私とキョンが結婚してから十年がたつ。  
私とキョンは大学は別になってしまったが社会人になってから行われた高校の同窓会で再開した。  
私は仕事も順調で、男から言い寄られることも多く、オフの生活も充実していた。  
でも、しがないサラリーマンになっていたキョンを見たとき、なんてゆうか  
昔淡く寄せていた思いが結実して、この人のことを支えてあげたい、そう思ったのだ。  
しかし時がたつにつれ、私の心にはやるせない後悔の念ばかりがつのる。  
そもそもこうして家庭に落ち着いてしまうような平凡な人生こそ私が嫌い続けたものだった。  
なぜ私は刺激的な人生を捨ててしまったのだろうか。  
あの時キョンを見たとき感じだような強い愛情はいまはもう感じることはなかった。  
私が勤めていた会社は時代の波に乗り急成長した。後輩だった子は重役にまで上り詰めていた。  
たしかに仕事は続けていいとキョンは言った。しかし私は彼をなおざりにしたくはなかったし、  
生まれるだろう子どもとの時間を大切にしたくて専業主婦を選んだ。  
しかし実際、なおざりにされたのは私のほうだった。キョンの帰りは遅く、いつもへべれけになって帰ってくる彼を介抱して一日を終える。  
期待していた子どもはなかなかできなった。そのうちキョンはうんざりしてしまってセックスの回数も減っていった。  
夫婦の関係が冷え始めた。やっと妊娠した時、キョンはとても喜んでくれて私はとても嬉しかった。  
子どもができれば昔のような二人に、仲のいい二人に戻れる。そう思っていた。  
しかし待ち望んだ子どもを私は流してしまった。キョンは口では私をいたわる台詞を言っていたけれど  
その目はもう私に何の興味もないようだった。かつては美しさでキョンを引き止めておける自信があった。  
しかし誇りにしていた美しさも化粧品を買う余裕もない家計では保つことなど不可能だった。  
私は年相応以上にふけてしまった。そんなある日曜、家でだらだらしているキョンの部屋を  
掃除してやっていて、ふと机の上の携帯が振動しているのに気づいた。  
私はいけないと思いつつ手をとってしまった。そしてそうしたことを後悔した。  
聞き覚えのない女からのメールが着信していた。  
 
電話帳で検索してみる。ご丁寧にもプロフィールまでしっかり登録されている。  
私は怒りに震えた。見なかったことにしようと思い、携帯を閉じようとした。  
しかし少し気になることがあって見返してみた。・・・!この生年月日だとこの女は中学生ということになる  
中学生が相手になら啖呵をきってやろうと思った。どうせ金を渡せれているだけだ。  
しかってやればいい。私は強気になった。その女に家から電話をかけてやり、今日すぐ会う約束を  
とりつけた。帰ったらキョンにも問いただしてやろう。中学生を買ってるなんて幻滅だ。  
しかし電話をかけたとき少しおかしいと思うことがあった。それは声に聞き覚えがあったことだ。  
近所の喫茶店に私は彼女を呼び出した。ずいぶん待たせる。ルーズな子なんだなあと思いつつ  
窓から通りの景色を見ていた。そのとき懐かしい顔をみつけた。・・・みくる・・ちゃん?  
通りのむこうからみくるちゃんがこの店にむかって歩いてくる。おかしい。なにせ  
彼女はあの時のままなのだ。高校生の時の若い彼女のままなのだ。見間違いかと思った。  
いやあんなにかわいい子はそうはいない。しかもよく見ると彼女は私の母校東中の制服を着ている。  
混乱した。目を何度もこすっているうちに彼女は店に入ってきた。そして私に会釈すると私の席のほうに歩いてきた。  
まさか・・予感は的中してしまった。  
「お久しぶりです。涼宮さん。」そのしゃべり方は間違いなく朝比奈みくるだった。  
 
 

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