「どうぞ、新茶ですよ♪」  
「ありがとうございます」  
いつもの日常。いつもの部室。俺は朝比奈さんの入れたお茶をすすり、  
窓の外を見る。そうか、もう新茶の季節なのか。  
涼宮ハルヒという女に捕まって以来、俺の静かな高校生活はぶち壊れだが、  
やはり慣れてくると、波乱の中にでも少しの平穏というものを見つけられるもの  
なのだろう。慣れというのは怖いもんだ。うん。  
「ねぇ、ちょっと皆!すごいものを発見したんだから!」  
ノックも無しに、ドアが壊れんばかりの勢いで開く。  
そうか、すごいものを発見したのか。ハルヒよ。もういい。お前帰れ。  
今日は朝比奈さんのお茶を飲んでまったりと過ごす日なんだよ。  
「ふっふーん。苦労したんだから。考古学部がなっかなか譲ってくれなくてね〜」  
そう言ってハルヒが小汚い袋から取り出した物は、何やら重そうな  
石で出来た・・・そう、仮面だった。  
どうせ非合法ギリギリ、いやどちらかというと確実に非合法な手段で手に入れたものだな。  
「随分と古い物のようですが・・・」  
珍しく、小泉が興味深々といった感じで仮面を見ている。  
こいつの場合、いつもはハルヒをヨイショヨイショしてるわけで、  
何を考えているか分からない節が多いが、今日に限っては本当に仮面に  
興味を持っているようだ。  
「ふぇぇ・・・なんだか怖いですね・・・」  
朝比奈さんは、おそるおそる仮面に手を伸ばして、ぺたぺたと触ってみるが、  
「ひゃぅっ」といって手を引っ込めた。どうやら非常に冷たかったらしい。  
本当、仕草一つ一つが愛らしい。エンジェル。  
しかしまぁ、本当不細工な仮面だねこれは。そもそもウチの学校に考古学部なんて  
あっただろうか?どうせ我らがSOS団と一緒で、物好きが数人集まって  
物静かに活動をしているのだろう。”物静か”って部分がウチと対極だがね。  
さてさて、ここで俺は何か異質な気配を感じたわけだ。何かって?  
それは俺の後方・・・つまり、先ほどまで無機的に読書をしていた長門有紀が、  
仮面を異様なまでに凝視している。どうした?ひょっとしてこれもまた厄介な一品なのか?  
悪魔が取り付いている、だとか、な。  
「さーて、それじゃさっそくだけど・・・付けてみなきゃね?」  
ふふん、と何やら悪巧みを浮かべ、ハルヒは朝比奈さんを見る。  
「ひっ」  
その視線の意図を理解したのか、朝比奈さんは凍りついてしまった。  
ハルヒは猛スピードで朝比奈さんの後ろに回りこみ、がっちりとホールドをかけた。  
「いやぁ〜助けて〜」  
「ほらほら、多分呪われたりしないから、もー、ほら、おとなしくするの!」  
多分ってなんだ、多分って。  
おい、小泉。あの仮面、ひょっとして本当に呪いとかあるのか?  
「どうでしょう・・・今の僕では何とも言えませんが・・・そうですね、  
 ただ、どこかで見た事があるような気がするんですよ。  
 それに、涼宮さんが持って来た物ですからね、何かあるのは間違いないでしょう」  
えぇい、頼りにならん奴だ。長門よ。お前はアレが何か分かるか?  
「・・・危険」  
「危険?」  
「そう。あれは被ってはいけない」  
「ど、どういうことだよ?まさか本当に呪われてるってのか?」  
「そうではない。生態系の危機」  
・・・生態系の危機というのが何かは知らんが、とにかく言葉の規模的に  
厄介な事になるようだ。だとしたら、本当にまずいんじゃないのか?  
急いで止めねば。そもそも、純真無垢な天使の朝比奈さんにあんな汚い仮面を  
被せるなどといった悪事は、俺が速攻で間に入ってやめさせるべきなのだ。  
 
「ふ・・・ふみぃぃぃぃぃ!」  
朝比奈さんが叫んだ。それも、いつもの無理矢理服を脱がされてイヤイヤ〜な  
萌えボイスではなく、なんというか魂の叫びというか。  
それに気のせいだろうか?一瞬、仮面が光ったようにも見えた。  
「ちょ、ちょっとみくるちゃん?どうしたの?」  
さすがのハルヒも目をぱちくりさせて驚いている。  
「い・・・痛いですぅ・・・お面が取れないですぅ・・・」  
・・・俺は自分の目を疑ったね。その石仮面が、朝比奈さんの顔面にぴったり張り付いて、  
肉を押し込まんとする勢いで自らの意思があるかのごとく、めりめりと顔に  
埋まっていくように見えたんだ。  
だが、本当のサプライズがこれから始まった。  
どういうギミックなのか分からないが、石仮面の淵から、刃のようにも見える  
鋭利な先端を持った触手が飛び出て・・・それが朝比奈さんの後頭部・こめかみ、顎へと  
突き刺さっていったのだ!まるで、某宇宙人の卵の孵化の瞬間のようだ!  
「い・・・いやぁぁあああ!みくるちゃん!!」  
ハルヒは何が起こったのか分からず、ただ叫ぶだけだった。いや、俺も何が何やら  
さっぱりだったが、兎にも角にも、あの仮面をどうにかして外さなければいけない!  
「小泉!手を貸せ!体を抑えてくれ!ハルヒは救急車だ!」  
「えっ・・・あ・・・救急車・・・?」  
ハルヒはもうその場で子猫のように震えているだけだった。いつもの威厳はそこに無い。  
「長門!これは一体何なんだ!?」  
長門なら、長門ならきっとなんとかしてくれる。いつもこういう事態に頼りになるのは  
長門だ。俺は必死に仮面のふちを引っ張りつつ、後方の長門に首を向けた。  
「・・・朝比奈みくるから離れた方がいい」  
「・・・え?」  
次の瞬間、俺の視界の投影角度160度付近を、何かがものすごい勢いで通過した。  
そして、がしゃん、と大層な音を立て、部屋が揺れる。  
「う・・・」  
それは、小泉だった。奴はどういう理屈かは知らんが、気が付いたらぶっ飛んで、  
部室の壁にぶち当たり、意識はあるようだが、胸を押さえて俯いている。  
はてさて、小泉は何によって弾き飛ばされたのだろうか。この間わずかコンマ数秒だが、  
妙に俺の知識は冴え渡っていた。そもそも小泉は朝比奈さんの体を抑えていたはずだ。  
・・・だとすると、小泉は暴れる朝比奈さんを抑えようとして今の状況になったのだ。  
が、それは有り得ないだろう。朝比奈さんに限って、そんな馬鹿力が有るわけが無い。  
・・・で、ここで一秒経過。俺は首の角度を、後方長門から朝比奈さんへと向けた。  
本日の自分が目を疑う事二回目。もう、俺の目は腐っちまったんじゃないかと思ったよ。  
仮面から伸びた金属の触手が頭に突き刺さり、血がどくどくと流れていて、  
”もうこれは駄目かもわからんね”という状況の朝比奈さんが、  
俺を仮面越しに見下して、そこに立っていた。  
「離れて」  
そんな長門の声が聞こえたような気がするが、俺はまるで金縛りの術をかけられた  
みたいに、動けなかった。本当、蛇に睨まれた蛙って奴だ。  
「HUMYUUUU・・・」  
 

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