〜 I want to be here 〜 2話  
 
「キョンくん、起きろぉぉぉ!!」  
妹がダイブしてくるのは判ったが、どうしようもない、体があまり反応してくれないのだ。  
「あれれ?お母さぁん、キョンくん起きない」  
「学校は、無理ね。休みなさい」  
昨日は強引に叩き出して、今日は強制監禁か。身勝手にもほどがあるのだが、もう反論しない。  
「学校には連絡しておいたから、お母さん、出るけど食欲は?」  
「ない」  
「じゃあ、とりあえずお昼に温めればすぐ食べれるお粥作っとくから。食べたくなったら食べなさい」  
「解った」  
「あたし、今日は午前中で帰れるから、キョンくんの看病するぅ」  
「遠慮しとく」  
えぇぇぇっと不機嫌になる妹。これ以上心労を増やさないでくれ。頼むから。  
「まあまあ、あんたもお兄ちゃんの周りで暴れないこと!いいわね」  
「はぁぁい」  
母親の鶴の一声が効いたのか、妹は自分の登校の準備に向かった。  
 
「こんなとき位、妹を頼りなさい、あの子もそれを望んでるんだよ」  
「迷惑は極力掛けたくないんでね、それに移したら、それこそ大変だ」  
「そうかい、やれやれ、どっちに似たんだか」  
今の発言から、俺は間違いなく母親似だろっと心の中だけで突っ込んでおいた。  
 
静かだ、そういえばハルヒには言わなかったが、実のところ俺も風邪は久しぶりだ。  
前に掛かったのは、いつだったか……なんてマジでどうでもいい事を考えてると、  
「ただいまぁぁぁ!キョンくん!生きてる?」  
おい、勝手に死人扱いするな。それに帰ってきたら、うがいと手洗いをしなさいと言ってるだろ。  
「はぁぁい、あとねミヨキチも来たよ」  
「こんにちは、具合大丈夫ですか?」  
あろうことか、ミヨキチこと吉村美代子まで連れてきやがった。これじゃ無視も出来ない。  
「なにか、お手伝い出来ませんか?」  
「あぁ、すまない、それじゃあレンジに入ってるお粥を温めてきてくれないか?スイッチを入れるだけでいいから」  
「解りました、レンジのお粥ですね」  
そういうと嬉しそうにミヨキチは部屋を後にした。  
「ねぇねぇ、あたしはぁ?あたしもなにかしたい」  
妹よ、お前にはほんの少しお説教だ。  
「お前、なんで彼女を連れてきた」  
「えっ、だって教室でキョンくんが風邪で休んだって言ったら、お手伝いに行きたいってミヨキチが」  
「確かに、一人よりも二人のほうが便利だが、それとこれは違うぞ、いいか、風邪は移るんだ。近くに居る人ほどな  
そりゃ、お前やお袋なら、俺が看病してやれる、でも、もしミヨキチが移ったらどうする?」  
「うぅぅぅ」  
「お前達の気持ちは嬉しいが、悪いことは言わない、二人で家の外に遊びにいって来なさ……」  
「嫌です」  
気が付くと、ミヨキチがそこに居た。しまったてっきり降りたとばかり思っていたら聞かれていたとは。  
「お兄さんのお気持ちは嬉しいです、けど、病人は病人らしく頼られてください。こんな時くらい、、ぅぅ」  
いかん、ミヨキチが泣きそうだ。女の子の泣き顔は、例え平常時でも見たくない、自分が原因ならなおさらだ。  
「ごほっ、あっんっ、解ったから、これ以上心労を掛けないでくれ」  
「あっ、すいません」  
「……話していたら少しだけ食欲が戻ったかも知れない、この点は感謝しておく」  
「はい、すぐ用意します、お兄さん待っていてください」  
「あたしも手伝う、キョンくん待っててね、えへっ」  
これじゃどっちが俺の妹か解んないな、呼びかたといい、なんといい、俺は溜息をつきながら  
「やれやれ」  
とだけ言って、携帯を取り出した。時間を確認する、よし、今は昼休みあたりだな。  
俺は昨日のフォロー(結局昼休みのあと5限途中に教室に戻りすぐ早退した)も兼ねてハルヒに電話した。  
 
「キョン!!あんた!大丈夫なの!」  
「実を言うとあんまり調子よくない、それよりも昨日はすまなかった」  
「ふぇ?」  
「部活、いや団活か、さぼっちまって」  
「いいのよ、あんた病気だし、それに……」  
続きを言わないハルヒ、どうした?先生にでも見つかったか?  
「何でもない!それより食事とか大丈夫なの?」  
「あぁお袋がお粥を作り置きしてくれてたから、なんとかなる」  
「でも温めるのとか、大変じゃない?」  
冷静に考えて次の言葉は、禁句だったかに思えるが、思考回路低下中の俺にはそこまで気が回らなかった。  
「まぁ、げほっ、げほっ、そ、そのへんは妹とミヨキチがここに居るから」  
 
