「なによぅっ! キョゥン! あんたっ、あたしの酒が呑めないってわけ!?」  
 息を吹きかけるな。そんな近くから睨むな。  
「キョンくぅん、このジュース美味しいですぅ」  
 それはジュースじゃないんですよ、朝比奈さん。  
「みなさん随分酔っておいでですね」  
 古泉、お前はほんのり頬を染めるな。気持ち悪い。  
「……」  
 ……長門はまったく変わらないな。  
 
 
 ここは長門のマンションの部屋。辺りに散らかっているのは酒瓶とかビールの空き缶とか  
つまみの乗ってた皿とか裂きイカパックの残骸とかである。  
 
 終業式も終わり、「無事三学期が終了したこととSOS団団員が全員進級できた事を  
祝う宴」とやらがハルヒの主導で始まってから二時間。買出しに行くまで  
健全な高校生らしくジュースとケーキで祝おうと思っていた俺の思惑を打ち砕いたのは  
ハルヒの鶴の一声。  
「祝宴なのにアルコールが出ないのは間違ってるわ!」  
 いや、未成年の飲酒のほうが遵法精神あふれる一般市民的には間違ってると思うぞ。  
 そんな俺の突っ込みなんぞはまるっきり無視して準備されたのが鍋とビールと焼酎と…  
とにかく多種多様なアルコール類。  
 
 飲み始めてすぐに真っ赤になってクスクス笑いながら「いやだっ、キョン君たらっ!」  
みたいな恋に落ちてしまいそうな声と肩をパシパシ叩いてきたのは朝比奈さん。あと  
お願いですから「暑いですぅ……」とか言って胸元をはだけるのはやめてください。  
我慢できなくなりそうです。  
「僕はあまりアルコールには強くないんですよ」  
 とか言いながら、カパカパグラスを開けている古泉。お前それ手慣れてるぞ。組織ではそんな  
訓練までしてんのか。  
 
 ハルヒはといえば、……目が据わってる。  
 睨み殺されそうな視線はなんとかしてくれ。  
「……ギョン」  
 濁ってる。目もセリフも。  
「さっきかぁアンタみくるちゃんのことばっかり見て」  
 微妙に呂律の廻っていない口で恨みがましいセリフを吐いてくる。  
 いやそりゃ確かに見てましたが。でもそれは不可抗力ってもんだろ。あんな悩ましい  
谷間の曲線が目の前にあったら誰だって見るってもんだっての。  
「目つきがイヤラしいのよぉっ! なによっ、このおっぱい星人!」  
 なんじゃそりゃ。  
 真っ赤になってにらんでくるハルヒ。  
 茹でタコみたいな顔のままで何か思いついたのかニヤリと笑う。  
 …お、お前っ!?なにをする気だ?やめろっ!?  
「そんなに見たいなら見ればいいじゃ――「馬鹿っ」」  
 ブラウスの胸元を開けようとするハルヒの手を慌てて掴んで止める。  
 俺の手を引き剥がそうとするハルヒ。  
 そうはさせまいとする俺。  
「ばかっ、キョンっ! そんな…」  
 半ばハルヒの身体にのしかかるような体勢になってしまう。  
 ちょっとまずい。いやかなり。  
 朝比奈さんは酔った顔をさらに赤くして手を覆った指の間からコッチを見てる。  
 古泉はあのわざとらしい笑みを張り付かせてニヤニヤしてやがる。  
 ハルヒは真っ赤になったまま俺の手を…じゃなくて俺に手をつかまれながら  
まるでショートしたように俺を見ている。  
 まずい。  
 
 
 まずい。  
 
 
 こぽこぽこぽこぽこ。  
 沈黙を破るのはそんな音。  
「……」  
「有希?」  
 空になったハルヒのグラスにビールを注ぎ込んでいるのは長門。  
 クリーミィな泡がグラスの上三割を占めるという黄金比の注ぎ方だ。  
 長門はそのグラスをハルヒに差し出して  
「飲んで」  
 とだけ言う。  
 
 長門、ちょっと強引だけどとりあえずナイスフォローだぜ。  
 視線だけで誉めると長門はわかった、というようにこれまた視線だけで肯いてくる。  
 
 ハルヒはそのグラスを受け取るとくいっと一気に開ける。  
 こいつ飲みっぷりだけはいいんだよな。普段から飲んでるのか?  
 
