6月に結婚した花嫁は幸せになれる。  
そんな、西洋の格言だかことわざだか言い伝えだか分からないものは、この宗教も食文化も何もかもごちゃまぜにしてしまうこの国にも伝わっていた。  
最も、俺はそんなことを信じてもいないのだが、残念なことにあいつはそういう言い伝えを信じてしまうのだ。誰かって?決まってるだろう。涼宮ハルヒだ。  
 
 
始まりはどこだったのだろう。運命の歯車は、いつまわりだしたのか?  
時の流れのはるかな…(ry  
 
 
まあ、昼休みのくだらない会話がおそらく原因だろう。  
それは、“この国が銃社会でない事に感謝させられたあの日”や、“団長殿の我侭に付き合わされた野球大会”も過ぎた六月のある日のことだったと思う。  
俺はなんとまたまた珍妙な事件に巻き込まれる破目に陥ったのだった…やれやれ、巻き込まれ体質ここに極まれりってやつだな。これだけは、他のSOS団の連中に俺が勝っているかもしれない。  
 
 
 
そう、それは梅雨入りが発表されて何日か後。久しぶりにあいつの笑顔のような晴れ間が姿をあらわした日のことだった。  
その日は外国人ならサウナと勘違いするんじゃないかと思える程に蒸し暑さを全開にしたような陽気で、俺は汗をかきかき授業を適当に受け流して、何とか憩いの昼休みを迎えていた。  
 
「やっぱ、結婚するなら料理が上手い娘だな」  
何の脈絡もなく昼食の最中話し出したのは谷口だ。この阿呆にとっては前後の文の繋がりというものに意味はないらしい。  
確かつい先程までは午後の体育の授業について話していたはずだ。  
「そうだね、料理は毎日食べるものだし、美味しい方がいいかもしれないね」  
国木田も谷口と同意権らしく首を縦に振っている。  
まあ、しかし、だ。その意見には俺も同意させてもらおう。  
俺が毎日母親の弁当を文句も言わないで食い続けているのは経済的な理由以外に美味いからという理由も含まれているのだ。  
一度、朝比奈さんのお弁当を見せてもらったことがあるが、何と手作りらしい。やはり料理が上手い女の子ってのはいいものだな。  
「あとは、やっぱ見た目だろ」  
「見た目もいいけど、僕は頭のいい娘がいいかな、その方が話してて楽しいと思うし」  
「かぁっ、これだから国木田は」  
谷口が同意を求めるようにこちらを見ている、しかしだな、谷口よ。これには反論を唱えさせてもらおうか。  
頭の良い娘も悪くないというのが俺の意見だ。最も、それは俺にはとても理解できないような変な事をわめき散らしたり、辞書から適当な単語を並べ立てたようなややこしい話をしてきたり、いきなり俺をナイフで刺そうとしないような娘に限るが。  
「キョンはどんな娘が良いんだ?」  
─俺は…  
「キョンが好きなのは変な娘だろ?」  
何度でも否定するぞ、国木田よ。  
それは純然たる誤解であり、俺がいとおしいと思うのは部室のエンジェルにして、北高男子憧れの的、朝比奈さんのような人なのだ。  
「キョンよ、やせ我慢ってのは体に良くないぜ。言っちまいな、素直に涼宮が良いってよ」  
キシシと不愉快な音で谷口のやつが笑いやがる。  
いいか、俺はどうあってもハルヒとくっつく気はないね、確かにあいつにひっぱられ続ける高校生活というのもそんなに悪くないものだが、高校を卒業したらあいつとはオサラバだ。できればそれ以降関わりたくないね。  
 
「あとだな、結婚式はやっぱりウェディングドレスだよな。」  
「いや、でも白無垢も良いんじゃないかな。」  
どうやら俺の考えは無視らしい、2人の熱論は花嫁の衣装へと移行しているようだ。  
言えた立場じゃないかもしれんが、そもそも結婚できるのか。お前達、特に谷口。  
 
 
 
