週末いつもの様に不思議を探して市内を徘徊する。
午後からは、男二人・女三人に別れることとなった。
相変わらず、他人のコーヒーまで一気飲みした挙げ句伝票を俺に押しつけたハルヒは、
朝比奈さん・長門を引き連れ店を出て行った。
食後のコーヒー位ゆっくり飲ませろよ
俺が呟くと、
「この先に、行きつけの店がありますので、そこで飲み直しますか?」
これ以上たかられてたまるか!
「お誘いしたのは僕ですから僕がおごりますよ」と古泉、
顔に出ていた様だ、精進が足りないな
どっちにしろ、ゆっくりと食後のコーヒーを飲みたかった俺は、ありがたくその申し出を
受けることにした。
古泉、行きつけの店と言うのは例の機関とやらのカモフラージュということは無いだろうな。
「ご心配なく、『地図の専門店』『カレーショップ』でも『ぜんざい屋』でもない、
ごく普通の喫茶店ですよ」
店に入りブルマンを頼む。
古泉が言うだけあって、コーヒーも旨く落ち着いた雰囲気のいい店だ。
俺と古泉の携帯が同時に鳴った。
「キョン君 大変なことが起きたの今すぐ駅前の公園まで来て下さい」
朝比奈さんからの悲痛な電話が切れた。
「例の閉鎖空間が出現しましたので、僕はここで失礼します」
古泉は伝票を引っ掴むと飛び出していった。
駅前の公園に戻ると、なんとハルヒが泣いておりその両脇をオロオロする朝比奈さんと
無表情な長門が支えていた。
周囲には、生物化学兵器が使用されたがの如く、無数の「ハト」の死骸で埋め尽くされていた。
何がおきたのかおおよその見当を付けた俺は、上着を脱ぐとハルヒに掛けてやる。
朝比奈さんに財布ごと渡しデパートで着替えを下着を含めて一式買って来る様頼んだ。
「わかりました。 でもここじゃ着替えられないですよ」
長門を見ると、僅かにだが頷いた。
「朝比奈さん、俺たちは長門のマンションに向かいます。 買い物が終わったら追い掛けて
きてくれますか」
朝比奈さんは了解した旨告げるとデパートに向かい足早に去った。
長門にハルヒを見ている様に頼み、水飲み場の水道でハンカチを濡らすと、ハルヒの
顔を拭いてやった。
ハルヒ、俺だ判るか?
声に反応してこちらを向くが目が虚ろである、こりゃ重傷だな。
自失したハルヒを抱きかかえ、長門のマンションに運び入れると風呂の用意する。
長門に服を脱がせ身体を洗ってやるよう頼む。
「涼宮ハルヒが正気に返ったとき、あなたは再び錯乱しない様そばにいる必要がある、
よってこの作業はあなたが適任」
俺が居ればよけい錯乱するのではないのか?
「その時には、ペニスを口に入れて黙らせればいい」
…
……
硬直が解けた俺が口を開き掛けると
「冗談」
…
長門よ…心臓に悪いからもっと普通に笑える奴にしてくれ
長門が冗談を言うほど異常事態であることを認識した俺は、ハルヒを裸にして風呂に入れる。
身体と髪を洗いトリートメントもしたが、ハルヒは正気を取り戻さない。
いよいよ手詰まりとなった俺は、閉鎖空間からの脱出に使用した手を使うことにする。
ハルヒを横たえ口づけながら、「好きだよ」とささやく
ハルヒの目に光が甦る
「キョン! なんであんたが居るの! なんで裸なの?!……」
錯乱して手が付けられなくなる前に長門が提案した方法を採ることにした。
「うぐっ、うぐっ、うげー」
噛みつくも喉に押し込まれた異物のせいでハルヒは嘔吐した。
長門と交代し介抱する様指示し風呂場を抜け出した俺は、あまりの痛みにのたうち回った。
少し痛みが収まった所で、買い物を終えて追い掛けてきた朝比奈さんに買って来た物をハルヒに
着せるのになるべく時間を掛ける様頼んだ。
吐嚼物で汚れた身体や髪を洗い直し、着替えたハルヒが出てきたのは一時間以上経った後だった。
落ち着いたか?
「うー、気持ち悪い」
ハルヒは、閉鎖空間が解消されたため途中で引き返してきた古泉が買ってきたスポーツドリンクを
飲んでいた。
「結局何が起きたんですか?」
古泉の問いに、思い出しただけで閉鎖空間を作り出しそうなハルヒに代わって、朝比奈さんが
話してくれた。
「二人と別れて、あの公園に差し掛かった時、涼宮さんが『夜遅くまでテレビ見てたから眠い』と
いって欠伸をしたんです」
「そしたら、空からハトの…が涼宮さんの口に…」
「ぶっ殺してやる!、あの馬鹿ハト!」
次の日、死滅したハトの一羽から鳥インフルエンザのウィルスが検出されたとの報道があり、
滅菌処理が済むまで公園は立ち入り禁止となった。
古泉、ありがとうよ。
「なあに、あの程度のマスコミ操作は日常茶飯事ですよ、それよりけがまでして頑張った
あなたの方がすごいじゃないですか」
俺は包帯でグルグル巻きになった部分を意識した。
途端指がうずいた。
涼宮ハルヒの糞害
糸冬