 気がそがれたのか、グラスを開けたハルヒは今度は長門に絡むことに決めたようだ。  
「いい? 有希はこういうヘンタイなんかに関わりあっちゃダメよ」  
 こうしてみると平均的な体格のハルヒと小柄な長門は姉妹みたいに見えなくもないな。  
「有希は可愛いから、キョンみたいな悪い虫がつかないようにあたしが見張っててあげるわ」  
 ……まあその実は「暴走して周囲に迷惑をかけまくりの愚姉」と  
「無表情でその尻拭いに奔走する賢妹」みたいなもんなのだが。  
 
「悪い虫ではない」  
 いつになく強い口調の長門。  
「彼は悪い虫などではない」  
 小さいが芯の強そうな声で長門はそう言っている。  
 
 
「……まあ、そんなに悪いってほど悪くは無いかもね。有希がこう言ってるんだし、  
普通の虫にしといてあげるわキョン! 感謝しなさい」  
 俺に指をびしっと突きつけながらハルヒ。  
 虫呼ばわりされときながら感謝せねばならんのか、俺は。  
 
 長門はそれで満足したのか、いつもの無表情でビールのグラスを口に運ぶ。  
薄い唇が柔らかくガラスの縁に押し当てられる。ああ、俺はいっそグラスになりたいね。  
 
「あら? 有希も結構いける口? よーし、じゃあ今日はじゃんじゃん飲むわよー!」  
「おい、長門にあんまり飲ませるなよ」  
「……大丈夫」  
 まあ長門が大丈夫ってんなら大丈夫なんだろうけどさ。  
 
 
 
 
 
 そしてそれから何度目かの乾杯があったあとで。  
 俺と長門はキッチンで片づけをしていた。  
「長門。ゴメンな」  
「何が」  
「あいつら飲むだけ飲んで騒ぐだけ騒いで、結局お前にだけ片付けとかさせちまって」  
 結局ハルヒも朝比奈さんも古泉も轟沈。ハルヒと朝比奈さんはそのままにするわけには  
いかないので和室に布団を敷いて長門と二人で運んで寝かせた。古泉はどうでもいい。  
 
「……構わない」  
 
「そうか」  
「…………そう」  
 セーラー服のままキッチンの流しに向かい、グラスをスポンジで洗っている長門。  
 白くてすらりとしたきれいな足がスカートから生えている。  
 なんか、こーゆーのは若奥さんみたいで可愛い。  
 
 ……いや、俺にはそういう属性は無いはずなんだが、これは長門が可愛いから  
こう思えているんだろうか。そんなことを考えながら長門に皿を渡す。  
 
 皿を渡そうとして長門と指先が重なった。  
 びっくりするほど小さくてか弱い女の子の指に俺が驚くのと同時に、長門は「びくっ」  
と全身を震わせた。  
 
 皿が二人の手の間を滑り落ちる。  
 
 そしてぱりん、という乾いた音がキッチンの床から響く。  
 
「……悪い」  
 と、咄嗟に謝ると長門は意外な言葉を言ってきた。  
「……あなたが悪い」  
 いつもの長門なら大丈夫だとか問題ないとか言ってくるのだが。  
 そう考えてしまった俺はなんか長門に甘えすぎていたかな、と反省する。  
 長門はいつでも許してくれると思っているのならそれは俺の間違いだ。  
 
