「あっ、あぁ!ワタシ、もう…」  
「くっ、オレも、そろそろ…」  
「もうダメッ!キョン、ワタシ、イッちゃう!あっ、あっ、あああぁぁぁ!!」  
「ハルヒ!!くっ、うぁ!!」  
 
「な、なんで朝っぱらからヤらなきゃいけないのよ!!このエロキョン!!」  
そう、オレたちの淫らな行為はたった今終わったところだ。証拠というワケでもないけどオレもハルヒも素っ裸だ。  
 
でも、逆に学校はもう少しで始まろうとしている。これまた証拠に窓の外から沢山の生徒の話し声がするし、実際、外を見ればかなりの数の生徒が校舎へ向かっている。  
これだけの証拠があれば某裁判ゲームの主人公でもないかぎり異議は唱えないだろう。  
 
「わかってるんだったら、早くワタシの制服返しなさいよ!」  
ん?もう服着ちまうのか?  
「アンタ、今自分でもうすぐ学校だって言ったじゃない!!いくら部室にいるからって、服も着ないのはさすがにマズいでしょ!!」  
 
そう、今オレとハルヒがいるのはSOS団が乗っ取った文芸部の部室だ。珍しく早めに学校に来て部室に入って暇を潰している内に、ハルヒがやってきて  
「あら?キョン、来てたの?今日は早いのね」  
「それにしても朝一番に会話する相手がキョンだなんて、今日はいい事あるかもね。」  
なぁんて事を極上スマイルで言ってきた。マク〇ナルドの0円スマイルなどとは核が違うぜ。  
とにかく、この殺人スマイルによって理性をすっ飛ばされたオレは本能のままにハルヒに襲いかかり、今に至るわけだ。  
「そんな状況説明いらないわよ!!ワタシ、当事者なんだから!!とにかく制服っ!!」  
「ヤだなぁ。もうちょっと裸のハルヒのこと、見てたいなぁ。すんげぇ、キレイだし。」  
「なっ…、何バカ言ってんのよ!早く制」  
「愛してるよ、ハルヒ。いや、愛というよりも中毒だ。そう、ハルヒ中毒。」  
そういってオレはハルヒを抱きしめる。  
 
最高の抱き心地、これに勝るモノはこの世にないだろうな。あってもオレが消してやる。  
「んっ、もう…。ワタシも愛してるわ、キョン。この世で一番げっ…」  
 
は?一番げっ?一番ゲッツ?今さらゲッツかよ。不思議に想ったオレは一旦ハルヒの顔を伺う。視線がオレを見ていない。クソッ!ハルヒの視線を奪うモノは許さん!って言い過ぎか?とにかくハルヒの視線を追う。そこには…  
「げげっ!」  
 
 
 
そこには呆然とこちらを見ている我がクラスメイトである谷口がいた…。  
 
 
 
谷口クンがなんでココにいるのぉ?ボク、わかんなーい。  
・・・戻ってこい、オレ。  
しかし、なんでアイツはココにいるんだ!?本来、谷口は自分からこんな変な場所には来ないだろう。確かに女性やエロスには過剰反応するヤツだが、いくらなんでも教室からオレとハルヒの営みの匂いをかぎつけてきたなんてことはないだろう。じゃあ、なぜ?  
 
まぁ、今それはどうでもいい。とにかくアイツを…  
ピピッ!  
 
ん?携帯?オレは電源切ってるぞ。理由は簡単。ハルヒとの行為を邪魔されないためだ。それはハルヒも同じだ。となると今の電子音はオレとハルヒの携帯からではないってことだ。じゃあ一体誰のだ谷口だ。これは一瞬でわかる。句読点すら入らない。オレは再び谷口を見やる。  
 
