追い出されるようにテントに戻った俺は、再度水筒を手に取り水分補給をしようとした。 どんなときでも水分補給は大事だぜ。
『第二走者スタートです』
走りすぎて疲れた俺にはどうでもよかった。 とりあえず水分を取らせてくれ。
「……」
いつの間にか目の前に長門が立っていた。 こいつワープも出来るんじゃないのか?
「出来なくは無い」
そうかい。
「来て」
無表情に俺の体操服を持つ長門。 お茶を飲んでからじゃダメか?
「だめ。 今すぐ来て」
長門からプレッシャーを感じた俺は、とりあえず走ろうとしたわけだが、
「ちょっと待って」
長門の静止が入った。 と思ったら長門がいきなり例の高速詠唱をはじめた。
5秒ほど待っていると長門が俺の服を持って走り出した。
俺も走ろうと思ったんだが、
「あなたは走らなくてもいい」
気付けば地面をすべるように移動してる。 というか完全に接地感が無いんだが…
「そいつはありがたいがどういう事だ?」
「あなたの体重を0にした」
さらっととんでもない事を言うな。 つまり俺は風船とかそんな類の扱いか。
「そう」
っと言ってる間にゴールだ。 後ろとは軽く20メートルは離れてるぞ。
見てる人も不思議に思っただろう。 何せ俺は足を動かさず、砂埃も立てずに引っ張られてたからな。
「長門、そろそろ体重を元にもどしてくれるとありがたいんだが…」
ゴールしたものの気を抜くとコケそうなので長門の肩に手を置いている。
「…」
「長門…」
「分かった」
長門が軽く頷き、再度高速で口が動き出す。
長門が言い終えたと同時に久しかった接地感が戻ってくる。
「で、長門の紙にはなんて書いてあったんだ?」
「…」
何か呟くと同時に紙を出してきた。 えーっと、『同じ部活の異性』か…
まぁ、古泉より俺を選んでくれたのはありがたいね。
「とりあえず長門、そろそろ戻ってもいいかな?」
いい加減にのどが渇いてきた。
「…」
「長門…」
「戻って」
長門の了承をもらった俺は再度テントに戻るのだった。 やけに後ろから視線を感じるが、気のせいだろう。