「悪いのはあなた」  
 そう繰り返す長門の声に胸の中を刺されるような痛みを感じる。  
「いや、ホントスマン。この詫びはなんでも――」  
「……もう限界」  
 何かを押し殺すような苦しげな言葉とともに、熱い吐息と小柄な身体が俺にぶつかってきた。  
「――なっ!?」  
 長門は俺の胸に抱きつくようにして腕の中に飛び込んできた。  
 俺はよろけて冷蔵庫に背中を打ち付けてしまう。  
 
「エラーが発生した」  
 そう言う長門の声はいつもよりどこか安定感を欠いていた。  
「あなたの体温と肉体の感触を皮膚で感知したいという欲求が先ほどから止まらない」  
「な、なん、だって?」  
 身体に感じる、長門の身体。腕も細い。身体もちっこい。  
 ……ていうかなんだよどうした長門?!  
「副交感神経抑制を最大限に行ってきたが、もう限界。あなたに対する感覚欲求は  
先ほどの接触で抑制の限界に達してしまった」  
 ほんの少しだけ苦しそうな色を帯びた瞳がそこにはあった。  
「どうしたんだよ長門? いつものお前らしくない、じゃないか……」  
 
「おそらくアルコールが私の肉体的ハードウェアに影響を与えているのだと考えられる」  
 いつもの口調よりも、ごくわずかだけ震えるような成分が声には含まれてるような気がする。  
いや落ち着いて分析してる場合じゃなくて。  
「長門……」  
「もうだめ」  
「ダメって何が?!」  
「増大するエラーを抑止できない。今現在わたしはあなたの体温と皮膚感覚に酩酊している」  
 首筋にかかる熱い長門の吐息。なんだかゾクゾクしてくる。  
 
「心拍数は増加し顔面の血流量も増大している」  
「な、長門……」  
「あなたに接している皮膚の感覚神経から生じる触感がとても心地よい」  
 そう言う長門の顔は微量の陶酔感のような緩みが無いこともなく。  
「あなたの体温が伝わってくる感覚に喜びを感じている」  
 長門、正気に戻ってくれよ。  
「正気でなくていい」  
 わずかに潤んだ真っ黒い瞳が俺を射抜くように見つめてきている。  
 
「そんな……」  
「あなたがいればいい」  
「…………」  
 長門ばりに三点リーダを多用する俺。なんて言えばいいんだ?  
 長門にこんなこと言ってもらえて、なんだか嬉しいような痒いような照れくさいような。  
「あなたがいてくれればそれだけでいい」  
 俺の心臓が打ち抜かれる。  
 コイツを滅茶苦茶にしてしまいたい、という欲求が一瞬だけ俺の意識の奥底で泡となって  
音を立てる。  
「長門、お前酔ってるのか?」  
「酔ってはいる。しかしそれは理性の欠如ではなく、むしろ抑制の解放」  
 ……なに言ってるのかわかってんのか?  
 
 
「あなたが好き」  
 
 
 
 
「あなたが好き」  
「あなたが好き」「あなたが好き」  
「あなたが好き」「あなたが好き」「あなたが好き」  
 
 
 俺の脳内でエコーとなって響き渡るその声。  
 感情が無い、と思われがちな長門だが、実はそうじゃない。  
 嬉しいときには嬉しい声を出すし、哀しいときにはどこか哀しい響きの色が出ている。  
 それがものすごくわかりにくいだけで、コイツには感情がちゃんとあるんだ、ってことが  
今までずっと長門の顔を見て、声を聞いてきた俺にはわかるようになってきた。  
 そして今の長門の声は、今まで聞いた中で一番幸福そうな感情がこもっていた。  
 無表情に見える顔にもうっすらと笑みすら感じさせる色があふれている。  
 
 抱き合った胸に振動を感じる。  
 コイツの。長門有希の。この小柄なヒューマノイドインターフェースの身体の中で  
小さな心臓がとくん、とくん、と鼓動を打っているのが伝わってくる。  
 
