いつものことだが高校へと続く、無茶苦茶キツく、今は夏なので暑い坂道を登っていると
愉快な声が聞こえてきた。・・・まあいつものことだがハルヒだ。
「おはよ、キョン」
「ああ、おはよう」
と、いつもの挨拶を済ませ、いつも通り教室に入った。
さて、いつもを何回いったかな?こんな日常的なことはハルヒが忌み嫌ってたものだったんだが・・・。
ハルヒも最近変わってきたようで、SOS団でワイワイやってるのが楽しいらしく、最近は宇宙人だの
異世界人だの超能力者だのは言わなくなった。
ちょっとそういう言葉が懐かしくも思えてきたころでもある。
授業が終わり、ハルヒは掃除当番だから掃除をしている。・・・なんであいつは律儀に掃除なんてやる
んだろうな。
俺はハルヒを置いて部室に行った。
コンコン・・・とノックをする。朝比奈さんが着替えてるのに遭遇だとか、大歓迎だが男として少し気
が引けるからな。
「どうぞ」
・・・正直、余り聞きたくない声だ。そう、古泉がいた。あと長門もな。
入ると、古泉が深刻そうな表情で立っていた。
「どうしたんだ?また閉鎖空間でも出たか?」
ハルヒはいつも以上にご機嫌だったから、それはないだろうと思っていると・・・
「ええ、まさにその通りです。結構苦労しましたよ。」
まじかよ。少なくとも俺は何もしてないぞ。
「それなら、今回はあなたのせいではないでしょう。」
「涼宮ハルヒが自分自身に矛盾を感じてきている。」
どういうことだ?そういう奴じゃないと思うんだが。
「入学当初・・・中学時代も入りますが、超能力者とかを探していた頃と、SOS団でワイワイ騒いでる現状に、でしょうか。」
「そう。それと、涼宮ハルヒの個人的な感情も入る。」
「と、いいますと?」
「涼宮ハルヒはあなたに好意を抱いている。」
・・・まぁ、少し予想はついてたが。
「で、どうすればいいんだ。また、あの時みたいになるのはいやだぞ。キスだの抱きつくだの、正直もう、ごめんだからな。そうだ長門、お前の力でどうにかできんのか?記憶操作だとかさ。SOS団がなくなるのは俺もいやだから、その矛盾とやらだけをちょっと消すとかさ。」
「それは無理。」
「そうか・・・」
さて、これだけ長く話したわけだから当然トイレにも行きたくなる。
トイレに行こうと席を立ち、ドアを開けると・・・
そこは雪国であった。・・・いや、ハルヒがいた。ハルヒはなんというか、硬直していて、
口を半分あけてボーっとしていた。
俺を含め部室にいた全員はきっと凍り付いていただろう。
後ろを見てないから分からないがね。
「とりあえず、どこまで聞いた?」
「・・・途中から」
その途中がどこなのかを聞いているというのに・・・
「閉鎖空間がどうとか・・・」
ああ、OK。お前は全部聞いてるよ。ははは。はは・・・。
「帰る。」
うん、そりゃあれ聞いたら当人としちゃ帰りたいよな。って、ちょっと待て。
捕まえようとしたが逃げられた。ちょっと泣いてるようにも思えた。
「困ったことになりましたね。」
「あ〜あ、どうすんだよ?」
「・・・様子を見るしかない。」
おい、また閉鎖空間に閉じ込められるなんて落ちはなしだぞ。
「大丈夫ですよ。もう閉鎖空間に閉じ込めたりはしないでしょう。」
根拠はあるのか。根拠は。
「いえ、個人的な判断です。」
・・・おい。
とりあえず何も結論が出なかったので、家に帰り。飯を食う。風呂に入る。
ああ、日常って素晴らしい!と、幸せにすごしていると、きた。
「キョンく〜ん、ハルヒちゃんから電話〜」
やれやれ。何を話してくるのか、どう返そうかと考える間もなく電話を耳に・・・
「・・・キョン。」
「なんだ?」
「今日のことなんだけど・・・」
ああ、言われなくても分かる。あれ以外にないだろう。
「本当なの?」
「あー・・・実はドッキリだ。大成功だ。」
「嘘付き。」
ギクっときたね。泣きそうな声で言われたからな。
「じゃあお前はあれを本当だとでも思うのか?」
「私が見た夢をなんであんたたちが知ってるのよ。」
そう来たか。もう覚悟を決めるか。
「夢ってなんだよ。」
「・・・」
よし、黙らせることに成功。って何やってんだ俺。また閉鎖空間に行きたいのか?
