もう本当嫌になってきたけどスマイルをかかさない古泉 一樹だよ。
キョン吉は最近長門と仲がいいようで、今日もぜっこうの閉鎖空間日和だ。
もしかしてキョン吉は全部わかっていて、それでいて俺を殺すために同じことを繰り返しているんじゃないだろうな?
そうだとしたら死を覚悟して涼宮にすべてをチクッテやる。
なんで俺がいつもにましてキョン吉に対して毒を吐きまくっているのかというとついさっき閉鎖空間で戦ってきたばかりだからだ。
今回の閉鎖空間は本当に久々のもので俺は、いや俺達は油断しまくっていた。
何度も言ってきたがキョン吉の行動しだいで世界は滅ぶ。
今日の閉鎖空間はキョン吉のこんな行動が引き金だった。
「なあ、長門」
「何?」
SOS団部室、みんな集まり何事も無く平和なひと時。こんな時間が永遠に続けばいい。キョン吉もきっと同じことを考えているはずだ。
ああ、平和。すばらしきかな平和! 俺達はこの平和をかみ締めて生きていくのだ。それだけで幸せさ・・・そうだろう?
「今日の夕飯、なにかリクエストはないか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?
あの・・・キョンさん? 今あなた長門さんになんていいました?
涼宮=硬直
朝比奈=硬直
俺=死を覚悟した
「・・・・・・特に・・・」
「そうか、リクエストがあるほうがお袋も作りやすいって言ってたからさ」
なんでこの状況で俺は冷静なんだろう? 死ねば楽なのに・・・
「ねえ、キョン」
淡々と。ただ淡々と言葉が出てくる。
「どうして有希がキョンのお母さんに晩御飯のリクエストを聞かれているの」
疑問系なのだが?マークだってついていないぐらい淡々と語る。俺も聞きたい。
「ああ、この前長門が家にきてな。そのときお袋が長門を引き止めてさ、長門も一緒に夕飯を食ったんだが」
「・・・へぇ」
「・・・そうなんですかぁ」
こえぇぇ、こえぇぇぇよ上の二人。
「その時にお袋が長門を気に入っちまってな、何かあるたびに長門を夕飯に呼ぶようになっちまってな」
長門がそのとおりだって感じでうなずいた。
「で、今日も長門が夕飯を食べに来るひだからさ。なにかリクエストは無いかなーって」
「ふぅん」
この状況を、俺はどうすればいい。どうすればいいのか教えてくれぇ!!
「なんだったらハルヒもくるか?」
長門はキョン吉を見つめる。瞳の色は、怒り。
「お袋が大量につくるからな、一人増えるぐらいなら余裕だろ」
「あら? そう。お邪魔なんじゃないの?」
「そんなこと無いぞ。あ、よかったら朝比奈さんきますか?」
「そうですねぇ・・・」
長門が、その瞳の色を変えた。おそらくあれは、落胆。
長門もあきらめたらしいな、キョン吉はそういう人間なんだってことに。
「古泉もきたきゃきても良いぞ」
行くよ、どうせ涼宮もいくだろうし。
「そうね、どうせだからSOS団みんなでいきましょ! 有紀もいいわよね」
「・・・? いや長門は最初からくる予定なんだが」
そういうことじゃねぇのさ。いい加減気づいてやれ。
長門はあきらめたように小さくうなずいた。
いらねぇとは思うが、一応『機関』には報告しとくか。
キョン吉の家で食事、特にここで報告することは無い。
問題はそのあと、
「お邪魔しましたー」
挨拶を済まして家に帰る、キョン吉も一緒に来る。
キョン吉のお袋さんはとてもおおらかな人でいきなり三人増えたのにもかかわらず喜んで食事を出してくれた。
で、帰り道。駅前までついたところで解散。
俺は電車に乗って帰る。涼宮・朝比奈もそうらしい。で長門はマンションに帰りキョン吉も・・・?
なぜ長門さんについて行きますかー?
「ああ、夕飯食った後はいつも長門の家で勉強を教えてもらってんだ」
保健体育ですか?
「・・・」
うなずく長門。いやもちろん保健体育のところじゃくて勉強のところね。
「長門のおかげでこの前のテストも・・・」
長門の家であったことや、長門さんのお菓子がけっこうおいしいだとか、語り始めた。
「ふぅん」
この後は、「じゃあSOS団でキョンに勉強を教えるわよ」となるところだが。
「じゃあなハルヒ。結構たのしかっぜ」
お別れの言葉を言われてわ仕方があるまい。
キョン吉と長門の後ろ姿を見つめる俺達。
長門がキョン吉の手を握った。遠くてよく見えなかったがこっちを一瞬見た気がする。
長門が表情豊かならここでニヤリと笑ったであろう・・・
その瞬間、閉鎖空間が発生した。
キョン吉・・・うらむぜ。