「今朝未明、大型で強い閉鎖空間が近畿方面を直撃しました」  
「……台風かよ…」  
古泉のビミョーにボケを挟んだ報告に俺はビミョーなツッコミをいれる。  
 
放課後の部室。  
先程まで、掃除当番中の朝比奈さんを除く団員全員が揃っていたのだが(別に何かするでもなかったが…)、  
ハルヒが突然、何かを思い出したように立ち上がると、そのままスタスタと部室を出てどこかへ行ってしまった。  
トイレか?  
まぁ、あいつの突飛な行動にも、もう慣れたものだった。  
 
ハルヒが出て行った直後、古泉が切り出したのが、さっきの報告。  
「キョンくん…涼宮さんに何かしましたか?」  
古泉の問いに対して、俺はここ数日間のハルヒと自分の関わりを思い出してみた。  
「いや…特に何も…」  
本当のことだ。  
最近は、いつものように部室に集まって。  
いつものようにハルヒがどっか行くとか言い出して。  
いつものように結局何も無くて終わる、といった毎日だった。  
「そうですか…僕はてっきり朝比奈さんと何かやらかしたのかと…」  
「おいおい、勘弁してくれよ」  
「…だって、今日は朝比奈さんを見かけてませんし…」  
「掃除当番なだけだって…」  
「そうですか」  
古泉はどうにも納得していない様子だった。  
でも、正直ハルヒの不機嫌の原因を全て俺の責任にされても困る。  
俺だって四六時中あいつと一緒にいるわけじゃないんだし。  
「わかりました…」  
そう言うと、古泉は椅子から立ち上がった。  
「おい、どこ行くんだ?」  
「すみません…今日は失礼させていただきます」  
古泉はそのまま部屋を出て行った。  
閉鎖空間の原因が俺じゃなかったから、それ以外の原因を探しに行ったのだろうか。  
それとも『機関』とやらでその原因の会議でもするのか。  
 
「……おそらく…」  
 
うお!びっくりした。お前本読んでたんじゃなかったのか。  
二人だけになった途端に長門がしゃべり始めた。  
 
で、おそらく何だ?  
「おそらく…何もしなかったのが要因」  
え?何もしなかったのが要因って、どういうことだ?  
「長門、それってどういう…」  
「あなたはあの日のキス以来涼宮ハルヒに何もしていない」  
うっ  
「女の子は恋のことでは純情で臆病になる」  
長門は続ける。  
女の子?純情?臆病?ハルヒが?  
「本当はHなこともしてみたいけれども、自分からは言い出せないから…  
 男の子から積極的にアプローチしていてくれるのを待ってるものなのよ」  
そっ、そうなのかぁーー?!  
って言うか、今日の長門はちょっと変。  
女の子とか恋とか、自分からこんな話するヤツじゃなかったはずだ。  
…って、ん?  
ここまで来て俺は長門が今手に持って呼んでいる本に目が行った。  
 
  『少女コミック』  
 
なーるほど…  
長門も案外影響されやすいんだな…  
なんて思っていると、長門は『少女コミック』を傍らに置くと、椅子から立ち上がった。  
そして、トテトテと歩いてこちらに向かってくる。  
「……来て…」  
俺のすぐ側まで来ると、俺の服の袖をクイクイと引っ張りながらそんなことを言う。  
何だ?何処へ連れてこうってんだ?  
とりあえず、ハルヒもいなくなって暇になったので、ともかくも長門の言うとおりにしてみることにした。  
 
 
 
放課後でほとんど誰もいなくなった校舎内を、俺は長門についていく。  
「…ここ」  
やがて、長門はとある場所の前で立ち止まった。  
「…保健室…ねぇ…」  
俺がハルヒに何もしなかったことと、保健室と一体どういう関係があるのか…  
ひょっとして、さっき出て行ったハルヒがここにいるとでも言うのか。  
うーん…  
ハルヒのキャラ的に想像しづらいけど、長門が言うように少女漫画的な展開があるとしたら、  
ハルヒがここで独りふさぎこんでいるのか?  
「入って…」  
俺が考え込んでるのをよそに、長門は保健室の扉を開け、中に入っていく。  
「お…おい、ちょっと待てよ」  
何だかいやな予感がしたが、長門がさっさと行ってしまうので、俺は慌てて続いた。  
 