「げげげっ!」  
助けて!鬼太郎さんっ!そう言いたくもなる。なんてことだ。谷口の野郎、ムービーとっていやがった。マズい、これはマズい。なにかの本で読んだ百味ビーンズ・ゲロ味もなかなかまずそうだったがこれはそんなもんじゃない。  
あれが誰かの目に晒されてみろ。あっと言う間に学校中に広がるだろう。そうなれば確実に世界は終わる。比喩じゃなくて文字通りにしっかりと終わるだろう。ハルヒの力によってね。  
とにかく今はアイツをどうにかしねぇと!!  
「お、おい、谷口?」  
「すまねぇ、邪魔したな。」  
谷口は逃げ出した。  
 
そのセリフ、前も聞いたことがある。それにあの時はまだ言い訳がきいた。でも、この状況は無理だろう。抱き合ってるし、素っ裸だし。とりあえず今は服を着てアイツを追うしかねぇ!  
「ハルヒ、服着ろ!追うぞ!」  
「ねぇ、キョン?」「何だ?急がねぇと何されるかわかんねぇぞ?」  
「もう、いいわ。うん、ちょうどいい機会だし」  
「何がだよ。」  
「ワタシ達のことがみんなに知られてもいいって言ってるの!」  
「はぁ?隠したいって言ったのはオマエだろ、ハルヒ?」  
 
そうだ。そもそも何でオレがこんなに焦ってるかというと、オレ達の関係は徹底的に隠してきたからだ。そして、今言ったがそれを決めたのはハルヒの方なのだ。  
「だって、隠した方が燃えそうじゃない?キョンもそう思うでしょ?」  
その時はハルヒの意見に同意した。  
でも、実際コレをやり通すのはかなりキツかった。クラスメートはもちろん、SOS団にも秘密だからハルヒとイチャつく時間はかなり制限された。まぁ、その分やれるときは徹底的にハルヒを愛したからいいが。多分、それはハルヒも同じだろう。  
けれど、中には例外もいる。オレの妹だ。1ヶ月位前にオレの部屋で行為に勤しんでいたところに、ノックなしに突然  
「キョンくん、シャミはぁ?」  
と、いって入ってきた。もちろん大騒ぎだったが、次のSOS団合宿にも連れて行くことで手を打った。  
 
「キョンもツラかったでしょ?ここら辺で学校中のみんなにわからせときましょうよ。ワタシ、相手がキョンなら何言われても平気よ?」  
小首を傾げてオレに話しかけてくる。あぁ、ハルヒ、オマエがそう言うなら構わない。オレだってハルヒの事を自慢したくてたまらないからな。  
「ふふっ。じゃあ、決まりね。そうと決まれば早く教室行きましょ?周りが引くくらいイチャついてあげるわ。」  
「じゃあ、制服着て早く行こう。少し楽しみになってきたぜ。」  
 
 
「あ、あのスミマセン!ホントに邪魔する気とかなかったんですけど、その、つい…。」  
「いやいや、お熱いですね。まさか団長とアナタがそんな関係とは考えもしませんでしたよ」  
「・・・・・・・」  
入り口にいたのはパニック起こした未来人、憎たらしい超能力者、口を開かない宇宙人。  
もう少し、空気を読んでほしかった。  
 
 
オレたちは結局、一限目はサボることにした。  
「何だ、聞いてたの?なら、話は早いわ。作戦会議するわよ。古泉クンたちも一限目はサボりなさい!!」  
そうしてオレとハルヒのイチャイチャぶりをどのように見せつけるか作戦会議が始まった。  
「作戦なんか立てなくても、弁当一緒に食って、『はい、あーん』でもやればいいだろ?」  
「今頃、キョンとそんなありきたりなことする気にはならないわね」  
あれ?やんわり拒否られたぞ。結構やりたかったんだがな、ハルヒとそういうこと。  
まさか、ハルヒは口ではああ言ってるがホントはやりたくないんじゃないか?ひょっとするとオレの事なんか…。  
「ち、違うわよ!!そんなワケないでしょ!!」  
口ではいくらでも言えるよな。  
「ちょっとキョン!話聞きなさいよ!ワタシが愛してるのはキョンだけよ!!」  
はぁ・・・、オレは所詮こんなモノだったか…。  
「お願い、キョン…。そんなこと言わないで。ワタシはキョンじゃなきゃダメなのよ。お願い…。」  
しまった!!少しやりすぎた!!ハルヒが半泣きだっ!!  
すぐさまハルヒに駆け寄り抱きしめ頭を撫でる。  
「悪かった。オレもハルヒじゃなきゃ無理だ。愛してる。」  
「ワタシも。キョンが一番いいわ。」  
唇を合わせお互いの気持ちを確認する…。  
 
