「一週間ぶりね、長門さん。ご機嫌いかがかしら?」  
――――――朝倉涼子が、長門に告げた。  
 
 
 
 
 
12月24日。  
無事病院を退院し学校をサボる理由もなくなった俺は、冬休み前の最後の行事(つまり終業式)に出席した後  
かねてより予定されていたSOS団クリスマスパーティに参加していた。  
長テーブルの上ではカセットコンロにかけられた土鍋がグツグツ言っており、俺たちは雑多な食材が適当に煮えてるだけのその鍋を囲み昼飯代わりにしている。  
 
参加メンバーはいつものSOS団5人組と、スベシャルゲストとして呼ばれた鶴屋さん。  
現在の状況は、ハルヒがデタラメな順番で投入する肉や野菜類を布巾をかぶったメイドバージョンの朝比奈さんが  
菜箸でより分けたりこまめにアクをすくったりして鍋の世話をし、それを俺と長門と古泉と鶴屋さんはただ食いまくっているといった具合だ。  
 
鶴屋さんは黙々と(不機嫌そうに)食い続ける長門と張り合うようにいちいち雄叫びを上げながら箸を高速移動させて  
鍋の中身を自分の取り皿に運び込み食いまくっている。  
「やっぱ冬は鍋だねっ!さっきのキョンくんのトナカイ芸も大笑いだったし、いやーっ今日は楽しいなあっ」  
 
あんな似てないピンクレディーの物真似でウケてくれたのはあなただけでしたよ鶴屋さん。  
他の4人の反応で、いかに自分に人を笑わせる才能がないかということを理解できた一瞬だった。将来間違ってもお笑い芸人にだけはなるまいと心に決めたところであるが、まあそれはいい。  
 
鍋を食い終わった後、SOS団クリスマスパーティの二次会を長門の部屋で行うということになり、俺たちは  
様々な馬鹿騒ぎをひたすら繰り広げてそれぞれが目一杯クリスマスイブを楽しみまくった。  
 
二次会の内容だが、ハルヒと長門相手に脱衣麻雀をやって返り討ちにあったり、ツイスターゲームで  
ハルヒと押し合いへし合いしている瞬間、昨日の出来事がフラッシュバックして下半身がヤバい状況になったりと  
色々と羽目を外しすぎじゃないのかと思えるイベントも多々あったが何のその。  
 
 
 
それが、俺の選んだ選択なのだから。  
 
 
 
夜中の11時を回ろうかという時刻にパーティはお開きとなった。俺はハルヒたちと別れ一人で我が家までの道を歩いていく。  
長門のマンションから俺の家まではチャリで30分ほどのところにある。誘拐犯もホモの変質者もこの辺りに出没したという話を聞かないから、俺一人で帰宅しようが身の危険などないだろう。  
実際何の事件もなく自宅までたどり着いた。  
ハルヒたちとの馬鹿騒ぎで疲れてしまったこともあり、俺は風呂に入った後さっさと布団を被って眠ってしまう。  
 
 
眠りにつく前に、女の声を聞いたような気がした。  
 
 
 
 
 
 
 
――気づいたら暗闇の中に立っていた。  
 
 
座っているのかも立っているかも浮いているかも沈んでるかも止まってるかも流されてるかもわからないこの感触。  
何だか懐かしい感じがする。昨日訪れたばかりなのに。  
 
暗闇に光が射す。光は女の姿になった。  
 
 
 
 
――準備は出来たかしら?  
 
 
女が俺に語りかけ、俺に近づく。 逃げるという発想すら思いつかず、俺は立ち尽くす。  
 
 
ぼんやりとした頭で、俺は女に問いかけた。  
 
 
 
 
「…お前はどこに行くつもりなんだ?朝倉涼子」  
 
 
 
 
――女が、俺の目の前に立った。笑みを浮かべながら、『朝倉涼子』は俺の問いに答えた。  
 
 
 
――そんなの、決まってるじゃない。あなただってわかっているでしょう?  
 
