ここ、どこだろう。  
 わたしが、目を開いた時、そこは、見知らぬ土地だった―――  
 
    朝比奈みくるの出発  
 
 ピピピ……ピピピ……ピピピ……。  
 う〜ん…う、うるさいよぅ。  
 カチッ。  
 ふぅ。これでだいじょうぶ。………  
 って寝ちゃダメ!? せっかく目覚まし早めにセットしたんだから、  
 きちんと起きなきゃ。  
「んん……まだ眠い…」  
 けど、頑張らなきゃ。今日から、北校の学生なんだから。  
 
 わたしこと、朝比奈みくるは昨日この時間に来たばっかりです。  
 入学手続きはもうすでに取ってあるので、今日からは晴れて高校生。  
 でも………  
「お友達、できるかなぁ」  
 この時代のわたしの知り合いは、一人もいない。まだ来てあまり日が経っていないので  
 当たり前といえば当たり前なんですけど……  
 あ、ちゃんと元の時間に戻ればたくさんとまでは言えないけど友達はいるんですよ?  
「が、がんばらなきゃ」  
 自分にそう言い聞かせ、わたしは家を出た。  
 
「あ、朝比奈、みくるです…」  
 今日はみんなで自己紹介。わたしは『あ』だから一番最初。  
「ふぇ…よ、よろしくお願いします」  
 何とか言い終わる事が出来た。他の人の紹介を聞いて、早くお友達をつくろう。  
 涼宮さんがこの学校に入学してくるまで後、1年もあるのだし。  
「じゃ、今日はこの辺にしとこう。1年間、よろしくな」  
 
 先生の自己紹介も終わったみたい。これで今日の授業はおしまい。  
 これからどうしようかなぁ。  
「えっと、確か朝比奈みくる、だっけ?」  
「ふぇ?」  
 ホームルームが終わってすぐ、後ろの方に座っていた女子が話し掛けにきました。  
「あ、えっと、確か…鶴屋さん…でしたっけ?」  
「うん、そうだよっ。よろしくね」  
 こうして、登校初日にこの時代のお友達ができました。  
 わたしの心配していた事が杞憂で終わってよかった。  
 
「ねぇ、みくるー。次の授業ってさっ、何だっけ?」  
「た、確か物理、だったと思うよ」  
「あんがとっ」  
 鶴屋さんは、わたしとは反対でとてもはっきりとした性格だったの。  
 彼女の行動を見ていて、わたしは気持ちがいいくらいだったし。  
「みくる、全学年の男子からすっごい人気だよ。あたし、友達として鼻が高いやっ」  
「え? そ、そうなんですか」  
「そうだよっ! もうファンクラブとか出来そうな勢いなんだからっ」  
「ふぇ、そ、そんな…冗談はよしてください〜」  
「ホントだってばっ! でも大丈夫さっ、みくるに近寄ってくる変な虫はあたしが退治してあげるよっ」  
「あ、ありがとう」  
 そうして、わたしは彼女と親しくなっていきました。  
 初めの頃は、彼女のがわたしのところに訪ねて来ていたけど、  
 今ではわたしの方からの方が彼女の所に行く回数が増えるようになってました。  
「鶴屋さん、今日…ひま?」  
「お、みくるから誘ってくるなんて、初めてじゃないかなっ?」  
 そう言われてみれば、そうかもしれないです…  
「うん、いいよっ! みくるからの頼みなんて珍しいしねっ」  
 二人とも部活が無い日や、休日はショッピング、映画などに出かけたりもしました。  
 
