「はぁ…はぁ…」
俺も座り込みそうになるが、如何せん体が動かせない。
どうしようかとだるい頭で考えていると、長門が
「ん……」
顔に付いた俺の精液を指ですくってそのまま
「はむ……ん…」
口でそれを舐め取った。
「んっ……ちゅ……ぺろ…」
全てをすくい取って口中に納めると、今度はそれを飴を転がすように吟味し始めた。
「ん……んくっ…」
長門が……俺の精液を味わって飲んでる…。
それを見ただけで俺の愚息は、元気有り余ってると自己主張するかのように復活し始めた。
「うふふ……ふたりとも…いいわぁ……」
横から先生の声が聞こえてくる。
「もっと…もっと乱れなさい……先生が許してあげる」
先生が言った瞬間体が動き出し、その場に跪いた。
正面に長門の顔がある。
とろんとした漆黒の瞳を顔の奥で揺らしている。
「……………」
長門はそっと俺の頬に手を添えた。
そしてそのまま―――
「ん……」
俺の唇に自分の唇を重ねてきた。
先程あれだけのことをされたのに――あのときは無我夢中でそれどこではなかったのかもしれないが――頭の中が急激に熱くなってくる。
長門とキスしてる。
なぜかそれだけで全身の血液が沸騰しそうになる。
「ん…んむ……ちゅっ……ちゅぅ…」
長門は俺の目を見つめながら夢中で唇を貪ってくる。
俺も見つめ返しながらそれに合わせる。
体が自由に動くようになったことに気付いて、俺は長門を抱き寄せた。
なんだかこの行為だけで長門有希という存在の全てがわかってしまった気がする。
「あらあら……有希もキョンくんもラブラブなのね」
横から先生の声だけが聞こえてくるがそんなもん知ったこっちゃない。
お互いの唇を重ねあう行為だけに没頭する。
「しようがないわね……ホントはもっと遊ぶつもりだったけど…」
「ん……んは…んん……ちゅ」
長門の舌が俺の唇を割って入ってくる。
俺も負けじと、入ってきた長門の舌に自分の舌を絡める。
「キョンくんにはサービスしといてあげるわ。たっぷりその娘を愛してあげて」
なんだか気になるようなことを言ってるけどやっぱり気にしないで舌を絡めあう。
「(私の娘を……よろしくね)」
跪く体勢に疲れて長門を押し倒して床に―――
ぽすっ
「………?」
なんだ?ウチの学校の床はいつからこんな柔らかくなったんだ?
長門も同じことを思ったのか、二人で視線を少し横にずらした。
とりあえず床が白い。
ついでに言うなら途中で白い床が途切れ、その下からフローリングの床と絨毯が見える。
「え……?」
そこまできてようやく気付いた。
今俺はベッドの上にいる。
しかもここは
「長門の部屋……?」
ちょっと殺風景なところを見る限り、間違いはないと思う。
「……どうなってんだ?」
俺が理解不能かつ思考停止状態に陥りかけたそのときだった。
「……くすっ」
俺のすぐ下から笑い声が聞こえた。
「くすくすっ……」
俺は我が目と耳を疑ったね。
だけど疑ったところで目の前で起こってる出来事が真実だ。
長門が笑ってる―――。
それも誰の目からもわかるくらいの笑顔で。
「ごめんね」
長門が表情豊かに微笑んで言葉を紡ぐ。
なんだ?また先生の罠か何かか?
「ううん……そんなんじゃないよ」
じゃぁ一体これは?
場所どころか長門の性格まで変わっちまったのはどう説明つくんだ?
「私は何も変わってないよ……変わったのは場所だけ」
そう言ってまた長門は笑った。
まずい。
これは毒とか麻薬レベルの笑顔だ。
普段見せないせいだからだろうか。
長門がいつもの一億倍可愛く見えてしまった。
「私はただ……キョンくんの前なら素直になろうって、本当の私を見せようって決めただけだよ」
ホントの自分?
じゃぁ今までの長門は?
……わからなくなってきた。
「くすっ……順番に説明するから……とりあえず起きよ?」
「つまり、場所が変わったのは先生が気を利かせたってこと?」
「そう。霧花さまが私たち二人だけを空間跳躍させたの」
5分後―――。
俺は長門から場所がいきなり移動したことについて説明された。
「空間跳躍って……そんなことできんのか?」
「うん。霧花さまならできる。私には使わせてくれないけど」
そう言ってまた微笑む。
「OK、場所が移動したことについてはわかった」
次は長門自身についてだ。
俺が言うのもあれだが、長門は無口・無表情で、いつも本を読んでいてそれ以外のことにはあまり興味を示さないような感じの女の子だったはずだ。
「以前、世界を改変した私がいたよね?」
ああ、眼鏡を掛けてて普段の長門より口数とか表情が多かった。
「あれが、本当の私の一端。いつも喋らなかったり表情を殺してるのは、ハルヒの周りに他の勢力からの派遣者がいるから」
驚きだ。どちらかっていったらあっちの長門の方が偽者だと思ってたんだが。
「どっちも私だよ。偽者なんていない」
そうだな。
なんだか性格とかそんなもんはどうでもよくなってきた。
目の前にいる長門は長門だ。それ以上でもそれ以下でもない。
「うん、ありがとう。でね…」
長門は微笑んだかと思うと急に頬を染めて、上目加減で俺を見ながら
「二人だけのときは……有希って呼んでほしいの」
照れくさそうに呟いた。
「ああ、いいぜ。むしろ大歓迎だ」
「ありがとう」
有希は、にこっと微笑んでみせた。
と、そこで「話は終わったろ?」と言わんばかりのタイミングで
ぐぅぅぅぅぅぅぅ
俺の腹が鳴った。
「くすくすくすっ。そういえば、もう夕ごはんの時間だね。待ってて、何か作ってあげる」
有希はベッドから降りると、ドアを出てリビングに向かっていった。