 
――――女が俺の手を握った。  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今度は、助けはこなかった。  
 
 
 
 
気づいたら、長門の住む高級分譲マンションの前に立っていた。  
どうやってここまで来たのかは全然覚えていない。夢遊病だろうか。それよりなぜこんなところにまで来たのだろうか。  
忘れ物はなかったはずだ。今日は終業式で学生カバンの中もほとんど空っぽのままで登校しているから、忘れるような物を持ってきていない。  
 
痴呆のように立ち尽くし意味も無く玄関入り口のパネルを眺めているうちに、俺は自分がやるべきことを段々と思い出してきた。  
―――そうだ、俺は長門に会いに来たんだ…  
 
 
…頭がぼんやりする。眠い。今何時だ? とにかくここは寒いから中に入ろう…  
                    ...  
俺は玄関入り口のパネルに『505』と入力し、続けて暗証番号を入力する。  
 
 
…カシャン。  
玄関のロックが、音を立てて解除された。  
 
 
俺はエレベーターのボタンを操作し、7階に向けて発進させた。505号室になど用はない。目指すは長門のいる708号室だ。  
そのとき、なぜ自分が505号室の暗証番号を知っていたのか、そんなことは全く疑問に思わなかった。  
 
         . . . . . . . .  
当然だ。何せ自分が住んでいた部屋なのだから。  
 
俺は寒さに身を震わせる。ポケットの中に手をいれると、硬質なものに指先が触れる感触があった。  
取り出してみると、それはサバイバルナイフだった。  
 
 
どこかで見たような気がするナイフ。人一人、十分殺せそうな迫力、重量感―――  
胸騒ぎがした。谷口から借りたチープなアダルトゲームにもこんな展開があったような気がする。ナイフをもったその男は、マンションに住む女を――――  
 
「……………くっ」  
――――俺は、俺は長門に会って何をするつもりだったんだ?  
 
 
言い知れぬ恐怖と不安に駆られ、俺はナイフを投げ捨てた。  
 
 
 
 
 
エレベーターの表示が7階を指し、扉が開いた。後数十歩歩けば長門の住む部屋にたどり着く。  
 
…まだ頭が重い。眠い。焦点が定まらない。視界が揺れる。歪む。  
 
 
 
一歩、また一歩足を進めるたびに意識が薄れていく。眠い。暗い。長門、ながと――――  
 
 
…ようやく、708号室の前までたどり着けた。俺はドアノブを掴み、回す。  
 
 
 
 
 
そこで、俺の意識は途絶えた。  
 
 
 
 
 
 
 
扉が開いた向こうに長門が立っていた。長門と対峙するのは男物の服を着た、髪の長い女。  
 
女は微笑を浮かべながら長門に語りかける。  
 
 
 
 
 
 
「一週間ぶりね、長門さん。ご機嫌いかがかしら?」  
――――――朝倉涼子が、長門に告げた。  
 
 
 
 
 
 
「一週間ぶりね、長門さん。ご機嫌いかがかしら?」  
朝倉涼子が、長門に告げた。  
三度目の復活を遂げた朝倉涼子は男物の服――俺の服を着ていた。背丈も長門より頭一つ分高い。  
朝倉は柔和な笑みを浮かべながら長門と対峙する。対する長門は、無言。  
 
 
「安心して、ちょっと彼の身体を借りてるだけよ。完全に乗っ取ったわけじゃないわ。  
 用が済めばちゃんと返してあげるからね」  
 
軽やかなソプラノの声で、朝倉は答える。  
声も姿も朝倉だが、復活したわけではなく俺の身体を乗っ取って今ここにいるということらしい。  
ボイスチェンジャーとかホログラフフィとかそういう類の技術で俺の姿を変化させているのだろう。ちなみに俺は、  
身体の自由はまったく利かないが意識だけはなんとか残っているといった状態だ。  
ただ身体中の感覚がマヒしていて、まるで夢を見ているような感じになっている。しかもとびっきりの悪夢ときたもんだ。勘弁してくれ。  
 
「それじゃあ、お邪魔するわね」  
 
 
朝倉は靴を脱ぎ、律儀にそろえてから長門の部屋に上がりこんだ。  
部屋の主の了承も取らずに上がりこむ朝倉を無言で見つめる長門は、無礼な闖入者に対して怒る様子も見せずに  
いつものポーカーフェイスのまま事の成り行きを静観している。  
朝倉はリビングをてこてこと歩いて横断し、きょろきょろと辺りを見回しながら  
 