「さっきの映画、なんかイマイチだったねっ。あんなの、誇大広告だよっ!」  
「そ、そこまで言うほどだったかな…」  
「そうだ、みくる? 今日はまだ大丈夫っ?」  
「ふぇ? だ、大丈夫だけど」  
 一体なんでしょうか?  
「ならさっ、あたしん家にこない?」  
「う、うん…鶴屋さんがいいなら」  
「なら、きまりっ! じゃ、行くよっ! みくる」  
「わわ、まって〜」  
 そう言えば、鶴屋さんの家に行くのって…初めて。  
 わたしは、少し胸を高まらせながら鶴屋さんの後についていった。  
 一体どんなお家なのかなぁ。  
「着いたよ! ここが、あたしん家さっ」  
「わぁ〜」  
「そんな感心するようなもんじゃないけどねっ」  
「そ、そんなことないです…とっても大きいし。いいお家だよ」  
 その言葉の通り、彼女のお家はとても大きかった。  
 ここに来るまでに前を通ってきたどの家よりも屋敷が広く、庭も大きかった。  
 周りのお家が少し背が高い構造になっているのが余計にそう思わせるんだろうけど、  
 一階しかない彼女の家は、どこまで奥に広がっているのか想像もできないよ。  
「そっか、ありがとっ。じゃ、あがってよっ」  
「お、おじゃまします」  
「ん〜、丁度いま誰も居ないみたいだっ」  
「そうなんだ。いつもは誰かいるの?」  
「居る時と居ない時と、かな。ま、遠慮しないであがったあがったっ」  
「ひぁ!?」  
 いきなり後ろから押さないで…びっくりしちゃった。  
「あははっ」  
「くすくす」  
 わたし達は、なぜかおかしくなり笑い出した。  
 
「っと、ここがあたしの部屋。入ってよっ」  
 中に入ると、こじんまりとしていて、思っていたよりもすっきりした部屋。  
 ここが、鶴屋さんの部屋……  
 そう考えるとドキドキしちゃった。この時代の人の部屋に入るのは、これが初めてだったから。  
 でも、このドキドキは興味だけのドキドキじゃない……  
 その事に気付くのはもう少し後のことなんだけど…。この時は緊張していたし。  
「あ、そうそう。あんまり部屋の中、じろじろ見ないでねっ。ちょっち恥ずかしいや」  
 お茶もって来るねーっ、っと、少し顔を赤らめつつ忠告して部屋を出て行った鶴屋さん。  
 でも、気になるなぁ。この時代の同年代の子の部屋なんて入るの初めてなんだし…  
 ちょっとくらいいいよね?  
 心の中で鶴屋さんに謝りつつも、机のまわりを物色し始めるわたし。  
「へー……あ、こう使うんだ〜」  
 今まで、あまり見た事の無いものからここに来る前の時間に使っていたものの古い型と  
 思われるようなものまで、それはたくさんな種類の発見がありました。  
 あ、(禁則事項です)だとこんな使い方してない。  
 やっぱりあの(禁則事項)年前だと結構違うみたい。  
 ここに来て、良かったかな……?  
「あーっ! あんまり見ないでって言ったじゃないかっ。こらーっ!」  
 その時鶴屋さんが部屋に戻ってきました。  
「あははは……うぅ、ごめんなさい」  
「まっ、別に見られて困るような物なんてさっぱり置いてないんだけどさっ。  
 それよりもさっ、ほらとりあえずここに座んなよ! 色々とゆっくりと話そうじゃないかっ」  
「はいっ」  
 
  それから1時間くらい、あれはどうだった、とか取り止めの無い話ばかりしました。  
 明日の授業は楽しくない、とか。わたしのファンクラブがすごい事になってる、とか。  
 って、ファンクラブって本当かなぁ。  
「本当だって! 今は水面下で静かにしてるみたいだけどさっ、きっともうちょいしたら  
 ぶわって沸いてくるように急増するっさ」  
   
 そして、時間が経つにつれ、わたしは彼女に惹かれていっていることに気付きました。  
 自分には無い明るさ。自分にはまね出来そうにもないことばかり彼女はもっているみたい。  
 彼女といれば、わたしもあんなに明るく楽しくなれるかな?  
「んっ? どうかしたかいっ?」  
 あっ、目があっちゃった。うぅ、はずかしいよぉ。  
「な、なんでもないですっ」  
 あぅぅ、きっと、顔まっかなんだろうなぁ。  
「おやっ? 顔、真っ赤だよ? 熱でも出したのかいっ?」  
 そう言ってわたしの顔を覗き込む鶴屋さん。  
 わたしの目の前に鶴屋さんの顔がある…よ、余計に恥ずかしいよぅ……  
 あと、えと、だ、だいじょうぶです。とりあえず、これだけは言えたみたい。  
 でも、鶴屋さんは―――  
こつっ  
「うんっ! 一応熱はなさそうだねっ」  
 額をわたしのおでこに当てて熱を測ってくれました。  
 そ、そこまでしてくれなくてもいいのに……  
「ダメにょろ! もし本当に風邪だったらどうするのさっ?」  
「今まで何にも無かったから大丈夫だと思うんだけど…」  
「ま、そうだろうけどさっ。万が一って事もあるじゃないかっ」  
「………ありがとう、鶴屋さん」  
 その言葉を聞いた途端、わたしの目に涙が浮かんできちゃった。  
「へっ!? ど、どうして泣くっぽ!?」  
 鶴屋さんもわたしの涙を見て戸惑ってる。  
 