「あんたが・・・あたしに・・・キスした夢よ・・・」
ああ、お前がそれ言うとは思わなかったぜ。
にしてももう逃げようもないな。どうしよう。
「それにあんた、嘘言ってるとき声変わるのよ・・・」
ああ、もう本当に逃げようがなくなってきた。どうしようどうしよう。
「有希が宇宙人で、古泉君が超能力者で、みくるちゃんが未来人ってのは本当?」
「なわけないだろう。」
「なんでよ。あんたが言ってきたんでしょ」
うげ、そういやそうだ、俺が言ったのか。俺の馬鹿馬鹿馬鹿
「ああもう本当だよ全部。大体お前信じてなかったじゃないか。」
「あんたの言うことだから嘘だと思ったけど良く考えたらみくるちゃんは除くとして、
古泉君と有希は何か違うもんね。あの後私注意深く見てたのよ。そしたらやっぱり
それっぽいじゃない」
「そうしたら。今日の出来事か」
「そうよ・・・」
なんだか泣いている。俺とキスしたのが本当だったってのがイヤで泣いてるのか?
だったら結構ショックだが・・・。
いや、みんなが宇宙人とかだったからか?
それも本来喜ぶべきだと思うんだがな・・・。だって待ち望んでいたのはお前だろ?
毎日遊んでたじゃないか。宇宙人、超能力者、未来人を探し出して遊ぶってのがSOS団の、
いや、お前の目的だろう?本望じゃないのか?
・・・と、そんなこと言ったら相当やばいことになるかもしれないだなんて、
まったく気がつかなかった俺を誰が責められよう。
「・・・バカ」
泣きながら切りやがった。おいバカ、待て。閉鎖空間にまた閉じ込められたらどうするんだよ。
今度はキスじゃ戻れそうにないぞ。
電話を掛けなおす。留守電か。仕方ないな・・・。
と、いうわけで寝た。・・・かったのだが、いつ灰色の学校に倒れていないかも分からんので
寝れるわけもない。寝れるか。
そうそう、古泉と有希に電話しようかとも思ったが、ハルヒに3人の能力を言ったとか、
言えるわけないのでやめておいた。
あれ、いつの間に寝たんだ?
・・・人間の不安なんてもんは案外小さいもんで、睡魔には勝てなかった。
って、もう遅刻寸前じゃねえか。
坂道を猛烈なスピードで駆け上る。ちょっとだけつじあやのの風になるのサビが頭の中で
流れていたのは秘密だぞ。
さて、教室だ。ハルヒは真後ろにいる。やばい、泣き腫らした真っ赤な目してる。
「おい、涼宮に何したんだよお前」
アホ谷口、お前な、状況をきちんと把握してから言え。いや、把握しなくていいが。
谷口その他クラスメイトの視線が痛い。ハルヒは後ろで無言だが。ハルヒの視線も痛いな。
昼休み。
ハルヒは学食へ。俺も追っていく。同じ場所に座る。
さて、いつもはカツ丼食ってるハルヒが、今回は定食の、しかも小盛りなのは何でだろうね。
話してもくれないし。
「おい、ハルヒ」
「何よ」
よかった、話してくれた。
「昨日はすまん」
「・・・」
そこからずっと黙ったままだ。黙って飯食ってるのもなんかやだな。
昼飯終了、ハルヒ無言、昼休みも終了!