「今のを教室でやれば完璧だと思いますよ?ねぇ、朝比奈さん?」  
「ワ、ワタシ、感動しました。ホ、ホントに良かったですね。」  
「・・・・・・・・」  
 
ホントに空気の読めないヤツらだ。  
 
 
場所は変わってココは教室。オレは今、授業を受けている。ちなみにオレの後ろにハルヒの姿はない。  
 
「キョン、アンタは授業受けてきていいわよ。あとは私たちで決めるから。は?何言ってんのよ!いいから早く行きなさい。作戦内容は明日教えるから。え?そうよ。ワタシ今日は授業出ないから。もう、早く行きなさいよ!別れるわよ!!」  
その言葉に逆らえず部室を追い出されたオレは仕方なく教室に行くことにした。  
 
「あっ、キョンじゃないか。どうしたの?寝坊かい?」  
国木田が問いかけてくる。  
「あぁ、寝てた」  
ウソじゃないさ。まぁ、ハルヒと部室で、しかも裸だったわけだけど。もちろんソレは内緒だ。どうせ明日には学校中に知れ渡るんけど。  
「そんなことだろうと思ったよ。先生には腹痛で遅れてるって言っといたよ。」  
おっと、明日の作戦とやらのためにもオレにはやらなきゃならないことがある。「なぁ、国木田。谷口はどこだ?」  
「谷口?アソコで女子と喋ってるよ。ホラ、アソコ。」  
いた。こっちに気づかずヘラヘラ笑ってやがる。  
「サンキュ」  
国木田に礼を言って谷口へ近づく。  
「やぁ、谷口クン。おはよう。」  
「ん?あっ、あぁ、キョンか。そのおはよう…。」  
「話がある。こっちにきやがれ。」  
谷口を引きずるように教室を後にする。  
 
場所は空き教室。  
オレは黙って右手を差し出す。  
「な、なんだよ。いきなりこんなところに連れてきて。その右手はなんだよ。握手か?」  
出せ。  
「な、何を?」  
お前の携帯だよ。  
「オレの携帯をどうする気だ?」  
逆パカする。  
「ふ、ふざけんなよ。どうして」  
どうして?谷口、お前がソレを言うか。この盗撮魔め!!  
「あ、あれは事故なんだよ。朝早くきたら部室に行くオマエが見えたんだよ。だから遊びにいこうかと思ってよ…。そしたら…。」  
ハイハイ、お前の事情はよくわかったよ。とにかくソレに入ったムービーを消すからさっさとソレをよこせ。  
「壊さないか?」  
たぶんな。  
「わかったよ。オレが悪かった。ホレ。」  
携帯を受け取りデータフォルダをひらく。  
『あんっ、あぁ、ダメェ、キョン、ワタシいっちゃう!!』  
ハルヒの艶めかしい姿が全て映っている。クソ、コイツにハルヒのカラダを見られたと思うと…。  
 
ボキッ  
 
「ああぁっ!オレの携帯が!キョン、酷いぜ、ソレは…。」  
黙れ、盗撮魔。とにかく朝見た内容を誰かに喋ってみろ。次はお前をこうしてやるからな。  
「・・・。」  
呆然と立ち尽くした谷口を放って教室に戻る。  
 
