「長門、お前が俺んちまでくるなんて珍しいな……ってか、はじめてじゃないか?」
インターフォンに出てみれば、見慣れた玄関にちょこんと立って俺を見上げていたのはSOS団誇る万能
宇宙人端末こと長門有希そのひとであった。
……嫌な予感がする。ものすごくする。また何かあったんじゃないだろうな。
そもそも、涼宮ハルヒと出会ってしまってからこっち、珍しいイベントがすなわち俺にとっての凶事で
なかった試しなどないのだ。
「問題が発生した。協力をお願いしたい」
やっぱりか。
で、問題ってまたハルヒがらみなのか?
「違う。今回の問題は涼宮ハルヒは一切関係していない。こちら側の不手際。あなたに頼むようなことで
はないと解ってはいる。でも、出来ればあなたに協力してほしい」
それはかまわないが、俺で良いのか?
俺で長門の力になってやれることなんてそうはないはずだが。逆ならそれはもう山ほどあるだろうがな。
「今月分の生活資金の入金が滞っている」
そういやお前らの生活資金ってどこから出てるんだ?
「情報統合思念体の管轄下にある財団から毎月一定額が支給される。資金捻出の仔細な方法については他
の端末の領分。わたしは知らされていない」
情報操作でぱぱっと金を捻り出したりできるんじゃないのか?
「金融情報の大幅な改変は世界的に経済に後遺症を残す。避けるべき」
で、その振り込みが滞ってるって?
「そう」
それで、なんでまた俺んちなんだ?
「食費が底をついた。今日の夕食をお願いしたい」