 確かにいきなり目の前で泣き出されたら誰でも戸惑いますよね…  
「ぐすっ、な、何でもないの……ちょっと嬉しかっただけ…  
 わたし、ここでこんなに優しくされたの初めてだったから」  
「みくる……寂しかったんだね。  
 でももうだいじょうぶさっ。なんてったってあたしがいるよっ!  
 今日からわたしたち二人、ずっと一緒だよっ!!」  
「つ、鶴屋さん……ふ、ふえぇぇ〜〜ん…」  
「よしよし」  
 まるで母親が赤ちゃんをあやすように、鶴屋さんがわたしの頭を撫でてくれた。  
「きもちいいです……」  
 ? 何か、鶴屋さんの目が光ったような?  
「みくる、もっと気持ちいいこと、したくないかいっ?」  
「ふぇ? もっときもちいいこと、ですか?」  
「そうだよっ! で、どう? したい? したくない?」  
 何故か、とても楽しそうにわたしに聞きに来る鶴屋さん。  
 今日、彼女に迷惑かけてばっかりだったから、その少しでもお返しになればいいな。  
 という気持ちで彼女にこう答えた。  
「えと、鶴屋さんがいいなら、わたしはいいよ…」   
 そうすると、鶴屋さんは  
「…ありがとっ」  
 とだけ、短く答えた。でも、さっきのよりも気持ちいいことってなんだろう?  
 一体何をするのかな?  
「あの……で、何をするの?」  
「…みくる、ごめんねっ」  
 え? どうしていきなりあやまるんですか?  
「ふむぅ?!」  
 え!? へ?! ど、どうして!? ちょ、鶴屋さん!?  
「あははっ、みくるの唇、奪っちゃったっ!」  
 そう言って笑ってる鶴屋さんの顔も、熟した林檎のように赤く染まってるんだけど……  
 言わないほうが、いいのかな?  
 
「あ、ゴメン。みくるに許可、取ってなかったねっ。  
 今更だけどさっ、さっき言ってた『気持ちいいこと』って、これ以上のことばっかりなんだけどさっ……  
 やになっちゃったかいっ?」  
 鶴屋さんはいつもの明るさでわたしに確認を取った。  
 ただ、いつもと違うのは、その顔が真っ赤に染まっていることかな?  
「ねっ、何とか言って欲しいっぽ」  
「あ! ご、ごめんなさいっ!!」  
「やっぱり、嫌だよねっ、こんなこと女同士でしちゃうなんてさっ」  
「あ、べ、別にそれに謝ったんじゃなくて……」  
 ちょっと、タイミングが悪かったかな…  
「じゃあ、ちょっち一線、超えてみるかいっ?」  
「鶴屋さんとなら…いいよ」  
「うへっ、ありがとっ!」  
 そう言って、鶴屋さんはわたしを思いっきり抱きしめた。  
 あ、鶴屋さん、胸おっきい……いいなぁ。  
「何いってるんさ。みくるはあたしよりもおっきいよっ!   
 その体格でそのぷろぽーしょんは絶対反則だっ!!」  
「ひっ?! つ、鶴屋さん!?」  
 鶴屋さんはそう言った後すぐに、わたしの胸を揉みはじめちゃった…  
「おっきいし、やぁらかいし、形もよさそう…。 んん。片手でつかめないやっ」  
「やぁ…鶴屋さん……あんまり…そういうところ、触らない…で……」  
 へんな、気分に…なっちゃうよぅ。  
「みくる。我慢…しなくていいよっ」  
「ふぇ… そんな、こと言われて、も…」  
「ほらっ。ここはそんな事ないって言ってるよっ」  
「ひっ!」  
 そう言いながら鶴屋さんはわたしの足の付け根のあたりをさわさわとし始めちゃった…  
 あふ、き、きもちいい…かも……  
 
