毎朝思うことがある。この簡易ハイキングコースじみた通学路を早足で歩くのはかなりの  
重労働であると。  
 ならばこの重労働を少しでも楽なものにするために出発をほんの数分はやめればいいので  
はないのかという話もあるのだが、誰にとっても眠りから目覚める寸前のまどろみの時はそ  
りゃ途轍もなく貴重な時間な訳で、それを自主的に返上することがどれほどの困難かを想像  
するだに気が滅入る訳で。  
 
 んで、結局毎度の事ながら。俺は青色吐息で簡易ハイキングコースを競歩しつつ学び舎へ  
と歩みを進めていると言う訳だ。  
 
 俺が懸命に坂を登り、学校へと向かっているにもかかわらず律儀にもいまだ寒さを保った  
山風の野郎は容赦なく吹き付け、コートの上からでも容赦なく体温と体力をそぎ落としてき  
やがる。たまには休め、寒冷前線の野郎。  
 
 それはさておき。  
 
 ひーこら言いつつ青息吐息で坂道を登りきり、やっとの思いで慣れ親しんだ校舎に入った  
俺だったが…なんつーのか、そろそろ朝のHRも始まる時間だっつーのに教室の席を見てると  
結構数の空席があるのが気になった。  
 
 担任の岡部が教室にやってきて。朝のHRが始まる。  
 
 しかしまぁ、なんだ。  
 
 普段なら俺の背後の席からたまには落ち着けと突っ込みたくなるようなアレやコレやの  
ちょっかいをかけてくる筈の奴がいないっつーのは。  
 
 正直、かなり気に掛かる。  
 
 あ、いやまて。これはこれで心穏やかに授業を受けることができるので歓迎すべき事態  
なんじゃないのか俺。何を血迷ったことを考えている?舟をこぎこぎたるーく授業を聞き  
流しつつ午睡にまどろむ所を唐突にシャーペンでつっつかれて訳のわからぬ厄介事を思い  
つくや否や俺に話しかけるあいつが居ないのは、これはこれでいい心の休養になるから歓  
迎すべき事象じゃないのか俺?  
 
 「…というわけで、最近は風邪がはやっているようだから皆も健康管理だけには気を配  
るように!」  
 
 岡部がHRの締めにそんなことを言った。お決まりの起立・礼で朝のHR終了。普段背後に  
居るはずのお気楽極楽脳天気爆弾が居ないことが…こうまで気になるというのはどう言う  
こった?俺。  
 
 
 「やっぱあの涼宮も人の子ってことか。岡部が言うには風邪でダウンしてるんだとよ」  
 
 昼休み。妙にニヤニヤしつつ弁当をつっつく谷口の野郎の言葉を耳にしつつ、俺は適当な  
相槌を打って弁当を掻きこんでいた。普段とおなじように決して不味くはない筈の弁当が、  
なんか知らんが今日に限ってはまったく美味くないのはどう言うこった?  
 
 「まぁ、いくらあいつが度を越した度胸とか体力とかをもってても所詮人の子、風邪には  
勝てんって寸法か」  
 「…なぁ谷口。お前ハルヒと中学が同じだったよな?」  
 
 何気にネタを振ったつもりだ。俺は別にハルヒの住所が何処か?なんて余計な話題に興味  
なぞ全くない。ないが。ほら、なんだ。飯がそんなに美味くない以上、こうして喰いながら  
色々だべるのが気晴らしには丁度いいんだよわかるか?  
 
 国木田。お前もニヤニヤしながらこっちを見るんじゃない。俺には別にハルヒの住所なん  
か興味も何もない。これは飯を喰いながらの雑談のネタだ。それ以上でもそれ以下でもない。  
 
 結局、谷口と国木田の妙に生暖かいニヤニヤ顔を見ながらその日の昼食時間、無事終了。  
 
 なんつーか、普段と同じ弁当なのに妙に不味く感じたのはどう言うわけだ、俺。食欲減退  
するような事態なんぞなかったはずだけどな…?  
 
