…で、そこの4が  
「くりあがって17でしょ?」  
 正解だ。  
 
 
 時計の秒針の進む音と、シャーペンがノートの上を滑る音。  
 
 
「つぎも、いまのやりかたとおなじでいいのよね?」  
 そうだな。一見難しく見えるけど、今の方法を別々に2回繰り返して  
「まずふたつをけいさんしてから、さいごにりょうほうをたすのね?」  
 その通り。  
 なんだ、俺が教えるまでも無いじゃないか。  
「まちがったままおぼえちゃったらいみもないでしょ? あってるかどうか  
 わかる人がすぐよこにいることがじゅーよーなのよっ」  
 ああ、確かにそうかも知れんな。  
 学校の授業中なんかじゃ理解できなくても無視して進んじまうし。  
 
 しかしハルヒよ、小学3年生の思考じゃないな。口調はアレだが。  
「どういういみ?」  
 いやなんというか。しっかりした大人の視点だよ。  
「ま、まあね! だってあたしは…」  
 ん?  
「…それよりつぎいくわよ、つぎ!」  
 はいはい。  
 イスを軋ませてチビハルヒの横から教科書を覗き込む。  
 
   
 長門の部屋ほどじゃないがファンシーなアイテムも殆どない部屋。  
 フローリングにカーペット、その上に小さなガラステーブル。  
 学習机は俺が座り、チビハルヒはガラステーブルに教科書やノートを  
 ちらかして作業している。高さ的にこの方が進行が楽だからだ。  
 
 そういえばちょっと前まで本家妹の勉強をこうやって見てやってたな。  
 高校受験の前あたりまでだったか。ほんの一年ちょっと前の話なのに、  
 なんだか少し懐かしい。  
 
 
「できた。どう?」  
 ん、どれどれ…。 よし、100点だ。  
 なりは小さくなっちまったが中身はやっぱりハルヒだな。  
 優秀な妹でちょっと誇らしい気分だ。 偉いぞ。  
 
「 ぁ… 」  
 ん、どうした?  
「…いま、あたま…なでた…」  
 ああスマン、子供扱いしちまった。何となく勢いでな。  
 じゃ次いくか。  
「……うん」  
 
 
 
 3rdストライク  
 ― 妹ハルヒ(8歳)の場合 ―  
 
 
 
 お   か   し   い  
 
 
 
 なんだこの穏やかな空気は。  
 まるで仲の良い兄妹じゃないか。  
 物を投げつけられもしない、ネクタイでチョークかまされたりもしない。  
 ましてや体重の乗ったグーで鼻っ面を殴られたりなんかする雰囲気も無い。  
 チャンネル間違えたか?  
 
『 …ずいぶん長風呂だったじゃない、バカキョン 』  
 
 リビングデッド寸前の俺を、階段最上段から対地表用絶対零度視線で  
 見下ろしつつ、ハルヒがこのセリフを吐いた時は  
 『ついに世界崩壊が始まってしまった』と思ったのに。  
 
 …気のせいって訳じゃないよな、どう考えても。  
 あのセリフから、俺が風呂で本家妹と三女朝倉と泡国プレイをしていた事に  
 ハルヒが気付いている、と考えて間違いないはずなn  
 
 
 あ、やばい。また罪悪感のビッグウェイブが…。  
 くぉぉ…、すまん、本家妹よ…。兄ちゃんは…兄ちゃんは…っ!!  
 
 
「ちょっとバカキョン! ちゃんとみててよ!」  
 ああそうだな、俺は馬鹿だ…。  
 全米が泣くほどの今世紀No1馬鹿兄貴だ…。  
 まさに『地獄行く!』と、世間様から後ろ指刺される馬鹿兄貴だ…。  
「わ、わかったわよ、バカっていうのやめる!」  
 ああ、ありがとね、ホントありがとね…。  
 問題はそこじゃないんだけどね…。  
 
「…ねえ、『キョンにぃ』…」  
 はい、なんでしょうか、めそめそ。  
「キョンにぃは… だれが、いちばん …スキなの…?」  
 
 
 ギ ク リ  
 
 
 俺は国語とか好きかな。  
 ハルヒくらいの時は図工なんかも得意だったぞ。  
 豆電球の実験とか面白かったから理科も割と好きなほうだ。  
 算数とか社会は覚えるばっかりで正直好きじゃなかったな。  
 人前で歌うのとか恥かしかったし音楽もちょっと苦手だな。  
 あとはそうだな、やっぱ俺も男の子だから体育なんかはすk  
 
「そうじゃなくて… 『だれが』って…きいたの…」  
 う…ぐ…。  
「さっき、キョンにぃ…へやでみくるたちと…キ、キスしてたでしょ…」  
 ふが! まずそっちからバレてるのかよ!  
 
