いつもの文芸部室に、いつものメンバー。  
俺はハルヒの隠し切れていない好意に気が付かない振りをし、冷徹な突っ込み役を演じながら  
負けることのない勝負を古泉と繰り広げていた。  
 
朝比奈さんのおいしいお茶を啜りながら、いつもと違うことを言ったのはハルヒだった。  
「ねぇキョン」  
その口ぶりが、いつもは傲岸不遜なあいつらしくない妙に媚びた感じだった。  
「そろそろ髪も伸びてきたから髪形変えようと思うんだけど、どんな感じがいいと思う?」  
いつかの髪型七変化でもやったらどうだ。あるいはまだやったことない丸坊主とかな。  
個人的にはポニーテールが好きだが、あっちの世界での言動をリンクさせるのは危険な気がしてわざと伏せる。  
ハルヒは微妙に不機嫌そうな顔をして、同じ事を古泉に聞いた。  
「そうですね、ポニーテールなんかいいんじゃないですか?」  
古泉は微妙に俺の方に目線をやりながら答える。こいつ、分かって言ってやがる。  
ハルヒの方はというと、俺に言って欲しかったことを古泉に先に言われて微妙な顔をしている。  
「キョン。古泉くんはこう言ってるみたいだけど」  
どうやら後出しでも俺に同じことを言わせたいらしいな。しかしそこは俺だ。世界創造主の圧力などには屈しない。  
「俺としては、ポニーテールは普通すぎると思う」  
お前ならメデューサみたいな感じがお似合いだろうよ。もしくは赤くなる吸熱性の長髪とかな。  
「あたしもそういうのは悪くないと思うんだけど、もっと現実的なラインでお願いできないかしら?」  
だから髪型七変化でもやってりゃいいだろ。それとも何だ。他にやってみたいことでもあるのか?  
ハルヒはいっとう不機嫌な顔になり、もういいわ、と呟くと黙りこくった。  
ありゃ、ちょっと言い過ぎたか。朝比奈さんが青い顔であわあわ言ってるところを見ると  
かなりのダメージがあったのかもしれない。ハルヒも年相応の女の子だったってとこか。  
 
俺が今夜の古泉の仕事を減らすためのフォローを考えていると、ハルヒがまた話しかけてきた。  
「あたしとしてはさ、」  
なんだかよく分からない持論のようなものをまた聞かされる。それを聞いている朝比奈さんが青い顔になったり  
凄い勢いで頷いていたりするところを見ると、未来の世界では意味のあるものになるらしい。  
だが未来人を感心させるほどのハルヒの演説も俺にとっては馬の耳に念仏、適当に相槌を打ちながら  
いい感じに聞き流すしかない。ハルヒの言葉にはだんだん熱がこもり始める。  
「でさ、ってちょっとキョン聞いてるの?」  
適当に相槌を打つ。ハルヒはしばらく話を続けるが、俺の反応に興ざめといった感じでまた話を切りやめる。  
朝比奈さんは世界の終わりのような顔をしている。さっきから表情の変化が目まぐるしくて面白い。  
「さっきからみくるちゃんの方ばっか見てるわね」  
適当に相槌を打つ。ハルヒから見る見る怒気が上がってきたのを感じ、俺はやっと演説が終わっているのに気が付いた。  
「キョン。あんたには修正が必要なようね」  
ピキピキといった擬音が見事に当てはまるオーラを纏ったハルヒが立ち上がる。と、  
「まあ待ってください。きっと彼は寝不足で疲れているのです。話なら僕がしますよ」  
古泉が絶妙なタイミングでフォローを入れる。どうやら俺は古泉にも好かれているようだ。  
俺は気が付かないうちに何かのフラグを立てるのが余程好きなんだろうな。  
古泉の介入によって少し落ち着いたハルヒは、さっきの話と同じようなことを古泉にも聞かせ始めた。  
どうせハルヒが俺に話してた時も聞いてただろうに、古泉は表情豊かにハルヒの話に反応している。  
 
ただ頷くばかりではなく、当たり障りのない部分で適当に質問をしている辺りはきちんと理解しながら聞いてるんだなと感心しながら、  
俺は朝比奈さんに小声で話しかけた。朝比奈さん、もしかして今日のハルヒへの態度ってまずかったりします?  
「知りませんっ」  
ぷいっといった感じにそっぽを向かれる。さすがの朝比奈さんでもハルヒへの同情を禁じえないほどの態度だったらしい。  
どうしたものかと思案していると、ハルヒがこっちの方を見ていた。  
「……」  
ハルヒの視線に気付き、朝比奈さんはわきゃっ、と妙な声を上げて飛びすさった。  
何だ?言いたいことがあるならはっきり言え。  
「…なんでもないわ」  
諦めたような口調だった。ハルヒは古泉の方に向き直り、また新しい話を始めた。  
 
「あなたにはほとほと感服しますよ」  
活動が終わった後で古泉に話しかけられた。なんだそれ、皮肉のつもりか?  
「いえ、純粋にそう思うんですよ。今日の涼宮さんはずっと僕と話しながらもあなたの方を伺ってましたし」  
あの後、俺は置物状態の長門に適当な世間話を振りながらパソコンをいじっていた。  
ハルヒから異様な重圧を感じて振り向くことができなかったが、ただチラ見してただけだったのか。  
「一体どんなアフターケアの秘訣があるんですか? できれば僕も真似してみたいものです」  
僕にもできるような事でしたらね、と余計な一言を付け加える。やっぱり皮肉か。皮肉なんだな。  
「まあ世間的には8:2くらいが黄金比だとも言われてますし」  
一体何のだ。俺はどこかの金髪ツインテールじゃないぞ。  
「とにかく僕の安眠のためにも今夜はお願いしますよ。このままでは明日の日の出が拝めそうにありません」  
はいはい分かったよ。お前の容姿は気に食わないが、俺のせいで仲間に死なれたら後味が最悪だからな。  
何とかしてハルヒのご機嫌を取ってきてやるよ。  
 
(続く)  
 

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