……あれ?  
誰もいない。  
今入ってきた長門と俺以外誰もいない。  
「何なんだ…?」  
おかげでわからなくなった。長門は何がしたいんだ?  
俺が長門の様子を見ていると、長門はカーテンで仕切られたベッドの方へ向かって行く。  
あ、まさかその中にハルヒが…  
シャッという音とともに長門が仕切りカーテンを開ける。  
…うーん…  
やっぱり誰もいないぞ。  
じゃぁ、何で保健室なんかに来たんだ。  
「大丈夫、誰もいない」  
何が大丈夫なんだ?  
何だ?さっきの行動は誰もいないことがわかってて、そのことを確認したのか?  
別に二人だけで話がしたいんなら、さっきの部室でも同じ状況だったのに、何でこんなところへ。  
俺が頭の上に「?」をいっぱい浮かべてる中で、長門はひとしきり部屋の様子を確認し終えると、  
トテトテと俺の方に向かって来る。  
そして、俺の目の前で立ち止まり、俺の顔を見上げた(身長差のためどうしてもこういう格好になる)。  
 
「今から予行演習を始める」  
 
は?予行演習?何の?  
 
「あなたと涼宮ハルヒの次のステップの予行演習」  
 
は?えぇっ?!次の段階って…  
 
「まずはキスから…」  
長門は俺の目を真っ直ぐに見つめている。  
 
白い肌に感情の欠落した顔。ボブカットをさらに短くしたような髪が、それなりに整った顔を覆っている。  
しかし、そんなに見つめられると、なんというか、恥ずかしい。  
「え…と、その、ここで?」  
俺は何だか場が持たなくて、よくわからない質問をしてしまう。  
「大丈夫。問題ない。この空間をわたしの情報制御下においた」  
長門の言葉に、俺はハッとなって自分の後ろを振り返る。  
そこにはただの壁だけがあった。  
そう、壁だけ、本当に壁だけ。俺たちが入ってきた扉が無くなっている。  
「他の有機生命体は干渉できない。これで安心して存分に演習できるはず」  
いや、しかし、この行動は…  
俺の頭に、濃い眉と清潔そうな長い髪が印象的な元学級委員長の顔が浮かんだ。  
そして、背スジに薄ら寒いものを感じるのだった。  
「……?…」  
長門は相変わらず俺の方を見つめ続けている。  
どうやら本人は大真面目なようだ。  
どうしよう、何だかだんだんどうでもよくなってきた。  
というか、この状況が長門に『はやくぅ』と急かされているみたいでなんだか良いかもしれないとか思い始めていた。  
実際には『はやくぅ』なんていいそうも無いが。  
「……早くして…この空間も永久に留めておけるわけではないから」  
うーん…精々こんな感じか…でもいいや。  
俺はもう調子に乗ってしまうことにした。  
長門の方に向き直ると、長門の両肩を両手で掴む。思ったよりも華奢だ。  
細すぎる。力を入れたら壊れてしまいそう。  
長門の瞳は真っ直ぐに俺の瞳を見つめている。  
俺を見つめる闇色の瞳。何だか吸い込まれてしまいそうだ。  
俺は、ゆっくりと長門の顔に、自分の顔を近付けていく。  
「長門…あの…目を閉じてもらえないか…」  
何だか、じっと見られてると恥ずかしい。  
「問題ない」  
いや、俺の方は問題なんですけど。  
「それよりもわたしにはこの演習を隈なく見届ける義務がある」  
そうですか。じゃぁ。  
俺はゆっくりと目を閉じる。  
こういう時って、女の方が目を閉じるんじゃなかろうか。  
などと、考えながらも、自分が目を閉じてしまうと不思議と落ち着いてくる。  
「……有希…」  
俺は調子に乗って、いつもの苗字ではなく名前の方を呼びながら、  
ゆっくりと長門の唇に、自分の唇を重ねた。  
 
柔らかい。長門の唇。  
不思議な感覚だ。女の子の唇ってこんなに良いものだったのか。  
正直、ハルヒとキスしたときは、非常時で、もう無我夢中で、よくわからなかった。  
俺は初めて覚える感覚に感動した。  
が、  
 
