「キョン、遅いわよ! 掃除当番くらい光の速さで済ませてきなさい!」  
「・・・・・・・・・・・・」  
「何固まってるのよ。変なキョン。ほら、さっさと座って。  
明日の大事なパトロールの計画を練るんだから」  
 
さて、ここまでで俺が固まってしまうような変な事はあっただろうか。  
文字だけならいつもと何ら変わりないのだが、一つ大きな間違いがある。  
 
「あ、ああ。すまん。長門」  
「? いつもは名前で呼ぶくせに。変なの」  
 
お分かりいただけただろうか。  
家電メーカーの懸賞にある露骨な間違い探しを見せられたような気分になりつつ  
部室を見回してみたところ、朝比奈さんは叱られた子犬のような顔で座っていて  
古泉も例のイケメンスマイルが激しく引きつっている。  
 
では隅のパイプ椅子には誰がいるかというと、その通りあいつがいた。  
あのハレっぷりと真逆の姿はかなり違和感があるが、これはこれで良いかもしれん。  
だが惜しい、読んでいるのが漫画でさえなければ。  
 
そういうことじゃない。今日は一日中何事もなくハルヒは俺の後ろで嫌なオーラを  
発散していたはずなのに、何で俺が掃除してここに来る間にこうなっちまったんだ?  
あと、そもそもの理由は何だ? 誰の意思だ? 長門か、ハルヒか、それ以外か?  
 
「それが僕にも全く分からないんですよ。当然の事ですが、機関も同様です」  
 
ううむ、他に頼れるのは・・・・・・  
 
「・・・・・・・・・・・・」  
 
お手上げだ。  
 
「キョンくんひどいです! わたしだって好きで役立たずなわけじゃ・・・・・・」  
 
そういう訳じゃなかったんですが。すみません。  
 
「何コソコソ話してるの? いい、明日こそ絶対不思議を見つけるんだから!  
夜になったらUFOを探すわよ。宇宙人よ! ロズウェルよ! エリア51よ!」  
 
なあ、俺は一体どこから突っ込めばいいんだ?  
 
 
 
翌日。  
 
「おっそーい! このバカキョン! 今日も奢り決定ね!」  
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」  
 
今日は朝比奈さんがハルヒになっていた。  
 
「キョンくん、ごめんね」  
 
もしや、俺はこのウィンク娘の苗字をさん付けで呼ばねばならんのか?  
これはまた随分性質の悪い話だ。責任者出て来い。  
 

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