さて、谷口と国木田の衣装討論を聞いて表情を変えている奴がいた。  
誰かって…決まってるだろう。涼宮ハルヒだ。  
“DONTWALK”から“WALK”へ変わった信号のように、何か面白いものはないかと探している憂鬱顔は、何かを企んでいる時の笑顔へと変化していた。  
そして、このイカレた女がその表情を見せた時、俺には必ず不幸に舞いこむと相場が決まっているのだ。知り合って2ヶ月の経験則だが、ハッキリ言わせてもらおう。この予想は当たるね。  
 
 
 
所かわって放課後の部室、掃除当番で遅れてきた俺が理由のある遅刻には罰金はないよな?と考えつつ、部屋のドアを叩くと  
「どうぞ、お入りください」  
最も聞きたくない声──といっても返事をするのはこいつか、朝比奈さんくらいなんだが──が聞こえてきた。しかし、ノックをした以上は入らないわけにはいかないだろう。  
「他の3人は、どうしたんだ?」  
「先ほどまでお見えだったんですが、涼宮さんが何かを思いついたようで、3人でお出かけになりましたよ。」  
チェス板から顔を見上げ、こちらに向き直りつつ古泉が答える。相変わらずムカツク程のニヤケ顔だ。  
「どうせまた、何かろくでもないことを思いついたに決まっている」  
ハルヒの突飛な考えというのは大概、俺か朝比奈さんを不幸に陥れるのだ。現在、俺が現在対象になっていないということおそらく朝比奈さんが被害者になっているのだろう。ハルヒの一挙一動にあわあわとしているだろう部室のエンジェルに俺は思いを馳せ、溜息をついた。  
「どうやら、何かの手伝いをされるようですよ」  
古泉は、チェス盤の駒を動かしながら答える。どうでもいいが、一人でやって楽しいのか?  
「手伝いだと?」  
「ええ、なんでも何かのパンフレット作りを手伝うとか」  
パンフレットね…パンフレット?そんなものを作りたがるのはどこのどいつだ?  
一月前ハルヒがSOS団のパンフレットを作っていたが、それはあいつの頭がおかしいからだ。  
一般的に言って、パンフレットなんて普通の商店やら何やらでも必要がないだろう。  
その時だった。  
 
「じゃーんっ!」  
全てをふき飛ばすような勢いで部室のドアを開けたのは、制服姿の涼宮ハルヒだった。  
ハルヒが制服姿なのは高校生なのだから当たり前だ。そんなことをわざわざ俺が述べているのは、朝比奈さんと長門、残りの二人が制服を身につけていなかったからだ──いや、勿論服は身につけてるぞ、一糸まとわぬ姿って意味じゃない──  
 
 
 
「に、似合いますかあ?」  
恥ずかしそうにこちらに尋ねる朝比奈さんは、純白のウェディングドレスを身につけていた。どこの国のお姫様がお城を抜けてきたんだろうか?いや、絵本から御伽噺のお姫様が抜け出てきたのかも知れない。  
純白のウェディングドレスが俺には眩しすぎる。今すぐにでも「うおっまぶし」と叫んでしまいたい。  
似合いますとも、似合いますとも!お昼はいいとも、主人公の兄の台詞はいいですとも。  
というか今すぐにでも結婚してください。不束者ですがよろしくお願いします。  
いや、むしろ式場の教会に乗り込んで行ってすぐにでも奪い去りたいね。花嫁衣裳に身を包んで微笑む朝比奈さんにはそれ以降全ての人生を投げ打つ価値さえあるのだ、断言できるね。  
 
 
 
「………」  
そしてこちらは、この国伝統の白無垢衣装に、白い…─角隠しと言うんだったか─が頭を覆っている。  
舞い散る雪の様に清らかなこの格好は長門有希の聡明さや、清純な雰囲気、無垢な美しさ、長門の良さの全てを引き出していた。  
こうして改めて見ると、このナントカ思念体から送られてきたヒューマノイドインターフェースに隠れファンが多いのも自明の理だろう。長門有希は確かに可愛いのだ。  
さてこいつには衣装がきついという感覚はないのだろうか?長門はいつもの無表情でそのまま指定席へと着席すると分厚い本を取り出して読み出した、本を読む花嫁という一風変わった姿の完成だ。もっともそれはなかなかのミスマッチでいい味を出していたのだが。  
 
