それはある日の放課後。  
 今日は特別な活動もなく、それぞれが好きなことをやって過ごしている。  
 ハルヒは、いつものように団長机でネットサーフィン。  
 長門といえば、お決まりの場所でお決まりのような分厚い本を読んでいる。  
 朝比奈さんは、空になった急須を洗っている。ひらひら揺れるメイド服がまぶしいぜ。  
 そして、古泉は俺とオセロをしている訳だ。盤面のほとんどが白で埋め尽くされているがな。  
 
 平和なひととき。  
 
 だが、なんかさっきからハルヒの様子がおかしい。  
 パソコンの画面を睨み付けたまま、マウスをカチカチカチカチと鳴らしている。  
「おい、ハルヒ。カチカチうるさいぞ」  
「いいじゃない、カチカチぐらい。こっちは退屈で退屈でしょうがないのよ」  
 机に頬杖をついてハルヒは溜息交じりに言う。  
「退屈退屈ってそりゃ……」  
「ちょっと! キョン!」  
 こらこら、俺が話してる途中に叫ぶな。  
「あんたの話なんてどうでもいいわ! それよりテポドンが発射されたってほんと!?」  
 さっきとはうってかわって、目をキラキラさせながらパソコンの画面を覗き込んでいる。  
 たぶん、ネット上で配信されているニュースでも見つけたんだろう。  
「そうみたいだな。まあ七発全部日本海に落ちたみたいだけどな」  
 俺もニュースで見たときは驚いたな。ついに来たか、って感じだな。  
「ほんとだ。あーあ、なんか面白くないわね」  
 はあ、と溜息をついてアヒルのような口になるハルヒ。  
「こう、なんていうのかしら。テポドンが日本に落ちてきて、日本は核の炎に包まれた!  
 なんて展開にならないかしら。そうすればきっと世紀末覇者とか出てきたり、今よりもっと  
 面白いことが起こるに違いないってあたしは思うのに。そうなればいいのになあ」  
「バカ、そんな漫画みたいなことになるわけ―――」  
 
 ある! 十分にありえる! ハルヒは願望を実現させる力がある!  
 
 古泉は笑っている。だけど、それは絶望を含んだ笑顔だ。  
 朝比奈さんは、急須を手に持ったまま、あわあわと怯えている。  
 長門は、相変わらず無表情だが、なんかいつもの数十倍の勢いで無表情だ。  
   
 こりゃ、やばいな。確実にやばい。このままじゃ、本当に世紀末覇者とか出てきてしまう。  
 そんなの勘弁だ。俺は拳法なんて使えないぜ。ああ、生き残れるかな。  
 
 ―――って、そんなこと考えてる場合じゃない!  
 
「ハルヒ、考え直せ! 力が世の中を支配するような未来はお前だって嫌だろう?」  
「そんなのいいじゃない、あたしの勝手な妄想なんだからあんたに関係ないでしょ!」  
 ばんっ、と机を叩いてハルヒは俺に抗議する。  
 だが、ここで折れる訳にはいかない。  
 本当にそんなことが現実で起きてしまったらシャレにもならない。  
 
 ―――がたん。  
 
 長門が椅子が音をたてる程の勢いで立ち上がる。  
 その目は窓の外を見ている。そして、指を指す。  
 
「……きた」  
 
 次の瞬間、俺の視界は真っ白な光に包まれた。  
 
 
 
 YouはShock!   
 

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