「……」  
「ん、げほっ、どうした?」  
「別に」  
 
また一方的に切られた。何なんだろう、と疑問に思ったが、  
「お粥、持って来ました」  
「出来たよぉぉ!」  
その議案は目の前に出されたお粥によって、霧散していった。  
それから二人がかりでの、日本男児10の憧れシチュエーションの一つ「はい、あーんして」を断りつつ。  
半分だけお粥を消化し、残りは机の上に置いた。  
体調はまあまあ、気分も悪くない。咳が少しと頭痛され消えてくれれば、まあ明日には学校に行けるだろう。  
しかし、横に居て、目を輝かされると、正直、休みづらいんですけど……  
「あのさぁ……」  
俺は、それとなく買い物でも頼んで、この場を離れてもらおうと二人に話しかけた時、  
「こんにちは」  
誰か来た。すまん妹よ、見てきてくれ。というかまさかまたお前の友達とかじゃないだろうな。  
「だれだろう?はぁぁい」  
妹がどたどたっと降りていく、つまり今この部屋には俺とミヨキチだけだ。  
こんな時、さりげなく話しかけるのが男としてのなんたらと、ものの本に書いてあった気もするが、  
さすがに思考回路も正常でない俺が、少しだけだが年代の違うミヨキチに話しかける事は、出来なかった。  
「キョンくん、はるにゃんが来たよ」  
「はぁ?冗談だろ。だってまだあいつは授業が」  
「早退したわ」  
そこには、いつものハルヒがいた。面倒にならなきゃいいが。  
「ふーん。貴方がミヨキチさんね」  
「あの?貴方は?」  
「あたし、あたしはね、キョンのクラスメートの涼宮ハルヒって言うの。よろしくね」  
顔はニコニコしてるが、違うね。これは怒りを押し隠してる顔だ。  
気弱なミヨキチがこんな顔見せられて、ってミヨキチもハルヒと面と向かってるし。何だ何だ?  
「ふーん、なかなか綺麗じゃない。性格も良さそうね。でもあたしが来たから、もういいわ」  
「もういいわって何がですか?」  
「決まってるじゃない!キョンの看病よ。後はあたしに任せて貴方達は遊びに」  
「嫌です」  
ハルヒ、それはさっき俺も言ったぞ。どうするんだ?  
「へぇぇ、じゃあさ。さっきキョンが携帯かけたのは見てた?」  
「えっ、いえ。お粥を温めに下に居ましたから」  
「実はね、キョンは、あたしに、看病してくれってお願いの電話を掛けたのよ。あんたたちじゃ  
お世辞にも、役に立たないってことかしらね」  
「おい、涼」  
うっ、ミヨキチから見えない角度で、物凄い睨みをきかせるハルヒ。俺はだから病人だ。  
「ここは、あたしに任せて、妹ちゃんと外で遊んでらっしゃい」  
「…………解りました、いこっ」  
ミヨキチ、すまん。こいつに逆らわないほうが身のためだ。  
 
 
しかしハルヒに看病してもらうのも、なんて考えてると、あれハルヒさん?  
「何?」  
物凄く、帰ろうとしてません?  
「そうよ。あたしはあの子達が居ると騒がしくて、あんた休めないかなぁなんて思って来たの。  
もちろん、放課後にはみんなと又来るわ。でもそれまではあんたも一人で居たいでしょう?」  
そういいながら、部屋を出て行こうとする、ハルヒ。なんか悲しそうにも見えた。  
 
……正直に言おう。やはり一人は寂しい。俺だって気弱になるときがあっても、ばちは当たらんだろ。  
俺はハルヒの手を掴んでいた。精一杯力を入れたつもりだが、きっと振りほどかれれば簡単に取れるくらい。  
きっと、改変されたときの長門くらいの力だ。そして朦朧とした頭で訊いた。  
 
「俺は、階段から落ちて目が覚めたとき、お前が近くに居てとても安心した。嘘じゃない。それで、その、だな、  
お前さえもしよければ、そばに居てほしい、ダメか?」  
ハルヒはゆっくりこっちに向き直り、  
 
「しょうがないわね、あんたが、その、そこまで言うんなら……看てあげるわよ」  
 
とだけ答えて、俯いた。顔真っ赤なんだろうな、きっと。……人の事言えないな、俺も。  
 
 
続く  
 

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