「どう、キョン。なかなかのコーディネートでしょ」  
ああ、文句のつけ様がないね。常に俺を不幸に陥れてくれるこの女もたまには俺に幸運をを与えてくれるらしい。  
そもそもこいつのコーディネートというのはなかなかのセンスがあって、来ている人間の魅力を最大限引き出すことが出きるようだ。  
「先程言っていたパンフレットというのは、ひょっとすると結婚式場のパンフレットでしょうか?」  
古泉がハルヒに聞く。  
「そうよ。この間モデル募集のチラシを見たんだけど、今日昼休みに偶然思い出したのよ。」  
谷口よ、俺は今お前に感謝している。こんなに谷口に感謝することは多分もう死んでもないだろうな。  
「でも、ウェディングドレスって高いんじゃないのか?」  
俺はハルヒに聞いてやる。  
「うん、だから一日だけのレンタルよ。今日の帰りには返すわ。向こうは二日三日なら貸してくれるって言ってたからそれくらい借りててもいいけど」  
残念、一日限りの花嫁姿か。うーん、メイドよりも更にこっちの朝比奈さんの方が俺は好きなんだが。  
 
 
さて、その後の活動はまさに幸せそのものだったと言っておこう。おそらく竜宮城へ行ってみた浦島太郎ってのはこんな気分だったんじゃないかね。  
ウェディングドレス姿で朝比奈さんの淹れてくれたお茶は、まさに甘露と呼ぶのに相応しかったね。ただでさえ美味いものが衣装効果で何倍にも美味くなってるんだから当然だろう?  
「美味しいです?」  
可愛らしく微笑む朝比奈さん。心なしか他の衣装を着せられた時よりも嬉しそうだ。  
「それは…ウェディングドレスは女の子の憧れの一つですから」  
恥ずかしそうに頬を赤らめる朝比奈さん…何にかえても守ってあげたい、誰もがそう思うだろうね。  
任せてください!どんなに俺が安月給だろうと、その時は一番良いモノを選びましょう。  
 
 
また黙々と本を読み続ける白無垢姿の長門というのも美術品のような美しさを放っていた。某骨董品鑑定家も必ずそのイイシゴトを認めるだろう。  
俺は古泉と盤上での戦いを繰り広げる最中チラチラと長門の方を見て英気を養わせてもらった。  
幸運ついでに言わせてもらえば、目の前のニヤケ面のキングに俺のビショップは簡単にチェックをかけさせてもらったが、これはいつもの事だし、さして述べるような事でもないだろう。  
 
 
 
 
 
 
さて、夢のような時間はあっという間に過ぎ、浦島太郎は地上に…もとい長門が本を閉じる音で今日の俺達の活動は幕を閉じた。  
 
 
「ねえ、キョンはどっちが良い?」  
俺と古泉が着替えるであろう2人を気遣って外に出ようとする時、ハルヒが振り向くと俺に疑問を投げかけてきた。  
──考えるまでもない、朝比奈さんだな。長門も確かに捨てがたいのだが、すまん。俺は朝比奈さんを選ばせてもらう。  
「そういうんじゃないわよ、馬鹿キョン!ウェディングドレスと白無垢、どっちがいいかって聞いてるのよ」  
モデルなしの美しさね。これは難しい問題だな。まあ、結論から言っちまえば  
「ま、どっちでもいいんじゃないか」  
 
「ふんっ…やっぱりみくるちゃんだから選んだのね。モデルだけで選ぼうなんて最低よ」  
ハルヒの怒り顔、これも見慣れた表情なのだが何かが少し違う、そう何かが混じっている…悲しみ…?  
「ほら、とっとと出ていきなさい!着替えられないでしょ、このエロキョン!」  
ハルヒの見慣れない表情を観察できないまま、俺は楽園を追われる最初の人間のように部室の外に押し出されてしまった。  
…やれやれ  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
さて、その夜のことだった。明日の学校の為に英語の予習をし、明日の学校の為に体操服とジャージを閉まっていた箪笥から取り出し、明日の学校の為の時間割をした。  
そして、明日の学校の為にもう眠ろうと、目蓋に焼き付けた朝比奈さんと長門の花嫁姿を思いながら眠りについた。  
俺は今まさに幸せそのものの健全なる男子高校生で、そこに涼宮ハルヒの介在する余地は無かった  
 