 ありがとう。  
 なぜだかそう思った。  
 長門の心臓が、ちゃんと動いて長門を生きて動かしてくれてありがとう。  
 
 ほんの少しだけ長門の頬は血色がよくなっているみたいだ。  
 それは酔っているせいなのかそれとも酔っている俺の気のせいなのか。  
 長門の唇がものすごく柔らかそうに見える。  
 微妙に赤らんだ色白の頬の肌の中にある桜色の唇。なんだか薄い花びらみたいだ。  
 長門が何かを口にするときにはぽそぽそと動くその唇の柔らかさを知りたい。  
 健康的な男子である俺がそう考えてしまっても罪ではあるまいよ。  
 
「な……がと……キス……してもいいか?」  
 俺は緊張しているのかあがっているのか声がかすれてしまう。  
「……」  
 長門は無言のままこくりと肯く。  
 
 おれはその長門の頬に掌で触れる。  
 小さいな。顎も、頬もすごく小さい。  
 掌に感じるつやつやした肌。  
 俺はゆっくりと顔を近づけていく。  
……近づけていく。  
 
…近づけて。  
 
「……あー、長門。キスするときは目を閉じるんだ」  
「あなたを近くで見ていたい。駄目?」  
 とか言いながら首を傾げるな。可愛すぎだぞ。  
「俺は目を閉じるから、お前は好きにしろ」  
 そう言ってもっともっと近づけて……  
 
 長門の唇は長門みたいに、小さくて、すべすべで、可愛かった。  
 しっとりと濡れた皮膚と、その内側の柔らかい粘膜。  
 口づけて触れ合った唇から鼓動のとくん、とくんという振動が伝わってきそうだ。  
 ふごー、と鳴りそうになる鼻息を必死にこらえるが、長門はそんなこと気にもせず  
鼻から漏れる甘い吐息を俺に聞かせてくれる。ヤバイ。  
 
「…んくっ」  
 とでも表現したらいいのか、とにかくそんなような喘ぎ声が俺の耳を、俺の肌を震わせる。  
繋がった唇から骨が痒くなるような甘い響きが広がってくる。  
 顔の皮膚に長門の鼻息が吹き付けられる。  
 俺は朝倉涼子に襲われたときの教室でのことを思い出した。  
 長門を抱きとめたときにかすかに感じた匂い。薫り。長門の身体の匂いだ。  
 呼気の中に含まれているそれはほんの一呼吸嗅いだだけで俺の胸を熱く痛くさせる。  
 そして長門の体温。冷たい印象を与えるその肌が実はすごく熱かった、ということを  
俺は知った。  
 
 
 長門の唇がゆっくりと離れていく。  
 顔面に感じていた長門の体温と匂いが消えていく。  
 俺はそれに喪失感を覚えてしまう。  
 自分の身体の一部だったものがなくなってしまうような感覚。  
 キスしてたのはほんの十秒ほどの時間だったのに。  
 
 目を開けると、俺はそこに意外なものを見た。  
 長門は頬を赤く染めている。  
 どことなくうっとりとした表情で。  
 驚いた。  
「長門……お前」  
 
 
「……」  
 大きく見開かれた瞳のままで、長門は再び唇を寄せてくる。  
 唇が触れる。  
 離れる。  
 また触れる。  
 
 まるで小鳥が餌をついばむように、唇でノックするみたいに長門は何度も  
浅いキスを繰り返してくる。  
 ちゅ。ちゅじゅっ。  
 吸いながら、俺の唇を自分の唇で挟むようにしながら。  
 浅く舌を出して俺の唇を舐めながら。  
 何度も何度も、長門はキスをしてくる。  
 長門の荒い息が俺の鼻に吹きかかる。  
 ぬめぬめした舌が俺の上唇を舐めてくる。  
 ふっくらとした唇で下唇が挟まれる。  
 