 さてさて、それはさておきだ。  
 
 俺がなし崩し的に設立に関わり。そして今をもってある種精力的に活動を続けている学内非公認  
団体であるSOS団も、さすがにその団長が登校不能な現状ではまともな活動も出来はしないのが当然  
である。  
 朝比奈さんが律儀に部室にやってきて、結果無駄足を踏ませるのも何だしな。俺は聞くべき事を  
耳に入れつつ普段より不味く感じた弁当をさくさくと喰い終え、空になった弁当箱を鞄にしまって  
旧舘へと足を運んだ。  
 
 部室のドアの前に、中からとってきた藁半紙を貼り付けておく。『本日、団長急病につき活動休  
止。キョン』…と、これでいいだろう。  
 
 さて、やるべき事をひとしきり片付けほっと一息ついた所だが…時計の針を見るとなんともはや  
まだまだ結構休み時間は残ってやがる。  
 珍しいことに、今日は部室内で静かに本を読み続ける長門の姿も見えなかった。なので昼休みの  
部室内は誰も居ない静かな空間となっている。  
 
 他に誰が居るわけでもない、妙に静かなSOS団の部室。妙に静かで本来ありえない教室の風景。  
 
 なんというか、魔が差したんだと思う。  
 
 あいつの遠慮なしの大声が、妙に聞きたくなったなんてな?  
 
 SOS団設立の際、緊急時の連絡網をきちんと整備する!とのハルヒの一声により団員の携帯の番号  
は一通りメモリに登録されている。別に何の気もなしに携帯を取り出し、慣れた手つきでハルヒの  
携帯番号を呼び出し、コール開始。  
 
 …なんかおかしくないか?普段なら3コールもしないうちに即座に回線がつながり、それと同時に  
いつでもどこでも遠慮加減なしの馬鹿でかい声が聞こえてくるはずなのに…3コールはおろか10コー  
ル近く鳴らしても、ハルヒの奴が電話に出ない。  
 
 …なんでたかがそれだけの事がここまで気に掛かるかね?馬鹿か俺は冷静になれ。ハルヒは風邪  
をひいているだけじゃないのか?風邪で寝込めば電話に出られないのも不思議なことではないだろ  
う?別に単に寝てるだけなんじゃないのか?気に病むな。あいつの事だから風邪が完治すりゃまた  
いつも通りに遠慮呵責なしに俺を引きずり回しつつ、SOS団の陣頭指揮に復帰するに決まっている。  
 
 …ああ、そーさ俺は馬鹿さ。悪かったよ認める。だから魔が差したんだよ。  
 
 ハルヒの奴の見舞いに行ってやろうなんて、考えちまったんだからな。  
 
 冷静になって考えると自分の頭が狂っちまったに違いないと思うような事を決意して、俺は  
さっさと部室を後にしようとした…ところで、部室の前を足早に歩きつつ携帯で誰かと話すど  
っかでみたようなイカサマスマイル野郎の姿が目に入った。古泉だ。どうやら何か切羽詰った  
状況らしく、鬼気迫る表情で電話の相手となにやら激しくやり取りしている。  
 
 何か、凄まじく嫌な予感がした。  
 
 古泉がここまで切迫した様子を露骨に見せると言う事は…やはりアレだろう。ハルヒの精神  
が不安定になると発生するという『閉鎖空間』と『神人』関係の揉め事に違いない。  
 
 あいつ曰く「ハルヒはどんどん精神が安定してきている」との事だったが…まさか、これは  
病気で倒れたハルヒの不安とかそういうのが引き金になってる現象じゃないんだろうな?オイ。  
 
 「古泉」  
 「…やぁ、どうも見苦しい場面を見せてしまいましたね」  
 
 話が一区切りするまで少し離れた場所で様子を見てから、一応の確認のために古泉に話を聞い  
て見ることにした。簡単にいえば、俺の推論はほぼ完璧に的を得ていたらしい。  
 
 「不安・焦燥・孤独感…今の涼宮さんの心はこの三つの要素で占有されていて、結果途方もな  
い規模の『閉鎖空間』が同時に発生しているようです。今はなんとか『機関』総出で対処に当た  
っていますが…正直きついのは確かですね」  
 
 「ハルヒが落ち着くまで、いくらつぶしても閉鎖空間が続々と生まれ続けるからか?」  
 
 「ええその通りです。正直、僕たちのしていることは対処療法以外の何者でもないのですから  
お手上げといったところです…今回もどうやら、あなたに根本的な対処をお願いすることになる  
と思いますよ」  
 
