借りた本に挟まれていた栞に書いていた待ち合わせの一文。  
無視するわけにもいかなかったが、呼び出された先でこんな事態になるとは思ってもみなかった。  
 
長門の家にあがり、今オレたちはコタツ机で対面している。  
さきほどからもう何分経っただろうか?  
家族はいない。一人暮らしというところまでは聞いたが、その後はずっと長門は無反応だ。  
オレから話し掛けるまでずっとこの調子なのかと思い始めたころ、ふいに長門が立ち上がった。  
お茶の準備でもするのかと思いきや、長門はオレのそばまで歩いて来て、  
おもむろにセーラーに手を突っ込み、ブラジャーを取り払った。  
………え?  
ブラジャーをコタツ机に置く。  
ついで何気なくセーラーを脱ぎ出した。  
裸の上半身からは小ぶりなマシュマロやさくらんぼが二つ丸見えだ。  
オレが絶句して固まっていると  
「飲んで」  
と長門は言った。  
 
えっと、なんで?なにを飲む?  
っていうかなんで服脱いでるんだ、長門。  
慌てて視線を窓に移す…って窓にも反射してるからコタツ机へ…って今度はブラジャーが!  
しょうがないからアホみたいに上を見上げることにする。  
 
「あなたはミルクが好きだと聞いた」  
牛乳は別に嫌いじゃないが、そこまで好きなものでもないぞ。  
というか誰に聞いた。  
「自宅に招いてもてなしをする時は、もてなす対象の好物を出すのが好ましいと聞いた」  
いや、普通はお茶だろう。牛乳なんて聞いたことない。  
って、そんなことより年頃の娘がなんて格好だ。  
頼むから服を着てくれ。目のやり場に困る。  
「ミルクは一般的に牛乳のことだと調べた。しかし牛乳は牛のミルク。人間であるならば人間のミルクを飲むべき」  
人の話を聞け。  
ついでに、それが必要なのは赤ん坊だけだ。  
「牛乳は人間の肉体に最適なミルクではない。幸い私は女性型。人間のミルク、すなわち母乳を出すのに問題はない」  
いや、普通は妊娠しなきゃ出ないもんなんだが。  
まさか妊娠してるのか!?  
「妊娠はしていない。が、貴方が好む牛乳の味に似せて乳首から母乳が出るよう肉体情報を再構成した」  
してないか…なら出ないな。それなら安心だ。ってそういうことでなく、早く服を着てくれないかな…  
それに肉体情報の再構成ってなんだ。こいつもハルヒみたいな電波娘だったのか…?  
 
長門は胸を隠すわけでもなく、そのままの姿勢で動かない。  
オレは天井の照明を眺め続ける。  
またしばらく静寂が訪れる。  
体勢的に苦しいが、視線は下げられん。  
視線を下げると小ぶりな胸や二つの桃色など色々見えてしまいそうでオレの理性が危ないからだ。  
 
そろそろ首が痛くなってきた頃  
「飲んで」  
長門が呟き、近寄ってきた。  
まさか、そのままむしゃぶりつけと!?  
「それが正しい飲み方。人体に好影響を及ぼすように栄養情報も改変しているので健康にもいい」  
長門は胸をオレの口に近づけてくる。  
無表情の顔がオレの上に覆い被さってくる。  
その距離はどんどん縮まって……  
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「おいしい?」  
 

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