 
 
…はずだったんだがな……  
 
 
 
 
 
閉じた目蓋に光が当たっているを感じる。くそっ、もう朝か。朝の奴早く来すぎだぜ。  
もうすぐ妹がいつものように俺を起こしに来るんだろう。  
 
 
「…キョン」  
なんだ、妹よ。兄はまだ眠いのさ、もう少し寝かせなさい。  
「…キョン、起きて」  
柔らかな手が俺を起こそうとゆさぶりをかけてくるが、覚醒にはまだベガとアルタイルくらいの距離があった。  
「起きなさいって」  
ああ、でもそろそろ起きてやらないとボディープレスが来るな…  
「とりゃぁーっ!」  
ぐぉっ!普段食らっているダメージより幾分か重い負荷が体にかかる。妹よ、腕を上げたな。お兄ちゃんは嬉しいよ。  
「おはよっ、キョン」  
開いた目に飛び込んできたのは、見慣れぬ天井。  
そして、俺だけが見たことあるのかも知れしれない百ワットの微笑みを浮かべた涼宮ハルヒの笑顔だった。  
 
──何でお前がここにいるんだ?  
「あたしの家だからでしょ」  
──何で俺がここにいるんだ?  
「あんたの家だからでしょ?寝ぼけてるの?」  
 
 
さて、今俺を客観的に見たら世にもマヌケな表情をしているはずだ。何で俺の家にハルヒがいるんだろうか?  
何をされたのかわからなかった…。頭がどうにかなりそうだった。催眠術…(ry  
 
 
「おいハルヒよ、どうやら俺は寝ぼけてるらしい。頬でもつねってみてくれないか」  
「ったく、しょうがないわね」  
ハルヒが俺の顔を引き寄せる…  
 
不覚にもクラっと来たね。頬に残ったのはつねられた痛みとは明らかに違う柔らかい感触だった。  
「ほら、もう目は覚めたでしょ。早くしないと遅刻するわよ!」  
クローゼットを開くと、俺のと思われるカッターシャツを取り出すハルヒ。  
振り向き様、軽く揺れたポニーテールがイヤになるくらい俺好みで、大輪の花を咲かせたようなあの笑顔を更に美しく彩っていた。  
しかしそれもそうだ、とかく早く着替えるべきだろう。遅刻しちまったら岡部にどやされるしな。  
「誰それ?あんたの新しい上司?」  
誰ってお前、俺達の担任だろ。クラスメートならともかく流石に担任の教師の名前くらい覚えてるだろう。  
 
 
っていてて…ほほを強くつねられた。何しやがる!  
「やっぱ、寝ぼけてる?」  
きょとんとした表情でハルヒは俺を見つめていた。  
「岡部なら覚えてるわよ。キョンと出会った時のこと忘れるわけないじゃない!でも、なんでいきなり岡部の名前が出てくるわけ?あんたの上司は…えーっと名前は忘れたけど、岡部って名前じゃなかったはずよね?」  
 
ジョウシね…上肢上梓情死……上司?その言葉に俺達SOS団の中で関係がありそうなのは朝比奈さんくらいのものだ。  
少なくとも俺には我侭な団長殿を除けば、上司なんていないはずだがね。だいたい高校生活に上司なんて言葉は……  
 
 
考えているうちに口元に手を当てていたらしい、手の甲に髭がちくちくと突き刺さる。  
いや、待てよ。髭なら昨日の朝に剃ったばかりのはずだ。一日でこんなに伸びるわけはないと思うんだが…  
ハルヒの方を向き直る。長い黒髪を後ろで綺麗にまとめている。いわゆるポニーテール、俺が一番好きな髪型だ。  
 
 
さて、ここで俺は一つの仮説にたどりついた。  
そう、俺の髭とハルヒの髪の毛が一夜にして馬鹿みたいに伸びたのだ。んなわけねえだろ!!!いくらハルヒがアホでもそんな世界改変を起こすとは思えない。いや、思うかもしれんけどな、このアホは。  
 