授業も終わった。ハルヒは相変わらず無言だ。
「今日は部活にでるのか?」
「調子悪いからでない」
出ろとかいうと、余計灰色の学校への距離を短くするだけだと
思ったのでやめておいた。
部活に急ぐ。ノックもせずに入ると・・・
誰もいないじゃないか。仕方ない、とりあえず待つかな。
・・・誰も来ないのは何故だ。
もう終了時間なので、下駄箱に行き帰ろうとしたとき・・・
ん?なんか手紙っぽいのが・・・。
「今夜8:00、○○公園に来て。キョン君へ 涼宮より」
驚いたな。ハルヒからの手紙なんて初めてだ。しかもキョン君ってなんだよ。
涼宮よりってのも違和感あるな。団長よりとかじゃないのか。お前の場合。
って時間ギリギリだぞ。急がないと。
8:10分 ○○公園
10分遅れちまった。いなかったらどうしよう。ああ、灰色の学校が見えてくる。
・・・なんてやっている間にハルヒを見つけた。ベンチに座ってる。
「ハルヒ」
ビクってなったハルヒの隣に取り合えず座る。
「それでまぁ・・・なんだ」
「私、これからどうすればいいの・・・?」
「いつも通りにしてりゃいい。超能力者と未来人と宇宙人が3人、周りにいるだけだ。」
「違うのよ・・・」
「どこが違うんだ?」
「・・・」
どうしろっていうんだよ。またキスでもしろってのか?
「みんな、私のことを変な女だとしか思ってなかった。でもあんたは違った。
あんなこと自己紹介でいった奴と同じ部活に入って一緒にたくさんしてくれた。
正直私は嬉しかったわ。」
そうか、そうきたか。
「ああ、前の席だったしな」
「でも、昨日のは何よ、あれ。私が何か邪魔者で、この世界にいないほうがいいみたいじゃ
ないの・・・。私の記憶を消すとか・・・。それに、なんであんたのこと好きってのもばれてるのよ。
内緒にしてきたのに・・・」
冒険でしょでしょのギターアレンジがBGMで流れてきたような気もするがまぁいい。
・・・私を見てよねか。いや、なんでもない。
まさか好きとか言われるとは思わなかったな。告白じゃないか。
それにしても、ハルヒも案外普通の女の子なんだな。
まああれだ、肩を抱いて・・・というんだろうか。説明が難しいが、そんな感じだ。
とりあえず慰めてやんねーとな。
「お前は、俺にとって、たった一人の団長だし、一番の親友だ。宇宙人がどうこうってのも多分
問題ない。何故かって?お前が変わったからだよ。そりゃ入学当初のお前はまさに憂鬱って感じだったしな。それに中学時代のお前も知ってるぞ。ジョンスミスってのは俺だ。あの頃と比べてみろ。
今のお前は十分に魅力的だよ。それに変でもない。お前言ってたよな。自分がどれだけ小さい存在かって。あの時に言ってやれなくてごめんな。お前は俺にとって、全然小さな存在じゃないよ。
一番大切な存在だ。」
・・・と、かっこよくしめた。
ハルヒはまだ泣いてるようだったが、顔を上げてちょっと笑うと
「ありがとう」
と言った。
その後数分、ハルヒが落ち着くのを待って、お互い帰路についた。
さて、電話で古泉と有希に説明しとくかな。
「そうですか。まあ、涼宮さんも変わったということなのでしょう。あ、朝比奈さんには伝えておきますよ。・・・それと、僕はあなたと涼宮さんのことを応援しますよ。」
・・・最後のが余計だがまあいい。
「そう。現状の涼宮ハルヒには、能力はあるが、それを発揮することはもうあまりないだろう。」
「・・・そうか」
よし、全て終わった。さあ寝るぞ。
「みくるちゃん、猫耳つけるわよ〜」
「い、いやです〜〜〜〜〜〜!!」
なぜかポニテにしてきた上に俺の弁当まで作ってきた涼宮ハルヒである。
部室で、朝比奈さんに猫耳をつけようとしている。
やれやれ、俺に猫耳属性は・・・いや、まてよ。
ひょいと猫耳を取り上げハルヒにつける。手に持っていたデジカメで撮影。
「ちょ、ちょっと何すんのよ!」
「実は俺、猫耳属性あるんだ」
顔を真っ赤にするハルヒ。いやぁ、なかなかいいもんだ。
Fin