 一回触れるごとに、一回唇が押し付けられる度に俺の胸の芯がズキズキと疼きはじめる。  
 
 鼻の頭にキスされ、頬を舐められ、顎を唇で吸われる。  
 俺の顔中を唾液でベトベトにしながら、長門は俺を唇で味わっている。  
 
 俺は長門の両頬を掴むと、そのまま額に唇を押し当てる。  
 鼻にいい匂いが伝わってくる。髪のシャンプーの匂いだ。  
 続いて長門の耳たぶを優しく唇で噛む。咥え、吸い、愛撫する。  
「…………」  
 無言の長門だが、舌を耳の裏に這わせる頃になるとちいさい甘い鼻声を  
止める事ができなくなっている。「……んぅー」と言うような、聞くものの精神を  
一瞬で燃え上がらせるような可愛い鼻声は俺が再び長門の唇をふさぐまで続いた。  
 
 俺がキスするたびに、長門のキスに応えるたびに、腕の中の長門の身体がぴくっ、と震える。  
 まるで俺が長門の身体を思うままにしているかのような錯覚を覚える。  
 いや、もしかしたら錯覚じゃないのか?  
 
 にゅるっ。  
 押し付けあった唇の間に感じるのはぬるぬるした熱い、長門の味がする肌。  
 その舌は俺の唇を割ると口の中に入り込んでくる。  
 
 薄い舌が俺の唇の裏側を撫でる。ぬらりという感触に脳髄がびくりと驚く。  
 ななななな……  
 驚きに目を開くと、数センチの距離に長門の大きな黒い瞳。  
 深くて黒い瞳孔が俺の視界のほとんどを占めている。  
 
 長門の舌が俺の歯茎を舐め、舌の上を滑り、舌の裏を撫でてくる。  
 自分以外で触られた事の無い粘膜が長門の舌先で押され、触られ、ぬるぬると  
弄ばれる。それは勝手に鼻息が荒くなってしまうくらい気持ちいい。  
 
 舌先が俺の舌と触れ、押し合うたびに眼前では長門の目が細められ、  
目の縁にかすかに盛り上がった涙が俺の頬で拭われる。  
 
 俺は唇を越境して長門の口内に舌先を押し入れた。  
 長門がしてくれたように上あごの裏側や唇の内側や舌のわき腹を愛撫する。  
 俺の舌の動きで長門が身じろぎをし、甘い鼻声を漏らし、俺の背中に廻したちいさな掌が  
ふるふると震えだす。  
 
 全身が舌になってしまったような感覚。  
 舌を押し付け合い、舌を絡ませあい、唾液を流し込み、吸い取る。  
 口の中が性感帯になってしまったかのような感覚。  
 長門の唾液と自分の唾液が混ざり合った味。  
 
 数分か、数十分か、俺にはわからなかった。  
 とにかく、二人が息が切れるまで俺と長門はキスを続けた。  
 
 ほんのりと赤みが差した表情で、目じりにはうっすらと涙すら浮かべてさえいる。  
 長門は薄く汗で覆われた額に前髪を何本か張り付けたままで言った。  
「あなたとの粘膜接触と体液交換は私が今までに経験した事が無いほどの快感を伴った」  
 
 
「他の部位で体液を交換した場合、どれほどの快感を覚えるのか私は知りたい」  
 そ、それって…そういう…意味か?  
「……駄目?」  
「い、いや、その、ハ……ハルヒや朝比奈さんが起きてくるかも知れないから、  
その、今ここでってのはまずい」  
 今にもズボンを突き破りそうなほど硬くなったマイ・サンのことはとりあえず置いておく。  
確かに、長門とコレで体液交換なんかしたら気が遠くなるほど気持ちいいだろうが。  
 
「その点については問題ない。涼宮ハルヒと朝比奈みくるは明朝10時過ぎまで体内の  
アルコール分解過程は終了しない。すくなくとも明朝までノンレム睡眠を続けるのは確実」  
「古泉一樹についてもそれは同様。明朝六時までは彼の血中アルコール濃度は  
通常レベルには戻らない」  
 
 
 
 
ちーーーーー  
 
 
何の音だ?  
俺のズボンのチャックが下ろされる音だ。  
下ろしてるのは、長門。  
 
 
 
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