なんで俺はこうしているのだろう?  
 広い湯船に浸かりながら、おれはそんなことを考えていた。  
 高級分譲マンションの浴室はウチの風呂場なんかよりも広くて。  
 湯船だってでっかい。  
 一人で入れば十分に手足が伸ばせるくらいだ。  
 一人で入れば、だけどな。  
 
 問題は、湯船の中で俺の股の間に長門が座っているわけで。  
 俺的にも十分手足が伸ばせないわけで。  
 
 いや、そんなのはどうでもいい。  
 それより長門のうなじだ。  
 いやうなじじゃなくて。たしかにうなじは白くてなんか見てるとゾクゾクするけど、この場合はそれほど重要じゃない。  
 
「長門、この風呂ぬるくないか?」  
「……ぬるめのお湯に長時間浸かるほうが熱いお湯に短時間浸かるよりも健康には良い」  
「そうなのか?」  
「そう。ぬるいお湯に長時間浸かることで身体の芯まで温まる事が可能。熱いお湯では  
あまり長時間入っていることが出来ない。身体の表層しか温まらず、入浴による温熱効果は  
半減してしまう」  
「……そうなのか、知らなかった」  
「今後もあなたはぬるめのお風呂に入るべき」  
「わかった……わかったけどな、ちょっとだけ身体を離してくれるとありがたいのだが」  
「…不愉快?」  
 長門は首を廻して俺の顔を覗き込んでくる。  
 その瞳にほんのわずかな分量で「不安」の色が紛れ込んでいる。  
 俺はその瞳が痛々しくてたまらなくなる。  
「不愉快なわけないだろ! ……ただ、その……お、お前の……し、尻が……当たってて……」  
「構わない」  
「いや、だってその、長門の尻が柔らかくてついこうなっちまってだな、……え?構わない?」  
「あなたの男性器と触れ合うことに嫌悪感はない」  
 そう言う長門の視線は真っ直ぐ俺を貫いている。  
「あなたが私の身体で性的興奮を覚えているということは私の中にエラーを誘発させる」  
 いや、エラーはまずいだろエラーは。  
「……構わない」  
 そう言う長門の目は少し潤んでるようにも見える。  
 長門は正面に向き直る。また白くてステキなうなじが俺の視界には入るわけで。  
「あなたはもっと肩まで浸かったほうが良い」  
 そう言うと、長門は俺の腕を掴むと自分の腰を抱くような形に持っていく。  
 細っ。  
 いや、長門の身体の細さにビックリしてる場合じゃない。  
 固くなりすぎたマイ・キャノンが長門の尻にぴったりと押し付けられてるわけで。  
 そして両腕が長門の胴体に巻き付き、肘の内側辺りに長門のちょっと固くなった胸の先端が  
当たってるような当たってないような、って乳首が乳房のちょっと柔らかくてふっくらと?  
 
 俺の脳はスパークしかけているらしい。長門の髪っていい匂いすんなあ。  
 って、長門の後頭部に鼻先を突っ込んでる俺はなんなんだ?っていうかいつの間に?  
「もっと」  
 そう言う長門の横隔膜の振動が腕に伝わってきて痒いです先生。ってだれだ先生って。  
「強く抱きしめてくれると嬉しい」  
 ぎゅっ、とこうですか?  
 って何で俺は全身で長門の身体をぎゅっとしてるんですかって細い柔らかい肌がすべすべで  
もっと強く触りてえってそれでもいいのかいいのだ―――――――――  
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キョンが暴走しかけたまま終わる  
 

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