 …聞かなけりゃ良かったと思ったのは俺だけじゃないよな?古泉、その薄ら寒いにやけ顔をど  
うにかしろ。その目はよせ。『わかってますよあなたの考えは』みたいなニヤけた視線は。  
 
 その日の放課後。俺は国木田に掃除当番をおもむろに押し付けた後、返事を聞く前に学舎を飛  
び出して帰路についた…途中で携帯を使い、ちょっとダチの見舞いに行くので帰りが遅くなると  
オフクロに連絡をしておく。余計な詮索がどうとかが面倒なのと、家族に心配をかけちゃマズイ  
との判断からである。  
 
 ハルヒの家まで、ここからならそう遠くはない。急ぐ事はないだろうと思いつつも、何か知ら  
んが俺は普段よりハイペースで歩を進めていた。  
 
 さて、何か知らんが妙に速い速度で俺はいつも使っている駐輪場までたどり着き、愛車の  
ママチャリのペダルを踏み踏み、谷口の野郎から飯のときに聞いていたところへ向かって走  
り出した。  
 
 向かった先は…なんともはや、俺とかでは生涯かかってもお目に掛かれない様なハイソな  
庭付きの高級住宅の立ち並ぶ住宅街である。そういえば、俺はSOS団での活動でハルヒと顔を  
つき合わせるようになってからもう結構な時間がたっているがハルヒの自宅に来たことは一  
度もない。逆にあいつが俺の家に来ることなら結構あるわけなんだが、それはまぁここでは  
関係のないことだ。  
 
 谷口から聞き出した住所のメモを手にママチャリを走らせること暫し。メモに書かれている  
住所が正しいのであれば…そして、その邸宅の門に書かれた表札がなんかのイタズラでないの  
ならば…。俺は涼宮家にたどり着いたのだと思う。  
 
 なんというか…ガレージには高級外車が二台、あと空車スペースらしきものがもう二台分あ  
るとか、いかにも金と手間をかけて維持してますよといわんばかりの庭とか、セキュリティ会  
社のステッカーの貼られたインターホンがどうとか…。もうなんというか、住む世界が違うと  
しか思えない佇まいの、典型的な『豪邸』ってのがそこにあった。  
 
 そーいやいつかの幽霊騒動のとき、けっこうな豪邸に上がりこんだにも関わらずハルヒの奴  
は殆ど動じた様子がなかったなと思い出す。そりゃそうだ。自分の家とさほど大差ない家なん  
だから不必要に萎縮する必要もなかったってことか。納得。  
 
 インターホンを押し、学校のクラスメイトのものですがと断りを入れて見舞いに来たことを  
話す。さすがにハルヒを真似ていきなり門扉をあけて邸宅の敷地内に侵入する気にはなれない  
からな。普通だろ?  
 
 これだけでかい屋敷なら、やっぱ使用人がどうとかあるのかね?などと他愛もない事を考え  
つつ待つこと暫時。インターホンのスピーカーから聞こえてきたのは…  
 
 「…キョン…?」  
 
 …我が耳を疑ったね。常日頃なら遠慮呵責もへったくれもなくハイペースでマシンガンのよ  
うにしゃべり倒し「お前口さえ開かなきゃなぁ…」などと思わせてくれるあのハルヒが。  
 
 なんつーか、病気で弱ってるせいかね。これは。掠れた声で弱弱しく俺の名前を呼ぶなんてな?  
 
「ああ、まぁ何だ…ほれ、昼に携帯に掛けても繋がらなかったから気になってな?」  
 
 誰に言い訳をしてる訳でもないにも拘らず、こんな事を口走るのはどーいうことかね、俺よ。  
インターホンの向こうで、誰かが小さく息を呑むような声が聞こえたような気がしたのは、多分  
気のせいだ。ああ気のせいだとも。  
 
 「…外は寒いから、入ったら?アンタ馬鹿だから風邪なんかうつりそうも無いし」  
 
 ほらやっぱり気のせいだ。相も変わらずな憎まれ口をたたくハルヒ。その声とともにカチャン  
と音がして、門のロックが外される。気後れするほどに手入れの行き届いてる庭を通り過ぎて、  
玄関前に立ったところで内側から鍵の外れる音がする…3回も。金持ちになると保安面に気を配る  
ようになるのかね。やっぱり。  
 
 さて、玄関のドアが開き。  
 
 その向こうに居たのは、ピンクを主体にしたやや大きめのパジャマの上からカーディガンを引  
っ掛け、風邪のせいだろうが顔をやや赤くさせたハルヒだった…ってオイ待て。お前病人だろ。  
なんでワザワザお前が玄関まで出迎えにやって来やがる?  
 