結局ハルヒは宣言通り授業にはいっさい出なかった。放課後、部室には行ったが誰もいない。それなら今日は帰って早く寝よう。明日は何が起こるかわからないのだから…。  
 
 
翌日、学校に着いた途端鶴屋さんに拉致られた。  
着いた場所はお馴染みSOS団部室。一体何されんだ、オレ。  
「おはようっ!元気かい、少年!あたしはめがっさ元気だよ!」  
本当に元気がいい人だ。セリフすべてにビックリマークがよく似合う。  
「一体なんだっていうんですか、突然こんなところに連れ込んで。」  
「ハルにゃんに頼まれたんだっ!作戦は聞いたよっ。うらやましいねっ、妬けちゃうねっ!」  
本当に明るい人だ。全てのセリフの最後に「っ」がよく似合う。  
「作戦?鶴屋さんは内容を知ってるんですか?オレは全く知らないんですけど。」  
「詳しいことはあたしもわかんないよん。あたしが頼まれたのはキョンくんにコレを着せることだよんっ!」  
そういって鶴屋さんが紙袋から出したのは・・・  
「タキシード…?」  
「正解!キョンくんはお利口さんだねっ!先輩として嬉しいよっ!」  
「コレをオレがきるんですか?」  
「そうだよっ。キョンくん似合いそうだからねっ!ハルにゃんのファッションセンスにはビックリしちゃうよ!」  
「そうですか。でもこれくらいなら1人でできますよ。教育テレビじゃあるまいし。」  
「そんくらいわかってるよっ!まぁ、あたし個人としてはお手伝いしてあげたいんだけどねっ!」  
鶴屋さんはそういってさっきとは別種類の笑顔を浮かべる。どこがさっきと違うかは説明できないけれど、でも違うのは確かだ。切なげとでも言うのか?うぅん、わからん。  
「とにかく着替えなら1人でもできますから。」  
「そうやって寂しいことをいわないでほしいな!キョンくん、これは結び方わからないでしょ?」  
「蝶ネクタイ、ですか?」  
確かにソレは知らない。生まれてから今まで凡人として生きてきたオレには程遠い存在の蝶ネクタイ。おそらく鶴屋さんの手を借りないとだめだろう。  
「でしょうっ!やっぱりあたしが必要になるのさねっ!じゃ、いったん部室出るからタキシード着ちゃってよ。で、終わったら呼んでにょろ!」  
そういって、鶴屋さんは部室をでた。ふぅ。何が起こるのかはわからんが今はコレを着るとしよう。  
 
蝶ネクタイ以外は普通に着ることができた。ハルヒのことだからタキシード自体に何かあるかと思ったがオレの考えすぎだったようだ。  
「鶴屋さん!入っていいですよ!」  
「ハイハイハーイ!お邪魔しますよんっ!おっ、キョンくんやっぱり似合ってるねっ!かっこいいよっ!惚れちゃうね!!」  
そこまで言ってくれるとお世辞とわかってても嬉しい。  
「ありがとうございます。鶴屋さんも綺麗ですよ。」  
別に鶴屋さんは着替えてないが、お世辞を返してみた。  
「ホントッ!?嬉しいなぁっ!ウソでも嬉しいねっ!」  
まただ。また別種類の笑顔を浮かべた。今度はなんだろ、照れかな?やっぱり、鶴屋さんも誉められると照れるのか。  
「まぁ、いいさっ!じゃあ、キョンくんっ。後ろ向いてもらえるかなっ!そっちの方がつけやすいんだっ!ささっ、早く向くんだっ!」  
なされるがままに後ろを向く。  
「そういえばハルヒはどこにいるんすか?」  
「ハルにゃんはしばらく来ないよんっ!他のみんなもハルにゃんも準備してるからねっ!内容は知んないけっどねっ!午前中は学校には来ないみたいだよんっ!」  
ふむ。じゃあ、なんだ。オレにはタキシードで授業を受けろと?アホか。さすがにそりゃ無理だ。かといってココで午前の授業4時間全てをサボるのも難しいだろう。ここは鶴屋さんには悪いがいったんタキシードを脱ぐことにしよう。  
「鶴屋さん。」  
「うん?なんだい?」  
「いったんタキシード脱ごうかと思うんです。」  
「ありゃ?そりゃまたどうして?」  
「だって、ハルヒを始めとしてSOS団はみんな午前中は来ないんでしょう?ということは…」  
 
