ハルヒが引き起こした本質的には恐ろしく表面的には馬鹿らしい事件について語る前に、  
謎のゲーム『Mysteric Sign』の真実についていくらか知っておくべきだろう。  
 
もちろん知っておくべきだろうと考えたのはハルヒ以外のSOS団全員であり、  
そのため俺達はゲーム大会を終えた後で密かに会合を持つ事になった。  
議題の性質上どうしても実演が必要になるので、会場は夜の文芸部室だ。  
 
「あ、今着替えますから、キョン君と古泉君はちょっと待っててください」  
 
「いや、着替えんで良いで……いや、いいか。その前にちょっと待ってください」  
 
朝比奈さんのマジボケをあえて訂正せず、パソコンの電源だけ入れて夜の廊下へ。  
着替えが終わる頃には起動処理も終わってるだろう。  
 
「好きなんですか、メイド服?」  
 
「言わんと判らんか?  
 だいたい、そういうお前こそ無関係面して役得だけ楽しんでるじゃないか」  
 
「ごもっとも」  
 
夜闇の中に佇むメイド朝比奈さんというのも実に映えると思うのだが、  
残念ながら長門が情報操作していて照明など使いたい放題なのでそんな情景ではない。  
もちろんデジカメで撮影してmikuruフォルダをさらに充実させる機会もありはしない。  
 
まぁ、そんな事は良い。本題に入ろう。  
Mystsign.exeを起動し、夕方と同様の注意書きとタイトル画面を四人で検証する。  
実の所、俺はいち早く謎を解いた事に対して密かな優越感を感じていたわけなのだが、  
このメンバー相手にそんな感情を持ち続ける事を誇りに思えるほど腐ってもいないので、  
早速ネタをバラす事にした。  
 
「メーカーがわからん」  
 
「……はい?」  
 
朝比奈さんは小首を傾げるだけ、長門は画面を凝視するのみ。  
 
「……ああ、なるほど。  
 普通、こういうゲームは画面を見るだけで製作元がわかるものなんですね?」  
 
「ま、そういう事だ。大抵は冒頭にメーカーロゴが入る。著作権表記も必要らしい。  
 なのにこのゲームにはメーカーを明示するような表記がない。何一つとして。  
 クリアすればスタッフロールが流れるかもしれんが、それも怪しいな、この分だと」  
 
「……なるほど。それはわかりましたよ。しかしどういう事なのでしょうね、それは。  
 このゲームの製作者は自分達の名を隠そうとした。何の意味があってそんな事を?」  
 
古泉が口にしたその疑問に対して、簡潔に答えたのは長門だった。  
 
「このゲームの製作者が、普通の人間ではないから」  
 
「……だろうな。少なくともまともな開発者が作ってるのでない事は確実だ。  
 自分の作品について自分が作者だと主張したくないクリエイターなんか存在しねぇよ。  
 ましてやゲームはメーカーで製作チーム組んで作るもんだからな」  
 
「その意見も概ね正しい。けれど、それ以前の問題。  
 この、ゲーム、という体裁を構成する原始的な情報群は人類の手によるものではない。  
 私が用いるのと同一の理論に基づく情報操作で作られた可能性が高い」  
 
長門の回答は覚悟していないわけではなかったが、予想外だった。  
 
「えっと……それは、つまり……地球外生命体が作ったゲーム、という事ですか?」  
 
朝比奈さんのその言葉に、俺はレンズシップでエリア51からパソコンを運び込み、  
念動力でマウスやキーボードを動かすリトルグレイの集団を思い描いていた。  
自分で考えておいてなんだが、一体どんな人類補完計画だそれは。  
 
「そうではない。私と同様のヒューマノイド・インターフェース」  
 
それはそれで怖いね。どんな宇宙的感性の産物かわかったもんじゃないというのも。  
 
『このゲームの表面的面白さに騙されてはいけない。荒唐無稽なだけではなく、  
 それは冒涜的なまでに禍々しい情報統合思念体の(以下数十行、何故か文字化け)  
 ……ウィンドウに! ウィンドウに!(そこで唐突に途切れる)』  
 
とかいう感じのレビューを書く羽目になったりしないだろうな。  
まだしも人間の反射神経ではクリア不可能なアクション性くらいで済めば幸いなんだが。  
 
「……ゲームの内容については一旦置いておきましょう」  
 
いちいちごもっとも。俺もさすがに悪ノリしすぎた感はある。  
真面目に考えると、問題なのはこのゲームを作った奴が間違いなく部長氏失踪事件の当事者だって事か。  
 
「ですね。普通に考えれば長門さんの同類が部長氏を誘拐し、  
 その上で現場に自作のゲームを置いていった事になります。  
 そこで再び、こう問わねばなりません。何の意味があってそんな事を、と」  
 