 「ボーっとしてないで入ったら?」  
 
 「あ、いや。ハルヒ。ほれ…いきなりクラスメイトとはいえ男が女の家に上がりこむとご家族  
のほうが色々とごた付きはしないか?普通は」  
 
 「…ホームヘルパーなら午前中で帰ったわ。親父も母さんも仕事の都合で今香港。別に気兼ね  
することもないでしょ?…一人で寝てるのも…つまんないだけだし」  
 
 …俺は夢でも見てるのかと思ったね。たかだか風邪にかかっただけで、あの暴虐の限りを尽く  
す団長殿がここまでしおらしくなるなんてな?正直、予想の範囲外だ。というかちっと待て。今  
家には誰も居ないとかいう話なんじゃないだろうな。オイ!?  
 
 「…って待て!看病とかしてくれる人は居ないのか!お前病院はきちんと行ったんだろうな?」  
 
 「…関係ないでしょ、そんなの。風邪なんかそんな大げさにしなくても寝てたら治るし、親父も  
母さんも忙しいし、こんな瑣末事で看病なんかされてもアレだし…」  
 
 …なんというか、ハルヒよ。強がり言ってるのが丸わかりだぞ?誰だってそうだ。風邪で寝てる  
とき、目が覚めたときに傍に誰かが居てくれるのはありがたいもんさ。年末の時に俺自身がそう思  
ったようにな?  
   
 「仕方ないじゃない。親父も母さんも忙しいんだし、娘が風邪ひいた程度のことで足引っ張る訳  
にもいかないんだし、アタシは強いんだから一人で居ても寂しくなんか…っ」  
 
 言葉の後で立て続けに咳き込むハルヒ。もうアレだ、正直見てられないと思うね。  
   
 こいつはもしかしたら、今の今まで家族に甘えるという経験を殆どしていないんじゃないのかと  
俺は思った。  
 自分は強いから、自分は立派だから、自分は人と違うから。そう思うことで忙しい両親が自分に  
向き直ってくれない事の寂しさを誤魔化しつづけたんじゃないのか?どんなタフな奴でも、どんな  
強い奴でも病気になれば気が弱くなるのは当然で、そんなときに傍に誰かが居てくれるのはありが  
たいはずだし、たまには他人に甘えるのも悪くはないだろう?  
 
 でも、ハルヒにはそれがなかったんじゃないのか?こいつはこのでかくて立派な豪邸の中で、金  
もモノも溢れてるなかで孤独だけを感じ続けてたんじゃないのか?  
 
 何度も言おう、俺がこんなことを考えたのは気の迷いだと。魔がさしたのだと。  
 
 俺はハルヒの目の前でおもむろに携帯を取り出し、オフクロにこう言った。  
 
 クラスメイトが風邪をひいてて、そいつ一人で家の中で寝込んでたから、軽く看病していくので  
少し帰りが遅くなる。飯は取っといてくれるとありがたい。と。  
 
 「ちょ…キョン!?」  
 
 風邪のせいで赤い顔に動揺を見せたハルヒの目の前で、わざとらしい動作で携帯を折りたたんでポケットに仕舞う  
俺。ほっとけるわけがないだろうが。これは俺が好きで勝手にやることだからお前がどうこう思う事はないぞ、ハル  
ヒ。  
 
 「さて、まずは…お前病院いってないとか言いやがったな?」  
 
 言いながらハルヒの肩を押し、おもむろにずかずかと涼宮家に上がりこむ俺。なんというか、どういう事をしたら  
ここまで立派な家に住める身分になるのか是非にご教授願いたいね。俺は。  
 