「…相変わらず殺風景な部屋ね」  
と一言コメントした。  
 
「私のあげた羊のぬいぐるみはどうしたの?目つきが悪くてまんまるのキモカワイイやつ」  
 
朝倉が不満げな表情を浮かべて言う。っていうか、そんなものをプレゼントするな。長門が処分に困るだけだろうが。  
一人で喋り捲る朝倉に対し、徹頭徹尾に終始無言の長門の態度に朝倉はやれやれと肩をすくめる。  
 
「つれないわね。そんなに警戒しなくてもいいのに」  
俺の身体を乗っ取っておいて何をいいやがるかこの女は。  
 
「ふう…ま、いいわ」  
朝倉は軽く溜息をつき、次は和室を物色し始めた。  
 
「えーっと、確かこっちの部屋にあったはず…」  
 
朝倉は和室に踏み込んで、勝手に押入れの中を漁り始める。  
かつて知ったる人の家とはいえ、少しは遠慮をしたらどうだと問い詰めたい気分だ。 お前はハルヒか、朝倉涼子。  
 
「よいしょっと」  
目つきがエロくてまんまるの羊のぬいぐるみを探しているのかと思いきや、朝倉は押入れから  
布団をひっぱりだし畳の間に敷き始めた。  
…おい、ナニをする気だ。いや聞かなくてもだいたい予想がつくけど。俺としては外れていて欲しいところだが。  
 
 
朝倉は、畳に敷かれた布団をぽんぽんと叩きながら長門に呼びかける。  
 
「こっちにいらっしゃい、長門さん。可愛がってあげる」  
 
長門に手招きする朝倉。その呼びかけに対して長門は、  
 
「…………」  
呼ばれるままに歩み寄り、敷布団の上にぺたりと座り込んだ。  
「ふふっ、いい子ね。長門さん」  
 
朝倉は長門と向かい合わせに座ると、自分から服を脱ぎ始めた。  
今の朝倉は俺の着ていたものを身に着けているため、当然ブラとかそういうものは装着しているはずもなくシャツを脱いだ時点でその見事な乳房が露となった。  
おわん型の、白くまろやかな略してマロい乳房である。  
「どうかしら長門さん。なかなかのものでしょう。立体映像だけどね」  
 
大きさではハルヒや朝比奈さんの方に軍配が上がるが、スポーティに均整のとれた朝倉のボディも中々素晴らしい。  
ってなんで俺が批評をしてるんだ。朝倉にバレたらもう一回刺されるな。  
 
「バレてるわよー」  
 
うぐっ。  
「まあ、彼の品のない批評はおいといて」  
朝倉はズボンとパンツを脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿で長門の前に仁王立ちする。  
 
その股間には―――――  
 
 
女性にはあってはならないものが、白い女の肌の立体映像を突き破って反り繰り上がっていた。  
 
「何度も言うけど、今の私は彼の身体に立体映像を投射しているだけなの。  
 ということで、使えるものはなんでも使わせてもらうわ」  
 
悪知恵を思いついたときのハルヒに負けないぐらいの極上の笑みを浮かべながら、朝倉は長門にそう宣言した。  
 
 
 
「とりあえず、舐めて♪」  
 
 
ちろちろ。ちゅ。ぬぷちゅ、ちゅ…ぬちゅ、ちゅーっ…  
 
 
 
畳の間に、長門が俺の…というか朝倉のペニスをしゃぶりあげる音が響き渡る。  
「うん、あったかくて気持ちいいわ。上手ね、長門さん」  
朝倉が長門の頭を撫でながら言った。  
 
朝倉の感じている快感が、俺の方にも伝わってくる。長門の可愛い舌がぺちょぺちょとペニスを這うたびに  
殺人的な快楽が俺の脳髄に炸裂する。  
 
半ばというか、99%レイプといえるようなシチュエーションなのに、長門は眉一つ動かさず  
一心不乱に肉棒をしゃぶる。  
こんな状況でもポーカーフェイスを崩さないため、悦んで犯ってるのかいやいや犯らされてるのかも判断つき難い。  
 
