「うわぁぁっ」  
俺は、ベットから情けなくも跳ね起き、周りの景色を見た。いつもの俺の部屋だ、暗いが。  
そりゃそうだよな、しかし、なんだ今の夢は、俺と有希、いやいや長門が夫婦って設定の夢……  
しかも非常にリアルな、それでいてほぼ全ての出来事が記憶に残ってる。こんなことってあるのか?  
少なくとも、この15年間では一度も無いタイプの夢だ。  
俺は一度下に降りて時間を見る、夜中の2時、三時間しか経ってないのか。  
ジュースをコップ一杯飲み、また布団に戻る。  
睡魔はすぐに襲ってきた、願わくばさっきのような生々しい夢は勘弁したいもんだね……  
 
 
〜第二夜〜  
 
 
「……ョン君」  
誰かに呼ばれている。重い瞼を開けると、上には病室のような天井。  
「キョン君」  
そして、傍らには、心配そうに見つめる、スーツ姿の一人の女性  
「あぁ、おはよう、みくる」  
 
大人の朝比奈みくるがそこに居た。  
 
涼宮ハルヒが原因であろう次元の歪みは、無事解決した。ここでの解決の経緯は  
言葉で伝えられないので、割愛する。要するにもうハルヒは普通の人間になった。  
それに伴い、朝比奈さん、いや、みくると「俺」は未来に帰る事にした。  
いままで、記憶改変されて気付きようがなかったが、俺も未来人だ。  
俺が未来人である事、涼宮ハルヒの鍵となる存在という事、問題解決のために未来の情報を消したこと、  
戻ってから、こちらの頃の記憶を思い出させてもらって、納得した、俺はここの時代の人間だと。  
それらすべては未来の、今ここに居るみくるのおかげなので確証は無い。  
だけど、そんなことは些細なことで、俺とみくるは元の……夫婦という関係に戻ったわけだ。  
「キョン君?どうしたの?」  
「いやっ、いつ見てもみくるが、可愛いんで」  
「そんな……キョン君ったら……」  
「いや、もう美しいというべきかな?」  
「うふっ、好きにしなさい。このっ」  
指で額をちょこんと押された、懐かしさが込み上げて来る感じだ。  
 
二人で食事を取る、ぎこちないものの、その雰囲気は悪い気はしなかった。  
「そういえばさ」  
「何?今日はお砂糖とお塩は間違えてないよ」  
「いや、料理には何も問題ない。みくるの衣装だ」  
「私の、衣装?」  
「俺はてっきり、裸エプロンと思ったら」  
「!!!、、、キョン君の、すけべ」  
「男としては自然だ。いいかげん、みくるも慣れてくれ」  
いや、今のスーツにエプロンという組み合わせも、似合っているけどな。  
やっぱり、この、何と言うか。普遍の男の夢ってのを感じてるのさ  
「ふふふっ、何それ?」  
「ただの妄言さ」  
「変なの」  
あははっふふふっと笑いあう二人。こうやってなんの制限も無く接していたんだな、昔は。  
 
食後のお茶を貰いくつろぐ二人、相変わらずみくるのお茶は格別だな。  
「さて、これからどうする?みくる」  
「そうねぇ、今日は、ここでのんびり過ごすってのは?」  
「そうだな、記憶は補填してもらったとはいえ、まだ実感がわかないからな」  
「うふっ、じゃあさ……楽しいことでも、する?」  
 
…………  
「あっ、そこ、キョン君、ずるいよぉ」  
 
「ずるいもんか、ほら、こっちからも」  
 
「あっ、そこは。ダメだって……」  
 
「そろそろいくぞ、みくる」  
 
「ダメェェェ、待って、ねぇ、お願いだから待って……」  
 
「だぁめ、俺、もう我慢できないもん」  
 
「そ、そんなぁぁ」  
 
コトッ  
「はい、チェック」  
「キョン君強すぎだよ」  
「みくるが弱いんだ」  
「ふみゅぅん」  
 
チェスで5連勝を飾った俺はご褒美とばかりの膝枕でみくるの耳掻きを堪能していた。  
「なあ」  
「何?痛かった?」  
「いや、俺たちはこっちではこんなフランクな関係だったなって思ってさ」  
「正直、過去の時代での私達は、いえ、私は辛かった」  
「俺がハルヒの鍵だったこと?」  
「それも、それに解っていても、未来をあるべき姿にするために……距離を置くことにも」  
「……もう、すべて解決したんだ。これからの事を考えよう。みくる」  
「そう、よね……」  
「たとえ、今が俺の夢の中でもな」  
 
「!!!気付いてたの!」  
「こういったのに散々巻き込まれたんだ。耐性はついてる」  
「ごめんなさい」  
「みくるが謝る事は無い」  
また、夢み心地になってきた。本当はもう少し話したかったんだけどなあ。  
夢の中なのに夢み心地っての不思議な感覚だな、おい。  
「でもね、過去の朝比奈みくるはこの夢を見ているわ」  
「お互いにか」  
「ええ、本当は・・・をしてまで、貴方を・・・したかった・・」  
聞き取れなくなってきた。そろそろ限界か。  
「もし、未来で私達がこういった関係になったら」  
「ああ、そのときは思い切りべたべたしてやるさ」  
「ありがとう、キョン君」  
「ああ……」  
俺の意識が静かに閉じていく。  
 
「願わくば、よい夢を……」  
 
 
「ふぅぅっ」  
今度はあまり驚かずに起きれた。が、心にやるせなさが残ってる。  
なるほど、さきほどの二つの夢は、もしも「IF」の世界なんだな。  
俺と長門、俺と朝比奈さんと結ばれたあとの世界か。  
となると、と思い携帯の時計画面をみる、朝の4時、もう一眠り……しないといけないだろうな。  
しかも、これも恐らくだが、そこには未来のハルヒがいるはず。  
今度は、何をすればいいんだ?またキスなのか?あれはもう御免したいのだが。  
「やれやれ」  
俺は布団を被って、睡魔に三度身を委ねた……  
 
 
……  
…………  
「って朝になったぞ、おい!」  
現在時刻、朝の7時前、妹が起こしに来るくらいの時間だ。  
ハルヒとの夢はどうした?俺が聞きたい。……いや、けっして見たかった訳ではない。断言しておく。  
しかし不自然じゃないか?長門、朝比奈さんときてハルヒが来ないのは……  
「キョンくんってあれ?もう、起きてる」  
いつも寝起きの良くない俺を起こす役を果たせなく、少々残念そうな妹はこの際放置しておく。  
 
俺は手早く朝食を終えて、事の真相を確かめるべく足早に家を出た。  
きっと部室には長門がいるだろう、ま百歩譲って古泉でもいい。  
誰か納得のいく説明を、などといつもの坂を久々の早足で駆け上がった。  
結論から言おう。部室には長門はおろか、古泉、朝比奈さん、ハルヒはもちろんだが居なかった。  
だが、昨日誰かが忘れて帰ったのであろう、女性向け雑誌がそこにあり、  
ご丁寧に付箋紙まで貼ってあった、部分を読んで。俺は、絶句した。  
そこには、フォローともいい訳ともつかない文章で。  
 
『なお、このおまじないで夢が見れなかった人は、もともと占いを信じていないか、両思いの場合のみです』  
 
おい、これは雑誌の出版元に抗議してもいいよな。  
それとハルヒ。お前はもちろんここで言う前者なんだよな、な?  
 
 
完  
 

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