 「セキは見て大体わかったが…熱はどうだ?」  
 「…そりゃ風邪引いてるんだから、少しはあるに決まってるでしょ?」  
 
 なぜか視線をプイと横に向けつつ二階に向かう階段をあがるハルヒ。ったくなんというか素直じゃないというか、  
何というかだ。苦笑しつつ後に続く。すると、二階に上がってすぐの部屋の前でおもむろにハルヒはぴたりと足を  
とめた。つられて停止する俺。  
 
 「…どうした?ハルヒ」  
 「…ここがアタシの部屋だから」  
 「そっか、んじゃお前はとっとと寝とけ。熱が上がったら本末転倒だろうが」  
 
 
 「…ちょっと外で待ってて!アタシがいいと言うまで絶対にドアあけちゃ駄目よ!無断であけたら死刑だから!」  
 
 なんというか、そんな事を叫ぶと。ハルヒは普段よりは控えめな力で自室のドアをバタンと締めて俺を廊下に置き  
ざりにした。何だってんだ、部屋の中がとっ散らかってるのを見せたくはないのかね?やっぱりさ。  
 
 やる事も特にないので、廊下に掛かってるたぶん金が掛かってるんだと思う海をモチーフにした油絵を眺めて暫し  
ぼーっと突っ立ってると…中でバタンドタンと音がして、そこからさらに暫くしてからハルヒの部屋のドアが開いた。  
 
 「は…入ったら?そこでアホみたいに突っ立ってるだけってのも何だし」  
 
 …廊下で待てといったのはお前じゃなかったか?ハルヒよ。  
 
 さてさて、なんだかんだで俺が初めてハルヒの部屋に入って思った感想だが…なんというか、部室の備品を続々と溜め込みそれを  
まったく整理しないあの暴君団長殿の部屋だとは到底思えないほどに整頓されていた。ついでにいうと、まぁなんだ…意外といえば  
意外なんだが、全体的にセンスのいい家具類とかが置かれてるし、どっかのドラマで出てくるような女の子の部屋だと思えるような  
ところだった…。  
 
 なんというか、別に慌てて散らかりっぱなしだった荷物をクローゼットに叩き込んだ様な様子も無いし。なんでハルヒが俺を30分  
近く部屋の外にたたき出したのかがわからないね。俺には。  
 
 「昼前にアンタが電話してくれたのは、後で気が付いたのよ」  
 
 ベッドに素直にもぐりこみつつ、ハルヒは言った。  
 
 「けどさ、アンタ学校じゃない?SOS団の活動のことも気にはなってるから休みにするという連絡を放課後にするつもりだったの  
よ。どうせ放課後に電話するんだから昼休み時間に掛けなおすなんて意味ないじゃない?だから連絡返さなかったのよっ」  
 
 あーわかったわかった。頼むから熱でクラクラしてる赤ら顔で捲し立てるなハルヒ。熱が上がったらどうする気だ。たまにはおと  
なしくそこで寝てろ。熱さまし用の氷嚢とかの置き場所を教えてくれると助かるがな?  
 
 「……キョン」  
 「……なんだ?」  
 
 「…迷惑、じゃ、なかった?」  
 
 掠れそうな声でボソボソ言うなハルヒ。らしくないじゃないか。迷惑?そんなもん俺はとっくに慣れきってるともさ。お前が風邪で  
寝てるのを看病するくらいの迷惑の上積みなんかもう気にもなりゃしないね。口に出すのはなんか抵抗があるので苦笑とともに肩を軽  
くすくめてから、あえて別の言葉を掛けてやることにした。  
 
 「病人は病人らしくしてろ。気にすることじゃないってんだろう?俺は勝手に押しかけて勝手に看病してるんだ、繰り返すが気にす  
るな。調子狂うだろうが、ハルヒ」  
 
 熱のせいで顔が赤いままのハルヒが、その言葉を聞くと同時に頭まで毛布を引き上げてその中に埋もれた。何やってるのかねコイツは。  
 
 氷嚢は一階の冷蔵庫の冷凍室の中にあると聞きだし、俺はそいつを取りに行くために一旦ハルヒの部屋を出る事にした。ドアノブに手を  
かけ、繰り返し「いいから寝てろよ」と声を掛けてから廊下に出る。  
 
 …ドア越しに「ありがとう」なんてハルヒの声が聞こえたような気がしたのは、きっと俺の気のせいだろうさ。  
 

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