「……━━━━!!」  
 
し、舌が!長門の舌が俺の口の中に入り込んでくる。  
こ、こいつ何処でこんなこと覚えて…  
「うわぁっ!!」  
俺は思わず長門の肩を掴んだ手に力を込め、長門を引き剥がしてしまった。  
目の前にはペロッ舌を出したままになっている長門の顔。  
その舌先から長門の唾液(?)が糸となって俺の唇まで繋がっている。  
「何故?男の方から勝手に話すのはルール違反」  
長門の咎めるような口調。  
でも、仕方ないじゃないか。  
「いや、そ、その…し、舌が…」  
言いながら思った。  
俺の方が女の子みたいだ。  
「お互いの舌を絡めるのは次のステップでの必要事項」  
そりゃ、そうかも知れないけど、こっちは初めてなんだから。  
「舌を絡めあうことで性的興奮を高めあうのは重要」  
性的って…  
「続ける。どうしてもやりにくいなら、わたしは目を閉じるから」  
そう言って長門は自分の唇をやや上に向けたまま。ゆっくりと目を閉じた。  
うわ、これって『はやくぅ』って言ってる体勢だ。  
でも、あらかじめ唇がやや半開きになってるのが、『やる気』って感じで怖い。  
ええい!女々しいぞ!俺!  
長門がここまでしてくれてるんだ。  
俺も『本番の予行演習』ということで腹を括れ。  
「いくぞ…長門…」  
「………」  
長門は何も答えない。先程の『はやくぅ』のポーズを維持している。  
俺は再び長門の唇に自分の唇をゆっくりと重ねると、  
今度は自分から舌を入れてやった。  
お互いの舌が触れ合ったとき、長門の身体がピクリと震えた。  
そんな気がした。  
 
「んんっ…んっ……」  
いままで聞いたことのない長門の声。  
声と言うか、これは自然に漏れてしまう音のようなものなのだろう。  
よくわからない。だって、こんなことは初めてだったから。  
どうしたら良いかよくわからないけど、俺はとにかく一生懸命に自分の舌を動かした。  
長門の口内を這い回るように、いろいろと動かしてみた。  
自分の舌を彼女の舌の上においたり、舌のまわりに巻きつけたりしてみた。  
これでいいのだろうか?このやり方で合ってるんだろうか…  
いや、正解なんてわからない。  
でも、唯一つ解っていることがある。  
とても、気持ちが良い…  
「はぅ…んっ……」  
今、俺たちはどうなっているんだろう。  
気になった俺は閉じていた目をゆっくりと開いてみた。  
そこにあるのは長門の顔。意外にもその頬は今までになくピンク色に上気して見えた。  
そんな、本来アンドロイドであるはずのこいつが、こんなことって…  
俺は、ゆっくりと長門から唇を離した。  
絡み合った二人の舌が離れ、先程と同じように透明な糸がお互いの間に引かれる。  
「長門……お前…」  
顔を離してみると、その現象は顕著に見ることができた。  
長門の頬がうっすらと赤みを帯びている。  
「……ん…」  
長門がゆっくりと目を開ける。  
その瞳は心なしか潤んで見えた。  
「性的興奮は高まった?」  
そう言いながら、長門が俺の股間に手を伸ばしてくる。  
うわっ、そんな、ヤバい。  
抵抗する間も無く、長門の手に触れられてしまう。  
「………」  
正直、性的興奮は高まっていた。  
ちょっと硬くなってる…  
「良い調子」  
ごめんなさい。とても順調です。  
そろそろ手を離してくれませんか?俺の大事な部分が更にヤバくなりそうで…  
「では続ける。今度はわたしの胸を探りながらして」  
などと、俺の股間を探っている長門が言う。  
えっ?胸って…やっぱり最後までしちゃうのかな…  
でも、はっきりいって、俺の股間がだんだん収まらなくなってきているかもしれない。  
このまま行っちゃっていいのか?  
でも、長門はなんだかヤル気まんまんだし、良いのか…  
俺は言い知れぬ罪悪感にを覚えながらも、  
やっぱり男の子だった。  
長門の肩に片手をかけると、もう片方の手を、長門の胸の辺りに伸ばしていく。  
が、そこで戸惑った。  
 
