目を閉じゆったりとまどろみの中に意識を解き放つ。
わたしの境界を示す固い殻の内の甘美な手触り。
粒子となった私は殻を抜けすべてが集う奔流に漕ぎだす。
流れている。わたしの種に連綿と受け継がれた知と交流の術。
個から全へ流れだし全から個へ流れ戻るその道筋を俯瞰すれば巨大な川と写ろう。
あまねく知識あるものの祖たる壮大な光の川。
果て知らぬ宇宙の深淵を背に輝く意味のネットワーク。
わたしは今やその流れにありはるかな高みを目指している。
意味とは何か。知るとは何か。わたしとは。すべてとは。
そして・・・・・・
「シャミー、シャミー、ごっはんだよー♪」
いつものように眠りこんだシャミセンを妹は抱き上げる。
シャミセンと呼ばれた三毛猫にしては珍しい雄猫は迷惑そうに目をつむり、人間そっくりの鼻息を漏らした。
「にゃる」
シャミセンの返事にうなずきを返して、妹はベッドに横たわるキョンに声をかける。
「シャミっていつも寝てるけど・・・・」
ベッドから身を起こしかけたキョンが首の動きだけで振り返る。妹が言葉を継ぐ。
「どんな夢みてるんだろね?」
知るか、という風に呆れた顔を作り。キョンは首を降る。そして部屋をでる。
その背を追って、妹が歩き出す。シャミセンがもがく。
そう今は、この道を歩いてゆこう。これも同じ、大いなる知への一歩。