、役に立ったわ、ありがとう。それと、  
“あんた達はこれから何処に行くの?”  
 
「国木田、今度こそ俺の用事をすますぞ」  
放課後の話だ。  
「ねぇ谷口、今日は辞めにしないかい」  
国木田は谷口に言う。「なんでだ?」  
「だってそうだろ、もし朝比奈さんが困ってたらどうするんだよ?」  
「それが狙いだ」  
国木田は心底呆れながら呟いた。  
「明日の飯も頼むよ」  
 
部室錬の奥にはやはり荷物の塊があった。  
「朝比奈さんキター」  
走り出す谷口の背中を見つめ、国木田は溜め息をついた。  
だが荷物の主をみた谷口の背中は絶望に彩られていた。  
「こんにちはキョン」  
「よう国木田、あとどうした谷口?」  
「ちょっと行く所があってね、そうだろ谷口?」  
「あ、あぁ」  
キョンは残念そうに呟いた。  
「そうか、用事があるならしょうがないな」「まぁ悪いんだけど荷物運び頑張ってよ」  
谷口は無言で歩き出した。  
“お前達は、これから何処に行くんだ?”  
キョンはにやっと笑いながら、そう尋ねた。  
 

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