何と言うか、『探る』って言うほど  
「胸が無い…」  
 
 
 
 
「…………」  
 
 
 
「…………」  
 
 
 
 
 
しまったぁああああああああぁあああああああ!!  
ついポロリと口からでてしまったぁあぁあああ!!  
あぁ、長門の身体が俺から離れていく。  
さっきまでちょっと潤んだ瞳に見えていたのが、いつもの無表情だ。  
というか、  
「ひょっとして、怒ってる?」  
いつもの無表情だけど、心なしか眉がつり上がってるような気がする。  
 
「いくつかの段階を省略することにする」  
 
次に長門が発したのはそんな言葉だった。  
『胸を探りながらのキス』を省略するのはわかった。  
『いくつか』って、何処をどう省略なさるのか…  
 
「…キャスト・オフ……」  
 
長門がそういった瞬間、俺の目の前で、長門がいつも着ている制服の上着が四散した。  
細かい粒のようになって飛び散っていき、消えてなくなる。  
長門風に言うところの「情報連結を解除した」のか?  
凄ェ!  
何が凄いって?  
良く見ろ。  
四散したのは上着だけじゃない。  
スカートも無くなってるんだ。  
上はセーラー服で、下はパンツ。でも靴下は残っている。  
何ともマニアックな状態だ。  
しかも、上のセーラー服のリボンは解けて前が開いているとは芸が細かい。  
…っていうか  
「いくつ省略したんだ?…」  
かなり端折ってるよこれ。  
「問題ない。一番重要な部分は残してある」  
長門はそう言うと、傍らにあったベッドに腰掛けた。  
そうか、このために保健室なわけか。  
思えば最初からヤル気だったのか…  
「さぁ、早く来て。有機生命体の男子が、女子のこの部分を暴くのは重要」  
長門はゆっくりとベッドの上に寝そべっていく。  
回りくどいが、要するにパンツはあなたが脱がせてねってことか。  
 
わかったわかった。  
あくまで『予行演習』な。  
俺は自分にそう言い聞かせて長門の元へ向かった。  
もっとも、これ以上進んだら『本番』であることに相違ないことは頭の片隅でわかっていたが。  
 
 
たどり着くと、長門は仰向けに、膝を折り曲げた状態で寝転んでいた。  
俺は長門の傍らに腰掛けると、彼女の腰に向かって手を伸ばしていく。  
そして、パンツに手を掛けた。  
「い、いくぞ…」  
バカ!何がいくぞ、だよ。気合入れ過ぎだよ、俺。  
「早くする。そこで時間をかけると、余計に羞恥心が高まる」  
天井を見たまま、長門が俺に忠告する。  
羞恥心が高まるのは俺の方なのか、お前の方なのか。  
いや、この場合、『演習』対象となっているハルヒのことを言っているのか。  
ハルヒに羞恥心ってあるんだろうか…  
もし、あいつとこういう状況になったとしてもだ。  
自分から脱いで、パンツを俺に投げつけてきそうな気がする。  
などと、考えて気を紛らせながら、俺は長門のパンツを動かしていく。  
なるべく素早く。今、膝を通過したところ。  
残念ながら、膝を折り曲げた状態で、長門の大事な部分は隠れていてまだ見えない。  
それでも、腰の部分にパンツのラインが無くなっている状態というのは見ていて興奮する。  
 
長門の足首にパンツが掛かった。  
「片方の足首に引っ掛けたままでする?」  
「何処の知識だそれは……」  
まったく、なんだかさっきからこいつの知識はどうにもマニアックな方面に偏っている気がする。  
ともかくも、足首からパンツを抜き取った俺は、それをベッドの傍らに置いた。  
 
いよいよか…  
俺はベッドの上に乗ると、寝転んでいる長門の足元に膝を突いて座りなおす。  
そうして、立てている長門の両膝に手を掛けた。  
「長門…いいか?」  
「許可をとらなくていい。本番では逆効果ともなり得る」  
長門は相変わらず視線をこちらに向けない。  
今となっては何だかそれが恥ずかしがってるようにも思える。  
 
