長門有希が最も恐れる事……
それは自分の「知性」が消失することであった
キョンと文芸部室で出会ってからは……
その後の事はなんでも全て覚えている……
学校の机の変なラクガキだとか
布団の毛布やゴミのにおい
扉の開閉の音や トイレの音……
キョンたちが世間話をしているのを聞き……
みんなが笑いあっていた事…
全て記憶している……
だが文芸部室以前のことは……
ただ命令に従い……
自分の意思もほとんど無いまま
「涼宮ハルヒ」を観察する……
それしか「記憶」にない……
そうやって3年間も生活したはずなのに……
ある記憶はただそれだけだ……
機械のような記憶―――
生きるという事はきっと「思い出」を作る事なのだ…
長門有希はそう悟っていた―――
それを失うこと…それだけが怖い
キョンが涼宮ハルヒや他のSOS団メンバーのために行動しているのは……
きっといい「思い出」が彼の中にあるためなのだ
それが人間のエネルギーなのだ
「思い出」が細胞に勇気を与えてくれるのは間違いない
SOS団に入る前の長門有希にはなかった感覚だ
今はある!
それが「知性」なのだ!
長門有希はそう悟っていた