七夕の夜からとある七夕の夜にかけて、俺が時を駆ける旅人と化した、あの  
日からわずか数日の事である。  
 ハルヒのメランコリーは日を追うごとに深くなり、本日遂に、その眉間に  
深い皺が刻まれるに至り、俺の午前中は地獄と化した。  
 ハルヒの奴、きっちり200秒感覚で溜息をつきやがる。こんなの数える俺も  
俺だとは思うが、周囲の人間が驚くくらいデカい溜息をつくハルヒもハルヒだ。  
「なぁ一体どうしたんだ」  
「別に」  
 このやり取りも、昼までに三度繰返した。俺は弁当を抱えると、谷口と  
国木田にすまんちょいと、と言って教室を出た。  
 振り返るとハルヒは、逆光の中で黒々と、席に座ったまま、窓の外を眺めて  
いた。  
 
「……という訳でだ」  
 長門よ、お前は何か知らないか。こないだ絡みにしちゃ、憂鬱の度合いが  
深すぎる気がするのだが。  
「特に異常は検知されていない」  
 マジか。信じて良いんだな。なぁ古泉。出てこいよ。  
「おや、訊きたいのは僕の方だったのですが」  
 半端にマジな顔をしたニヤケ面が、部室に入ってくる。  
「また涼宮さんにデリカシーにかける発言をされたんじゃないのですか?  
 思い出してみてください」  
 俺にはとんと覚えが無いのだが、っておい、俺にどういう疑いをかけて  
やがる、そもそもの前提からしておかしいぞ。ハルヒがデリカシーなぞ  
気に掛けるものか。  
 
 そんな訳で収穫無しに教室に戻ってみると、ハルヒは出掛けにみた姿勢  
そのままだった。  
 国木田に聞く。  
「うん、ずっとあのまま。一体どうしたんだろうねぇ」  
 さあな。多分変なモノでも食ったんだろ。  
 
 俺のその答えは半分合っていたらしい。  
 放課後、帰ると言い残してざっさと席を立ったハルヒの後ろ姿を眺めると、  
さて今日はどうしようかと教室を出たところで、見たくも無い顔と出くわした。  
「納豆が、消えたそうです」  
 偽丸太風の屋外テーブルの向かいで、古泉はこんな事を抜かした。  
「正確には、納豆菌が、らしいのですが」  
 さっき、昼休みのうちに、日本中の納豆工場の中の納豆菌が、全滅した  
のだそうだ。  
「機関の上層部は大混乱ですよ」  
 でも、と古泉は言い置いて続ける。  
「僕にとってはどうでも良いコトですね」  
 そうか、お前は関西人だったか。ああ、俺にとってもどうでもいい話だな。  
しかしだ、何故納豆なんだ。  
「おや、ご存知無かったのですか?」  
 
 今日7月10日は、全国的に、納豆の日、らしい。  
 
「知るか」  
 

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