俺は、長門の両膝を拡げて行く。  
目の前に露わになる長門の女性器。  
控えめの陰毛は、柔らかな縦スジを隠し切ることは出来ず、  
性器の柔肉の形がはっきりと目で判る。  
初めて見る女性の大事な部分。  
俺は頭に血が昇っていくのを感じ、自分の性器もまた反応し始めているのを感じていた。  
「あまりその部分を凝視すると、羞恥心が高まる」  
長門に言われて、俺はハッとなった。  
いつの間にか長門のソコに見入っていた自分に気づく。  
「何だ?やっぱりお前でも恥ずかしいのか?」  
「違う、羞恥心が高まるのは涼宮ハルヒ。あまり過ぎると、暴走しかねない」  
う、確かにそれはそうかも。  
 
長門の膝を掴んでいた片方の手を、その性器に向かって這わせていく。  
内腿を通過するとき、長門がピクッと震えたような気がした。  
しかし、拒否はしてこないし、忠告もない。  
これで良いのか。俺はそのまま手を進める。  
「んっ…」  
その部分に手が触れた時、長門の口から微かに息が漏れた。  
柔らかい、柔らかい緩やかな双丘に俺の指が触れた時、長門がギュッとシーツを握ったのが見えた。  
でも、ここからどうしたらいいんだろう。  
わからない、わからないけど、とにかくその形を確かめたくて、俺は自分の中指を長門のワレメに這わせた。  
微かに湿り気を帯びているような気がする。  
「違う…」  
天井を見つめたままの長門が言う。  
あれ?俺、また何か間違えたか?  
 
「違う、そうじゃない。きちんとわたしの目を見ながらやりなさい」  
 
は?  
 
「…と、涼宮ハルヒなら言うはず」  
 
ホントかよ……  
 
 
まぁ、ここまで来たら言うとおりにするか。  
俺は屈めていた上半身を起こす。そして、寝転んでいる長門で、横に俺も横になった。  
「長門、こっち向いて」  
言われた長門は、素直に身体をこちらに向ける。  
ちょうど、ベッドの上で向き合う状態になった。  
「長門……」  
こうした状態で、俺はまた、長門の股間に手を伸ばしていく。  
再び、俺の指先が長門の性器に触れる。  
が、長門の表情に変化は無い。  
俺は長門の性器の上で、自分の手を動かし始めた。  
もっと、弄るように指を使ってみようか…  
うぅ…や、柔らかい…  
少し力を入れただけで崩れてしまいそうだ。  
乱暴に扱うことはできない、俺は逡巡するように、長門の縦スジを指でなぞり続けるのみだった。  
「な、なぁ長門…これで良いのか?」  
「いちいち確認しなくて良い」  
あれ?何だかさっきまでと返答が違う。  
でも、相変わらず長門は無表情のままだ。  
いや、違う。違うぞ。  
よーく見ると、眉毛がピクピクと動いている。  
目の前にある長門の顔をよーく観察しているとわかる。  
時折眉間に皺が寄ったりする。  
何だ?こいつ、ひょっとして我慢してないか?  
 
「ひょっとして、気持ち良いのか?」  
「…おそらく、こういった行為で女性は性的興奮を得られると思う」  
いや、そうじゃなくて、お前は、長門有希はどうなの?  
何だかだんだんじれったくなってきた。  
 
俺は上半身を起こすと、再び長門の足元に座った。  
そして両手でもって長門の両足を拡げると、  
我ながら大胆にも顔を長門の股間に近付けていった。  
「あっ……それは…次のステップ…」  
あぁ、そうだよ、これからは俺が積極的に進めてやるよ。  
長門の股間をまじまじと見つめてみる。  
うーむ、よくわからんけど、良くできてると言うべきか。  
凄く卑猥に見える。  
目で確認しながら手で触れてみる。  
あ。これって開くのか。  
ピッタリと閉じたままになっているワレメに指で触れ、左右に開いてみる。  
「……ん…」  
また、長門の内腿がピクッと震えた気がした。  
俺の目の前に現れたのは鮮やかなピンク色。正に人間の内側といった感じの色。  
そうか、よく『アワビみたい』とか言われてるのって、この部分のことなのか。  
 
で、どうしたら良いんだ、これ?  
 