 
ちゅく、ちゅ、んちゅ、くちゅ、ちゅう…  
 
長門は先っちょを口に含んだり、ほお擦りしたり、てっぺんから根元までペニスの裏筋にそってゆっくりと舌をなぞらせたりして  
まるで百戦錬磨の娼婦のごとく、俺のペニスを攻め立て続ける。  
 
「くっ…こ、これはさすがにキツいわね……」  
眉間に皺を寄せながら、朝倉が言った。  
 
ちゅうちゅう、はむ。ちゅ、ちゅるるっ。  
 
長門の攻めが続く。少しでも気を抜いたら射精してしまいそうなほどの快感が絶え間なく続き、  
俺たちに休む隙すら与えてもらえない。  
 
相手に快感を与えることがそのまま相手のダメージになるというならば、俺と朝倉はとっくに長門にやっつけられていることだろう。  
朝倉軍は敗走し、占領した砦に長門軍の旗が高々と掲げられてほら貝が鳴らされる。  
救出されるお姫様役が俺なのは若干気に食わんが、この状況をなんとかしてくれるのなら贅沢は言わん。なんでもいいから助けてくれ。  
ヘルプミー長門お前だけが頼りだ頼んだぞ。  
 
 
そんなつまらんことを考えてるところに、肉棒をしゃぶりながら上目遣いに見上げる長門と目が合ってしまった。  
綺麗な瞳。いや、それ以上に綺麗なのはその唇。  
 
柔らかそうな、すごく綺麗なピンク色をした唇が俺の肉棒を頬張っている。  
唾液で湿った唇が、蛍光灯の光を反射している―――――  
 
 
「んむっ」  
長門の口の中で俺の怒張がさらに大きくなり、長門がくぐもった悲鳴を控えめに漏らした。  
 
「い、今のは私じゃないからね」  
これは朝倉の弁明。す、すまん長門、苦しくなかったか。  
そんな俺を長門は朝倉の立体映像越しに睨みつけ、抗議の言葉を浴びせる代わりに  
 
 
 
ぱく。  
 
長門は立体映像の下に隠れた俺の睾丸に食いついた。  
 
「ひぅっ!!」  
それは朝倉にとっても想定外の行為だったらしく、朝倉は可愛い悲鳴を上げながら身を捻った。  
睾丸は完全に映像の下に隠れてしまっているため、傍からみれば女同士でクンニリングスしているような風景が展開されている。  
見事な百合の花だ、と冗談を言う余裕もない。その被害は俺にまで及んでいた。  
朝倉と一緒に俺までやっつけるつもりの一撃だ。 というよりも明らかに俺狙いのような気がする。  
 
 
 
ちゅるっ、ちゅむ、ちゅぅー――っ  
 
長門は肉棒を右手で掴み、睾丸を舌で転がす。  
時折口に含んでちゅうちゅう吸い上げたりして攻め立てる。  
 
精嚢をぺろぺろはむはむもぐもぐちゅっちゅと執拗に攻め立て、さらに肉棒をしごきあげてトドメを刺しに来る。  
 
「ああっ!!な、長門さんっ!出るっ!出るぅっ!!!」  
 
 
朝倉が悲鳴を上げる。長門は一片の慈悲もなく肉棒をしごき、そして絞り上げる。  
 
「くぅっ!あ、ああああぁぁぁん!!!!」  
朝倉は腰をガクガクいわせながら、絶頂に達した。  
 
「ああああぁぁぁん!!!!」  
 
朝倉は悲鳴を上げ、怒張から大量の精液を撒き散らした。  
グワッと広がった先端から勢いよく白濁液が吐き出される。大量の精液は、目の前にいる長門をベトベトに染め上げていく。  
 
ふたなり美少女の顔射シーンというそのあまりにもシュールな光景に俺は声を失う。射精は信じられないほど長く続き、  
長門の髪の毛にまで飛び散っていった。  
 
 
 
 
 どびゅぶびゅぶびゅるっ!びゅっ!びゅっびゅっびゅっ!  
 どびゅどぶるぅうっ!!!ぷぴゅっ!!  
 
