文字が薄れてきた。弱々しく、カーソルはやけにゆっくりと文字を生んだ。  
 
YUKI.N>また図書館に  
 
 ディスプレイが暗転しようとしていた。明度を弄ったが駄目、僅かに躊躇を  
置いて、更に長門の打ち出した文字が。  
 俺の見間違いじゃ無いよな。しかしマニアックなものをご存知で。  
 直後、ハードディスクがコリコリと鳴り、デスクトップには何時もの見慣れた  
OSの画面。背後には中庭に突っ立つ青い光の巨人。世界に音はPCのファンの音  
だけが小さく響く。  
 ハルヒが飛び込んできた。  
 興奮して何やらわめくハルヒを眺めて考える。  
 
「”終末の過ごし方”って、知ってます?」  
 あの時、大人バージョンの朝比奈さんは、確かにそう言った。  
「まぁ多分」  
 何故知ってるか聞かれると困るが、属性持ちだからな。  
「これからあなたが何か困った状態に置かれたとき、その言葉を思い出して  
欲しいんです」  
「メーカーが水没したり、社長が死んだり、何故かMSX版が出た、アレですか?」  
「そうです」  
 しかしアレは確かエロゲじゃ無かったか?何故こんなものを。  
「ちなみに口語なのにどうやって”週末”と”終末”を区別したかは」  
 答えはわかっている気がしたが、えーと、どうやってですか。  
「禁則事項です」  
 お約束だからな。  
 
 そんなこんな会話と、さっきの長門のメッセージ。もしやと思って団長様の  
机の中を手探りする。あった。有難う長門。  
「こらキョン、ちゃんと聞いてなさいよ」  
 えらく嬉しそうだな。俺はあんまし嬉しくない。  
「何なんだろ、ホント。この変な世界もあの巨人も」  
 知っているが知らん。この変な世界、ハルヒは望んだかも知れんが、俺は  
望んじゃいない。  
「元の世界に戻りたいと思わないか?」  
 PCの中、MIKURUフォルダの中の一枚の写真を思い出す。アレ眺めてるのを  
みつかってから、ハルヒのステータスは憂鬱から不機嫌へとチェンジし、  
そして今ココに、愉快ツーカイにチェンジされていらっしゃる。  
 俺は戻りたいね。ハルヒが朝比奈さんを弄るのはけしからんが、あれだけは  
グッジョブだった。俺はSOS団に帰りたい。ああ、帰りたいとも。  
「え?」  
 輝いていたハルヒの目が曇ったように見えた。しかし構わずセーラ服の肩を  
掴む。  
 
 ヒントは貰っている。長門の最後のメッセージ。”屈折リーベ”ある種の属性  
持ちの理論指導書だが、何でこんなもの知ってるんだ?  
 さーて、両者に共通することと言えば何だ?こういう場合、もーちょっとベタ  
な解決法が相応しい気もするが、まぁ俺も見てみたい。  
「なによ……」  
 手元のケースを開ける。長門の予備か。今ちょっと思ったのだが、変な人外の  
属性なんて付与されていないだろうな?  
「俺、実は眼鏡属性なんだ」  
「へ?」  
 
 はーい眼鏡ON。  
 
 猛烈に似合った。胸がキュンキュンしたよ。惚れた。  
 ……殴られた。  
「バ、バカじゃないの?」  
 いくら何でも殴ることは無いだろう。霞む光景の中で、眼鏡を床に叩きつける  
ハルヒの姿がぼうっと見えた。お前顔赤くないか?  
 そこで瞬きした次の瞬間、見慣れた天井を目にして固まった。  
 
 そこは俺の部屋。寝入ったままの格好。思考能力が脳内ハードディスクの  
シーク音と共に復活してくる。  
 夢か、夢だったのか?  
 ……痛いぞしかし。  
 
 一睡もできないまま次の朝。ハルヒのパンチはなかなかの威力で、直前の  
光景と合わせた破壊力は、俺に睡眠を許可しなかった。  
 正直、ツライ。脳内の全兵卒が今頃睡眠を要求している。こりゃ降伏は時間の  
問題だ。  
 窓際、一番後ろの席に、ハルヒは既に座っていた。何だろうね、あれ。頬杖  
をついたその顔の前に、あ、そのフレーム歪んでないか?  
「よう、元気か」  
 俺は机に鞄を置いた。  
「元気じゃないわね。昨日、悪夢を見たから」  
 それはまた奇遇。ハルヒの表情は眼鏡に隠されてよく解りにくい。ただ、まぁ、  
あんまり上機嫌ではなさそうだ。少なくとも、顔の面だけは。  
「ハルヒ」  
「なに?」  
 
「似合ってるぞ」  
 

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