「…よく濡らして…」  
 
長門のボソボソとした声が聞こえてきた。  
え?濡らすってどうすんの?  
「…最初は手で…まず片手でゆっくり解して、柔らかくなってきたら、指1本入れてみて…また解して…少し濡れてきたら、舌で解す」  
わかった。ありがとう、長門。  
でも、さっきまでよりだんだん声が小さくなってきてないか?  
 
…とは言っても、入れるって…ここで良いのか?  
俺は拡げた性器の下辺に位置する窪みに指を近付けていく。  
 
「……ふぅっ…」  
 
その部分に触れた時、長門から小さく息が漏れるのが聞こえた。  
うぁ…俺の指が、長門の中に吸い込まれていく。  
そうか、ここが膣口ってやつか。保健で習った気がする。  
え?でも?この穴、何と言うか、狭すぎないか?  
だって、ここに挿入するわけだろ。男の肉棒を。  
俺は別にサイズ自慢するつもりは無いが、とてもここに収まるとは思えない。  
何故なら長門のこの部分は、俺の中指一本でもいっぱいいっぱいのような…  
 
「ちょっと待って。指の反復の速度が強すぎる」  
 
長門に言われて気づく俺。  
ごちゃごちゃと考えながら、いつの間にか指を長門の中に出し入れしていた。  
 
でも、長門の中って良い感触。  
ヌルヌルしていて、でも、ところどころにデコボコがあって。  
触っていて気持ちいい。  
そうか、このヌルヌルしたのが濡れるってことなのか。  
そういえば長門に出し入れしている俺の指が、だんだんとこのヌルヌルで覆われてきた。  
や、『ヌルヌル』じゃない。これは『愛液』ってんだ、思い出した。  
俺の中指が部屋の光を鈍く反射している。  
「待って……速すぎる…」  
あ、何だか、長門のここが解れてきた気がする。  
さっきまでは直線的に動かすだけだったけど。  
俺の指が若干だけど、本当に僅かだけど、横方向にも動くよ。  
それに、指の滑りがよくなってきた気がする。  
ひょっとしたら、指2本入るんじゃないか?  
俺は、中指を抜き出すと、中指と人差し指をきっちりと揃えてまあ長門の中へ入れた。  
「……あ…あぁ…」  
うぁ…入ってくよ。  
凄くきついけど、指2本入っていく。  
長門の中の感触がより良く分かる。  
特に、この上の天井部分が気持ちいい…  
 
「……ま、待って…あっ…ダメ…」  
 
長門が、珍しく大きな声を出したかと思った次の瞬間。  
ピシャッ!と俺の顔に何かが吹き上がってきた。  
何だ?なんだか生温かい…  
 
「あ…」  
 
その生温かい液体は、俺が指を挿入している長門の膣口の僅かに上方から噴出していた。  
ひょっとして……おしっこ?  
 
「うわぁっ!!」  
 
俺は慌てて長門から身を離した。  
いや、汚いとかそういうことじゃないぞ。決して。  
「長門、別に汚いとかそういうわけじゃないから…」  
何で言い訳してんだ俺は。  
とにかくびっくりしただけだって。  
 
「……………」  
 
長門から返事が無い。  
ただ、途中で止められないのか、長門の股間からはチョロチョロとおしっこが漏れ出していた。  
いや、おしっこでいいのか?  
 
だんだんと噴出す勢いが弱まっていく。  
やがて、完全に収まると、長門はプルプルッと身体を震わせた。  
やっぱりおしっこだったんだ。  
 
「…………」  
 
な、長門……?  
長門は顔を背けている。こちらからは表情が見えない。  
 
「……このように…」  
 
な、何?  
 
「…女性は男性に比べて尿道が短く、失禁しやすいので注意すること……」  
 
そうですか。ごめんなさい。  
 
でもな、長門  
「お前、ホントは気持ちいいんだろ?」  
 
 
 
「……違う…これはあくまで演習。擬似的にわたしが体現しているだけ。言わば演技」  
 
演技……ねぇ…  
 
ホントにか?  
 
  (続く)  
 

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