改めて仮設(前半)を述べよう。  
ここは未来じゃないだろうか?といっても朝比奈さんがやってきたような遠い──どれくらいか知らないが──未来じゃない、近未来だ。  
うん。この部分は認めてやろう、精神的な害もないしな。  
 
 
 
「それとも、何か隠し事してるわけ?夫婦の間に隠し事は無しでしょ!」  
こら、ハルヒ!今、人が考えている仮説(後半)を勝手に声に出して言うんじゃない!俺はまだその事実を認めたくないのだ。  
 
 
 
 
さて、最初の方で述べたのだが、俺は結婚するなら料理が上手い娘の方が良いと思っている。  
寝間着を無理やり引っぺがされ、そのままネクタイをハルヒに結んでもらい、更にそのままひっぱられて連れまわされた俺が今どこにいるかというと、なんてことはない食卓テーブルだ。  
「ほら、ダッシュで食べなさい!」  
食卓の上に並べてるのは、ご飯と味噌汁、そして卵焼きに、塩鮭、お浸しと一般的な和食メニューだった。  
ふっ、なめるなよ涼宮──今は俺と同じ苗字だったか…──ハルヒよ。俺を篭絡させようたってそうはいかないぜ。  
俺は料理の味にはうるさいのだ、なんせ母親の料理に文句を言いまくって飯抜きを言い渡されたことがあるくらいだからな。  
 
 
 
 
…くそっ、完璧だ。塩加減まで俺好みとはやりやがる。  
そもそもこいつは何をやらせてもだいだい上手いというムカツク奴で、考えてみれば料理も上手いのも当然だろう。  
 
「はい、お茶」  
ハルヒがKyonと彫られた湯のみを俺に手渡してくる。  
ふっ、抜かったな。前に朝比奈さんがいなくて、し方なしにこいつが淹れたお茶──正確に言えば急須に残ってたのを勝手に飲んだんだが──を飲んだんだが、朝比奈さんの淹れたものとは比べ物にならなかった。愛情というスパイスがこいつには欠けているのだ。  
きっと通販で買い漁った健康食品を詰め込んだ汁のような味がするに違いない。  
 
手渡されたお茶を一口口に含む。「なんだこれは女将を呼………ばなくていいです」…くそッ玉露か何か使いやがったのか?朝比奈さんの淹れてくれたお茶と同じくらい美味いじゃないか。  
ずずっとHaruhiと彫られた湯飲みからお茶を一息で飲みきるハルヒ、その姿は俺が部室でよく見かけるものと変わらなかった。もったいないぞこんな美味いのに。  
…あわてるな、これはハルヒの罠だ!いかんいかん危うく引っかかるところだったぜ  
 
 
「お弁当は鞄の中に入れておいたから」  
さて、場面は玄関へと移る。  
どうやら『俺』が、会社に行くにはもう家を出ないといけない時間らしく俺とハルヒは玄関にいた。  
「いってらっしゃーーい」  
にこやかな笑顔で手を振るハルヒ  
「あぁ、行ってくる」  
靴──といっても俺達が普段二つの意味でお世話になっている運動靴ではなく革靴だが──をはいて、ハルヒの方を振り向く。  
こっちを向いて軽く目をつぶっていた。  
えーっと…これはあれですか、俗に言う“いってきますのちゅう”とやらを求めてるのでしょうか、ハルヒさん?  
 
 
 
さて、あの時のことは俺にとって忌々しい出来事であり、親に先立つ不幸を謝って縊死しようかと思えるような事態だったわけだが。  
やばいね、このハルヒにならもう一度してもいいような気分になってきた。  
エーゲ海の島のドイツ軍の基地並を誇っていた俺の心も、いまやガキの頃作った秘密基地程度の防御力しか残していないようだ。  
 
 
 
 
俺はハルヒを引き寄せると軽くデコにキスしてやった。  
ハルヒのやつは「ちゃんと唇にしなさい!!」と怒っていたが、ハッキリ言っちまおう。今そんなことをしてしまったらヤバイね。俺が壊れそうだ。  
 
〜続く〜  
 

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