「それは……誰かに、遊んでもらいたかったんじゃないんですか?」  
 
その言葉はある種の真理を突いていた。確かに朝比奈さんの言う通り、  
製作者が自作のゲームを置いていく理由など他にはない。  
 
「なるほど。で、誰にプレイさせたかったんだ?  
 単純に考えるなら、部長氏を捜しに来た奴が持って帰るのを期待して……」  
 
そこで全員が沈黙した。  
 
「……ひょっとして、俺達か?」  
 
「でなければ、涼宮さんか。喜緑さんという線もありますが、これは薄い線でしょう」  
 
「というか、喜緑さんそのものが疑わしく思えてくるよな、こうなると」  
 
「ですね。僕もそう思ったから薄い線だと言ったわけでして。……長門さん?」  
 
「性能が私と同等以上であれば、予備知識のない段階で隠蔽状態を看破するのは困難。  
 現時点では、どのような可能性も確証を持って断言する事はできない」  
 
俺達はまたも沈黙して考え始めたが、残念ながら推理はここまでで手詰まりだった。  
 
仕方なく、俺達は『Mysteric Sign』をプレイする事にした。  
というわけでいよいよゲーム内容に関する解説だ。予想は付くだろうが。  
 
そうだな。まず、コンピューターウィルスや宇宙パワーの類は仕込まれていないようだ。  
ゲームの感想がまずこの一文から始まるのもふざけた話だと思うが、重要な事だろう。  
 
ジャンル?  
分類するなら……えーっと、ADVだっけ? なんか紙芝居みたいな奴。  
プレイしてて長門が妙に楽しそうだった。同類とはツボが合うんだろう、きっと。  
ただまぁ、ギャルゲーって言った方が通りはいいだろうなぁ。  
 
質?  
そうだな。『紙芝居みたいな奴』と割り切って読む分には面白みもあるんじゃないか。  
俺はそれをゲームとは思えなかった。そこにあるのはゲーム性とは異質な何かだった。  
隣で鑑賞してた古泉の『なんですかこれ?』的な表情が妙に印象的だったな。  
 
ストーリー?  
少し触っただけの段階での感想を率直に言えば、マニアックな話だ。  
だがこのゲームの表面的なヲタ臭さに騙されてはいけない。荒唐無稽なだけではなく、  
それは冒涜的なまでに禍々しい情報統合思念体の……sdifpdyリウryウェオイpf」ぐえwhrk  
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rソgks;おgkれおgkrせおkgsれs……ウィンドウに! ウィンドウに!  
 
「ひぇぇぇぇぇっ! ど、どうしちゃったんですかぁ! キョン君! キョン君!」  
 
いやそんなマジに恐慌して泣き出されても困るんですけど朝比奈さん。  
 
「そう思うなら正気に戻って。あなたの言動は明らかに常軌を逸し初めている」  
 
「いや俺もそう思うがこういう奇行にでも走らなきゃやってられるかこんなクソゲー!」  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それはともかく翌朝。いよいよというか、ようやく『ストーリー』の始まりである。  
 
「起きなさい馬鹿キョン!」  
 
という罵声と共に布団ごと蹴り飛ばされる、という恐ろしく暴力的なやり方で、  
およそ人類に想像し得る最悪の悪夢によって幕開けの朝に目覚めさせられた俺だった。  
ちなみにどこらへんが最悪かといえば、その一投足が地球を真っ二つにしかねない辺りだ。  
 
「……痛ぅ。何しやがるハルヒ。起こすにしてもやり方ってもんがあるだろう」  
 
すばやく意識を覚醒させ、俺は立ち上がった。  
ちなみに、今の服装はシャツとジーンズ(硬い生地のズボンなのは幸いだったね)。  
 
「何ブツブツ言ってんの? だいたいアンタ起こし方とかリクエストできる立場?  
 このあたしが毎日起こしにきてやってんのよ、這いつくばって礼を言うのが筋じゃない。  
 幼馴染みの腐れ縁がなければアンタの事なんかすぐに見捨ててやるのに」  
 
「その台詞、若き女王陛下が秘めた良心を押し殺して過酷な決断をする感じで頼む」  
 
「せめて真面目に返答しなさいよ。っていうか、あたしの話を真面目に聞け!  
 ……全く。さっさと身支度して降りてきなさい。朝ごはんもう出来てるんだから」  
 
そう言い捨てて出て行くハルヒだった。  
一体俺達はいつ幼馴染みになったのか聞きたい所だったが、聞いても無駄だろう。  
どうせ都合よく改竄されてるに決まってる。  
 
それにしても俺もよくこの状況にすばやく順応したものだ。  
やはり事前に覚悟して適度に感性を狂わせておくのは重要だね。これからの教訓にしよう。  
 
「さて、昨日やったゲームの通りなら……」  
 
ハルヒの足音が遠ざかるのを待ってから、俺は押入れに手をかける。  
『Mysteric Sign』ではヒロインの一人が主人公宅の押入れに住んでいたのだ。多分。  
正直、昨夜のゲームに関する記憶にはあまり自信を持てない。途中で発狂したからな。  
 
「いやはや。困った事になりましたねぇ」  
 
押入れを開けると、膝を抱えた古泉がそう言って笑った。俺は押入れを閉める事にした。  
 

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