――――――願っていなかったと言ったら嘘になる。  
 
 
 
         しかし、その再会はあまりにも唐突すぎて。  
 
 
 
 
舞台設定、北高へと至る坂道。  
俺は北高へ向かって延々と続く坂道をチャリを押しながら黙々と上がっていた。  
冬休みだというのに何故学校に向かっているのかというと、  
SOS団の全体ミーティングは定期的に開催されるのであり、そして今日は部室の大掃除をする日となっているからだ。  
 
メイドな朝比奈さんがまめに清掃してくれているとはいえ、ハルヒは目に付いたものを片っ端からかっぱらってくるし、  
古泉は次々と新しいボードゲームを運び込んでくるし、長門は次々と分厚い本を矢継ぎ早に読破しては次の本を仕入れてくるし、  
朝比奈さんはお茶くみを極めるべく色々な茶葉を持ち込んでくるし、日に日に部室は混沌化する一方であった。  
 
部室がカオシックゾーンへと変貌を遂げる前に、年末ということもありそろそろ余計な私物の片付けを行う頃合だろうということで部室の掃除を行うことが決定したのである。  
はっきりいってめんどくさいが、どうせ家に居たら居たで自分の部屋の掃除をまかされるに違いないので  
不承不承ながら部室へと足を運んでいるのである。  
それに俺だけサボるわけにもいくまいし、朝比奈さんの姿も見られるし。シャミセンを蹴飛ばしながら一人で黙々と掃除機をかけるよりは  
随分とマシと言えよう。  
 
 
俺が部室棟にたどり着いたのはハルヒが設定した集合時間の一時間前だった。  
一時間も前に来たらさすがに長門以外のメンツはまだ来ていないに違いなく、だが長門はそこにいるだろう。  
…そういえば、まだ長門に礼を言っていなかったな。  
 
 
俺は誤作動を起こし、世界をまるごと改変した長門を元に戻しにいったときに朝倉涼子にナイフで刺されて意識不明の重体に陥らされた挙句、  
更に毎日だれかとセックスしないと凄まじい激痛を味わった上で死ぬという凶悪なウィルスに感染させられた。  
 
そのとき長門が施してくれた『だれでも好きな女の子とセックスできる能力』のおかげで俺は何とか九死に一生を得ることが出来たのだ。  
 
 
感謝の言葉を伝えるのなら朝比奈さんやハルヒにも言うべきなのだが、どうやら催淫効果のかかっているときの出来事は彼女たちの記憶から抹消されているらしく、  
ヤブヘビになるだけなので俺の心のうちにだけしまっておくことにする。  
出来ればもう一度ぐらい朝比奈さんのお相手をしたいところだが、それは朝比奈さんにも長門にも失礼な話だろう。  
朝比奈さん、あなたの艶姿とおっぱいの感触は一生忘れません。  
 
 
そんなこんなで、俺は部室の前の扉までやってきた。形ばかりのノックの後、返事を待たずに扉を開く。  
「よう」  
 
予想通り、部室の中で本を読んでいた長門に向けて俺は軽快な挨拶を送った。  
「なが…」  
 
 
――――――そして、俺は長門の顔を見て声を失った。  
 
 
 
俺の前にいたのは目を見開いて俺を凝視する長門。  
長門が、眼鏡のレンズごしに俺を見つめていた。  
 

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