…射精というか、まるで水道管が破裂したかような勢いで白濁液を撒き散らす。  
 
AV男優でもここまでの量は出せないだろうというぐらいの精液をぶちまけ、長門の顔を自家製生クリームで  
デコレーションしまくったところでようやく射精が止まった。  
これが俺の身体から吐き出されたものだっていうのだから更に驚きだ。むしろ怖い。  
朝倉が俺の身体に変な細工をしていないことを切に願うことにしよう。  
 
 
 
「はあ…凄かったわ、長門さん……」  
 
長門の顔を真っ白に染め上げ、朝倉は恍惚の笑みを浮かべた。  
 
 
…どろり。  
長門の鼻の頭の方からかたまり状になった精液がだらりと垂れてきて、そのピンク色の綺麗な唇を汚す。  
 
なんというか…ただ唇に精液が付着しただけなのに、それだけで俺は何か背徳的な気分になってしまう。  
そんな長門に対して俺は、何か大切なものが汚されてしまったような喪失感と、どこか捻じ曲がった黒い欲望を同時に感じていた。  
 
 
「…………」  
再び長門と目が合う。長門は俺を数秒間ほど見つめた後、  
 
 
―――ぺろり。  
長門が唇についた精液を舐め取った。  
長門は俺の精液の味に1ミリほど眉を動かしたが、更に自分の頬に付着した精液を手でぬぐい、次々と口へと運び始める。  
 
 
「あ、長門さん。私にも頂戴」  
 
 
朝倉はむくりと起き上がり、手についた精液をなめなめしている長門にいきなりキスをかました。  
 
ちゅ、ちゅくっ…ねちゃぁああっ。  
                                               ぬめ  
二人の舌が絡み合う。その舌の間には俺の精液がねちょねちょぬちょぬちょと滑っている。  
俺の精液が二人の舌によって弄ばれる光景は、まるで俺自身が朝倉と長門によって犯されているような気分にさせられる。  
 
やがて二人のキスが終わる。交尾を終えた軟体生物のように、二人の舌は糸を引きながらゆっくりと離れていった。  
 
 
「…ぷはぁーっ。長門さんってばキスも上手なのね。彼と練習しているのかしら?」  
朝倉の冷やかしに、当然のごとく無言で答える長門。  
 
「彼の精液美味しかったわね。臭みも苦味もあまりなくて飲みやすかったわ。  
 ふふ、でもあのぐらいじゃ足りないでしょう? あなた食いしん坊さんだものね 」  
 
そういうと朝倉は長門にしなだれかかり、スカートの中に手を伸ばして長門の秘部をまさぐり始めた。  
 
 
 
「今度はこっちにごちそうしてあげる」  
 
 
 
朝倉が呟いて、長門の飾り気のない純白の下着に手をかけた。 湿り気を帯びたショーツがひざの上までずり下ろされる。  
割れ目の上に申し訳程度に生えているだけの長門の陰毛が露になった。  
 
「ふふっ、長門さんのアソコって可愛い」  
更に長門のスカートまでを脱がし、ぴったりと閉じているスジを指の腹でなで上げながら朝倉が言った。  
「これで男を受け入れてないなんてちょっと勿体無いわね。せっかくだから、彼のペニスで貫いて貰いましょう」  
 
 
朝倉は長門を布団の上に寝そべらせると、左手一本で長門の両足首を押さえつけ、さらに長門の身体を「く」の字型に折り曲げ屈曲位の体勢をとらせた。  
そのまま「理非知らず」という体位で、長門の純潔を奪おうと狙いを定めていく。  
 
 
 
…朝倉の怒張が長門の入り口に届こうかというそのとき。  
 
「だめ」  
 
長門の唇から、朝倉を拒絶する言葉が漏れた。  
 
 
「だめ」  
 
 
もう一度、長門が言う。唐突に拒否された朝倉は、面食らったような表情で長門を見つめていた。  
 
「…長門さん?」  
「だめ」  
長門の返事は変わらない。  
 
 
「ここまでやっておいて、『だめ』なの?」  
「だめ」  
「…いじわる」  
 
盛り上がってきたところに水を差された形になった朝倉は不満気な表情を露にし、腹いせといわんばかりに長門の陰核を乱暴に指で弾く。  
「…っ」  
 
長門がわずかに眉をしかめる。そんな長門の反応を冷ややかに見つめながら、さらに朝倉はぐりぐりぐりぐりと長門の陰核を捻り回した。  
「…んっ、…くぅ……」  
長門にしては珍しい甘い喘ぎ声が部屋に響くが、それでも朝倉の表情は変わらない。  
「あーあ、なんか興ざめしちゃったわねぇ…そうだ!」  
 