「ほら、きもちいいでしょっ。 他の人にやってもらうと、自分よりも何倍も気持ちいいんだっ」  
 ? 今の言い方だと……  
「鶴屋さん…もしかして、やってもらった事、あるの? こういうこと…」  
「!! な、ないにょろよ! それとも、みくるってあたしのこと、そんな風に見てたのかいっ?」  
「そんなわけじゃないけど…」  
 経験があってもなかっても、鶴屋さんは鶴屋さん。そういう事はわかっているつもり。  
 どっちにしても、触られる方が気持ちいいことは、彼女も知ってるんだし。  
「えいっ」  
「ひゃあぁ〜っ、みくる、ちょ、待ってよっ!」  
「だめ〜、さっきのお礼〜」  
 まあ、お礼というよりも仕返しの意味の方が大きかったりするんですけど。  
 わたしは、鶴屋さんの胸を掴み返しちゃいました。  
「あ〜、やっぱり鶴屋さんの胸もおっきいです。 気持ちいい〜……」  
 ふにふにと、鶴屋さんの豊満な胸を揉むこと数分。  
 同じような刺激ばかりだったからか、鶴屋さんも慣れ始めちゃって。  
「やったなっ、このぉ」  
「ひゃあぅっ! く、くすぐったい〜〜〜」  
 いつの間にかくすぐりあいになっちゃってました。  
 
「はぁ〜〜〜、笑った笑ったっ! もうおなか痛すぎだよっ」  
「ぜ〜は〜ぜ〜は〜… つ、鶴屋さん…どうして普通に話せるんですか…」  
 二人で敏感な場所のくすぐりあいが終わるまで  
 それからおよそ30分くらい掛かった。   
 ふ、普通に呼吸するだけで、おなかが……  
「はひー。 お、もうこんな時間じゃないかっ。みくるっ。今日は家で食べてきなよっ!」  
「え? あ、ほんとうだ…」  
 
 ふと時計と見ると、7時を周ったところだった。  
 鶴屋さんのお家に来たのが4時30分くらいだったから……  
 2時間半くらいお部屋にいたことになるのかな?  
「で、でも…お家の人に悪いよ……今日はもう帰るね」  
「んー、残念っ。 ま、無理にとは言わないけどねっ」  
 気持ちの切り替えの早さも羨ましいかな。  
「じゃあさっ、次の日曜日にでも夕ご飯を招待するよっ」  
「わたしでいいの?」  
 ちょっと不安になって、つい聞き返しちゃった。  
「何言ってるっぽ? みくるじゃないとだめにょろ!」  
「……ありがとう」  
 次の日曜日、楽しみだな。  
 
「それじゃあ、明日、また学校で」  
「うんっ。 遅刻しちゃあだめだぞっ!」  
「鶴屋さんもね」  
 そう言うと、二人顔を見合わせて  
「くすくす…」  
「あははっ」  
 笑いだしちゃいました。  
 二人でちょっとの間笑い合った後、  
「それじゃ、今度こそ行くね」  
「うんっ、また明日っ!」  
 今度は簡潔に鶴屋邸を後にしました。  
―――それから、わたしと鶴屋さんの仲はさらに深まり、親友になりました。  
 鶴屋さん以外にもちょっとずつだけど、友達もできてきたし、この時代にも溶け込んでいると思います。  
 
 
 そして、また桜が咲く季節がやってきました。  
 この時代の自分の居場所を作るための一年は過ぎさっていった。   
 これからはこの時代に来た本当の役目を果たさなくちゃ。  
「よし、がんばるぞー」  
 気持ちいい日差しと春風が吹く放課後の廊下。  
 わたしは今日も書道部の部室へ向かっていました。  
 けれど…その日はいつもと違って……  
「あ、ここにいたのね!?」  
「ふぇ? え? ちょ? ひぃっ!!」  
 涼宮さんに誘拐されてしまいました……  
 あぁ、まだきちんとした役目を始めてから全然日が経っていないのに、こんな事でやっていけるのかな…  
 その日、連れて行かれた文芸部室で、また新たな出会いがあるんだけれど、それはまた別のお話……  
今でこんな状況なら今後、一体どうなるのかな…  
これから先、とっても不安です……  
 
                                            ーEND−  
 
 
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!