ガシャン  
 
えっ?何の音だ?あれ?手が動かねえぞ!なんだ、こりゃ?手錠じゃねぇかっ!「ちょ、ちょっと鶴屋さん?」  
「そうっ!つまりしばらくこの部室はキョンくんとあたしだけってことさっ!」  
そう言う鶴屋さんの笑顔は今までみた笑顔の中で一番明るく、一番まぶしく、そして一番妖しげだった…。  
 
 
一体全体コレはどういう事だっ!?  
なんでオレが鶴屋さんに手錠を掛けられなければいけないんだ?オレは鶴屋さんに恨みを買うような事を知らぬ間にしてしまったのか??  
「おっとっと、それは勘違いってモンだよっ!あたしは全然キョンくんの事、恨んでなんかいないにょろよっ!むしろ好きかなっ!うん、めがっさ好きだよんっ!」  
その笑顔にそのセリフ、この手錠さえなければ一瞬だろうけど、オレの心はハルヒからアナタに移ったでしょうね…。  
「言ってることとやってることが一致してませんよ!と、とにかくこの手錠を…ってどこ行くんですか?」  
「ん?あぁ、安心してくれていいよんっ!部室の鍵をちょいっと閉めるだけだかんねっ!」  
それはヤバい!この状態で閉じ込められたら確実に攻撃権(?)は鶴屋さんにいってしまう。幸い、足は動く。少し手荒だが強行突破しかあるまい。  
「クソ、うおおおぉぉぉっっ!」  
潜在能力まで全て引き出す勢いで部室のドアに向かって突進する。  
「おっとぉ、キョンくん激しいなぁっ!でも、ちょいと大人しくしててねっ!」  
その声と共に鶴屋さんが視界から消えた。  
「え?あれ?」  
気が付くと鶴屋さんはオレの背後に回っていた。そして…  
「う、うおぉ!?」  
さっきの雄叫びとは程遠い情けない悲鳴をあげる。どうやら鶴屋さんは古流武術系の技でオレを投げたらしい。  
床から背中を通し自分の体重以上の衝撃が襲ってくる。  
「ぐっ、がぁ…。」  
息ができない。苦しい…。  
 
カシャン  
 
また手錠か?いや、違うな。動かなくなったのは足だ。クソ、足まで封じられたか。  
「つ、鶴屋、さん。もう、いい、加減に…。」  
ダメだ、まだ息が整わない。  
「ゴメンねっ、キョンくん。あっと、もしかして息ができなかったりするかいっ?今、先輩が楽にしてあげんよっ!」  
「…は?んっ、んぅ!」  
鶴屋さんが言い終わった時にはもう遅かった。今のところハルヒにしか譲る気のなかったオレの唇は鶴屋さんによって塞がれていた。  
 
「んぅ、むぅ!?」  
なんでオレがキスされてるんだ?そもそも何で鶴屋さんがこんなことを…。ダメだ、頭が回らない。ボーっとしてくる。  
「はっははっ!キョンくんの唇はやっぱり美味しいねっ!うん?どうしたんだい、そんな呆けた顔して?その顔にあたしはめがっさ興奮してきちゃったよっ!」  
「ふっ、んんっ!?」  
舌だ、鶴屋さんが舌をオレの口内に入れてきた!  
「むぁ、んむっ、んぅ」  
とりあえず、鶴屋さんの舌から逃れようと自分の舌を暴れさせる。すると、鶴屋さんはあっさりと舌をひっこめた。あきらめてくれたか?  
「んぅ…。キョンくん、逃げないで。」  
鶴屋さんがオレの顔を両の手で固定しながら今まで見たことない真剣な顔でそう語りかけてくる。  
動けない。顔を固定されてるからではない。魔法にかかったみたいにウソのようだが動かない。  
オレが動かないとわかったのか、鶴屋さんはいつもの笑顔に戻って  
「お利口さんは好きだよんっ!いるかどうかは知らないけどご褒美だっ!」  
そう言ってまた唇をつけて舌を侵入させてくる。  
「むぅあ、んぁ…。」  
「んむ、キョンくぅん…。」  
鶴屋さんの唾液が流れ込んでくる。唾液は溢れてオレの口の端からこぼれ落ちる。  
「キョンくんのも…、ちょうだいな…。」  
そう言うと鶴屋さんは口内のオレの唾液を丹念に舐めとりはじめた。ありとあらよる場所を舐めまわしてくる。口内が犯されているのがよくわかる。  
 