 
つまらなそうに長門の陰核をおもちゃにしていた朝倉だが、急に悪知恵を思いついたハルヒのように残忍な笑みを浮かべて手を叩いた。  
「…相手が彼なら、構わないでしょう?」  
次の瞬間、朝倉の姿がいつぞやのときのように光の結晶となって散らばっていった。  
 
「――――――うっ」  
光の結晶が去った後に、俺の身体がとり残される。  
光の結晶は俺の身体から離れたところで再び集まり、朝倉の姿となった。気持ちよさそうにふわふわ浮きながら、朝倉は長門の鼻の頭をつんつんとつつく。  
「あら?長門さん、少し心拍数上がってるんじゃないかしら?」  
「あ、朝倉ぁっ」  
 
かろうじて声を出すことができた。ありったけの力を込めて朝倉を睨みつけてやるが、俺の抵抗もそこまでが精一杯。  
身体を動かす制御権は未だ朝倉が握っているらしく、指一本動かすことも出来ない。  
 
 
「大丈夫よ、あなたにも気持ちいい思いさせてあげるから」  
「や、やめてくれっ」  
朝倉は俺の身体を操り、再び長門を押し倒す。さらに正常位で向かい合った姿勢のまま、長門の両脚をいっぱいに割り開く。  
両脚の付け根には、愛液に濡れた、ほとんど毛の生えていない未発達の秘裂が上向きになってぱっくりと開ききっていた。  
 
 
「うふふっ、長門さん、今度は『だめ』じゃないのね。それにさっきより愛液の量が増えてるみたいだけど…」  
にんまりと笑顔を浮かべながら、朝倉が言う。  
 
 
「もしかして、感じてるのかしら?」  
長門の顔が、ほんのちょっぴりだけ赤くなった…ような気がした。  
 
そんなある意味微笑ましい会話が続けられてる間にも、俺の方の準備は刻々と進められている。  
すでに俺のペニスは長門の入り口に当てられていて、朝倉の指示一つで貫けるような状況にあった。全然嬉しくない。  
男として喜ぶべきシチュエーションのはずなのだが、なんだか間に合わせのAV男優扱いされてるみたいで何か納得いかないものがある。  
この企画の責任者は誰だ。社長を呼べ、特急で。  
 
 
「あ、そうそう。あなたにペナルティを与えておくわね」  
動くに動けず待機している俺に朝倉はそう言い放つと、朝倉は長門のおなかに手を当てて何かをし始めた。  
 
 
「…これでよし、っと。 長門さんの月経周期いじって危険日に変えておいたから、  
 一滴でも中出ししたら責任とってもらうわよ」  
「ま、待てっ!!」  
「はいはい文句は後で聞くから、それじゃあ…」  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  「―――――犯っちゃって」  
 
 
 
 
朝倉の命令を拒否する力は、俺にはなかった。  
 
 
ぐちゅぷぷぷっ!  
 
 
俺の意思とは無関係に、長門の入り口に押し当てられた亀頭に力が込められ、グイっと腰を突き出させられる。  
小さなアソコが裂けてしまいそうに押し広げられ、ギンギンに反り繰り上がった俺のペニスが長門の膣内に姿を消した。  
凶悪な形をした肉の凶器が、小さな入り口をギシギシと軋ませながらズブズブと中に侵入していく。  
「…っ、…んっ」  
 
あそこを内側から広げられる感触に、流石の長門も呻き声を洩らす。  
そんな小鳥の囀るような小さな悲鳴を意に介することなく、肉棒はミシミシ音を立てながら長門の処女肉を割り裂いていく。  
 