 
「それにおふろばで、りょうこねぇたちと…なんか…えっちなことも…」  
 
 
 …もう言い訳はよそう。  
 この期に及んで男らしくない。  
 これ以上無いくらい男らしくない所まで落ちてしまってはいるが。  
 男らしくないというか「人でなしLV」にまで。  
 しかしハルヒ、なんでその事を知ってるんだ?  
(あの4人にはしっかり口止めしたはずなんだが…)  
 
「…ドアのまえで、きいてたから…」  
 『偶然、2回も』か…、さすがだな超監督…。  
「 … がぅ… 」  
 がう?  
「ちがうの…」  
 何がだ。  
「いつもキョンにぃにきづかれないように、へやのまえですわってるから…」  
 
 廊下で一人、ヒザを抱えてポツンと座ってるハルヒを想像した。  
 ま、待ってくれ、確かにキュンとくるシチュだが、それお前のキャラか?  
 
 …あれ? ちょっとまってくださいよ、妹さん?  
 いつもってことは、…まさかトイレの前でも…。  
 
「………」  
 
 ごわっぷ! 無言の肯定! プライバシー皆無!  
 しかもそれ長門のキャラだし!  
「そんなことはどうでもいいの!」  
 いや良くないよ。若いおなごが男のトイレの前で  
「キョンにぃは! だれがスキなの!?」  
 ぐぉ。はい、どうでもいいことでした。  
「みくる!? つるねぇ!? りょーこねぇ!? それとも…」  
 おわっ! ハルヒのヤツイスに座ってる俺のヒザに登って来やがった!  
 近い! 顔近いッス! 何で責めてるそっちが半泣きなんですか!  
 くそ、スパッツごしの尻肉の柔らかさが…。  
 パジャマなんかに着替えるんじゃなかった!  
 
「… スキ なの …」  
 
 うわぁ… お前、目… 綺麗なんだな…。  
 って、あれ? 今なんかイントネーションが違いませんでした?  
 
「どうしていつも、あたしだけのけものなの…?  
 どうしていつも、あたしにだけやさしくしてくれないの?  
 どうしていつも、あたしにだけ…わらってくれないの?」  
 
 いや、そんなつもりは…。  
 
 
 
「あたしはキョンにぃがいちばんなのにっ!!」  
 
 
 
 ハrぅぷっ!?  
『ガツンっ!!』  
 
 
 
 っつつぅ…。  
 ファカ、お前…、はんらりひきほいふけへ顔ひかるけるから…。  
「ひらぁい…」  
 これ以上無い位のしかめっ面で、みっともなく口を抑える俺とハルヒ。  
 前歯、だいじょうぶか?  
「らひひょぶ… あ… ひが…」  
 何? どっか切ったか。ホレ見せてみろ。  
 いーってしてみろ、いーって。  
「ひがう… これ、あたひのチじゃない…」  
 じゃあ俺のか。あ、本当だ。左の上唇がちょっと切れてら。  
 この程度なら舐めときゃなおれるっぷ!?  
 
 
 
 くちゅぷ… ぺちゅる… ぷちゅっ…  
 
 
 
 うわぁ…ぁ ハルヒの舌が、唇と歯の間を… ぷりゅぷりゅと…  
 舌、小さいなあ…。  
 これがハルヒの体液の味かぁ… ぁぁ、ヤバい、クラクラしてきた…。  
 
 
 
 ハッ!!!  
 い、いかん! これでは風呂場の二の舞だ! 頑張れ俺のサイドブレーキ!  
 もう結構な勢いで間に合ってないけど!  
 ハルヒの両肩をそっと掴んで、ゆっくりと身体を離す。  
 …いま、『ちゅぱっ…』とか音がしたけど、お兄ちゃん気にしないぞ!  
 
 
 あのな、ハルヒ  
「キョンにぃがいおうとしてること、わかってる…。きょうだいでは  
 こういうこと、ほんとうはしちゃいけないんでしょ?」  
 さすがだな、賢くてお兄ちゃん嬉しい。だが、わかってるなら…  
「ねぇキョンにぃ… べんきょうのつづき…」  
 うん? ああそうだな、保健体育とか言い出さなければ構わないぞ。  
「ちがう、しゃかいのべんきょう…」  
 社会? なにか解らないことでもあったのか?  
 
 
「…がっこうのしゃかいのじかんでね コセキトウホン、ってならったの…」  
 
 
 おいちょっと待ってくれっっ! そんな直球古典むしろ神話クラスベタな!  
 
 
 
 
「キョンにぃとあたし… ちがつながってないの…」  
 
 
 

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