「んちゅ、ぷはぁ…。ごちそうさんでしたっ!キョンくんの口、おいしかったぞっ!」  
唾液を口の端からこぼしながら笑う鶴屋さんの姿は、とても妖しげな魅力を携えていた。  
「それはどおも。それより鶴屋さん、一体どういうつもりなんですか?一体なんでこんなことするんですか?」  
「何で?」  
「そうですよ、いきなり手足封じてあんなことして!拷問ですか?さっきも言いましたけど恨みがあるんなら言ってくださいよ!いい加減にしてくれないと…」  
「違うよっ!さっきも言ったじゃないかっ!恨みなんかない、むしろ好きだって!そうだよ、あたしはキョンくんを愛してるんだよっ!」  
そう叫ぶ鶴屋さんの瞳は涙にあふれていた。  
 
愛してる、だって?鶴屋さんが?オレを?バカな!冗談はやめてくださいよ。  
「冗談なんかじゃないさ!あたしは好きさっ、キョンくんが!」  
で、でも知ってるでしょう、オレとハルヒの関係を。  
「聞いたよ、昨日!夜、ハルにゃんからウチに電話があって作戦の事聞かされて!ハルにゃん、めがっさ嬉しそうに話すから!すんごく、羨ましかったよ!」  
で、でも鶴屋さん、アナタは前にオレに言ったじゃないですか。幸せそうなヤツを眺めるのが好きだって。そして、それを眺めて幸せになれる自分が好きだって。  
「そんなのは、わかってるさ!でも、キョンくんへのこの気持ちは誰にも譲れないんだっ!でも、正攻法でいったって結末は簡単に考えついちゃうからっ!だからっ、だからっ!」  
こんなに取り乱した鶴屋さんは初めてだった。というか、取り乱した鶴屋さん自体オレは初めて見る。  
鶴屋さんはこういってくれている。だけどオレはハルヒの事が…。  
「わかってるさ、それもっ!キョンくんはハルにゃんのモノだってことぐらい。」  
鶴屋さんはうつむく。  
あぁ、オレは鶴屋さんになんと酷い事を言ってしまったんだろう。鶴屋さんの愛を拷問だなんて…。  
「すみません、何も知らずに勝手な事言って…。」  
「あっ、いいよいいよ!悪いのはあたしなんだかんねっ!謝るべきはあたしだねっ!ごめんなさい!」  
よかった、笑顔に戻ってくれた…。これで一件落着と考えていいのか?  
「あっと!ごめんね、キョンくん。いくらなんでも手錠のしっぱなしはつらいよね?今、はずすよっ!」  
 
カシャン  
 
外れた。ちゃんと手足が動く。よかった、ホントに一件落着みたいだ。  
「ね、ねぇ、キョンくん?」  
なんでしょうか、鶴屋さん。大丈夫ですよ、気にしてませんから。というより、今なら何されても気にしませんよ。  
「ホントかい?じゃあ、もう1回キスしてくれはしないかなっ?」  
構いませんよ。ただしハルヒには内密ですよ。  
「ありがとっ、やっぱりキョンくんは優しいねっ!」  
腕をまわして嬉しそうに抱きついてくる鶴屋さん。そして唇を重ねて…  
 
チクッ  
 
痛っ!なんだ今の、虫か?首を刺されたかなぁ。  
 
ガクッ  
 
あれ?体に力が入らねぇぞ?それに頭もクラクラするぞ。  
「キョンくんすまないっ。やっぱりあたしはあきらめらんないな。悪いんだけど、ちっとだけ眠っててね!」  
視界の端にとらえたのは声とは裏腹に全く笑ってない鶴屋さんだった…。  
 

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