 
ぷちっ  
 
「…っ!」  
可愛らしい音を立てて、最後の砦である処女膜が引き裂かれた。  
 
 
「あはははははははは!!!!どうかしら長門さん!初めて男をくわえ込んだ感想は?」  
朝倉の哄笑が部屋中に響き渡る。俺が腰をゆっくりと引くと、赤黒くなった怒張にピンク色の粘液が付着していた。  
圧倒的な力と質量で串刺しにされた皮肉が、悲しそうにひくひくと痙攣するのをペニスに感じる。あまりにも惨たらしい光景だった。  
 
「いいものを見せてもらったお礼に快楽をあげるわ」  
 
 
朝倉は長門を後ろから抱きしめ、成長途中の小振りの胸を揉みしだく。そして耳の下に舌を2、3度這わせて  
長門の耳元でそっと何かを囁いた。  
 
 
「――――――催淫プログラム、始動。」  
「―――――っ!!!」  
その瞬間、純潔を奪われたときも平然としていた長門の表情が一変した。  
表情の読めなかったポーカーフェイスが火で炙られたチョコレートのように蕩け、頬が一目でわかるぐらいに赤く染まっていく。  
視線はトロンとのぼせたように力ないものとなり、長門は苦しそうに喘ぎ声を洩らした。  
 
「あ…あっ…ああっ」  
「便利ねぇ、この『力』。初めてとか関係なしに女の子をメロメロに出来るんだから」  
 
数日前、俺に施した『力』を自分自身に使われて長門は力なく呻いた。『力』の影響を受けたハルヒや朝比奈さんと同じように  
今度は長門が朦朧とした熱っぽい視線を俺に向けてくる。  
一番深いところまで貫かれてるにも関わらず、まだ何かを求めるように眼差しだけで訴えてくる。その仕草が妙に艶やかで、色っぽい。  
そんな長門の姿に見惚れてしまい、思わず生唾を飲み込んでしまった。  
 
「情熱的な長門さんってのも、魅力的でしょう?」  
朝倉が俺の顔を覗いてくる。朝倉に同意するのは業腹ものだが、確かにいつもの長門とのギャップもあって中々いい。  
 
 
「狂おしいほどに彼が欲しいでしょう?遠慮することはないわ。このまま彼のすべてを全部絞り尽くしてあげなさい。  
そのほうが彼も喜ぶわ」  
朝倉に囁かれると、長門の内部がきゅっと締まった。そのまま長門はおずおずと自分から腰を動かし始める。  
「ぐあっ…」  
膣壁が擦れる甘い感触に、思わず声が洩れてしまった。  
 
「…んっ、んぅっ」  
 
あの長門が自分から腰を振って求めてくる。そのシチュエーションだけで暴発してしまいそうだ。  
その上長門の膣内は想像以上に狭くて窮屈で、内部のヒダヒダが恐ろしい勢いでぐりゅぐりゅ絡みつき、舐め回してくる。  
吸われていく。 そんな表現がぴったり当て嵌まるような恐ろしい締め付けだった。  
 
 
「ほらほらっ、しっかり元栓閉めておかないと長門さん我慢汁だけで妊娠するわよ」  
あ、朝倉。分かってて言ってるだろ。こんなの耐えられるかっ。  
「くすっ、長門さん、中々気持ちがいいって。もっと締め付けてあげて」  
 
朝倉の煽りを受けて、長門の膣内が更に閉まる。  
閉めつけ揺するだけではなく、横方向の捩りも微妙に加えてあらゆる方向から攻め立ててくる。  
俺は歯を食いしばって耐えるが、長門はあそこの中に触手モンスターでも飼ってるんじゃないかというぐらいに吸い付き絡みつき締め上げてくる。  
 
ヒダヒダのひとつひとつが小さなギャングとなって、俺の肉竿から精を奪おうとメチャクチャに暴れまわり蹂躙し尽すその攻めの前に、  
早くも俺のペニスが根を上げそうになってしまう。だ、駄目だ。もう限界だ。  
「…我慢しなくていい」  
 
 
泣きそうな顔をしながら必死に射精を堪える俺に対して、長門が優しく言う。  
「いっぱい出して。わたしの中に」  
「な、長門っ、ながとっ!!」  
 
その長門の一言で、俺の中の最後の安全弁が外れる。  
限界までふくれあがったペニスが、長門の膣内で白い大輪の花を咲かせた。  
 
 
びゅぅっ!びゅくっ!!ぶぴゅるっっ!!  
 
 
激しく脈打つペニスから、限界まで貯め込まれていた大量の精液がぶちまけられる。  
白濁液はあっという間に長門の狭い膣内を真っ白に染め上げ、そして行き場を失った精液が結合部から溢れかえった。  
最後の一滴まですべて長門の胎内に吐き出し、凄まじい倦怠感と脱力感を味わいながらその場に崩れ落ちた。  
 
「たっぷり出してもらえたようね。どう?嬉しいでしょう?」  
満面の笑みを浮かべながら、朝倉が満足げに言った。長門はそれに答えず、ゆっくりと息を吐きながら行為の余韻に浸っていた。  
そして、ずるり、と役目を終えた俺の肉棒が長門から抜け落ちる。  
無残に散らされた長門のアソコから、わずかにピンク色をした白濁液がとめどなく流れ落ちていた。  
 
 
 
そして、物語の終幕は唐突に訪れる。  
 
「――――――あっ」  
突然朝倉の右腕に亀裂が入り、二の腕から先が破裂した。  
胴体から欠け落ちた腕は床に落ち、コンクリートの上に落ちた硝子のコップのようにそのまま砕けて光の砂粒となる。  
 
 
「…どうやらHしている最中に対抗プログラムを打ち込まれていたみたいね。残念だわ」  
 
まるで、くじ引きではずれを引いたかのような軽さで朝倉が言った。  
いつぞやの教室で起こった出来事のように、朝倉の身体が光の粒子と変わっていく。それでも朝倉に翳りや諦めの表情が浮かぶことはなかった。  
勝ち誇るかのように笑みを浮かべながら、朝倉の姿が崩れていく。  
 
 
「私にできることはここまで。後は自分でがんばりなさいな、長門さん。じゃあね。彼とお幸せに―――――」  
 
 
 
意味深な言葉を残し、再び朝倉涼子は消滅した。  
 
布団の上に、俺と長門だけが取り残された。  
現在俺たちは仲良く並んで布団の上に座り込んでいる。全裸で。  
 
…沈黙が部屋を支配する。当然だ。すっぽんぽんで対峙しているだけでも十分気まずいのに、処女を奪ったあげく更に妊娠までさせてしまったかもしれないのだから。  
朝倉に操られていたと言い訳するのも男らしくないし、もう自分自身長門に何と言っていいものやら分からない。  
「あー、その、長門。すまん」  
 
謝って済む問題ではないのだが、一応謝っておく。  
こういう場合はやっぱり俺が責任を取らないといけないのだろうか。不可抗力、というのも何だか長門が可哀想過ぎる。  
もし責任を取るとしたら、このマンションに住ませて貰って、バイトして、足りない分は長門にデイトレードで稼いでもらって補ってもらうといったところか。  
長門なら年収1000万ぐらい余裕で稼げそうだし、金銭面ではなんとかなりそうだ。…ていうか、メリットの方が多くないか?  
 
 
返す言葉も見つからずに途方に暮れる俺に対し、長門が淡々と現状を報告し始めた。  
「朝倉涼子が実行した懐妊プログラムは、発動してから10時間効力を保ち続ける。今からの避妊は不可能」  
そこで一旦間をおいて、再び続ける。  
 
「効果が消滅するのを確認してから受精卵を摘出し、中絶を行う」  
…避妊が駄目なら中絶とは、実に生々しい話だ。  
まあ、ほんの少しだけ惜しい気もしないではないが、とりあえず俺は責任追求されなくてもいいんだよな?  
 
「大丈夫」  
 
俺の身体にもたれ掛かったまま、動くことなく長門は言った。  
「DNAデータのバックアップは保存してある。いつでも妊娠できる」  
 
そっちかよ!  
…などと突っ込んでる場合じゃない。いつでも妊娠できるってことは、俺が忘れたころにお腹が膨らんだ長門が  
「責任とって」と言い出してくる可能性も無きにしも非ず、ということで、全く俺の置かれた状況は改善していないのだが。  
…悪用しないって信じてるぞ、長門。  
 
 
すがるような視線を長門に向けるが、当の長門は不思議そうに首をかしげるばかりだった。  
 
 
 

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